再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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突然の歓迎会

 リムルからのちょっとした突っ込みや強さの追求をされるも、隆誠はのらりくらりと躱すように濁される始末。機会があったら見せると言われてしまい、渋々諦めるしかなかった。

 

 本当であれば盟主として根掘り葉掘り問い質さなければならないが、そんな強行をすれば彼が危険を覚悟で旅立つ恐れがある。下手すれば折角会えた同郷人と二度と会えなくなるどころか、あのカッコいいバイクに乗る機会を永久に失ってしまうのも嫌だから、と言う理由で。

 

 バイクに乗りたい執着は半分冗談だが、リムルは隆誠に好感を抱いている。とても温厚そうな性格で、自信を含めた魔物達と対面しても怖がる素振りを一切見せていない。それはそれで疑問だが、普通に話してくれるのであれば非常にありがたかった。

 

 既に転生した魔物(スライム)と言っても、前世の記憶が引き継がれており、その所為で彼はある意味孤独だった。転生してすぐに『大賢者』と言う話し相手を得ている他、暴風竜ヴェルドラとも友達になったおかげで孤独に押し潰されずに済んだのだが、自身と同じ価値観を持つ者が未だにいなかった。

 

 同郷人の井沢静江(シズエ・イザワ)とは出会っても短い時間だけだったが、隆誠は彼女と違って異世界に来たばかりの未来人。時代は違えど、価値観は自分と全く同じだとリムルは確信している。

 

 無理に引き留める気はないが、それでも可能な限り話し相手になって欲しい為に、リムルは隆誠を町に住むよう提案した。警戒されてるソウエイやベニマル達の事を懸念されるも、そこは自分の方で敵対しないよう言った結果、彼はこの町に住む事を了承してくれた。それを聞いた事で内心『引き留め成功!』とガッツポーズをしそうになった程に。

 

 同郷人が居住すると了承してくれたので、折角だから今夜行う宴には歓迎会もやろうと考えるリムルであった。

 

 

 

 

 

 

 宴が開始する寸前、リムルは新たな居住者となる予定の隆誠を住民達に紹介していた。

 

「今日からこの町に住む事になったリューセー君だ。見ての通り人間だが、仲良くしてやってくれ」

 

「魔物の皆様、初めまして。ご紹介にありました通り、司波隆誠(リュウセイ・シバ)と申します。以後お見知りおきを」

 

 既に気が合う友人となったのか、リムルは隆誠の事を『リューセー』と親しげに呼んでいた。これから居住するので、今後仲良くする意味合いも兼ねて「今後は自分のことをリューセーと呼んで欲しい」と言われた為に。

 

 リムルとしても人間の友人が出来たことを嬉しがっている。生まれた時代が違えど同郷人だから、配下の魔物達とは違う意味で気兼ねなく接すると思うほどに。

 

「人間の俺と魔物の貴方達では価値観が異なるでしょうが、その時はどうかご指摘を――」

 

「はいはい、そういう堅苦しい挨拶は無し! と言う訳で皆、リューセーの歓迎会に、かんぱ~い!」

 

『かんぱ~い!』

 

 最初が肝心なので新参者としての挨拶をする隆誠だったが、それをリムルが遮って乾杯の音頭を取って宴を始めるのであった。

 

 ジョッキを一斉に高く掲げた後、魔物の住人達はごくごくと酒を飲みながら楽しんでいる。

 

「全く、人の挨拶を――」

 

「いやいや、これから此処に住むんだからさぁ――」

 

 隆誠はジョッキに入ってる飲み物を口にしながら苦言を呈しており、指摘するように酒を飲むリムル。

 

 因みに隆誠が飲んでいるのは酒ではなかった。既に二十歳を迎えた成人なのだが、大して飲もうとはしない。余り人前で酔う姿は見せたくない他、個人的には家で静かに飲む方を好んでいる。歓迎会が始まる前に隆誠がリムルにそう言ってある為、この宴が終わったら庵で二人だけの二次会を行う予定だ。

 

 二人が焼いた肉や魚を食べながら談笑している際、一人の男性が酒を飲みながら此方へ来る。

 

「よう、リムルの旦那。そこの兄さんと随分仲良さそうに話してるじゃねぇか」

 

「お、カイジン」

 

 話しかけてきたのはカイジンと呼ばれる男性。彼は魔物ではなくドワーフであり、以前は武装国家ドワルゴンに所属していたが、リムルとの出会いによって現在この町に住んでいる。他にもドワーフ三兄弟のガルム、ドルド、ミルドもおり、リムル達が住んでいる町は彼等のお陰で発展していると言っても過言ではない。

 

(この人の声、何かあの男に似てるな)

 

 カイジンの声を聞いた隆誠は、思わず元の世界にいる黒羽(くろば)(みつぐ)を思い出していたが、すぐに如何でも良い事だと切り捨てている。似ているのはあくまで声だけであって、目の前のドワーフは、陰険な親バカ男とは全然違う為に。

 

「何だ兄さん、折角の宴なのに酒は飲まねぇのか?」

 

 隆誠が口にしている飲み物が酒じゃないと気付いたのか、少々怪訝そうに問い掛けて来た。

 

「ははは、俺は食べる方が好きなんですよ」

 

「そうなのか。確かカバルの兄ちゃん達も結構食ってたから、やっぱり若い人間はそっちのほうが良いみたいだな」

 

 肉を美味しそうに頬張りながら食べる隆誠に、カイジンは以前に此処へ来た人物達の名前を口にした。牛鹿の肉を取り合うように食べていたのを鮮明に憶えていたから。

 

「俺以外の人間も、この町に来てたのか?」

 

「ああ、数ヵ月前にな」

 

 そう言ってリムルは簡単に語ってくれた。カイジンが言っていたカバル達の事や、もう一人の同郷者である井沢静江(シズエ・イザワ)ことシズさんについて。

 

 シズの本名を聞いた隆誠はすぐに自身と同じ同郷人だと気付くも、敢えて詮索はしなかった。彼女の話をしているリムルが、無意識にも少々悲しげな雰囲気を醸し出している為に。

 

「へぇ、そんな事があったのか。いずれその三人には会ってみたいな。どれほど強いのかも気になる」

 

「あ、実力に関しては多分リューセーの方が上だから、余り参考にならないと思うぞ」

 

「旦那、それはどう言う事だ?」

 

 カイジンは気になったのか、まるで食いつくように訊いてくる。それは彼だけでなく、宴に参加している者達の中には、リムル達の方へ視線を向けているのがチラホラいる。

 

「リューセーは魔獣を倒せる実力があるんだよ。昼頃にあった大きな爆発音は、ナイトスパイダーを倒した時のものらしい」

 

「おいおい、マジかよ。ナイトスパイダーと言えば、人間の冒険者達が束になっても勝てない魔物だぞ」

 

 冒険者についての知識があるカイジンの発言に、隆誠はこの世界に住まう冒険者達の実力が不可解になっていく。あのような人外な存在がこの世界にいるのだから、少なくとも(一応)平和な世界で暮らしている魔法師達より実力は上だろうと思っていたから。

 

 その後には鬼人のベニマル達だけでなく、ホブゴブリンのゴブタを筆頭に、多くの魔物達も隆誠に話し掛けるのであった。

 

 

 

 

 

 

「リムルの言った通り、この世界の魔物は本当に友好的だな」

 

「だろう?」

 

 宴が終わった後、隆誠はリムルの自宅に戻っていた。家主であるリムルと二人で、先程まで対応していた魔物達について語っている。あそこまで裏表がない接し方をされた事で、元の世界に帰るのが躊躇ってしまうと思うほどに。

 

 魔法師が存在している世界は、隆誠からすれば相当歪んでいる。

 

 『人として生きる権利』を守る為の組織として作られた十師族は、結局のところ時代逆行した貴族みたいに、血筋に拘った権力者の集団に過ぎない。表向きは民間人であっても、裏では超法規的な特権を持って普通の権力者より性質が悪くてウンザリしてしまう。逆に魔法が使えない一般人は、魔法師を嫌悪している者がいる。それどころか人間ではなく化物扱いしており、まるで間違った存在のように非難する始末。こうまで醜い争いを行うことに、隆誠こと聖書の神は果てしなく呆れている程だ。

 

 対して今いる世界の魔物は、人間相手でも友好的に接してくれるピュアな存在。向こうにいる愚かな考えを持っている人間達と大違いで、隆誠はこの世界で満喫したいと思わず考えてしまう。

 

 だがあんな歪んだ世界でも、隆誠の生まれ故郷であることに変わりはない。あそこには大事な両親だけでなく、自身を慕ってくれている後輩、そして四葉家当主とその息子を放っておくことなど出来ないから。

 

「それとは別に、この世界に米は無いのか? ちょっとばかりご飯が食べたい」

 

 宴で食べた肉や魚は美味しかったが、味付けが少々濃い目だった為に隆誠はご飯が欲しい気分だった。

 

「あるにはあるけど、此処のコメは栄養価も高くないし味もイマイチなんだ」

 

 元日本人であるリムルは『コシ〇カリ』みたいな米を作るのを目標にしているので、現段階で人間の隆誠に食べて欲しくないのが心情だった。

 

「そうか。なら自分で用意する(・・・・・・・)しかないか」

 

「え? 自分で用意する?」

 

 思わず鸚鵡返しをしてしまうリムルに、隆誠は庭に置いてあるバイクの方へ向かい、遠出用で使うリアボックスを一つ取り出す。

 

「よし、ちゃんとあるな」

 

「おいリューセー、それってまさか……!」

 

 取り出された食べ物が入ってる袋――『フリーズドライ食品(白米)』を見たリムルは驚愕した。見た事のない商品だが、元の世界の美味しいご飯を用意して食べようとする隆誠に。

 

「良かったらリムルも一緒に食べるか? これ結構美味いぞ」

 

「勿論!」

 

 日本の米を食べたいと願い続けていたリムルが即答したのは言うまでもなかった。

 

 因みにフリーズドライ食品は米だけでなく様々な物もあると隆誠が教えた瞬間、リムルは日本産の白米を美味しく頂きながら、いくつか譲ってもらう為の交渉をしてみようと本気で考えていたとか。

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