再転生した元神は転スラの世界へ   作:さすらいの旅人

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魔物の町での生活

 見知らぬ異世界に転移されて一週間が発ち、司波隆誠は町に馴染んで住民の一人になっていた。盟主の計らいもあって、人間の住民となった彼専用の宿舎を建設されている。

 

 最初は魔物と一緒の宿舎に泊まるつもりの隆誠だったが、そこをリムルはこう言った。人間と魔物での生活リズムが異なり、プライベートな場所も絶対必要になると。その気遣いに隆誠は何一つ否定出来ず、お言葉に甘える事にして、現在はリムルの庵で寝泊まりしている。

 

 本来であれば大森林の盟主となったリムルが、新参者の住民と一緒に寝泊まりするなどあり得ない。それを聞いたシュナとシオンが苦言を呈していたが、主にそれは大好きな主と一緒に寝泊まりすることの嫉妬だが。

 

 二人の可愛らしい抗議とは別に、多くの魔物達は全く気にしている様子は無かった。主がそう決めたのであれば全然問題無い、と言う理由で。

 

 そのリムルは隆誠と一週間過ごしている事もあって、すっかり打ち解けて仲良くなっている。生まれた時代は違えど、元の世界での価値観を持つ者同士だったからか、色々と話が合う為に。以前用意してくれた日本産の白米とは別に、娯楽品の一つである携帯ゲーム機にすっかり嵌っている。日本産の食べ物だけでなく、娯楽用品も色々持っている事で、是非ともこの町に留まってもらおうとリムルが密かに決意するのは仕方のない事と言えよう。

 

 

 

 

 

 元の世界にいる職人達ですら数年掛かってもおかしくないのに、余りにも迅速かつ丁寧な仕事振りを見せる魔物達に、散策している隆誠は感服するばかりだった。

 

(う~む。流石に働きもしないで住み続けるのはチョッとなぁ……)

 

 この一週間、隆誠は主にリムルと仲良く談笑しているだけで、今も仕事らしい事は何一つやっていない。真面目に仕事をしている魔物達を見てる事で、非常に申し訳ない気持ちになっていた。

 

 人間の自分でも何か出来る仕事がないかと思いながら町を散策し続けていると、小腹が空いたことに気付いた隆誠は、自分用のお菓子を食べようと一旦リムルの庵へ戻ろうとする。

 

「ん? アイツは……」

 

 戻っている最中、隆誠は一人の魔物を発見する。侍大将の役職を与えられた鬼人のベニマルを。

 

 その彼は食堂から出てきたのだが、どうにも様子がおかしい。この食堂はゴブイチと呼ばれるホブゴブリンが料理人として務めており、彼の作る料理はどれも美味しい。にも拘らずベニマルが、まるで食あたりでも起こしたかのように片手でお腹を支えながら何処かへ行こうとしている。

 

 周囲の魔物達も当然目撃しているのだが、彼の異変に何か察したように声を掛けていない。それを見た隆誠は益々疑問が膨らんでいくばかりだった。

 

 病気とは縁が無さそうで丈夫な身体をしている筈のベニマルが、あそこまでの状態異常を起こすのは只事ではない。そう思った隆誠は意を決して声を掛ける事にする。

 

「ベニマル、大丈夫か?」

 

「りゅ、隆誠か」

 

 声を掛けられたベニマルは隆誠の方へ振り向くも、辛い表情のままだった。

 

「だ、大丈夫だ。これくらい何とも……」

 

「いや、そんな顔で言われても全然説得力が無いのだが」

 

 元気そうに振舞おうとするベニマルだが、隆誠にはやせ我慢にしか見えない。それが余計に不安が増していく。

 

「さっき回復薬を飲んだから、あと少しで元に戻る筈だ」

 

「回復薬?」

 

 まだ住んで一週間だが、隆誠はゴブイチが作る料理を何度も食べた。その中で回復薬を飲まなければならないほど料理に当たった事など無く、どれも美味しいと思われるモノばかり。彼の料理に対する姿勢は見事である筈なのに、そんな不味い料理があるのかと逆に疑問を抱いてしまうのは無理もない。

 

「まぁ兎に角、俺と一緒に来い」

 

「悪いが、俺はこの後仕事が……ぐっ!」

 

 やんわりと断ろうとするベニマルだが、支えてるお腹が急に異常が起きた所為で、隆誠に無理矢理連れて行かれるのであった。

 

 

 

 

「おいおい、危うく全身に毒が回るところだったじゃないか」

 

「す、すまん。今回は本当に助かった」

 

 瀕死に近いベニマルをリムルの庵に連れて来た後、隆誠はすぐに診断するも、非常に不味い状態だったことに焦った。

 

 並みの毒とは比べ物にならないほどに酷く、普通の人間が死んでもおかしくない。丈夫な筈のベニマルが瀕死になるのも無理もないと納得してしまう程だ。

 

 余りにも危険な状態だと判断した隆誠は、すぐに解毒させようと神の能力(ちから)による治療術を施した。異世界の魔物に通用するかは分からなかったが、ベニマルが問題無く解毒されていたので安心した。

 

「しかし、お前の解毒魔法は凄いな。お陰ですっかり元気になった」

 

「それは何よりだ」

 

 ベニマルは解毒魔法だと思ってるが、訂正する様子を見せずに合わせる隆誠。神の能力(ちから)によるものだと態々教えるつもりは無いだけでなく、魔法と勘違いしてくれるのは非常に好都合だと敢えてそうしているのだ。

 

「俺から言わせれば、それを使わなければならないほど、ゴブイチの料理が酷かったのは予想外だったが」

 

「あ、あの料理はゴブイチのじゃなくてだな……!」

 

 少しばかり戦慄する隆誠に、ベニマルはすぐに違うと否定した。

 

「じゃあ誰の料理なんだ?」

 

「いや、その……」

 

 本当は同胞のシオンが作った最悪な料理だと言いたいベニマルだが、敢えて言葉を濁していた。新しく居住した人間が知れば、自分たち鬼人に対する印象が悪くなってしまうのを恐れた為に。

 

「……まぁ、言いたくないなら無理に言わなくていい」

 

 大変言い難そうな彼を見た事に、隆誠は何か事情があるかもしれないと察したのか、追求するのを止める事にした。

 

「とは言え、そんな酷い料理を作る奴の気が知れないな」

 

 料理を得意とする隆誠としては、少しばかり見過ごせない案件だった。食あたりや毒状態にさせる料理人など、自分だったら絶対に食堂で料理させないよう出禁命令を下していると。

 

 後で調べる必要があると思いながら、隆誠は室内に置いてあるボックスを開けて、ある物を出した。

 

「何だソレは?」

 

羊羹(ようかん)って言う甘いお菓子で……欲しいならあげるよ」

 

 非常食用として出した羊羹を教えた途端に凝視していたので、隆誠は一本あげる事にした。

 

 開け方を教えた後、長方形の黒い物体に戸惑いの表情を見せるベニマルだが、意を決するようにパクッと口にした瞬間――

 

「―――――ッッ!!??」

 

 突如目を見開いただけでなく、勢いよくムシャムシャと食べ始める。

 

 ベニマルは未知の甘味に感動していた。彼にとっての甘味は果物だけで、砂糖を使ったお菓子は一度も食した事がないから。

 

「りゅ、隆誠、もし良かったらもう一本……!」

 

「あ、ああ。まだ余分にあるから別に構わないが」

 

 ゆっくり食べている隆誠とは別に、既に一本目を食べ終えたベニマルは再度貰って二本目の羊羹を食べようとする。

 

 そして羊羹を食べ終えた後、他にも甘いお菓子を持っていると知った途端驚愕するも、これは絶対秘密にしようと決意する。特に自分と同じく甘い物が好きな妹や、他の女性陣にも知られないように。

 

 後日、ベニマルが隆誠からお菓子を貰う際、コソコソ動いている事に妹のシュナやシオン達が目撃するようになったとか。




今回はベニマルと仲良くなる話でした。

次回は原作としてガゼル王が来る話になります。

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