TS転生した私が所属するVTuber事務所のライバー全員を堕としにいく話 作:恋狸
漆黒剣士ツナマヨことツナマヨは、二十歳を超えた立派な大人である。
すでに
二十歳超えが「ふぇぇ」とか「ひぇっ」とか「ふぉぉ……!」とか言うだろうか。配信者としてキャラ付けのためにやっているならば、そう疑問に思うことはないが、奴の場合は素面で『あざと二次元発言』をするのだ。
イタい……が、妙に似合っているため苦言を呈しづらいのも事実。
さて、そんなイタい女の1日を紹介しよう。
「はっ……!? 駄目ですよ花依さん、私の秘められし魔眼が……って、朝ですか」
ツナマヨの目覚めは夢からの解放を指す。
花依の出会う前は、専ら夢から醒めたくないと布団の中でゴネたものだが、最近になりゆっくりとだが大人しく布団から出るようになった。
「ふぅ……朝は寒いですねぇ……」
パチリとストーブの電源を入れて「ふわぁ」と腕を伸ばして欠伸をする。
その瞬間にズレて肌けたキャミソールによって、花依検閲済みの膨らみが見える。自分のことに無頓着で──全智とは別種の鈍感であるツナマヨ。
花依曰く、そんなところが無防備で好みらしい。お前の性癖はどうでもいい。
「うぅ……寒い朝は億劫ですぅ」
基本が敬語のツナマヨは、別段自分の口調に違和感を持つことはない。そもそも小、中、高とほとんど誰とも話さなかったことが原因なのだが。
肥大化した人見知りと陰キャは、花依によって解消された悩みの一因を担っていたこともあり、幾分かマシにはなった。
配信に限ればコミュ力はある方なのだ。
ツナマヨは震えながら顔を洗い、ボサボサの髪の毛をセットする。
そのままキッチンで簡単な朝食を作る。
「味噌汁が染みるぅ……ワカメちゃんが踊ってるぅ……」
意外なことにこのツナマヨという社会不適合者は、家事に関しては人並み以上にこなすことができた。
一人暮らしゆえに身に付けなければ生きていけなかった……という切実な理由があるものの、本人も別に家事を苦に思っていない。
とことん閉鎖的な環境だからか、自分周辺の環境だけはせめて良くしようという心づもりなのだろう。
「今日は暇ですし配信でもしましょうかねぇ。花依さんを誘って……あぁ、今全智さんのお宅にいましたか」
ツナマヨはガックシと肩を落とした。
意気消沈を乗り越えた後に飛来した感情は微かな嫉妬と寂しさだった。
「むぅ、花依さんが人気なのは分かっていますけど、少しくらい私に構ってほしいですよぅ」
微妙にツンデレのツナマヨだから、面と向かってその言葉を言うことはできないが、確かに会ったことのない0期生に嫉妬していた。
堕とすだけ堕として放置プレイですか! と憤るツナマヨの元に一通のメッセージが届く。
ーーー
花依『明日コラボ配信しないー?』
ツナマヨ『ええ、ええ、構いませんとも! 暇ですので!』
花依『ツナちゃんはどうせいつも暇でしょ』
ーーー
ぱぁと顔を輝かせるツナマヨ。
嬉しさと感動の相混ざったような表情だ。
「ふふふふふ……はっ! こ、好感度管理が上手い……っ! なんでこんなタイミングバッチリなんでしょうか!」
我ながらチョロいと思いながらも、胸にあふれる喜びは事実なんだと苦笑するツナマヨ。
実際、そろそろ拗そうかな、と察した花依が好感度管理に走ったのだが。無論、花依の好感度管理=『逃さねぇ、完堕ちさせてやんぜ、ベイベー』なので悪意はない。悪意か? これ。
……花依にしてやられたツナマヨは、一矢報いてやろうとメッセージを送った。
ーーー
ツナマヨ『ど、どうですかぁ? 私の家に来てお泊りオフコラボでもしていいんですよぉ?』
ーーー
「むふふ、これで花依さんは照れるはず! 私にかかれば堕とされるだけなんてことはあり得ないんですよぉ!」
自信満々に胸を張るツナマヨ。
しかしお忘れではなかろうか。
ツナマヨは悩殺と言って聞きかじった色気もクソもない発言を言ってガバるような女である。
そんなアホが仕掛けた場合──
ーーー
花依『え? 良いの? じゃあ、住所送ってね、行くから』
ーーー
「ふぇ?」
──予想だにしない反撃を食らうことは必然である。
その後1時間ほど固まっていたツナマヨは、再起動するなり叫んだ。
「うぇぇぇえええええぇぇ!!???!!??」
だからあざといんだって。
☆☆☆
和室に敷いてある布団からはみ出て寝言を呟いている女性がいる。
赤いワンピースタイプのキャミソールが肌けた姿と、呼吸の度に上下する豊満な胸は実に扇情的である。
音楽系Vtuber、クラシーの朝は遅い。
比較的早起きが苦手というのがあるが、一番の理由は
しかし、
「ぅん……花依さん……」
いつも怜悧とした雰囲気はどこにもない。
だらけきり、ムニャムニャと寝言を呟くクラシーは若干幼くも見えた。
花依が見れば胸中で発狂する光景である。それでいて表情に出さずして真顔でしばらく眺めていそうだ。狂気。
それにしても、花依に堕とされた三人衆は全員花依の夢を見ているらしい。ある意味悪夢だろ。
日常生活どころか夢にまで干渉するようになるとは、花依の影響は計り知れない。無論、本人は知る由もないが。
現在時刻は午後1時。
寝返りを打った時に自分の手が顔にぶち当たったことで、クラシーはようやく目覚めた。
「もう朝ね……。最近は寝るのが楽しいわ」
昼である。
そして寝るのが楽しいのではなく、花依の夢を見るのが楽しみなだけのツンデレである。
大人ぶりたいクラシーに春は訪れるのか。春=花依。
「んんっ……ふぅ、私も負けていられないわ」
下馬評を覆したクラシーは、その立ち位置に甘んずる気は一切なかった。
元からストイック気質なこともあって、自己研鑽は欠かさぬよう最近はより一層力を入れて活動している。
「約束は3時だったかしら。……先生」
微かに表情を暗くさせたクラシー。
しかし、頭を振って暗い気持ちを吹き飛ばすと、勢いよく着ていたキャミソールを脱ぎ捨てた。
「あ……破れた」
☆☆☆
クラシーは考えた。
酷すぎる方向音痴。最早改善することは不可能だと。
ならば、最初からタクシーを呼んで所定の位置に送ってもらうことが一番だと。
そんなわけで、クラシーはとある音楽スタジオに来ていた。
自分の過去を
それは──
「久しぶりね、先生」
「あぁ、得心がいきました。そういうことでしたか」
クラシーが先生と呼んだ人物。
それは、花依の師匠と同一人物である、スーツ姿に丸メガネ、ポニテの性癖の厨装備を標準化している(偏見)女性である。
女性はクラシーを見て片眉を上げる。
続いてクラシーが声を発すると、納得のいった表情で頷いていた。
「あのアホの歌声を聴いてから『もしや?』と思っていましたが……ワタシもクソバカ……
「花依……って、知り合いなのかしら?」
クラシーは目を丸くして驚く。
世間は狭いとは言うが、まさか自分の元先生が花依と知り合いとは思っていなかった様子。
客観的に判断すれば、花依はクラシーにとって妹弟子ということになる。
「そうです。ワタシの……まあ教え子です。あまり認めたくありませんが」
「なるほどね……。まさか花依さんと先生に繋がりあるとは思ってもいなかったわ」
「同意です。──それで、アナタは何をしにここに来たのですか? 言っておきますが謝罪は不要です。アナタも……ワタシも。乗り越えた先に今ある現在なのですから、わざわざ過去を精算しなくて結構」
ピシャリと言い切る女性に、クラシーは『変わらないな』と内心苦笑するとともに、首を横に振って答える。
「その意図がないとは言わないわ。けれど、あたしは……やり直すわけでなく、また最初から始めるためにここに来たわ。──恥を偲んで頼むわ。もう一度あたしの先生になってくれないかしら?」
強い瞳に女性は微かに驚愕する。
(随分強くなりましたね。けれど危うさはあります。……ですが、その危うさを支えているだろう馬鹿弟子がいる限り安泰、ですか。素直に褒めたくありませんが……)
女性にとって花依は盗っ人であり、中途半端な才を
心の中ですらもそれを言葉に表すことはしないが、それなりに信頼はしていたのだ。
一方、クラシーは初めての教え子であり、自分の手が及ぶことのなかった存在。
そして今は、才能を埋もれさせながらも一人の存在がクラシーに翼を与え飛び立たんとしている。
女性にとって、そのもう片翼を担えることは単純に喜ばしいことであった。
「その決意の強さは変わりませんね。昔を思い出します」
「卑屈になるのはやめたのよ。あたしはあたしだから」
「良い瞳です。協力しましょう。随分鈍っているようですから」
「それは……そうね。否定できないわ」
少し肩を落とすクラシー。
久しぶりに歌ったあの時は、気力で歌いきったような形だ。
微かに染み付いていた技術と、誰かさんに触発されたことによって性来持っている美声が披露された。
しかし、プロの目線から言えば、感情表現は満点でもお世辞にも技術は伴っていなかったのだ。
ただでさえ才能のあふれるクラシー。
そこに技術が追いつけばいったいどうなるのか。
「あのアホ面に一矢報いましょう」
──女性は楽しみでしかたがなかった。
300人も評価してくれてありがとナス!
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花依琥珀
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クラシー
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