TS転生した私が所属するVTuber事務所のライバー全員を堕としにいく話   作:恋狸

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聞き込み

 リスナーを比較的無視する場合の仮説。

 色々と私なりに考えてみた。

 

 前世での配信活動、様々な事件。

 プロミネンスさんは人気VTuberだったけど、"大"人気VTuberでは無かったんだよね。

 

 そりゃ勿論、どんな界隈でも上には上がいる。

 面白さのポテンシャルをどれだけ秘めていようと、時の運だったり少しばかり実力が不足していたり……数字が伸びない要素は幾らでも転がってる。

 

 それでもプロミネンスさんは大人気になるべき要素が揃い踏みになっていたのにも関わらず、今一数字が伸び悩んでいる原因。

 

 ──リスナーへのレスポンスの無さ。

 

「リスナーの中に気づいてる人もいるみたい。う〜、前世で私はどうして気づかなかったんだ……恋は盲目ならぬファンは盲目ってことかな〜」

 

 なんてことを考えながら、私は『ならばどうしてコメント読みだったり反応を示さないのだろうか』と考える。

 

 ……顔を隠した姿。人と喋るのが苦手。

 されど配信では元気に。

 

「……自身の無さの表れ、かな。根本的に自分への自信が無さすぎて、面白い配信をしている自覚が無いとか?」

 

 つまりは、一切コメントを見ないことで心の平穏を保っているのではないか……という説。

 うん、まあ荒唐無稽っちゃ荒唐無稽だよね。

 それで面白さが本当に担保されるのか、って疑問が湧いてくるし、あくまで私の根拠のない妄想に過ぎないし。

 

「でも考えられるとしたらその説なんだよね。だとすれば前世でコラボをドタキャンしたことの納得もできる」

  

 この世界で生き残るには、ある程度の自己肯定感が必要なんじゃないかと私は思う。

 自分の配信は、喋りは、ゲームは、コラボが──面白いんだ、という自信と肯定感。それが無ければ、多分VTuberを長く続けるモチベーションを維持することは難しい。

 

 私は言わずもがな、クラちゃんだってツナちゃんだって自分の配信にはきっと誇りを持っている。

 

 だから──配信をしている時の彼女たちの表情は本当に美しいんだ。

 

「つまり! 私がやるべきことは!! プロミネンスさんに自信をつけさせること!!! ……いやそれなんて無理ゲー?」

 

 私は頬を引き攣らせて掲げた腕を静止する。

 内的側面に起因してる自己肯定感の無さをどないして改善させるというのか。

 そしてそれが本当に正しいのか分からないまま突っ込むのは愚策でしかない。

 

「だからこそ、聞くしかない。知ってる人に」

 

 よっし、今までの推理は全部白紙!!

 まっさらな状態でプロミネンスさんのことを知りに行こう。

 

 そして私は徐にスマホを取り出すと、とある人に電話をかけた。

 ぷるるるる、ぷるるるる、とツーコール後に通話に出た人物……それは──、

 

「もしもしー、ちょっと聞きたいことがあるんだよね──()()

『なんですかバカ弟子。ワタシは生憎と暇ではないのですが』

「あなたの同期、プロミネンスさんについて」

 

 ピシリと、時が止まったような錯覚を覚えた。

 数十秒間後、電話越しにハァ……と深いため息が聞こえてきた。

 

『知ってたのですね』

「逆に私が知らないと思った?」

『いいえ。薄々気づかれてるとは思っていましたが、共通認識が無ければ気づいていないのも同然ですので』

「脳筋みたいな思考……!!」

 

 私が気づいていても先生が気づいていない、ということにしておけば気づかれていないことにできる……ってこと?? 何言ってるんだろ。

 

 さて、説明不要かもしれないけれど、私の歌の師匠は『肥溜め』の一期生──プロミネンスさんと同期の宇宙(そら)さんだ。

 

 そして、尚且つVTuberも歌のレッスンも副業で、実は『肥溜め』の社長秘書が本職というなかなかにイカれた経歴を持っているのが先生だ。

 

『それで、プロミネンスさんについて聞きたいとのことでしたが。ワタシとてそう知ってることは多くありませんよ』

「聞きたい理由は聞かないんだ」

『どうせアナタはワタシの本職も知っているでしょう。【学力王決定戦】の企画を社長にぶん投げたのはワタシですので』

「じゃあ、参加の頭数にプロミネンスさんを入れたのも先生なんだね」

『…………』

 

 まるで失言した、と言わんばかりの沈黙が広がる。ふふふ、私に隙を与えたのが悪いよ先生。

 ……なるほどね、同期として……『肥溜め』のVTuberとしてプロミネンスさんを何とかしたい、って考えているのは私だけじゃないんだ。

 

 先生もきっと、同期としてプロミネンスさんを何とかしたいと思っている。

 逆説的に、前世の事件を知っている私がプロミネンスさんを何とかしたいと思うのは普通だけれど、今のところ何もしていないプロミネンスを何とかしたいと思うということは、それは宇宙さんが何らかの関わりがあったことに間違いはない。

 ……いや曖昧すぎるか。

 

 だけど私のこの推理は図星を突いたらしい。

 沈黙がまたもや広がっていく。

 

「聞きたい理由を聞かないってことは、私なら何とかできるかもしれない、ってことでしょ? だからさ、先生。教えてよ、プロミネンスさんのこと」

『アナタはどうしてそこまで他人に首を突っ込めるのですか?』

「あははっ、他人じゃないよ。『肥溜め』にいる時点で、プロミネンスさんも……宇宙さんも──等しく堕とす対象なんだから」

 

 自信満々に言い切る私に再度ため息が聞こえた。

 むぅ、良い機会だから宇宙さんにも意識してもらおうと思ったんだけどなぁ……流石に鉄の女と言われているだけあって牙城は堅い。

 

 そんな不満を抱えていると、諦観した声音で宇宙さんは一言発した。

 

「明日の15時に2階奥の会議室で待っています」

 

 そして電話が切られた。

 私はその言葉にしばらく呆然としていた。

 

「先生……明日は平日だよ……」

 

 ここに来て人生初めてのズル休みが決定してしまったのである。

 

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