TS転生した私が所属するVTuber事務所のライバー全員を堕としにいく話   作:恋狸

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先生と、秘書と、先輩と

 宇宙さんは三つの顔を持っている。

 まずは歌の先生としての顔。知っての通り、レッスンを付けてくれた大恩ある先生として、私に振る舞った。

 

 二つ目は社長秘書としての姿。

 これはまあ……とある事情と予測によって分かった顔。

 謎の多い社長を支える唯一の秘書としての姿が気にならないわけではないけど、知る手段も特には無いから一旦置いておく。

 

 そして三つ目は『肥溜め』一期生、宇宙(そら)としての顔。

 ある意味私にとっては一番馴染みがある存在かもしれないね。前世から知っている顔だし。

 

 三つの顔を駆使しつつ、そこはかとなく存在を隠そうとしていた宇宙さんだけど、残念ながら私に全てがバレていたことによって観念したようだった。

 

「なんか平日に学校休むって罪悪感あるなぁ」

 

 実は給与が発生しているVTuberという仕事をしている以上、担任にだけ事情を伝えていたりする。

 幸いなことに担任がVTuberという業界に明るくないのもあって、身バレとかそういったものは気にしなくて良いけども、もしかしたら仕事で休むかも……みたいなことは事前に伝えていた。

 

 それもあって、今回の休みはすんなり取ることができた。

 

 ……うぅ、呼び出されはしたけど罪悪感があるなぁ……。

 ズル休み……ではないと思うケド。

 

 そんなことを考えながら私は事務所まで移動していた。

 

 少し緊張する。

 恐らくプロミネンスさんについて一番詳しいのは宇宙さんだ。関わりが無いように見えて、同期である以上は関わらなければいけないことは多くある。

 そして、宇宙さんはどこか救いを求めている気がする。

 プロミネンスさんを救ってくれる誰かを。

 

 それが私になれるかは分からない。

 私は自分が全員救うことができる、って大言壮語を実現できるほど過信してない。いや、できない。

 だからこそ宇宙さんの期待に応えられるかは分からない。

 

 でもさ、やりもしないで"できない"って言うのはまだ速いと思うんだ。

 過信はしない。けれど、やれることは全てやる。

 人に助けだって求める。それが幸せに繋がるなら。

 

 ──堕とすためなら。

 私はどこまでも貪欲になれるんだから。

 

☆☆☆

 

「──来ましたか」

「久しぶり……かな?」

 

 実際に対面して会うのは数ヶ月ぶりかな?

 【学力王決定戦】の打ち合わせで宇宙さんに会ったのはツナ&クラのペアだし。

 

 机に肘をついてゲ◯ドウポーズをしながら待っていた宇宙さんは、相変わらずスーツ姿にメガネとデキるキャリアウーマンみたいな格好をしていた。

 あとやっぱり怜悧な感じの美人だよねぇ。

 

「……何か邪な気配を感じますが」

「気の所為ダヨ」

「まあ、良いでしょう。で、ワタシに聞きたいことはなんですか?」

 

 時間が惜しいとばかりに早速本題に入る宇宙さん。

 実際秘書としての仕事を抜けてきてるっぽいし、時間は無さそうである。私は学校まで休んだのに。

 とはいえ、目的のためなら一日の休みくらい……って言えるほど楽観的にはなれないケド。

 

「……プロミネンスさんについて。デビュー当初、宇宙さんとは関わり合ったはずだよね。その時の様子とか知りたいんだ」

 

 同期というしがらみは絶対に発生する。

 挨拶を交わしたり、ある程度の情報共有だったり……などなど、コミュニケーションをする機会は必ずできると思う。

 

「……自信が無さげでした。徹頭徹尾、自分を蔑むような口調だったと思います。自分は"プロミネンス"というガワに入れるほど美しい魂をしていない、ですとか。どこか外面にも内面にもコンプレックスを抱いているような……」

「それは私も少し話して感じたことなんだよね。……ねえ宇宙さん知ってる? プロミネンスさんの配信ってコメント読みしないんだ」

 

 すると、宇宙さんは少しばかり驚いた表情で私を見ると、メガネをスチャッと直して言った。

 

「気づいていましたか。ワタシもソレに気づいたのはライバーとしてそれなりに経験を積んだ後でしたが……」

「うん。巧妙なのはリスナー視点だったら絶対に分からないこと。あまりにも反応が求められたモノすぎる」

「それは彼女の天性の才能であると思います。だからこそ、微妙な齟齬が生まれる」

 

 宇宙さんが私と同じ考えを抱いていたことに、少しばかりホッとする。予測の精度が高まるからだ。

 

「だからこそ私は、プロミネンスさんに自信を付けてもらう必要があると思う。自分はどれだけリスナーに愛されていて、どれだけ魅力があるのかを」

 

「──それができれば苦労はしませんが?」

 

 デスヨネー。

 なに言ってんだコイツ、と言わんばかりの宇宙さんの表情に、私は頭を抱えながらため息を吐いた。

 もう少し深掘りして聞く必要がある。

 

 

 

 




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