TS転生した私が所属するVTuber事務所のライバー全員を堕としにいく話   作:恋狸

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同期ゆえの歯がゆさ

「……ワタシとて、同期として試せることは試してきました。ワタシは彼女のことを応援していると、本心から言っても……おべっかと捉えられてしまいました」

「うん。私が考えてることなんて、宇宙さんはとっくに試したよね。どれだけ距離が離れてても大切な同期なんだから」

「……ええ。その通りです」

 

 私は知っている。

 宇宙さんの配信では時折、プロミネンスさんのことを気にかけたような発言を無意識的にしてしまっていることを。

 

 鉄の女と言われ、常に己を律し続けた彼女でも、プロミネンスさんは掛け替えのない大切の同期であることに違いはない。

 たとえ接点が無くても、このVTuber黎明期を一緒に駆け抜けてきた仲だ。同期として以上に、仲間意識のようなものが二人にはあるんじゃないかと私は思う。

 

 ……だからこそ、私が協力できることがあれば良いなって思う。

 余計なお世話かもしれない──あの時、クラちゃんに対して踏み込みすぎてしまったように。

 

 もしかしたら、かえって二人の溝を私が深めてしまうことになってしまうかもしれない。

 

 ──でもさ、ツナちゃんが言ってくれた。

 

『花依さんはお節介ですけど、それが花依さんじゃないですか! どこまでも世話焼きで優しくて、細かく人を見る。花依さんのお節介は嬉しいんです。優しいんです』

 

 私のお節介に救われたって言ってくれたんだ。

 悪い予想も、遠慮も今だけは捨ててしまえ。

 

「ねえ宇宙さん。一つ、策があるよ」

「……ワタシでは彼女を救うことはできませんでしたから。アナタならきっと……できるかもしれない」

 

 目を伏せて諦観を滲ませた声音の宇宙さん。

 私はそんな宇宙さんの元まで歩くと──覚悟を決めて彼女の顎をクイッと上げて無理やり視線を合わせる。

 

「な、にを……」

「私だけじゃ無理だよ。この策には宇宙さんの協力が必要不可欠なんだから」

 

 目を丸くする宇宙さんに、私はニヤリと不敵に笑って言い放った。

 

「──宇宙さんだけじゃできなかった。じゃあ二人でやろう! 一人じゃできなかったことでも、二人ならできる……綺麗事だけどさ、信じてみたくならない?」

「……っ、確かに、綺麗事ですね」

 

 宇宙さんが瞳を閉じる。

 綺麗事。そう、綺麗事だ。

 でもさ、世の中が幾ら苦しくて、辛いことに溢れているからこそ──吐く言葉くらいは綺麗でいたい。

 私はそう思う。

 

「……けれど、不思議とその綺麗事を体現し続けてきたアナタだからこそ、信じてみたくなる。……聞きましょう。アナタの策を」

「っ、宇宙さん!!」

「というわけでさっさとその手を離しなさい」

「あぅ」

 

 ペシッと顎に置いた手が弾かれて、私は一筋縄じゃいかないな〜と苦笑した。

 別に堕とすとかそういうことを考えた上での行動では無いから良いんだケド。

 

 ただまあ、少しは宇宙さんの曇っていた表情を晴らすことができたんじゃないかなとも思う。

 問題はここからだから、私が喜ぶには些か時期尚早というものだ。遠慮も予想も捨てて、油断も捨てないといけない。

 

「それで、策というのは」

 

 スチャっとメガネの位置を直し、すっかりデキるバリキャリウーマンモードに入った宇宙さんは、待ち切れない様子で話の続きを促した。

 

 自信満々に言っておいてアレだけど……正直言って策と言えるほどのものではない……かな。

 話を聞いているうちにパッと考えついたことで、恐らくは物理的に宇宙さんが試すには不可能だったことでもあると思う。

 

 ただプロミネンスさんの抱えている"過剰なほどの自己肯定感の欠如"を何とかするには、私はこれしか思いつかなかった。

 

「うん。まずは────」

 

☆☆☆

 

 ()を話し終え、長い沈黙が訪れる。

 目を閉じ顎に手を当て、私の話した内容を反芻しながら考え込む宇宙さんの脳内では忙しく思考を回しているのだろう。

 

 私も諦めることなく、より良い案を探りながら思考の海を泳ぐこと数十分。

 宇宙さんがパチリと目を開けると小さく頷いた。

 

「シンプルですが悪くない手だと思います。……ワタシも似たような手は思いつきましたが、時期もあって困難でした……今なら、もしや」

「うん。言った通り()()するのは私に任せて欲しい。最後の仕上げは宇宙さんに頼むことになるけど」

「もちろんです。これはワタシ自身のことにも関わりますから。……逃げてはいけない」

 

 自分に言い聞かせるように息を吐く宇宙さんの瞳には、大いなる覚悟が宿っているように見えた。

 同期として、仲間としての絆がプロミネンスさんにもあると信じて、私は私のやるべきことをやろうと思う。

 

 ……あまり時間はないけど、プロミネンスさんが学力王決定戦に出演する以上は会う機会だってある。

 距離を詰めるのは難しいかもしれないけど、会話の取っ掛かりとか仲良くなるヒントを見つけることはできると思うんだ。

 

 よし!!

 無事に宇宙さんの協力も取り付けることができたし、色々とやる気が出てきた!!

 

 

☆☆☆

 

『……花依さん。プロミネンスさんが、学力王決定戦の出演を辞退したいと連絡がありました』

 

「……そうですか」

 

 うまくいかないことなんて幾らでもある。

 私は諦めるつもりなんて一切ないんだから。

 

「プランBかな」

 

 

 

 

 

 

 




web更新を10ヶ月してないうちに、当作品のコミカライズがマンガUP!から始まり、コミカライズの1巻が発売し、小説版の4巻の製作が決まり……そしてつい先日4巻が発売しました。

……長い間本当にお待たせいたしました。
学力王決定戦編は終盤に向かいつつあります。
プロット自体もあるので、そこまで長くはお待たせせずに完結まで持っていくことができると思います。

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