TS転生した私が所属するVTuber事務所のライバー全員を堕としにいく話   作:恋狸

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手紙

Side プロミネンス

 

 まただ。また逃げてしまった。

 また人に迷惑をかけてしまった。期待を裏切った。信じてくれた人たちを信じきれなくて、どうしようもない黒い感情が湧き上がってしまって。

 

「ははっ……ははは……こんなことしてるから」

 

 ──誰からも好かれるわけがない。

 勿論、リスナーにも。

 

「いつからだっけ、コメントを非表示にしてるの」

 

 自分を変えたくてこのVTuber業界に入った。

 顔が、声が、性格が、何もかも全てコンプレックスだった私でも、バーチャル空間になら何かを見出せるような気がして。

 

 最初は良かった。

 私の一挙手一投足にリスナーは喜んでくれた。

 2Dアバターを動かす度に「かわいい」と褒めてくれて、話せば話すほどリスナーは「おもしろい」と「声がいい」と褒めてくれて、私は次第に失ったはずの自信を取り戻していた。

 

 けれど、いつの日か視界に映ったコメント。

 

・たまたま見たけど声ぶっさw

・叫んでるだけで金稼げて羨ましいw

・ガワが良ければ面白くなくても良いんだもんな

 

「……ッ、っは……はっ、はっ……」

 

 今思い出すだけでも過呼吸を起こしてしまう。

 ありふれたコメントだってことは内心じゃ分かっている。一々そんなものに反応することに意味は無いってことも分かってる。

 

 でも、どうしてもそんな心無いコメントが()()()のコンプレックスと重なってしまって。

 私はその日以降、コメントを見ることができなくなってしまった。

 

 皆褒めてくれていたけど……内心じゃあのコメントと同じようなことを思っているに決まっているんだ……と黒い感情が湧くようになってしまったがゆえに。

 

「こんなこと、良くない。変えたいって、ずっと思ってるのに」

 

 『学力王決定戦』ってイベントがあることをマネージャーから聞いた時、私はこれが変わるきっかけになるんじゃないかって思った。

 今までろくに表に出たことがない私が、箱内コラボに出ることで内気で陰気な自分を変えることができるんじゃないか──

 

 ──そんな、浅はかで、愚かなことを思ってしまったのだ。

 

 

 花依琥珀。

 後輩の彼女と顔合わせをした時、思ったよりグイグイ来てくれたお陰で何とか話すことができた。

 他人とまともなコミュニケーションを取ることができたのは実に数年ぶりだったと思う。

 

 顔を晒すことはできないからお気に入りの仮面を被って会話したけれど、私とは思えないほど密なコミュニケーションを取れた。

 

「なに、勘違いして……」

 

 だってそれはただ陽キャで優しい彼女が、私なんかの面倒を見てくれただけの話で、何も変わってなんかいない。

 

「でも良かった。私のコンプレックスであの優しい人を嫌わなくて良かった」

 

 ……あの人を自分と比べて嫌いになることはなかった。もしかしたら、それだけが救いだったかもしれない。

 

「VTuber、辞めるしかないのかな」

 

 逃げ続けた私に居場所なんてどこにもない。

 ずっと応援しているって言ってくれた()()も、こんな私を支えてくれたマネージャーも……後輩も全員裏切ってしまったんだ。

 

 もう涙はとうに枯れきってしまった。

 自嘲するように皮肉な笑みを浮かべた私は、薄暗い部屋の中で横たわる。

 

 泣き続けたことで体力が切れてしまった私はそのまま微睡みに任せて瞼を閉じた。

 

 

☆☆☆

 

「……ん、トイレ……」

 

 目が覚めると夜中の2時を指していた。

 たとえどれだけ寝たところで私の罪は消えない。

 心の奥でジクジクと痛みが広がっていく中で部屋の扉を開けた私は、足元に小さな紙が無造作に置かれていることに気がついた。

 

「なにこれ……」

 

 拾い上げてしげしげと眺めている私は、無意識的に封を開けて中身をあらためる。

 そして宛先を見て驚愕から後ずさってしまった。

 

「な、なんで……!?」

 

『プロミネンスさんへ』

 

 な、なんで私の名前が書かれてるの……!?

 家族にも言ったことないのに。誰にもバレないと思ってる活動してるのに……というか、なんでわざわざVTuberの名前で手紙を……?

 引きこもりの私に痺れを切らして「お前のしてることは分かってるんだぞ」みたいな脅しを……?

 

「……いや違う」

 

 筆跡が家族の誰とも照合しない。

 こんなに綺麗で読みやすい字は知らない。

 

 内心ビクビクしながら私は手紙を開いた。

 

 

『プロミネンスさんへ

 

 驚かれると思うから先に名乗ります。花依琥珀です。

 一度会ったことがあるライバーに住所がバレていることに恐怖を感じると思うので弁明しておくと、あなたの妹さんと同級生でして……とある推測であなたがプロミネンスさんであると行き着いたので手紙を書いてます。

 あ、妹さんには正体をバラしてないので、そこは安心して読み進めてくださいネ!』

 

「いや推測でそこまで行き着くの普通に恐怖なんだけど……」

 

 私はぶるりと身震いをした。

 ……す、すべてが寝耳に水すぎるよ……。

 

「でも……」

 

 ふと、思った。

 

 花依さんが私に文句を言うためにわざわざ手紙を書いたのではないか……そんな悪い想像が頭をよぎる。

 でも、文字からも逃げたら私は今度こそクズになってしまう、と意を決して続きを読み進めた。

 

『正直私はプロミネンスさんのことを良く知りません。どんな考え方をしているのか、どんな夢を持っているのか、私たちにどう思っているのか。

 身勝手な予想だとか予測はできますけど、それを本人に伝えるのは、それが合っていようと合っていなかろうと失礼だと思います。

 

 ですが、私は敢えてその失礼に飛び込もうと思います。怒ってこの手紙をぐちゃぐちゃに引き裂いて燃やしても構いませんが、せめて読み終わるまでは生意気な後輩の戯言だと受け止めてほしいです』

 

「そんな衝動的に物に当たることはしないよ……」

 

 何を言われるんだろう。

 嫌な予感がするけれど、花依さんの言葉は不思議と不快に思わない。幾重にも張り巡らされた私への配慮が原因なのだろうか。

 それでも読み進めないと何も始まらない。

 

『違和感を持ったのは、プロミネンスさんがコメント読みをしないことです。それ自体はライバーのスタンスによって稀にあることですが……何かしらはあるはずのコメントに対するレスポンスが無い、と私は気付きました』

 

「……っ」

 

 ヒヤリとした。

 それに気づかれないように、私はいつもハイテンションで高速な喋り方をしているというのに、花依さんは的確に私がコメントを見ていないことに気づいている。

 

『そして、またまた身勝手ながらプロミネンスさんの同期の宇宙さんに、あなたの印象を聞きました。探るような真似をして、一期生のお二人には失礼なことをしたと思います。

 ただ……お話を聞いて私は一つの失礼な予測をしました』

 

 心臓がばくばくと鼓動が速くなっていく。

 その先を言わないでくれと、私の心が叫んでいる。

 

『プロミネンスさんは──

 

 自己肯定感が鬼低い、と』

 

 

「いや合ってるけど言い方ァ……!!」

 

 

 思わぬ言い方に毒気を抜かれた私は、手紙を握りしめながら全力でツッコんだ。

 

 

 




皆様の応援のお陰で5巻の製作が決まりました。
まだV堕ちは続くらしいですヨ!!

4巻とコミカライズ1巻を購入して持してお待ちいただけたらと思います(強欲の化身) 

特にコミカライズはめちゃくちゃ出来が良くて、とても面白く仕上げていただいてるので、ぜひ応援いただけると嬉しいです!!

一応Amazonのリンク貼っておきます(チラッ
https://amzn.asia/d/0aZ2Prb9

誰推し?

  • 花依琥珀
  • 全智
  • ツナマヨ
  • クラシー
  • 川内絵里子
  • 佐々木(男なので投票しないでください)
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