Pokémon LEGENDS “雷”   作:Cr.M=かにかま

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3. VSシビルドン

 

 ポケモンバトル。

 今や世界的競技となった、ポケモンとトレーナーが心身を共にぶつかり合うもの。

 

 メインでぶつかり合うのはポケモンであるが、司令塔であるトレーナーはポケモンが上手く立ち回るように補助に徹する、これも重要な役割(ポジション)である。

 

 だからこそ、野生のポケモンとのバトルではトレーナーの有無というものが有利に働くことが多い。

 

「アチャモ、右気を付けて!」

「──ズボー!!」

 

 ──シビルドンの りゅうのはどう!

 

 しかし、油断大敵。

 厳しい環境で生まれ育ってきた野生のポケモン達は天性の勘や生存本能(バトルセンス)を備えている。

 つまるところ、トレーナーの力量と経験が試されてくる。

 

「でんこうせっか、で距離を詰めて!」

「カイリキー!援護、クロスチョップ!」

 

 青と黒の混ざった螺旋状の攻撃を避け、距離を詰める。

 シビルドンの使った技で確認できたのは、でんげきは、りゅうのはどう、でんじほうの三つ。

 博士曰く、ポケモンは技を四つ覚えるのが限界だそうだ。

 

 正確には、きっちりとしたパフォーマンスと効果を発揮せずに瞬発的な発動にならなければ、四つ以上の獲得も可能らしいが、ポケモンにとってもよくないことらしい。

 あと一つ、まだ見せてない手札がある。

 

(アチャモの使える技は、なきごえ、スパーク、でんこうせっか、でんげきくちばしの四つ。同じでんきタイプの技を当てるよりも、でんこうせっかで攻めた方が、いいの、かな?)

 

 考え得る限り、ソラノも攻略の糸口を探る。

 ソラノはまだよくわかってないが、ポケモンにはレベルというものがある。

 いわゆるバトルレベルとも言われる、ポケモンバトルの強さを指標とするものだ。

 レベルが高ければ高いほど、ステータスも上がり、バトルで有利に働く。

 

 だからこそ、イナビカリ博士はアチャモとシビルドンのレベル差も然り、カイリキーを含めても厳しくなることは予想していた。

 若人の背中を押す、それだけでイナビカリ博士は無茶を通すほど、馬鹿ではない。

 

(鍵となるのは、アチャモの特性がひらいしんだったこと!シビルドンのでんき技を防ぐことができるのは、正直大きい、私のカイリキーで上手く立ち回れば撃退、いや、生態系保護のこともある。ここで、モンスターボールで捕まえてしまうのが理想だ!)

 

 東部(アリウル)から西部(へリアス)にやって来た、というだけでも大問題である。

 環境の過酷さで考えても、東部(アリウル)のポケモン達がレベルも高い。

 

「カイリキー、グロウパンチ!」

 

 四本腕が繰り出すパンチは確実にシビルドンの身体を殴打する。

 ぬめぬめした体表が物理攻撃を受け流す。

 

(それにしても、あのシビルドン──)

 

 シビルドンは本来攻撃力の優れたポケモンである。

 ぬめぬめした体表と特性であるふゆうで防御面でも強い傾向にある。

 そんなシビルドンに対して、目の前のシビルドンは違和感がある。

 

 ──傷が多い。

 

(……覚えてる技もわざマシンで覚えるようなものが混じってるのも気になる、本当にこのシビルドンは野生なのか?)

 

 何かから逃げてきた?

 元々は誰かのポケモンだった?

 ここに来る前に一戦してきたのか?

 

「博士、お願い、します!アチャモ、でんげきくちばし!」

「──っと、ごめんね!カイリキー、シビルドンの動きを止めて!」

 

 自身の身長大ほどあるシビルドンの身体をカイリキーが四つ腕を器用に間接技で動きを止める。

 その隙にアチャモがでんげきくちばしを、刺す!

 

 本来ならば、カイリキーが攻撃した方がダメージは大きいのだが、アチャモの小さな身体ではシビルドンを止める術がない。

 打点は低いが、確実な方法でシビルドンを弱らせる。

 

 ──カッ、と突如としてシビルドンの身体が淡いものから激しい薄紫色に光り出す。

 

「あれは、まずい!カイリキー、まも」

 

 ──シビルドンの めざめるパワー!

 

 光は弾丸となり、四方八方に飛び散る。

 至近距離で光を受けたカイリキーの防御が間に合わず、そのまま戦闘不能となってしまう。

 漏れ出した光にアチャモも被弾してしまう。

 

「アチャモ!?」

「今のは、めざめるパワーか!」

 

 めざめるパワー。

 ポケモンの覚える技の中でも特殊な技の一つで、個体の持つ潜在エネルギーを放出させるというもの。

 特殊と呼ばれる所以、それは個体によって技のタイプが違うことである。

 種族によるタイプの違いにならず、そのポケモン一体一体のタイプが変わる技である。

 

(カイリキーがダウンしたってことは、弱点のひこうタイプかエスパータイプの可能性が高い……!)

 

 しかし、めざめるパワーは野生のポケモンが独自に覚える例は、少ない。

 わざマシンで獲得するのが一般的である。

 

(これは──)

「博士……」

 

 勝機が遠退く。

 

「──アチャモ!」

 

 それでも──

 

「──でんこうせっか!!」

 

 少女は、諦めない(立ち向かう)

 

「……いいね、そういうの!」

 

 ブロロロームが速度を上げる。

 シビルドンがめざめるパワーのエネルギー弾を四方八方へ飛ばす。

 アチャモがでんこうせっかで撹乱し、エネルギー弾を避け続ける。

 ソラノに鼓舞され立ち上がったカイリキーはシビルドンに向かって走り出す、相性不利のエネルギー弾が当たり続けるが、止まらない。

 

 ──カイリキーの きしかいせい!

 

「ズボボ!?」

 

 きしかいせいは残りHPが少ないほど威力が大きくなる技である。

 戦闘が長引けば長引くほど有利、かつ、相手の攻撃が強ければ強いほど逆転の一撃と化す。

 グロウパンチで攻撃力を上げ続けたのも、イナビカリ博士の布石である。

 

「今だ、ソラノちゃん!アチャモ!」

「わかりました、アチャモ!でんこうせっかで助走をつけて、でんげきくちばし!」

 

 怯んだシビルドンに電光石火の如く、雛鳥が駆け抜ける。

 嘴に電撃の力を込めて、その姿まさに雷鳴の矢の如し。

 

 小さな身体はシビルドンの肉体に突き刺さる。

 

「カイリキー!アチャモを連れて、撤収するよ!」

 

 カイリキーに指示を出して、すかさずモンスターボールを構える。

 五十肩に耐えつつ、回転するモンスターボールは弧を描きながら弱ったシビルドンに直撃する

 

 成す術なくして、シビルドンは赤い光に包まれモンスターボールに吸い込まれる。

 

 ──カチリ、とモンスターボールが音を立てる。

 おめでとう!シビルドンをつかまえた!

 

「わわ、やった……!」

「これで一件落着、だね」

 

 どっこいしょ、と重い腰を上げたイナビカリ博士がシビルドンの入ったボールを回収に向かう。

 

「……おや?」

 

 ボールの隣に何か光る物体を見つける。

 物体、と呼ぶには少し不安定で不形のものだ。

 まるで、この世のものではないようにも感じる。

 手にしてみたところ、質量はある。

 

 イナビカリ博士が不思議に首をかしげながら観察していると、追いかけてきたソラノが謎の物体を目にしてポツリと呟く。

 

「──美味しそう」

「……まじ?」

 

 耳を疑った。

 しかし、聴き間違いではなさそうだ。

 確認のためにイナビカリ博士がソラノに訪ねる。

 

「……食べるかい?」

「うん」

「マヨネーズとか、かける?」

「生でいい」

「そ、そっか」

 

 ソラノにとって、それは誘惑。

 そして──

 

 ──。

 

「君、だったのか」

 

 ソラノが聴いてきた、声の主。

 まさか、美味しそうという感覚になるなんて思わなかったが、実際に美味しそうなのだから仕方ない。

 アチャモまで怪訝そうな目を向けてくる、ソラノの味方はいなかった。

 

「いただきます」

 

 ──口に入れた瞬間広がるのは、さっぱりとした酸味。

 弱炭酸のような衝撃から柔らかな甘味が後味を演出する。

 そして、そこから溢れるのは、記憶。

 

「──そっか」

 

 思い出した。

 ソラノが空から降ってきた理由。

 

「ボクは、あそこからやってきたんだ」

 

 見上げるは青い空の、その先。

 

「ソラノちゃん……?」

「博士、ボクはあそこからここに来たんだ、思い出したんだ」

「……どこ」

「えと、上手く言えないんだけど、真っ暗で、キラキラしてて、空のもっと、もっと上……!」

「何を、言ってるんだい……?」

 

 ソラノの言っていることは理解できた、しかし納得することができない。

 認められないのだ、そんなことあるはずないと頭の中の常識がそれを否定する。

 

「──君は、宇宙から来たとでも言うのかい!?」

 

 

 ※

 

 ヒゴサ地帯、から少し離れた場所。

 夜に似た蒼い髪の青年と二足歩行のポケモンが一幕を鑑賞していた。

 

「見つけた」

 

 うず。

 

「また、会えるね」

 

 うず。

 

「お兄ちゃんは嬉しいよ、ソラノ」

 

 うずうず。

 

「──僕も、ポケモントレーナーになったんよ。同じ道を進むことになるなんて、やっぱり兄妹だなぁ」

 

 うずうずうず。

 

「待つなんて、できない!待っててね、ソラノ、すぐに迎えに行くからねぇ!」




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