NPC好きプレイヤーが往くシャングリラ・フロンティア 作:名無しの葦名衆
「いやぁ……プロローグもすげぇや。ちゃんとSFっぽさを残しながらファンタジー要素を入れられるようにしてる……」
プロローグを最後まで読んだが、言葉通りの感想だ。
世界設定も元々宇宙を旅する船団が新人類を残して滅亡し、俺たちプレイヤーはその数千年後を舞台に生きていくようだ。
そんなことを考えていると身体の感覚を感じるようになった。
その感覚を味わいながらゆっくりと目を開けると……
目に映ったのは、露店が沢山並ぶ街並みだった。
「ここが、ファステイアか……」
初期スポーン場所になっているおかげか、周りを見ると俺と同じような初心者が多いな。こういうのを見ると改めて始まったんだなぁって感じるな。ここの街に多く見られる木造建築も雰囲気を出してくれている。ザ・旅立ちの街だ。
「一応ステータス確認しておくか」
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PN:ローン
LV:1
JOB:傭兵(弓使い)
3,000マーニ
HP(体力):20
MP(魔力):10
STM (スタミナ):20
STR(筋力):10
DEX(器用):20
AGI(敏捷):20
TEC(技量):20
VIT(耐久力):10
LUC(幸運):10
スキル
・トゥルーエイム
・ラピッドショット
装備
右:狩人の弓
左:なし
頭:狩人の帽子
胴:狩人の衣
腰:狩人のベルト
足:狩人のブーツ
アクセサリー:無し
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特に凝った名前でもなくデバフもバフもない、よくある普通の初期装備だ。ステータスの方も若干後衛で戦う前提なのかHPがスタミナと同値でその分器用、敏捷、技量に振られているな。基本的には避けながら弓で狙う戦法になりそうだ。
「さて、ステータス確認したし次はリスポーン場所の決定だ。確か宿屋がそうだって書いてたな」
シャンフロでは宿屋で寝ることでリスポーン地点を更新し、戦闘でHPが0になった場合はその地点から復活するようになるらしい。さっさと行こうか。
宿屋と書かれた看板の先にある建物の扉をゆっくりと開くと、受付なのか店主なのか、大柄な男性が扉を開けた俺に声をかけてくる。
「お、宿を使いに来たか?」
「あぁ、そのつもりだが。空いてるか?」
「ちょいと待てな……。101、202、303号室なら空いてるぜ。どれにする」
「なら101号室を頼む」
「おう。料金はこんくらいだ、鍵はこれを使え」
うおぉ……普通に会話してやがる。他のゲームのNPCと文字通り桁が違うな。中身入ってるんじゃねぇかってくらいだ。
料金を支払い、店主から鍵を受け取る。そしてそのまま部屋へと向かいベッドに寝ることでリスポーン地点を更新する。ついでに店主から依頼……『クエスト』を受けられるか聞いてみるか。
「依頼だ?」
「そうそう依頼。何かないか?」
部屋から出て暇そうにしていた店主に声をかける。俺の質問にう~んと唸った店主は、何かを思い出したのか口を開く。
「そういえば、道具屋の姉ちゃんが薬草を、鍛冶屋のおっさんが石を欲しがってたな」
「二人の場所は?」
「場所は……こことここだ。依頼を受けるときは俺からの紹介と言え。そうすればあいつらも分かってくれるはずだ」
俺が出した地図に印を付けながら店主は教えてくれる。二つの場所もそこまで遠くはなく、直ぐに探索エリアに向かえそうだ
「助かった。もし他の人が困ってそうなら俺を紹介してくれ」
「いいぜ。知り合いにも声をかけておく。……そういや名前聞いてねぇな」
そうだった。紹介しようにも名前がわかんねぇと意味ねぇじゃねぇか。
「ローンだ。今後もよろしくな」
「おう、外に出るときは気を付けろよ」
店主と会話を終え、俺は宿屋を出ることにした。
「あら、宿屋のおじさんから聞いてるわよ。お手伝いしてくれるんでしょ?」
「あいつから話は聞いてるぞ。悪いがこいつを何個か持ってきてくれ。掘る道具がねぇってんならこいつを使え」
「おう! 集め終わったら戻るからよ!!」
『クエストを受諾しました』
地図に記された二人の場所に向かい、無事
「場所としては……『跳梁跋扈の森』か」
となるとこの先を抜けると『セカンディル』があるはずだ。このまま向かっても良いが、出身『在野の雄』の為にも、二人から依頼されたクエストを完了する方が大事だ。街にはいつでも行けるが、あの人達との繋がりは今しか出来ないことかもしれないからな。
「さてと、一応改めて依頼を確認するか」
道具屋の姉さんからは薬草を5個。鍛冶屋のおじさんからは鉱石を5個頼まれている。依頼アイテム自体もこのエリアではよく採れるらしいから直ぐに集まるだろう。
そうこう思ってたら早速薬草一つ目だ。ちゃっちゃと集めて……。
「ゲギャギャ!!」
「あぶな!」
薬草を拾うと屈んだ瞬間を狙うかのように、頭上から斧が振り下ろされる。
声で何とか察知することが出来たので、急いで頭を動かすことによってかち割られる寸前で回避する。
栄えあるシャンフロの初戦闘の相手。ファンタジーといったらこいつが最初に名前が上がってもおかしくはない。
緑肌で醜悪な見た目のあいつは……!
「やってやろうじゃねぇか! ゴブリンよ!!」
「ギャギャギャギャ!!」
小さめで人型のモンスターは、この手のゲームではよく出現する。そして自分が弱いということをしっかりと理解し、待ち伏せ、複数人、トラップ等様々な手を使う。その精神には敵ながらも見習いたいものだ。
「ま、初撃で決められなかった自分を恨むんだな!!」
「ギャッ!?」
再び接近して攻撃してくるのを後ろにジャンプしながら弓に矢を番え、引き絞って放つ。大振りで隙が出来ているゴブリンは避ける暇もなく矢が脳天に突き刺さる。
『CRITICAL!』という文字と軽快な音とともにHPが0になったゴブリンはポリゴンとなって分解され消滅した。
リアリティが増えた結果、ただ殴ったり矢を当ててもダメージが出ないのが今時のフルダイブアクションゲームだ。勿論ピンキリがあるが、このシャンフロではしっかりと作りこまれている。血の代わりに赤色のポリゴンが吹き出している。ここら辺がリアルすぎて犯罪沙汰になったとか。
「さてと、ドロップドロップ~」
基本的には全てポリゴンになって消滅する、逆に言えばそこに残ればドロップアイテムというわけだ。
俺は木の棒に石を蔦紐で巻き付けただけの斧を拾う。すると分解されてインベントリへ収納される。
「『ゴブリンの手斧』ねぇ……」
二刀流対応か。けど今回は弓とか遠距離のメインでやろうと考えてるんだよなぁ。銃とかあればいいんだろうけど、多分世界観的にもなさそうなのが残念だ。
「さて、まだ時間も昼時だ。依頼品集めながら探索でもするか!」
何時間が経過したのだろうか。昇っていた太陽が沈み月が顔を出し、小鳥の囀りは消え梟の声が響く。
そんな夜の獣道を俺はこの時のために買っておいた松明を片手に歩みを進める。
依頼品は必要数全部回収済みだ。なのに何故戻っていないかというと……
「マップ探索によるレアなアイテムの発見、うまくいけば夜限定ボスに会えるかもなぁ……!」
まぁこういうことだ。実際に夜だと強い奴らが沢山いた。ゴブリンでも昼間のより数倍強かったからな。
ちなみに限定ボスとかの方は俺の勘だ。こういうゲームであればない方がおかしいという考えだ。ま、そういう奴は大体出現確率も低いんだがな。
下心丸出しな発言をしながら自分の腰まで伸びている草をゆっくりと踏みしめ、奥へと進む。
進んでしばらくすると、正面から草むらが動く音が聞こえた。
俺が敵と警戒して弓を構える前に、そいつは姿を現した。
「馬?」
そう、モンスターかと思ったのだが現れたのは一頭の馬だった。それだけなら特に驚きはしなかったんだが
「こいつ、身体が透けてる……」
てっきり野生の動物かと思ったのだが、背中にサドルがついている。どうやら誰かの馬らしい。
じっと馬を眺めていると、ぶるるんと鼻を鳴らし俺に背を向けて歩き出した。
ついてこいっつてんのか?
「ついて行ってみるか」
今のところ敵対する気はなさそうだし、どこかに連れて行ってくれるなら大人しくついて行くことに決めた。
幻影の馬に誘われてやってきたのは木造の一軒家だった。
割と年季が入っているのか、随分とボロボロになっている。
「ここに俺を連れてきて一体何をしたいんだ?」
俺を連れてきた馬に尋ねると、またしても付いてこいと言うかのようなモーションをして家の中へと入っていく。当たり前のように閉じている扉を貫通して入ったので後に続くために扉を開けて入る。
「おいおい、ちょっと待ってくれよ」
家の中に入った後も付いてこれるだろ? と言わんばかりに俺のことを見ずに先へと進んでいく。
壁や扉を当たり前のように貫通するから、付いていくのにも一苦労するぜ。
そうやって
「あ? この部屋に入れってか?」
ここに辿り着いてから執拗に俺の背中を自分の鼻で押してくる。
行けって行ってるなら行くしかねぇな。
「お邪魔しまーす」
中に入ると家具等は全くなく、あったのは壁に掛けられている額縁だけだった。
しかも何かが飾られているようで、遠くからだとギリギリ見える。どうやらリボルバーのようだ。
てっきり世界観的にも銃はないと思っていたが、どっかのNPCの遺品か?
「あいつに連れられてここまで来たんだから、貰ってもいいってことか……?」
俺は、綺麗に飾られていたリボルバーに手を伸ばし触れた。
その瞬間、突如砂嵐が起こる。
「なっ!?」
いきなりの出来事にエネミーの出現かと身構えるが直ぐに砂嵐は止み、視界が開ける。
そして……
「よぉ、待ってたぜ?」
「……は?」
突如として目の前に現れたカウボーイ風の男の言葉に、俺は返事と言ってもよいのか分からない単語しか返すことが出来なかった。
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