白銀の復讐者   作:炎狼

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第十三話

 ナイトレイドの修練場にはアカメとリヒトの姿があった。彼らは木刀で修練の真っ最中だ。剣戟によって木刀同士が激しくぶつかり合う音が響く。

 

 すると、アカメが鋭い突きを放ってきた。

 

「フッ!」

 

「なんのッ!!」

 

 少しだけ服を掠めながらもそれを避けきると、今度はリヒトが胴を狙った横一閃を振り抜く。空気を切りながら振られた木刀は的確にアカメを捉えていたが、木刀はアカメにあたることなく空を斬った。

 

 見ると、アカメは空中に飛び上がっておりそのまま身体を一回転させ、こちらに向かって木刀を振り下ろしてきていた。

 

 リヒトも瞬時に反応すると木刀を横に構えてアカメの一撃を防御する。

 

 無言で振り下ろされた一撃だが、彼女の全体重を乗せた重い一撃に顔をしかめる。振り下ろしの衝撃が身体を伝って地面に伝わり、その場が足の形にメコッと凹んだ。

 

 同時に彼の身体も一瞬沈みかけるが、リヒトは腕の力でアカメを振りほどく。

 

「うぉらッ!!」

 

「ッ!」

 

 アカメは少しだけ驚いた表情をしたが、小さく笑みを浮かべて空中で身を翻して着地する。

 

 何人も着地した時は一瞬からだが硬直するものである。そこを狙ってリヒトは地を蹴り一気にアカメの懐に潜り込んで木刀の刃を上に立て斬り上げる。

 

 鋭く振り上げられた木刀はアカメの顎先を狙っていたが、アカメはバク転をしてそれを避けきる。

 

「チッ!」

 

 軽めの舌打ちの後、更に追撃をしようと距離をつめたが、そこで第三者の声が割って入った。

 

「おい、アカメにリヒト。ボスがこれからタツミにザンクから奪った帝具が適合するかどうかやってみるから会議室に来いってよ」

 

 声のするほうを見ると、リーゼントのハンサム、ブラートがいた。その声に頷くと、二人はブラートと共に会議室へ向かう。

 

 その道中、リヒトは思いだしたように声を上げる。

 

「そういや今のタツミの教育係はシェーレだったか」

 

「ああ」

 

「……シェーレで大丈夫なのか?」

 

「問題ないだろう。シェーレは家事全般は出来ないが、戦闘はずば抜けているしな」

 

「そういうもんかね」

 

 軽く息をつきながら三人は作戦会議室へと向かった。

 

 

 

 

 会議室には既にメンバーが揃っていた。

 

「全員揃ったな。……ではタツミ、お前の傷も癒えたことだしザンクから奪取したこの帝具をつけてみろ」

 

「お、おう!」

 

 若干緊張した面持ちでタツミがスペクテッドを手にとって額につける。

 

 するとアカメがタツミに告げる。

 

「確か心を見る能力があったろう。私の心を見てみろ」

 

「アカメの心は……夜に肉を食いたいと思っている」

 

「完璧だな!」

 

「それはいつものことでしょーが!」

 

 恐らくタツミもアカメの好物を大体把握してきたのだろう。

 

「まぁ残念なことに今日は魚料理だけどな」

 

「なん……だと……!?」

 

 リヒトの言葉にアカメがその場にガクリと膝をついた。まぁ昨日も一昨日も肉だったのだから魚も必要である。実際魚肉も肉が入っているから肉には変わりはないのだが。

 

「今日の夕飯の話は置いといて、心を見られるのは流石に嫌だからもっと別のを試してみなさいよ」

 

「わかったよ……」

 

 タツミは言うと目をつぶって精神を集中させにかかったようだ。少しするとスペクテッドの瞳が開き、力を発現した様だ。しかしタツミが女性陣を見て驚いているのはどうしたことだろう。

 

「……あぁ、なるほど」

 

「ん? どうかしたの?」

 

 ラバックが問うて来るとリヒトは肩をすくめがちに答えた。

 

「五視の中には確か透視もあった気がしてな、多分今のタツミはアカメ達の下着が見えてんじゃねーのかなって思ってよ」

 

「マジでッ!? すっげーうらやましいんだけど!!」

 

「欲望に忠実だねお前は……」

 

 興奮した面持ちでいるラバックに溜息を送りつつ、タツミを見ると突然彼の頭から少量の血しぶきが飛び出した。

 

 一瞬それに皆が驚くがリヒトがすぐに告げた。

 

「拒絶反応か、アカメ外してやれ」

 

「ああ」

 

 リヒトに言われてアカメがタツミからスペクテッドを引っぺがした。タツミは突然起こったことに目を白黒させていたが、そこでナジェンダが静かに告げた。

 

「相性が悪かったようだな。スペクテッドがお前には合わなかったのさ」

 

「どうせだっさい外見だなーとか思ってたんでしょ」

 

「それと相性が関係してくるのか!?」

 

「ああ、帝具との相性は基本的に第一印象で決まるからな。最初に抱いた感情が「かっこいい」とかそういうのだったら相性がいいって感じだ。オレのヨルムンガンドもそうだったしな」

 

 ジャラッと音をさせてヨルムンガンドを見せると、タツミも納得したのか頷いていた。

 

「いいか、タツミ。私たちは殺し屋チームだが、今回のように帝具集めもサブミッションなんだ。ザンクのような帝具使いとの戦闘では一番いいのは相手の帝具を奪取すること。最低でも破壊がミッションだ」

 

「帝国に渡さないためか」

 

「そういうことだ。とりあえずこの文献でも読んでおけ、帝具のことについて書かれている」

 

 ナジェンダが言いながら文献を放り投げた。それを受け取ったタツミは早速本を開く。

 

「結構あるけど……これで一部なのか?」

 

「そうだ。出来ればその本に書いてある帝具の情報だけでも頭に入れておけ」

 

「わかった……でもさ、ボス。一番強い帝具ってなんなんだ?」

 

「……相性や用途で変わってくるが……強いてあげるなら“氷を操る帝具”だと思う。リヒトから聞いた話だと名前はデモンズエキスだったか。まぁ幸い使用者は北の異民族征伐に向かっているがな」

 

 眼帯を抑えながら言うナジェンダはこちらを見ながら言ってくる。タツミもそれにつられてこちらを見やってくるが、リヒトは静かに頷き、脳裏に一人の女を浮かび上がらせる。

 

 ……エスデス……。

 

 一度話した程度だが、彼女の威圧感は忘れもしない。帝具と同じくまさしく氷の女と言った感じだった。

 

 ふとそこでタツミが笑みを零して笑い始めた。

 

「フッフッフ、強敵上等! どんどん帝具を集めようぜ」

 

「随分とご機嫌だなー、いきなりどーした?」

 

 彼の言動を不審に思ったレオーネが聞くと、タツミは皆のほうを向きながら笑みを崩さずに告げた。

 

「帝具ってのはまだまだ未知の能力を秘めてる奴もあるかもしれないんだろ? そこで俺はピンと来たんだよ。

 これだけの力がある帝具ならさ、もしかしたらだけど……死者を生き返らせる帝具だってあるだろ!

 そしたらさ、サヨとイエヤスだって生き返るかもしれねぇだろ? だからオレは帝具を集め――」

 

「――ねぇよ」

 

 タツミの発言をそこで終わりにさせたのはブラートだった。見ると彼以外の全員が顔を伏せており、目の色が見えないようにしている。

 

「帝具であろうと死んだものは生き返らねぇ。命は一つだけだ」

 

「で、でも! そんなの探してみなくちゃわからねぇじゃねぇかよ!!」

 

 悲しい声を上げるタツミ。しかし、誰もそれに首を縦に振る事はなかった。無論リヒトも同じだが、彼はタツミがそう望むことも仕方がないと思っていた。

 

 けれど、一見非情とも思える言葉がアカメから発せられる。

 

「タツミ、始皇帝のことを考えてみろ。もしそんな帝具があるのなら、彼はまだ生きているはずだ」

 

「不老不死の力を得る帝具がなかったから死んだ……ようはそういうことだ」

 

 二人の声にタツミは顔を伏せる。

 

「あきらめろ、でないとその心の隙を敵に利用されて……お前が死んでしまうぞ、タツミ」

 

 アカメの声を最後にタツミは最後まで声を発することがなく、夕食にも現れる事はなかった。

 

 そんな夕食時、リヒトはブラートとアカメに告げる。

 

「もうすこし優しく言ってやってもよかったんじゃねぇの?」

 

「いいや、アレぐらい言ってやったほうがいい」

 

「ああ。変な希望を持たせてやるよりは、スッパリ忘れちまったほうがいいからな」

 

「そういうもんかねぇ。……でもさ、オレ、アイツの気持ちわかっちまうんだよ。オレも初めてコイツを手に入れたときは、もしかしたらって思ってた」

 

 ヨルムンガンドをテーブルの上においたリヒトの声に、ナジェンダが驚いた様子を見せる。

 

「お前はそういうのはないと思っていたから意外だな」

 

「そうか? でもさ、一度は思っちまうよなぁこんな常識離れした兵器を目の当たりにすれば、『死者も生き返る』ってよ」

 

 天井を仰ぎ見て言うと、アカメが袖口を引いて問うてきた。

 

「今はそういう事は思っていないだろう?」

 

 恐らくこちらを心配して聞いているのだろう。それに対してリヒトは口角を上げて言う。

 

「ああ。帝具を手に入れて半月でそんな甘い考えは捨てたさ。さっきお前やブラートが言ったみたいに、そんなもんがあれば始皇帝はまだ生きているだろうしな」

 

「そうか」

 

 少しだけ安堵したようにアカメが息をついた。

 

「まぁタツミもきっと理解はしているだろう。……ごちそうさま、今日も美味かったぞリヒト」

 

「はい、お粗末さんでした」

 

 ナジェンダが言って席を立ち、それにつられるように他のメンバーも食事を終えて各々の部屋で戻っていった。

 

 それからしばらく経って深夜……。

 

 リヒトはまだ部屋には戻らず、食堂でグラスに酒を注いで煽っていた。去年あたりから飲み始めた酒は、最初は不味いと思っていたのだが、飲みなれてくると美味いと感じるものだった。

 

「この酒……あたりだな。あとでレオーネにでも買ってきてもらうか」

 

 思いつつ呟いていると、食堂の入り口からシェーレがひょっこりと顔を出した。

 

「まだ起きていたんですか、リヒト」

 

「ああ、オレは炊事係だからな。それにまだ一人、メシを食ってない奴がそこにいることだし」

 

 首を傾けてシェーレの後ろを見やると、タツミがいた。彼は何か言いたげだったが、リヒトは調理台に立って夕食のスープを温めてから彼の前に出してやる。

 

「食えよ。メシ食ってなくちゃ明日の訓練も耐えられないぜ?」

 

「あ、あぁ……」

 

 タツミは答えるとスープを口にし始め、リヒトも次の料理を暖め始めた。

 

「タツミ、どうせシェーレに慰められたんだろうからたいした事はいわねーけどよ。お前が思った事は恥ずかしいことでも悪いことでもない。だから気にすんな。

 アカメやブラートもお前を心配して言ってくれたわけだからな」

 

「……ありがとう、リヒト」

 

「いいさ」

 

 それ以降話す事はなかったが、タツミは幾分か気が楽になったようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 北の異民族が住まう要塞都市。

 

 多くの人々が住んでいたこの都市だが、今は人は皆凍りつき、中には半裸にされた状態で槍に串刺しにされ、物を言わぬ骸とかしている者が整然と並んでいた。

 

 その異様な光景の中で一人の女が冷たい椅子に座った状態で鎖を引っ張った。鎖の先を見ると、半裸にされ四つん這いの状態の青年の姿があった。

 

 彼は首輪をされているのにも関わらず、女のブーツを嬉しそうに舐めている。

 

 青年の名はヌマ・セイカ。以前は北の勇者という称号と共に帝国と戦ってきた英傑だ。しかし、今はそんな威厳は見る影もなく、その双眸には歪んでしまった精神と狂わされた光が浮かんでいた。

 

 すると、一人の帝国軍の兵士と思われる男が椅子に座る女に声をかけた。

 

「北の異民族を瞬く間に討伐、さすがです将軍!」

 

 彼の頬には僅かながら汗が浮かんでいた。恐らく彼自身も目の前の女が怖いのだろう。

 

 しかし、女は答えずにヌマ・セイカを絶対零度の視線で見据える。

 

「民も兵もみな殺され、誇りも砕かれてついに壊れたか……これが北の勇者とはな。興醒めもいいところだ。

 ……もういい、つまらんから死ね。犬」

 

 冷たく言い放つと、女は鋭い蹴りを放ち、ヌマ・セイカの首をへし折った。

 

「やれやれ、どこかに私を私を満足させてくれるような者はいないものか……」

 

 ……そう、二年前に会った新兵。リヒトのように。

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 妙な悪寒と共にリヒトは飛び起きた。

 

 身体を触ってみると、寝間着は冷や汗で少しだけ濡れていた。

 

「……まさか」

 

 なにかを思いいたったのか、リヒトは少しだけ乱れていた呼吸を落ち着かせる。そして窓際まで行くと恐らくこの悪寒の元凶であるものの名を口にした。

 

「来るか……エスデス……ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タツミとスペクテッドの相性確認がされてから数日後たったある日の深夜。大人組は食堂で酒を飲んでいた。

 

「プハーッ! あー酒が美味い!」

 

「飲みすぎんなよレオーネ、明日任務だぞ」

 

「わーってるって、それに明日はタツミに加えてリヒトも一緒に行くからダイジョーブだろー」

 

 ジョッキを煽っていう彼女に若干呆れ気味になりながらもリヒトは自身のグラスを傾けた。

 

 今この場にいるのは二十代を越えた者達、ナジェンダ、ブラート、レオーネ、シェーレ、リヒトの五人だ。彼等はたまに集まってこうやって飲み交わしている。

 

 今夜は今日、レオーネがタツミと共に帝都に行った時に買ってきた酒を飲んでいる最中だ。

 

「ところでブラート、最近タツミを鍛えてやってるみたいだけどどんな感じだ?」

 

「ん? まぁタツミはまだ青いがありゃあマジで強くなるぜ。厳しく鍛えてやればそれこそ俺を超える逸材になるかもしれねぇからな。楽しみだぜ」

 

「へぇ……ブラートが言うならそうなのかもな」

 

「因みに言っておくとお前もだぜ。リヒト」

 

「オレもか?」

 

 問い返すとブラートは静かに頷いた。そして彼はそのまま告げる。

 

「俺はなリヒト、お前がいざって時に皆を引っ張っていける存在だと思ってるんだぜ?」

 

「皆を引っ張っていけるって言ったってボスがいるだろ」

 

 ナジェンダのほうを見ながら言うと、ブラートは首を横に振った。

 

「そういう意味じゃなくて、俺の代わりとしてだ。俺に何かあったとき兄貴のようにいけるって話さ」

 

「オレが兄貴ねぇ……まぁそんなことは当分おこらねぇと思うぜ。ブラートが死ぬことなんて想像できねぇしな」

 

「ハハ、それは俺もだ。まだまだ死ぬなんておもわねぇよ」

 

 二人は笑い合っていたが、それをはたから見ていた女性陣がコソコソと話をしていた。

 

「……やっぱりあの二人って本当は出来てるだろ」

 

「……そうなんですか?」

 

「……なるほど、リヒトは所謂ツンデレというやつだな?」

 

 妙な談義をしていた三人だったが、リヒトとブラートはそれには気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 翌日の夜。

 

 帝都の色町の屋根の上にはリヒト、レオーネ、タツミの姿があった。

 

「ここが帝都の色町か……なんかドキドキするな」

 

「初々しいねぇ」

 

「ああ、そのストレートな反応お姉さん的にはポイント高いぞ」

 

 肩を竦めるリヒトと軽くウインクをしたレオーネにタツミは少しだけ唇を尖らした。

 

 すると、彼の肩にリヒトが腕を乗せる。

 

「まぁ革命が終わったらラバック共々つれてきてやっから」

 

「リヒトは来たことあんのか!?」

 

「まぁ軍にいたときに先輩に連れてこられてな。十七くらいだったかな」

 

「マジかよ……」

 

「はいはい、その話は後にしてさっさとお仕事するぞー。借金返さないと」

 

 レオーネは言うと同時にライオネルを展開。髪は鬣のように伸び、頭には獣の耳がピョコンと立ち、腕や足も獣のそれに変化する。

 

「よし! この姿になるとやっぱ高ぶってくるなぁ!」

 

 やる気満々と言った様子で言うと、レオーネは驚いているタツミを抱き上げた。

 

「そんじゃ先に行くけどリヒトもちゃんとついて来いよ!」

 

「あいよ」

 

 答えると同時にレオーネは屋根が凹むほど力をこめて蹴り、一気に屋根の上を駆け抜け始めた。

 

 それに続きリヒトもヨルムンガンドを伸ばしてついて行く。しばらく空をかけていると、レオーネが一つの建物の中に飛び込んだ。あそこが標的の潜む建物だ。

 

 彼女のすぐ後にリヒトも中に飛び込むがその際に、ハゲの見張りの首筋に投擲用のナイフを放っておいた。短くうめいた声と倒れた声が聞こえたので死んだだろう。

 

「ふいー到着到着」

 

「……これって潜入じゃなくね?」

 

「まぁレオーネの場合は潜入じゃなくて突貫だな。でもまぁ常人じゃみえねぇしいいだろ」

 

「ホラ、二人ともこっちだ」

 

 タツミの意見にリヒトが答えると、レオーネが二人を呼んで天井板を外した。

 

 そこから下の様子を眺めると、下の部屋には数十人の女性が半裸の状態でいた。しかも何かの香が焚かれているのか、独特の甘ったるい匂いがした。

 

「うっ!?」

 

 下の光景と臭いにタツミが鼻と口を押さえる。

 

「この臭い、快楽増大の媚薬か。しかも中毒性のあるやつだな」

 

「ああ、殆どがスラムから甘言で惑わされた女の子達だ」

 

 そんなことを話していると人相の悪い二人組みの男が現れた。一人は眼帯をつけた男であり、もう一人はまだ若い男だった。恐らく兄貴と子分と言った関係なのだろう。

 

 彼等は女性達に薬を回してやるだなどと言っていたが、一人の女性が彼等に薬をせがんだ瞬間、子分の方が女性を殴りつけた。

 

「ソイツはさっさと廃棄処分しとけよ。事後処理もめんどくせぇからな」

 

「ウス」

 

 その声を聞いていたタツミとリヒト、レオーネはそれぞれ怒りを露にする。

 

「なんて奴等だ……許せねぇ」

 

「地獄行き確定だな。だろ、レオーネ?」

 

「ああ、それにさっきの子スラムの顔なじみだった子だった……ムカつくからあいつ等さっさと始末しよう」

 

 ガンッ! と拳を打ち鳴らしたレオーネにタツミとリヒトも頷いた。

 

 そして三人は男達をつけ、彼等がいる真上に到着すると、一気に天井板をぶち抜いて降り立つ。

 

「な、なんだッ!?」

 

「「「地獄への案内人だ外道共」」」

 

 埃の中から告げると、先ほどの幹部らしき眼帯の男が焦ったような表情をする。しかし、すぐに子分の方が八人ほどいたほかのメンバーに命令を下した。

 

「侵入者だ! 三人纏めて始末しろ!!」

 

 その声に黒スーツの男達がそれぞれ動こうとした時だった。二人の間に立っていたリヒトがニィッと残虐な笑みを見せた。

 

 そして次の瞬間、八人の護衛の心臓を床を貫いて現れたヨルムンガンドが纏めて貫いた。

 

「なッ!?」

 

「はい残念。オレらが入った瞬間からもうテメェらは詰んでんだよ……だからさっさと報いを受けろ」

 

 リヒトの声と共にタツミとレオーネが同時に駆け出し、タツミは子分の男の胴を断ち切り、レオーネは幹部の男の首を持って持ち上げる。

 

「な、なにもんだ手前等……ッ!」

 

「ハッ、これから死ぬ奴に言ったってしょうがないけケド、あえて言うなら……ただの、ろくでなしさ!!」

 

 レオーネは言い切ると共に男の胸に渾身の一撃を叩き込んだ。男の胸には大穴が開き、彼は壁にめり込んでいた。

 

「だからこそ、世の中のドブさらいに適してるのさ」

 

 

 

 

 

 依頼された組織の一味を狩り終えた三人は帰路についていた。

 

「とりあえずこれで任務は達成したわけだが……レオーネ、あの子達どうするつもりだ?」

 

「そこは私たちの領分じゃないだろ」

 

「放って置くのか姐さん!?」

 

 レオーネの言葉にタツミが声を上げたが、彼の声にレオーネは少々照れ隠しをしながら告げる。

 

「ま、まぁ顔なじみもいたし、下町には元医者のじーさんがいる。そこをあたってみるさ。若い女の子大好きだからじーさんも喜ぶだろうし」

 

 彼女は僅かながら頬を赤らめていたが、その瞳には優しさが写っていた。

 

 レオーネのそんな反応に肩を竦めながらニヒルな笑みを浮かべたリヒトだが、ふとそこでピリッとした感覚に襲われた。

 

 弾かれるようにその感覚が走った方角を見る。

 

 ……確かあっちはシェーレやマインがチブルを狩りに行った方角……。

 

 そう、今回の任務はこちらとシェーレとマインの別動隊が動く形になっている。彼女たちがチブルごときに遅れをとるとは思えないが、この妙な胸のざわつきはなんだろうか。

 

「リヒトー? どーしたー?」

 

 先を行くレオーネが聞いてきたが、リヒトはそれに短く答える。

 

「レオーネ、先に合流地点まで行っててくれ! オレは気がかりなことが出来た!」

 

「え? あ、ちょオイ、リヒト!?」

 

 そんな声が聞こえたが、空中にヨルムンガンドを打ち付けて一気に空へ飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リヒト達から離れたところで、シェーレとマインは一人の帝具使いと交戦していた。帝具使いの名はセリュー・ユビキタス。帝都警備隊の人間だった。

 

 そして彼女の帝具は生物型の帝具・ヘカトンケイル。しかし、どちらかと言うと優勢に見えるのはマインとシェーレのほうだ。

 

 なぜならば、セリューの両腕は既にシェーレによって断ち切られていたのだから。

 

 ……腕を切らせて致命傷を避けるとは……ですがこれで終わりにします!

 

 思い、エクスタスを広げながらセリューに肉薄するシェーレだが、腕を失ってもなおセリューは狂気に満ちた笑みを見せた。

 

「正義は……必ず勝ぁぁぁぁつ!!」

 

 その声と共に彼女の腕からは小型の銃が姿を現した。人体改造をしたのだろう。

 

「オーガ隊長から授かった切り札だ! 喰らえぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 言い切ると銃口から火炎が噴出し、弾丸が射出された。しかし、銃弾はあっけなくエクスタスに防がれ、セリューは銃を粉砕されて後ずさる。

 

「くっ、まだ……まだだ!! コロ!! 狂化(おくのて)!!!!」

 

 彼女の声が引き金になったのか、ただでさえ戦闘態勢に入って巨大化していたヘカトンケイルの威圧感が更に強大になり、次の瞬間には大音響の咆哮が響く。

 

 耳をつんざくような轟咆に思わずマインとセリューは耳を塞いだが、その一瞬の隙をついてマインがヘカトンケイルに捕まった。

 

「しまっ!?」

 

「マイン!」

 

 シェーレが声を上げるが、セリューは命令を下す。

 

「コロ、そいつを握りつぶせェ!!!!」

 

 答えるようにヘカトンケイルが腕に力をこめてマインを握りつぶさんとする。メキメキと力が入り、マインの細腕がボキリと音を立てて折れたが、体の奥まで握りつぶされる瞬間、シェーレがヘカトンケイルの腕を斬りおとした。

 

「シェーレ!」

 

「よかった、マイン。間に合いました」

 

 二人は安堵したような表情を見せるが、次の瞬間、彼女らの表情は驚愕に歪む。

 

 ドンッ! という短い銃声が響いたのだ。それと同時にシェーレの心臓より下、脇腹の辺りから血がこぼれた。

 

 背後を見ると、口の中から銃口を出したセリューが狂笑を浮かべている。

 

 銃口の大きさからして傷自体は大したものではない。しかし、シェーレは自身の体が動かないことに気が付く。

 

 ……まさか、麻痺毒をッ!?

 

 驚くのも束の間、目だけを動かすと、自身に迫るヘカトンケイルが大口を開けているのが見えた。

 

 口の中には無数の凶悪な形をした牙が並んでおり、敵を噛み砕かんとするさまが見て取れる。

 

 瞬間、シェーレは自身が死ぬのだと直感した。マインも動けない今、生き残るのは不可能であろう。

 

 ……嗚呼、すいません。ナイトレイドの皆……すいません、タツミ……もう抱きしめてあげられません……。

 

 そう思っている間にもヘカトンケイルの大口が迫っており、あと一歩というところまできていた。

 

 すぐにでも喰いちぎられる痛みが来るだろうと覚悟していたが、襲ってきたのは体を大きく横に引っ張られる感覚と、腕を肩口から失う痛みだった。

 

「え?」

 

 自分でもマヌケな声が出たとシェーレは思う。

 

 痛みは予想できた。しかし、想像していた痛みが軽すぎたのだ。本当ならば体が上半身と下半身に分かたれるような痛みが来ると思ったのだが、見ると右腕だけが喰いちぎられている状態であった。

 

 更に見ると、自身の腰に鎖が巻き付いており、それの先端には龍の頭のオブジェが取り付けられている。

 

「これは……ヨルムンガンド?」

 

 そう、これはリヒトの帝具、双頭縛鎖・ヨルムンガンドだ。

 

 そう思っていると、シェーレはその持ち主の声を聞いた。

 

「ギリギリ……間に合ったか……!!」

 

 若干荒い息をはきつついう声はすぐ隣から聞こえた。そこには白銀の髪をした青年、リヒトが立っていた。彼の隣にはマインの姿もある。

 

「リヒト……」

 

「ワリィ、遅れた。……でも、安心してくれ」

 

 彼はいうと二本の鎖を自身の周りに展開させる。

 

「オレの仲間は絶対に死なせねぇから」




はい、今回は少々急いだ感じがありますが、とりあえずこの感じで。

いよいよセリュー戦でございます。
まぁそんなことは言ってもセリューは満身創痍なので激戦というわけにはいきませんが、それなりにオリジナル感を出せると思われます。
そしてシェーレは生きさせます。腕は食われましたが……。

次で決着がつき、シェーレがどうなるかも決まります。
その後はいよいよ三獣士戦ですが……予告しておきますとリヒトは別任務でいないとおもわれます。

では、感想などありましたらよろしくお願いいたします。
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