白銀の復讐者   作:炎狼

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第三十話

 リヒト達陽動チームがエスデスを引っ張り出すため、大聖堂の中庭で暴れまわっている最中、今回の暗殺対象であるボリックを暗殺する要であるアカメ達突入チームは、キョロク上空をエアマンタに乗って移動していた。

 

「大聖堂が見えてきたな」

 

「うん。よし、それじゃ最後におさらいしとくよ。とは言ってもやることは単純だけどね。このまま直進して大聖堂の天井へ突っ込む。その直前に、マインちゃんはパンプキンで天井にいい感じの穴を作ってくれ」

 

「分かってるわ。準備万端よ!」

 

 マインはパンプキンを持って小さく笑みを浮かべる。その表情からは、彼女の言うとおり、自信が見て取れる。

 

「んで、マインちゃんが空けた穴から突入して、ボリックを()る。多分これは機動力のあるアカメちゃんか、インクルシオの透明化を使ったタツミの役割だと思うから、よろしくな」

 

「おう! スーさん達もがんばってるだろうからな。絶対に成功させるぜ! な、アカメ」

 

 既にインクルシオを装備しているタツミが言うと、アカメはコクリと頷く。

 

「ああ。それに村雨であれば掠った程度でも葬ることが出来る」

 

「そういうこと考えると、村雨って本当に暗殺向きだよねぇ」

 

 ラバックの言うことも最もだ。帝具であることを抜けば、村雨は指先に掠っただけでも、耳に掠っただけでも対象を確実に死にいたらしめる。

 

 こと暗殺に関しては、非常に高い隠密性があると言っていい。

 

「確かに村雨は暗殺向きだが、頑丈さで言えばパンプキンの方が高いだろう」

 

「それはそうかもね。ボスが将軍だった時の話とか聞いてても、本当によく壊れなかったと思うわ」

 

「壊れてねぇのはいいけど、射線とか大丈夫か? 最近無理してる感じあったけど」

 

 タツミが心配そうな声音で問うと、マインが軽く鼻で笑った。

 

「その辺はぬかりないわよ。まったく、アンタは臆病ねぇ。タツミ」

 

「別にビビッてるわけじゃねぇよ。ただ、まぁなんつーか、心配だったからさ」

 

 インクルシオを装備しているから表情は分からないが、声や仕草からして少々照れているような雰囲気のタツミ。

 

 マインもそんな彼の声に少しだけ頬を赤らめ、顔を俯かせるが、少しすると息を吐いてからいつもの得意げな笑みを見せる。

 

「アンタに心配されるほどのことはないわよ。それに言ったでしょ。あたしは射撃の天才なんだから」

 

「……だったな」

 

 タツミは肩を竦めてから頷いた。突入前だが、随分とリラックスできているようで、アカメもそんな二人を見て満足げだ。

 

 ただ一人、ラバックはジト目で二人を見やっていたが。

 

 しかし、この和やかな空気は予期せぬ乱入者によって破壊されることとなる。

 

 ギラリ。と突入チームの後方の空域で何かが光る。星や月のように夜空に浮かぶ何かではない。もっと別の、凄まじい速さの何かだ。

 

 その光はあっと言う間に突入チームの真横にやってくる。

 

「なっ!?」

 

 普段は冷静なアカメでさえ驚きの声を上げた。光の方を見やると、そこには帝具と思しき翼で空を飛ぶ一人の美青年がいた。

 

「やはり空からの別動隊。今度はこちらの読み勝ちのようですね」

 

 青年が口を開く。言動と帝具と思しき翼からして、以前一時的にではあるが、イェーガーズに捕まっていたタツミの報告と照らし合わせると、彼がランであろう。

 

 ランは殺気のこもった声と、視線を四人に向ける。

 

「私と言う存在を知りながら、領域(ナワバリ)である空から攻撃を仕掛けてくるとは――」

 

 言いつつ、彼は体を翻してエアマンタの腹部に潜り込むと、その光の翼から無数の光り輝く羽根を掃射した。

 

「――〝愚策〟と言わざるを得ませんね」

 

 帝具による攻撃を受けたため、巨大なエアマンタであってもそれに耐えうる事はできなかった。エアマンタは力なく急降下していく。

 

 

 

 

 急降下するエアマンタは地上からも見ることができた。それは大聖堂近くの屋敷のバルコニーからも例外ではなかった。

 

 バルコニーで剣状態のグランシャリオの柄を握る青年、ウェイブは落下するナイトレイドに対して低い声で言う。

 

「来たか、ナイトレイド。……ボルスさんと、セリューとコロの仇、そしてクロメの怪我……」

 

 殺意が乗せられた低い声音で彼は続ける。

 

「まとめて、ケジメつけさせてもらうぜ!!」

 

 

 

 

 

 突入チームがイェーガーズの奇襲によって、大聖堂の一歩手前で落とされてしまったちょうどその時。

 

 大聖堂の中庭ではリヒト達によって叩きのめされた兵達が転がっていた。が、肝心のエスデスの姿は見えない。

 

「これだけ騒ぎを起しても出てこないか」

 

「逃げた可能性は?」

 

「そりゃないぜ。なぁ、レオーネ」

 

 スサノオの言葉に答えたリヒトが彼女を見やると、レオーネは頷いて頬から緊張から来たであろう汗を垂らす。

 

「大聖堂からすごくおぞましい殺気が漏れ出てる。それも、最初よりも強くなってる。こんな殺気を出せるのは間違いなくエスデス。こっちを狩る気満々だ」

 

 ライオネルで感覚が強化されているが故、レオーネは特に殺気を強く感じ取れる。リヒトも彼女ほどではないにしろ、かつて一度だけ味わった彼女の殺気は忘れるはずもない。

 

「計画だと、そろそろアカメ達が突入してきてもおかしくねぇ時間だ。どうする、ボス」

 

「……」

 

 リヒトの問いにナジェンダは口元に指を当てて考え込む。

 

 ……ボリック暗殺を成功させるためには、エスデスの注意をひきつける必要がある。先に入ったチェルシーのことも考えると……やむを得ん!

 

「プラン変更だ! こちらから大聖堂に乗り込むぞ!」

 

「おうさ」

 

「了解!」

 

 リヒトはヨルムンガンドを自律行動状態へと移行させる。今まで腕に巻きついていたヨルムンガンドが浮き上がる。

 

「スサノオ、奥の手の準備はいいな?」

 

「ああ。ナジェンダがキーワードを言うだけで発動するようになっている」

 

 スサノオの返答にナジェンダは頷き、彼女たちは一斉に大聖堂へ向けて駆け出す。

 

 走りながらナジェンダがリヒトに告げる。

 

「やることはわかっているな。リヒト」

 

「ああ。俺が何よりもやるべきなのは、エスデスに対する直接的な攻撃じゃなくて、エネルギー体のヨルムンガンドをエスデスに巻きつけること。だろ?」

 

「そうだ。かなり面倒かつ、危険だがお前ならやれるはずだ。信じているぞ」

 

「わーってるよ。それに俺も、恋人残して死ぬわけにはいかないんでな」

 

 肩を竦めるリヒトだが、その瞳には決して油断などと言ったあまっちょろい色はなく、生き残るという信念が光っていた。

 

 

 

 

 

 陽動チームが大聖堂へ突入するのとほぼ同時刻、落下中のエアマンタ上ではラバック達が焦りを見せていた。

 

「どうにかなんねぇのか、ラバ!」

 

「んなこと言ったってさっきの攻撃でエアマンタ即死しちまってるよ!」

 

「じゃあ墜落までなす術なしってわけ!?」

 

 慌てる一行であるが、そんな彼等に対しランが再び飛翔する。

 

「このチャンスは逃しません」

 

 再び光の羽根が放たれた。

 

 が、今度はただでやられるわけではない。瞬時にそれに反応したマインがパンプキンをランと、襲ってくる光の羽根に向けて狙い済ます。

 

「このピンチは逃さない」

 

 言い終えると同時にパンプキンの引き金が引かれる。放たれた精神エネルギーは一筋のビームとなって、羽根を巻き込みながらランの脇腹を掠めていった。

 

 撃墜こそされなかったものの、ランは掠めた脇腹を押さえながら落下を続けるエアマンタの上にいるマインを見やる。

 

 その視線に気が付いているかはわからないが、マインはランを見ながら悔しげに顔をゆがめる。

 

 ……掠っただけか。こんな時、パンプキンの射撃が曲げられたり、なぎ払えたりすればいいのに!

 

 パンプキンの欠点は攻撃方法が銃と同じで点であるということだ。大規模な射撃をする場合はどうしても体を固定しなければならないため、射撃は一方向にしか進まない。

 

 それをどうにかこうにかして面や線に移行出来ない物かとマインは悩んでいる。もしそれが可能であれば、グンと戦力が増すはずなのだ。先ほどの攻撃でも、もし薙ぎ払うことが出来ればランの体を貫くことも可能だっただろう。

 

 が、そんなことを考えている、彼女の真横からパンプキンの射線上になかった光の羽根が飛来した。

 

 すぐにそちらにパンプキンを向けようとするが、大規模射撃の後のパンプキンには少しの間冷却時間が必要となる。即ち、迎撃は不可能。

 

 思わず目を瞑るマインであるが、彼女の前にノインテーターを携えたタツミが現れ、回転させることで羽根による攻撃を捌き切る。

 

 その時、一瞬ではあるがマインの瞳にはタツミの背中が大きく、たくましく見えた。

 

「大丈夫か、マイン!?」

 

「え、えぇ。大丈夫よ」

 

「そっか、けどさすが射撃の天才だな。追っ払うことが出来た!」

 

「フン、あったりまえでしょ! アンタもナイスフォロー、ありがとね。タツミ」

 

 褒められて少しだけ頬を染めるマインだが、そんな二人の間の空気を打ち壊すようにラバックの絶叫が聞こえた。

 

「二人して甘い空気出してる場合じゃないでしょ! 落下してんだよこれ! このままじゃみんな墜落死するって!!」

 

 喚きつつも、ラバックはクローステールを操り、エアマンタ全体を覆うように糸を展開させる。

 

 そしてエアマンタの体全体がクローステールによって包まれる。

 

「とりあえず即席のマットだ。これでなんとか衝撃はやわらぐ筈!」

 

 ラバックの言葉に続き、それぞれが対ショック態勢を取る。

 

 因みにこの時、タツミはラバックの肩に掴まっていたが、アカメとマインはそれぞれラバックの足に掴まっていた。それも結構がっしりと。

 

 が、緊張感のせいなのか、今のラバックにそれに気が付く余裕はない。普段の彼から見ればなんとも残念な結果である。

 

 やがてエアマンタは凄まじい音と共に地面に落下する。

 

 落下したエアマンタを覆っていたクローステールが解かれると、中からは無傷のアカメ達が現れた。

 

「流石……衝撃は全部エアマンタの体が吸収してくれたぜ」

 

「無理させちまったな……」

 

 タツミがエアマンタの体に手を当てると、マインも同じように手を当てる。

 

「最後までこの子のおかげで助かったわね」

 

「ああ。感謝してもしきれない」

 

 アカメもまた、エアマンタに対して頭を下げるが、すぐに踵を返して大聖堂へ足を向ける。

 

「手前で落とされてしまった。大聖堂へ急ごう――」

 

「――いかせねーよ」

 

 アカメの言葉が終わる前に、彼女等の前に一人の青年が立ちふさがる。

 

 タツミがそちらを見ると、そこにいたのは以前イェーガーズに囚われていた時、少しの間行動を共にした青年、ウェイブであった。

 

 アカメ達からすれば、キョロクに到着する前にスサノオによって吹き飛ばされた印象が強いだろう。

 

「お前らの相手は、この俺だ」

 

 酷く低い声音で言う彼の気迫は、非常に洗練されていて、只者ではない雰囲気をかもし出していた。

 

「ッ!」

 

「……!」

 

「イェーガーズか!」

 

「標的じゃなくても四対一で容赦なくいくわよ」

 

 四人全員がそれぞれの得物を構えるが、そこでウェイブが四人を見回して問うてきた。

 

「戦う前に一つだけ聞きてぇ。リヒトはどこだ」

 

「なに?」

 

 予期していなかった質問にアカメは警戒を解かずに声を漏らす。ウェイブとリヒトには特に接点と言っていい接点はなかったはずだ。そんな彼がリヒトのことを問うなど、どうしたのだろうか。

 

「知ってたって誰が言うかよ。第一、お前とアイツに何の関係がある。敵ってだけだろ」

 

「確かに、お前の言うとおりだ。俺とリヒトにゃ接点なんてねぇ。けど、この前アイツに殺されたセリューは違う。セリューとリヒトは友達だったらしい、だが、リヒトはそんな友達でさえ容赦なく殺した。俺にはそれが我慢ならねぇ」

 

 搾り出すような声に緊迫感がより濃くなっていく。

 

「そんなのは当たり前じゃない! セリューはイェーガーズ、リヒトはナイトレイドよ! 昔友達だったからって、今は違う。二人は敵同士なんだから殺しあうのは必然でしょ!」

 

「んなこたぁ俺だってわかってる。けどよ、聞いてみたかったんだよ。友達を殺した時、アイツはどんな気持ちだったのかをな」

 

 憤怒の色が見えるウェイブの眼光は凄まじいまでの威圧感であった。無論、この程度で萎縮するアカメ達ではないが、彼の言うことが気にならないかといわれればそうでもない。

 

 セリューと交戦したあの日、リヒトは特に変わった様子もなく帰って来た。強いて言うなら多少の傷はあったものの、精神的には殆ど変わらない様子であった。

 

 恐らくセリューを完全に敵として認識することで、彼女を殺すことに躊躇しなかったのだろうが、誰も彼にその時のことを聞かなかったので、実際彼がどういう心境であったのかはわからない。

 

 しばしの沈黙が続いていると、インクルシオを装備したタツミが彼に答えた。

 

「俺は聞いた。セリューを殺す時、リヒトがどんな気持ちだったのかを」

 

「……アイツは、リヒトはなんて言った?」

 

 インクルシオによって顔を覆われているため、声もくぐもっている。ウェイブはタツミだとは気付いていないようだった。

 

 そしてタツミはアジトを出るとき、リヒトに言われたことを思い出す。

 

 

『タツミ。もしイェーガーズのメンバーの誰かにセリューを殺した時どんな気持ちだった? とか、どんな理由で殺した? とか聞かれたらこう答えといてくれ』

 

『なんだよ藪から棒に。というか、そんなこと効いてくる奴なんているのか?』

 

『さてな。まぁでも、一応聞いとけよ。いいか、もし聞かれたらこう答えとけ――』

 

 

「『――何も思わなかった。ただ殺しただけだ』だってよ」

 

「ッ!!」

 

 リヒトの声を代弁したタツミの返答に、ウェイブが息を詰まらせる音が聞こえた。そして彼は、ゆっくりと剣を鞘から抜く。

 

「そうか、やっぱり殺し屋は持ってる感性が違うってことかよ。少しは納得のいく答えが聞けるかと思った俺が馬鹿だったぜ」

 

 ゆっくりと剣を抜きながら彼は言葉をつなげていく。

 

「もういいぜ。来いよ殺し屋ども。これ以上仲間を失うのは御免だ! もう誰一人傷つけさせやしねぇ……!!」

 

 彼は言い切り、剣を完全に抜き放つとそのまま地面に突き立て。吼えた。

 

 

 

「グランシャリオォォォォォォォッ!!」

 

 

 

 咆哮と共に、彼の背後にインクルシオと同じく巨大な鎧が現れ、彼の体を包み込んでいく。

 

 やがてウェイブの体全体を覆うように、紺色の鎧が展開される。

 

 全てを展開し終えた隙を狙い、マインがウェイブに向かってパンプキンを撃ち放つが、ウェイブはそれを読んでいたのか、簡単に回避行動を取ると、そのままマインへ向けて突撃。

 

 が、無防備であるマインを守るためにタツミがノインテーターを構えて前に出る。

 

 しかし、タツミがマインの前に出たのは無防備なマインを防御するためはもちろん、注意をタツミにひきつけるための策略だ。本命は彼の背後から飛び上がったアカメである。

 

 アカメが空中で身を翻し、ウェイブに村雨をぶつける。金属と金属が擦りあう金切音が響く。

 

 鎧と刀が何度もぶつかり合う中、アカメはグランシャリオの硬度に気づく。

 

 ……この鎧の硬度、刃が肌まで通らない。

 

 鎧には多かれ少なかれ硬度が薄い箇所がある。主に関節部分や首もとなど、戦いにおいて動かす部位は動かしやすさを重視して、必然的に鎧は薄くなるはずなのだ。

 

 アカメも先ほどからなんども狙ってはいるものの、グランシャリオの硬度によって阻まれてしまう。

 

 ……鎧の隙間は、ない……!

 

 本来であれば貫けるはずの箇所が貫けないことに気付いたアカメに、一瞬の隙ができる。その隙をウェイブは見逃さなかった。

 

「どれだけ人数差があろうが!!」

 

 吼えたウェイブの拳はアカメの腹部を捉え、痛烈な拳打がアカメを襲い、彼女は背後の林の木々に叩きつけられる。

 

 アカメと入れ替わるようにしてタツミがノインテーターをウェイブに向けて突き放つ。敵を打ち倒した一瞬の隙を狙ったいい判断だったが、ウェイブもそれを読んでいたようで、矛先を見据えて全てを回避する。

 

 タツミもただ突きだけを繰り出すのではなく、横薙ぎや振り下ろしをするものの、グランシャリオの強度な防御力とウェイブの洗練された回避運動によって、決定打が与えられない。

 

 何度かの激突の末、ノインテーターの槍撃を見切ったであろうウェイブが、槍の柄を蹴り飛ばした。しかしタツミも負けてはいない。弾かれたノインテーターのことは追わず、目の前で羅刹の如く戦うウェイブを見据える。

 

 が、そこでタツミの視線の先にウェイブの背後に回りこんだラバックが現れる。彼の意図をすぐさま理解したタツミは、拳打をバックステップで避ける。

 

「逃がすか!」

 

 追撃するウェイブであるが、次の瞬間彼の体にクローステールの強靭な糸が巻きつけられる。

 

「よし、捕まえ……」

 

 ウェイブを拘束できたことに安堵の声を上げるラバックであるが、彼の予想はすぐに外れてしまう。

 

 なんとウェイブはその膂力でクローステールの糸を引き千切ったのだ。そしてすぐさま彼はタツミから注意を外し、こんどはラバックへ向けて駆け出してきた。

 

 クローステールによる拘束が引き千切られ、ラバックもそれなりには驚いたが、それはまだ予想済みである。

 

 ……そのまま来い! 糸の罠に引っかかりやがれ!

 

 見るとラバックの前方にはウェイブの首の高さに張られたクローステールの一本があった。最初から拘束はブラフ。本命は糸の罠であったのだ。

 

 が、しかし、彼の予想はまたしても外れることとなる。糸に当たる瞬間、ウェイブが跳躍して罠を跳び越したのだ。

 

「バレてんのかよ!!」

 

 さすがにこれには面食らったようで、ラバックの緊張が強くなった。

 

「テメぇら全員撃滅してやる!!」

 

 怒号とも取れる声と共にウェイブは飛び上がった状態で身を翻し、ラバックに向けて足を向ける。いわば跳び蹴りの姿勢である。

 

 すぐにラバックも反応し、クローステールによる糸の盾を形成する。

 

「ダメだ、ラバ! そいつの蹴りはッ!」

 

 以前、彼の蹴りを喰らったことがあるタツミがラバックに呼びかけるが、既に遅い。ウェイブの蹴りはラバックの糸の盾を貫通。そのままラバックの体に激突し、ラバックは先ほどのアカメと同じように大きく飛ばされた。

 

「この!」

 

 マインがパンプキンを三回連続で砲撃。が、砲撃は跳びあがったウェイブに回避され、虚しく地面を抉っただけに終わった。

 

 再び地面に降立ったマインが、視線の先で態勢を整えているウェイブを見やる。

 

「コイツ、こんなに強かったの? ボルスの時とは段違いじゃない!」

 

「あの時は不意をつけてたからな。多分、これが本来のアイツの強さなのかもしれない」

 

 マインの声に答えるようにタツミが彼女の横で構えを取る。すると、殴り飛ばされたアカメが腹部を押さえながらやってきた。

 

「大丈夫か、アカメ!」

 

「ああ。少々痛手だが、作戦に支障はない。しかし、今のタツミの言葉、確かにそうかもしれない」

 

 アカメはこちらを見据えるウェイブに視線を送る。今、彼からは尋常ならざる気迫と殺気が溢れている。

 

「あの男、凄まじい気迫だ。恐らくあの強さは元々あの男が持つ戦闘センスと、仲間達が倒れたことによる激情が相まってさらに引き出されているのだろう」

 

「けど、あたし達もいつまでもこんなところで道草食ってるわけにはいかないわ。早くしないと!」

 

「分かっている。早くしないと陽動チームが全滅してしまう。だから、ここは少しでも戦力を送っておく必要がある」

 

「何か作戦があるのか?」

 

「ああ。それも、タツミ。お前にしか出来ないことだ」

 

 アカメに言われ、タツミはなんとなくであるが、彼女の考えていることが理解できた。

 

「……なるほど、そういうことか」

 

 

 

 

 目の前で三人がなにやら話しこんでいるのを見つつ、ウェイブは大きく息を吐いてから再び走り出す。

 

 ……コソコソ話し合って何を考えているかは知らねぇが!

 

「お前等みたいな殺し屋の作戦なんて全部叩き潰してやるよ!!」

 

 圧倒的な気迫を背負い、ウェイブは突貫する。

 

 

 

 

 

 

 大聖堂ではエスデスと陽動チームの四人が向かい合っていた。エスデスの背後には安寧道の教団のっとりを企てるボリックが椅子に座り、両脇をクロメとクロメの骸人形が固めている。

 

 敵同士が向かい合っているというのに、大聖堂内は異常なまでに静かであった。が、別の意味で言えば非常に騒がしくもあった。

 

 それはエスデス、そしてナイトレイドのメンバー、一人一人から発せられる殺気の影響だ。そこにいるだけで肌がヒリつき、空気が振動し、大地が揺れるような濃密な殺気が大聖堂内に蔓延っているのだ。言葉を発さずとも騒がしく感じてしまうのだ。

 

 やがて不敵な笑みを浮かべたエスデスがナジェンダ達へ向けて声をかけてきた。

 

「久しぶりだな。ナジェンダ」

 

 空気が凍てつくのではないかと言うほど冷たい声が響く。しかし、その声には美しさが強い。

 

「エスデス……」

 

 緊張した声音でナジェンダが答えると、彼女は一度頷きヨルムンガンドを展開しているリヒトを見やる。

 

「お前とも久しいな。リヒト。帝具を手に入れより強くなったと見える」

 

「ハッ、帝国最強に褒めていただいて嬉しい限りだよ。エスデス」

 

「フフ、相変わらず強気だな。が、お前のそういうところ、私は嫌いではないぞ。戦いの中でその強気さがどこまで失墜するか……実に楽しみだ」

 

 サディスティックな笑みを見せるエスデスに、リヒトは肩を竦める。

 

 ……相変わらず化物染みた殺気出しやがる。それに、あの時よりもかなり濃いな。

 

 外からでも分かっていたことだが、彼女の殺気はすでに人間のそれを超えている。いや、獣のそれも越えているかもしれない。

 

「まぁお前は私が気に入った男の二人目だからな。闘ってもしも生きていたら、私の軍門に下るように教育……いや、調教してやってもいい。どうだ?」

 

「そん時ぁ自分で自分の命を断つさ」

 

「クク、私がそんなことをさせるとでも?」

 

 心底楽しげに笑うエスデスに対し、リヒトは背筋が凍りつきそうになるのを感じた。恐怖がないといわれれば嘘になる。目の前にいるたった一人の女に、リヒトは明確な恐怖を抱いていた。

 

 が、決して逃げ出したいとか、そんなことは考えていない。恐怖は恥ではない、恐怖があるからこそ、人間らしい判断が出来るのだ。

 

「まぁ話はまた後に拷問室でやるとしよう。今はせっかく来た客人に私の帝具を馳走してやらねばな」

 

 シャラン、という音と共にエスデスが軍刀(サーベル)を抜き放つ。

 

「遠慮しよう。できればお前とはあまり口を利きたくない」

 

「つれないな、ナジェンダ。リヒトは随分としゃべってくれたというのに。あとそう邪険にするな。せっかく奥の手まで用意したんだ」

 

「奥の手」という単語を聞いた時、ナジェンダの顔が曇る。

 

「お前の帝具デモンズエキスには奥の手はなかったと昔聞いた覚えがあるが……?」

 

「そう。だから自力で編み出したんだ。凄いだろう」

 

 少々ドヤ顔が入ったエスデスの言葉に、ナジェンダ以外の三人がなんとも言えない表情を浮かべる。

 

「凄いだろうって、自慢かよ」

 

「自慢するためにあの話に持ち込んだのか?」

 

「つか、奥の手って編み出すモンじゃないよなフツー」

 

「エスデスらしい破天荒さだよ、まったく」

 

 ナジェンダも呆れ気味に首を振る。が、緊張は解かれてはいない。

 

「まぁ開発したとは言っても莫大なエネルギーを使ってしまうからな。使うのはここぞと言うときだけだ。だから私が思わず使ってしまうような戦闘を期待するぞ」

 

 高圧的にいってくるエスデスの瞳の中に宿る黒い光がより濃さを増した。そろそろ仕掛けてくる頃合だろう。

 

 けれども、ナイトレイド側には不安もある。本来なら到着してもいい時間帯に、アカメたちが来ないのだ。リヒトを含め、他のメンバーは皆それに心当たりはあった。

 

 ……他のイェーガーズのメンバーに足止め喰らってるか。まぁ定石な攻め方だから、読まれるのは仕方ねぇか。やっぱりここは、俺らが踏ん張るしかねぇわな。

 

 リヒトは思い、ナジェンダに視線を送る。彼女が頷いたため、やることは変わらないだろう。

 

 ……いつでもアイツ等が突撃してきていいように、そしてチェルシーがボリックを仕留められる様に、エスデスの注意をこっちにひきつける。あとは奥の手を使わせないために、コイツが必要になる。

 

 エネルギー体のヨルムンガンドを見やると、ヨルムンガンドも理解しているのか何度か動いて了解しているような意を表す。

 

「クロメ、周囲を警戒しておけ。どこから敵の増援が来るかわからんぞ」

 

「了解」

 

 ボリックを護衛しているクロメに注意をしてからエスデスは右腕をゆっくりと上げる。

 

「いくぞ」

 

 口元を三日月にゆがめ、彼女は指を鳴らした。

 

「ナイトレイド!!」

 

 声と共に大聖堂の中天に巨大な氷塊が一瞬にして出現した。一瞬で出来上がった氷塊にナジェンダ、レオーネは驚愕の表情を見せ、リヒトとスサノオは氷塊を睨む。

 

「俺の後ろに!」

 

 スサノオの指示に、三人は彼の背後に回る。落下してくる氷塊を前に、スサノオは跳躍し、槌で粉々に突き砕く。

 

 流石は帝具人間と言ったところか、その膂力によって氷塊は無残な姿へと変えられる。しかし、それだけで終わるエスデスの攻撃ではない。

 

「これはどうだ?」

 

 彼女が腕を前に突き出すと、小型の氷塊が飛来する。小さいとは言っても先端は氷柱のように尖り、非常に鋭利な形をしているため、刺されば致命傷は免れない。

 

 未だ空中にいるスサノオの変わりに、今度はリヒトが前に出て実体のあるヨルムンガンドを突き出す。すると、ヨルムンガンドは空中で高速回転を始め、襲ってきた氷柱を叩き落す。

 

 やがて着地したスサノオも槌に仕込まれた刃を回転させることで、氷柱による攻撃を防ぎきる。

 

「見事な連携だ。それに見たところ、角のあるお前、報告にあった帝具人間だな。だったら俄然面白くなってきた!!」

 

 声高々に彼女が言うと、先ほどのような氷柱が再び襲ってきた。

 

「こちらからも仕掛けるぞ!」

 

「ああ!」

 

 スサノオの声に続き、四人は飛来する氷柱の中を描ける。リヒトとは氷柱の射程から外れた空中をエネルギー体であるヨルムンガンドを空中に打ち込んで移動し、レオーネはライオネルによって強化された動体視力で避けながら迫る。

 

 スサノオは回転する刃で氷柱を防ぎながら進み、ナジェンダは彼の背後に回って続く。

 

 最初にエスデスに到達したのはスサノオであった。彼は下段から槌をエスデス目掛けて突き穿とうとするが、エスデスの顔に凶悪な笑みがこぼれる。

 

「刺し貫いてやろう」

 

 彼女が床に手を置くと、スサノオの真下から巨大な氷が飛び出す。しかもただの氷ではなく、先端が非常に鋭利な形をした殺人に特化した氷だ。

 

 しかしスサノオは帝具人間。コアが破壊されない限りは死ぬことはない。だからこそ、レオーネがエスデスの隙を突く回し蹴りを放つ。

 

 完璧なタイミングであり、普通であれば回避することは難しい。そう、普通であれば。

 

 ブンッ! という空気を切る音と共に振りぬかれたレオーネの足は虚しく空を切ってしまった。エスデスがレオーネの攻撃に反応して避けきったのだ。

 

 レオーネの空中に取り残され、身動きが取れない。エスデスはその隙を決して逃さず、軍刀を一切の容赦なくレオーネの背中に突き立てる。軍刀は貫通し、レオーネの腹部から飛び出した。

 

「っ!」

 

 ……なんて反応速度だ! 獣のそれより迅い……!!

 

 悔しげに歯噛みするレオーネであるが、まだ攻撃は終わっていない。見ると、エスデスの左方にリヒトがおり、エネルギー体のヨルムンガンドをエスデス目掛けて放った。

 

 エネルギー体のヨルムンガンドは精神力を集中しなければ相手を殺傷するちからは皆無。だが、今回はエスデスを殺すことが目的ではない。あくまでもボリック暗殺が最優先事項だ。

 

 けれど攻撃と取れるその行動をエスデスが避けないはずはなく、彼女はレオーネの背中をヒールで蹴りつけ、軍刀を引き抜き、接近してきた実体のないヨルムンガンドを軍刀で叩き落そうとする。

 

 が、それこそが狙いだ。エスデスといえど全ての帝具の特性を熟知しているわけではない。エネルギー体にヨルムンガンドは物質を貫通する。だから軍刀で落とそうとしても、落とせない。

 

 軍刀をするりと貫通したヨルムンガンドに流石のエスデスも驚きの表情をした。

 

 ……狙いはテメぇの中にあるモンだ!!

 

 リヒトは打ち込めたと思った。だが、エスデスの動きは予想の上を行った。眼前に迫ったヨルムンガンドにを避けるため、彼女は体をその場で回転させる。ギリギリで避けるその超反応に悔しさよりも、驚嘆してしまった。

 

 ……あんなギリギリを避けるかよ!?

 

 しかもその状態であってもエスデスは攻撃を放ち、リヒトに氷柱や氷塊による射撃攻撃を仕掛けてくる。ヨルムンガンドで退きつつそれを避けきる。

 

 すると、スサノオの背後に構えていたナジェンダが右腕の義手の肘から先を射出した。再び隙を突いたいい判断だ。けれどエスデスは華麗なステップでそれを回避。見ると、振り出しに戻されてしまった。

 

「ほぅ。隙を突くいい戦法だ。それに、女の方は人間だろうに治癒が早い。帝具の性能か。そしてリヒト、貴様の帝具は中々面白いな。さっきのはどんな効果があるんだ?」

 

「さてな。テメぇで考えな。敵に手の内をさらすほど俺は優しかないぜ」

 

 答えるリヒトの頬に汗が伝う。

 

 すると、レオーネが小声で言ってくる。

 

「おいリヒト。ヨルムンガンド、なんでずっと伸ばしてないんだよ。エネルギー体の方は延び続けることが出来るんだろ? だったら伸ばし続けて喰らいつかせられないのか?」

 

「無茶言うな。俺の精神力がゴリゴリ削られちまうよ。第一、やっこさんがそんな簡単に撃ち込ませてくれるわけねぇだろうが」

 

「そうか。クソッ」

 

 悔しげに歯噛みするレオーネの腹部の傷は、既に修復を終えている。ナジェンダを見ても苦しげな表情がうかがえる。

 

「やっぱりアカメ達は足止め喰らってるか。できれば速く来て欲しいもんだが……」

 

 嘆息していると、エスデスが動いた。

 

「面白い素材たちを集めたものだ。確保するとしよう」

 

 声と共にまたしてもエスデスが床に片手をつける。瞬間、凍てつく音と共に床が凍りつき、なおかつ刺々しい氷が飛び出す。

 

 四人はすぐさまその場から飛び退くが、既にエスデスの攻撃はこの時点で始まっていた。

 

 最初に標的にされたのはナジェンダであった。

 

 氷を張って回避する方向を絞ることで、エスデスは瞬時に獲物を見定めたのだ。そして一番近場にいたナジェンダの背後に回りこんだのだ。

 

 ナジェンダがエスデスの気配と感じ取って振り向こうとした時には、彼女の首筋にエスデスの手刀が襲った。

 

「ぐっ!」

 

「お前には聞きたいことが沢山ある」

 

 一撃で昏倒されたナジェンダは床へ落下していくが、彼女が攻撃されたことに三人が気が付き、一番近くにいたレオーネが大聖堂の柱を蹴ってエスデスに迫る。

 

 レオーネの動きは確かにこの場で取れるもっとも最善の策であった。しかし、エスデスの身体能力は圧倒的である。彼女は空中で前転をするように縦に回転すると、レオーネの攻撃をテンポを遅らせることで回避。

 

 同時に左足を振りかぶり、回転の勢いをそのまま乗せた痛烈な踵落としをレオーネに見舞う。

 

 背後からの強烈な一撃にレオーネは床へ叩きつけられる。

 

 今度はスサノオが動き、槌の刃を回転させながら突くが、エスデスは空中で体を捩じることでそれを回避。勢いよく接近してきたスサノオの顔面に掌を這わせる。

 

「凍れ」

 

 途端、スサノオを包むように氷が展開され、スサノオの身動きを封じた。

 

「……捕獲完了」

 

 三人を相手にし、無傷。なおかつ彼女は余裕の笑みすら浮かべている。が、床に降立ったエスデスの真上から剣を振りかぶったリヒトが、ヨルムンガンドで付けた勢いを乗せて斬りかかった。

 

「ラァッ!!!!」

 

 気合いの咆哮と同時に放たれた剣は、エスデスによって防がれる。

 

「ハハハッ! 殺意の乗ったいい剣だリヒト。実を言うとな、お前が帝国を抜けてくれたことには感謝しているんだ。なにせ、こうしてなんの遠慮もなく殺しあうことが出来るのだからな!!」

 

「どうだかな! 軍にいたって、やられそうでおっかねぇよ!」

 

 ギリギリと音を立てる剣と軍刀の刃と刃の間には火花が散る。

 

「そんなことはしないさ。私はこれでも部下には優しいんだぞ?」

 

「そうかい。だったら、殺す時も優しくして欲しい、ねぇ!」

 

 さらに強く剣を押し込むと、同時に、エネルギー体のヨルムンガンドがリヒトの肩口のから飛び出す。

 

 それを目撃したエスデスはリヒトを弾き、ヨルムンガンドを避けながら鞭の様にしなった足でリヒトの鳩尾に蹴りを叩き込む。

 

「ガッ!?」

 

 息を詰まらせながらリヒトは蹴り飛ばされ、そのまま大聖堂の柱に背中から激突した。

 

「なるほど。あえて正面からあの鎖を打ち込むことで、背後から来るかもしれないという予測の裏をかいたつもりか。まだまだ浅はかだな」

 

 床に落下したリヒトから視線を外し、エスデスは踵落としで床にたたき付けたレオーネに歩み寄っていく。

 

 リヒトは体を動かそうとするが、背中から叩きつけられたことと、鳩尾にダメージを食らったことで、体が思うように動かない。

 

 ……クソが。あの女、どんな反応してやがんだよ。

 

 常軌を逸した行動の連続に歯噛みしつつも、リヒトは血を吐き出す。すると、視線の先でレオーネに歩み寄ったエスデスが行動を起した。

 

 レオーネの体を軍刀を刺し始めたのだ。刺すばかりではなく、動きからして斬りおとしている動きもある。

 

「ぐああああああああああッ!!」

 

 レオーネの悲痛な声が聞こえる。声が出ているということはまだ生きてはいる。

 

 そして恐ろしい声が聞こえてきた。

 

「では致命傷を与え続けてみるか。どれだけ耐えられるか……」

 

 言いながら彼女は軍刀を振りかぶる。その動きにリヒトは未だ痺れる体を引き摺るようにして体を這わせる。

 

 ……動け、動け!!

 

 内心で体を鼓舞するが、まだ動くのは腕だけだ。ヨルムンガンドを動かすのは、意思の力であるので、動かすことは可能だが、ただ動かしただけでは根本的な解決にはならない。

 

 が、そこでリヒトにとある考えが思い浮かぶ。

 

「……悪いなレオーネ。ちょっと利用させてもらうぜ……!」

 

 言うと、リヒトの近くに浮かんでいたエネルギー体のヨルムンガンドがどこかに消えた。そして、リヒトは実体のあるヨルムンガンドをエスデスの頭目掛けて放った。

 

 無音のまま伸び続けるヨルムンガンドだが、エスデスに当たる直前で彼女は体を反転させてそれを撃ち落し、リヒトを見据える。

 

「随分と甘いなリヒト。とは言っても、動けないようだが」

 

 不適な笑みを送ってくるエスデス。が、そんな彼女に対し、リヒトもまた不適な笑みを見せた。さすがにエスデスもこれを怪訝に思ったのか首をかしげる。

 

「確かに行動自体は甘いかもな。けど、お前もレオーネと()()()のヨルムンガンドに気を取られすぎたな。殺気をこっちだけに乗せといてよかったぜ」

 

 ゆっくりと立ち上がりながらいうリヒトの頭からは、先ほど叩きつけられた時に打った血が流れている。しかし、彼の瞳には強い光があり、口元は更に吊りあがった。

 

「捕獲、完了だ……!」

 

 先ほどエスデスがスサノオに対して言ったことをそのまま返したリヒトは、完全に立ち上がった後に、エスデスの足を指差した。

 

「テメぇの足、よく見てみな」

 

 言われ、エスデスはそこで初めて自身の異変に気が付く。

 

 エスデスの左足にはエネルギー体のヨルムンガンドが巻きついていた。鎖が伸びる先を見ると、ヨルムンガンドはレオーネの胸の当たりを貫通するように伸びている。

 

「そいつは実体がない。そして物体は貫通する。だから、レオーネを傷つけずにお前を捕まえられた」

 

「……なるほど。地中を這わせ、尚且つ仲間の体を貫通させることで殺意をなくして近づけたか。考えたな」

 

「レオーネには悪いことしたけどな……」

 

 ニッと笑みを浮かべるリヒトだが、エスデスもまた笑みを浮かべる。

 

 足に食いついているように見えたヨルムンガンドは、そのまま彼女の体を這うように巻きつき、首もとを噛む様な仕草をした。

 

「これにどういった効果があるのかは知らんが、どちらにせよ使用者であるお前を昏倒させるか殺すかすれば、解けることだ。容赦はせん」

 

「上等……!! 仕切りなおしだ、エスデスッ!!」

 

 

 

 

 

 眼下でリヒトがエスデスにヨルムンガンドを打ち込むのに成功した時。大聖堂の天井近くでは、ガイアファンデーションでネズミに扮したチェルシーがボリックの頭上まで来ていた。

 

 ……なんとかリヒトも上手くできたみたいだね。あとは、こっち。

 

 殺気を極限まで押し殺し、眼下でクロメに守られているボリックを見やる。残念なことに今攻めることは出来ない。エスデスはリヒト達が注意を引いてくれているが、クロメはボリックの護衛に専念している。

 

 この場で突っ込めば骸人形に串刺しにされてしまうだろう。

 

 ……ダメージはあると言っても、肉弾戦で私が勝てる相手じゃない。だから今は待つ、ここぞと言う時を。

 

 絶対に死なないために、チェルシーは仲間達を信じ待ち続ける。最大の好機を。




ガルパンはいいぞおおおおおおおおおおッ!!

……申し訳ない。劇場版見てきたんで興奮してましたw吼えたかった。

かなりお待たせして申し訳ないです。いろいろと立て込んでたものでして。すみません、いいわけですね。
とにかく今回で大聖堂での戦いにしっかり入ることが出来ました。のっけからリヒトがんばってますがw防戦に徹するならエスデス相手でも生き残る可能性ワンチャン?
まぁ今の状態では少なくとも勝つのは無理でしょう。

そして、アカメ最新巻……実によかった! 涙を流しました!
なんといってもあの海の男イケメンすぎるでしょう……。あんなこと言われてあんなことされれば惚れますよそりゃあ。幸せになってほしい。

では、今回はこの辺で。

あ、関係ないですけど、超今更ツイッターはじめましたwなんか回りに進められてしまって……。
まだまだ使い慣れてないんであれですが、どうでもいいこと呟いてるかもです。お暇があったら覗いてみてください。名前は炎狼Xですのでどうぞよろしく。
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