「前……世?」
「……うん、て言っても最初は殆ど覚えてなかったんだけどね」
言ってしまった……後戻りはもう出来ないけど逃げたくはなかった……自分に嘘をつきたくなかった……だからありのままの自分を受け入れて欲しい
「覚えてないのに前世の記憶があるの?」
「正確には澱水の剣を使い始めてから……かな?そこから思い出すようになって行ったの。子供の頃の記憶、小学校の記憶、中学の記憶、高校の記憶……どれもろくなものじゃないけどね、今でも脳裏に思い浮かんで来るんだ……痛ましい記憶がね……蹴られ殴られ陰口を叩かれるは当たり前、下駄箱にゴミを入れられたり物を壊されたり破かれたり机に落書きされたり花瓶を置かれたりした。挙句制服や体操服を破られた事もあるしありもしない噂を流されたこともあったわ」
「そんな……フランが何をしたって言うの!?」
「本当にそうだよね……幼少の頃からだから締めて11年近くは虐めにあったわ。」
頭痛がし始めた……話しているだけでも痛みを訴え始めた辺り症状が再発し始めた証拠でもある、けど止めては行けない……過去を受け入れて前へ進むにはこれしか方法がないから
「唯一私の友達だった子も3、4年経たずに噂に流されて離れてしまったわ……そこからは地獄だった。天涯孤独とはまさにこのことを言うんだなって位虐めがエスカレートしていったわ」
「なんで……虐められてたの?」
「分からないわ……虐めてくる奴の事なんて考えたくないし、大体のやつはどうせ憂さ晴らしとかでしょうけど私の場合は親が喧嘩してたってのと家の都合もあったわね」
「家の都合?」
「所謂家系図ってやつね……私は詳しくは知らないからお父さんとお母さんが知ってたろうけど、家に帰ってきて夜になるとよく言い争いをしていたのをよく覚えてるわ」
帰ってくる度に平静と仲の良さを装って出迎えてきて……最終的には私を捨てた、そうやって一人残らず私を独りにする。周りの人はひたすらに私を虐めていることを隠し遂には地域全体での虐めが起き始めたのだ
「それでもと思って頑張っ耐え続けて高校三年生に上がった春に帰ってきたと思ったら親がいなかったわ……置き手紙には【私たちは暫く家を出ます】の一言だけを置いて居なくなった、結局私には味方なんていなかったんだって絶望したわ」
こいしは静かに聞いているだろうけど正直こんなことを聞いても楽しいとは思わないだろうね……でも聞いて欲しい、私の今までを
「ただ、唯一私にとっての楽しみはゲームだけだったわね……機械程正直な物は無かったから」
「ゲーム?」
「うん……それこそ電子によって創造された色んな世界を見てきたわ、鉄の巨人に乗って世紀末世界を生き抜く世界、剣や魔法を使って戦う世界、幾何学的存在を管理して人類の未来を作る世界、桃色の玉の様な勇者が星を救う世界、他にも色々とやって見てきたわね」
空を見上げてみると雨が降り始めそうな感じがした……遠くで雷が鳴る音が聞こえてきたからかなり近付いて来てる
「後は……人妖から八百万の神々までが恋し愛した世界で沢山異変を解決するゲームもやったことがあるの」
「えっ!?それって」
「私さ……実は最初からみんなのことを知ってたの、お姉様も、勇儀も、萃香も文も椛もさとりも小傘もパチェもルーミアも幽々子も妖夢も皆みぃーんな知ってる……勿論こいしも知ってる」
言ってしまった事には後悔しているけど言わなければいけないと何故か思った……1度全部吐き出した方が楽になると思ったから
「……ねえ、フラン……一つだけ聞いていい?」
「え?……こいし?」
いつの間にか私の正面に移動していたこいし……その後すぐに雷と豪雨が降り注ぎ出して来て【まるであの時と同じ状況】だった
「……私たちのこと知ってたってことはさ……今まで私たちの事騙してたの?」
顔を無理やり合わせられて見たこいしの顔はあの時と全く同じで【瞳から光が消えて冷徹な顔になったこいしちゃん】の姿と重なった……私は酷く後悔した、またあの時と同じ事をしている事を
「……あっ……あぁ……ちが」
「そう、騙してたんだ……巫山戯ないでよ!」
聞きたくない、聞きたくない!見たくない!また独りなんかなりたくない!
「私はフランの事が好きだった!その気持ちすら裏切られた事考えたことあるの!?あるわけないもんねあんたが!嫌われたくないからと言って平気で嘘をついて!内心ほくそ笑んでたんでしょ!巫山戯んじゃないわよ!」
泥濘になってしまっている地面に叩き付けられる……ああ……まただ
「あんたなんかフランなんかじゃないわよ!返してよ……私の好きになったフランを返してよ!」
頭が白くなっていく……恐らくこっちに駆け寄ってきてるさとりとお姉様が血相を変えながら走ってきてるのすら幻覚なんだろう……あの人たちが助けてくれるわけがない
「あんたとなんか友達でもなんでもないわよ!……あんたとなんか!」
「こいし!辞めなさい!」
「フラン!聞いちゃダメ!」
さとりとお姉様が間に入って私とこいしを引き剥がした……が
「絶交よ!」
遅かった
……パキンーーと頭の中でそんな音が聞こえた、雷雨降り注ぐ中でも鮮明に聞こえてしまったその言の葉は私の心をへし折って壊す事など容易いほどだった。そしてその言葉は最後の記憶を呼び覚ます最後のトリガーとなった
ーとある家……
『621、仕事の時間だ』
『メインシステム、再起動』
カチカチ……カチカチ……
『レイヴン……貴女を止めてみせます……この星を焼かせません』
『そこにいるのは……621……なのか?……俺は……お前を、消さなければならない』
『よう……待ってたぜ?野良犬、お前を消す為に俺はこいつらの一部となった……今度こそ、死んでもらう』
カチカチ……カチカチ……
『それでも……私は……人と、コーラルの……』
『そうか……621……お前にも、友人が出来た……』
『俺ァ……てめぇが妬ましかった、苛つくぜ……野良犬に……憧れたんだ……』
ーああ、終わった……じゃあ次はあれやろ
カチカチ……カチ……
『あなたがコンテニュー出来ないのさ!』
ーああ……ああ……ははは……そっか……
━━━━━━
レミリア視点
「……ん、んん?やばっ寝ちゃってた」
目が覚めると皆雑魚寝していた、身体を起こしてみると隣に居たはずのフランはいつの間にか居らず異様に静かだった
スゥ-「あっレミィ!起きたのですか!?」
「さとり?どうしたの?」
戸が空いてフランが来たのかと思いきや血相を変えたさとりが入ってきた、あんまり大きい声出すと皆起きるわよ?
「フランとこいしが居ないんです!白玉楼内を探してみましたが何処にもいなくて……外は雷雨が降り注いでるので出ることは無いと思うんですけど」
「雷雨……外……ッ!?さとり!今すぐ外に向かうわよ!」
「えっ?」
嫌な予感しかしない!
「あっ……あぁ……嘘よね?」
身体の底から冷えていく感覚に襲われた……何故外にあの二人がいるの?なんで言い合っているの?そんなの嫌よ!
「レミィ!」
静止を振り払い靴すらも履くのを忘れて外へ駆け出す、さとりも私の思考を読んだのか血相を変えて直ぐに着いてきた……フランが押し倒される、遠くから見ても酷く脅えているのがすぐに分かった
「こいし!辞めなさい!」
「フラン!聞いちゃダメ!」
……良かった、間に合った。そう思ったが全てが遅かった
「あんたとなんか!絶交よ!」
頭が真っ白になった、耳を塞ぐ直前にそう叫ばれると同時に落雷が周囲に落ちた……息が上がるがそんなことはどうでも良かった
「フラン、落ち着いて……ね?大丈夫だから……私は貴女の味方だからさ、それにこいしだって動揺してああいっただけなんだからさ?本心でそういった訳じゃないからさ」
必死に心を繋ぎ止めようと足掻く……でもフランの顔色は変わらずだった
「こいし、貴女自分が言った意味わかっているの!?例えどんな記憶を持っていてもどんな知識を持っていてもフランはフランなのよ!?ただでさえ心労が激しい今のフランにそんな事言ったらどうなるかくらいわかるでしょ!?」
「知ったことじゃないよ!こいつが先に裏切ったんだよ!そっちこそなんでそいつの味方してるのさ!」
言い合いが酷かった、明らかこいしは動揺の色が見えるがそれ以前に絶望の色が目立った……さとりも自分の妹がしでかした事に怒りを向けていた
「大丈夫だからね……フラン、早く中に入りましょ?」
フランは一歩も動こうとしない……恐らく心がもう壊れてしまったのだろうとは予想出来た……パシン!「いい加減になさい!」ッ!?さとり!?
「……お姉……ちゃん?」
「フランがどれだけ苦しかったかも知らないで……フランがどれだけ苦悩したかも知らないで……自分の感情を優先してまでフランの心を壊したかったの貴女は!この話をするのにフランはどれだけの勇気を振り絞ったと思っているのよ!どれだけ怖かったか!どれだけ恐れたのか!考えたことあるの貴女は!」
頬を思い切り叩いたさとりからは凄まじい怒気が溢れていた……それもそうだ、さとりはフランの事をもう一人の妹と思って接していてくれた数少ない理解者でもある。だからこそ自分の妹の不始末に怒りを覚えるのは当たり前なのだろう
「さとり、1回中へ戻りましょう……このままじゃ二人が風邪引いちゃうわ」
「……わかりました、こいし、後で貴女には詰め寄らせて貰います。普段のお説教とは訳が違う事重々理解しなさい」
そう言ってさとりは茫然自失状態のこいしの手を乱暴に引っ張って白玉楼に戻りだした
「……フラン、私達も「モウイイヨ」え?」
漸く言葉を発したと思ったら押されていた……どういう事?
「ああ、最初からこうすれば良かったんだ……回り道をやりすぎた結果これねぇ……クフフフフ」
顔は見えない、けど私には分かる……今のフランは
「ああそうだ何時もいつもそうだお前たちは!私がお前たちに何をしたってのよ!ただ家が特殊なだけなのにありもしない噂を流して!見て見ぬふりをして!人が嫌がることを平然として!一向に辞めようとせずにニヤニヤケタケタ笑って!そんなに私が嫌いか!そんなに私が憎いか!お前もそうだぞ古明地こいし!ありもしない噂に流されてあっという間に加害者になって!裏切ったのはどっちだ!先に裏切ったと言うなら貴様の方だろうが!」
紡がれていく言葉は最早呪詛のようにしか聞こえなかった、私たちはただ呆然とそれを聞くしか無かった……時折チラリと見える顔は暗く瞳からは光が消えていたのを見て涙しか出てこなかった
「そこまで言うなら望み通りにしてやるよ!けどねぇ、私もただじゃ消えないわよ!貴様らの未来永劫を奪ってでも呪い続けてやる!末代まで祟り続けてやる!地獄の底まで行っても必ず見つけだして殺し続けてやる!」
そう言うとフランは踵を返して白玉楼の壊れた門の所へ向かっていった……本当に消えるつもりなの?嫌だ……ヤダよ!お姉ちゃんを置いてかないで!
ーそう思うとそれが言葉に出てたのか……たまたまなのかは分からないけどフランが首だけをこっちに向けて口だけを動かして何かを言っているのが見えた
『サヨウナラ』……と
私はそこで泣き崩れた……騒ぎを聞きつけたであろう幽々子と八雲紫、八雲藍の3人に連れられ私は泣きじゃくったまま白玉楼の中へと連れ込まれていった
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三人称視点
紅魔館……
ピチャ……ピチャ……ピチャ……ピチャ……ギィー……バタン
土砂降りの雷雨の中ワープして戻ってきたフランは自室へと入っていく……ずぶ濡れになり床を濡らしながら歩く姿を目撃した人は誰一人として居らず咎めるものは何一つとしてない
「……クヒ」
一度狂えばそれは伝播していき彼女の頭の中にはとある1つの思考しか残されていない……それは【破壊衝動】だ
「ああ、なんだ簡単な事だったんだ……異変を起こすことも……世界を壊すことも」
そう言いながら彼女は迷わず澱水の剣を抜刀しベッドに火をつける……そこから広がるように火が燃え移って行きあっという間に部屋全体が青い火に包まれていた
「【掌中の破壊者】」
彼女が指定したのは強欲異聞にて使用した能力応用の技だった……選択したのは『フランドール・スカーレットが今まで贈った物、それに纏わる物』、それだけに飽き足らず『自身の身長が伸びにくい概念、能力に限界がある概念、魔力・妖力・霊力の上限の概念』すら対象に入れ破壊したのだ
「今から、そしてこれからも私は【白織霊華】よ!全部壊して壊して、最後に自分も壊してやる!はは、アハハ!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!」
その後、一人の妖精メイドが巡回に回って来て中を確認すると轟々と燃え滾る部屋の真ん中に長身になったフランが立っている光景だった……その妖精メイドはフランに対して直ぐに避難するように呼び掛けるがそれを無視したフランは口をこう動かした
「あのクソ野郎共に伝えろ雑魚……【賽は投げられた】とな」
その言葉と共に燃え滾る部屋だけを残しフランはその場から消えていった
最後のあそここんなもんで良かったっけ?ってなりながら編集しております作者です、後掌中の破壊者でやってはいけない事をしれっとやってやがるよこの阿呆
……どんだけフランチート化させたいんだよこいつ