翌日、私たちは重苦しい空気の中紅魔館へと帰宅することになった。幸い八雲紫がいてくれたお陰ですぐに帰ることは出来た……カンカンに怒り俵巻きにされ沈んだこいしを抱えるさとりとこいしを睨み続けるルーミアという凄い絵面ではあるものの私も人のことはあまり言えなかった。泣いて泣いて泣き続けて、気が付けば朝になってたくらい泣いた……もうフランは戻ってこないんだっていう絶望感ともっと上手く立ち回れたであろう己の無力感に苛まれながらフラフラとした足取りで帰宅すると屋敷は騒然としてた
「……何かあったのかしら?」
「屋敷内が随分と騒がしいですね、まさか朝っぱらから斬り合ってるとかじゃないでしょうね?」
冗談混じりにそう言われるが柵越しにアクアが血相を変えて妖精館からウンディーネのメンバー全員を連れて本館の中へ入っていくのが見えた……一体何があったと?
「あっ!?お嬢様!皆様方!」
「美鈴、一体何があったの?」
「妹様の部屋が燃えているんです!昨夜から消火活動をしているのですが一向に火が消し止められる気配が無いんです!」
「ッ!?なんですって!」
昨夜……つまりフランはあの後紅魔館に立ち寄って自室を燃やしたのだとすぐに分かった。自分の居場所はもう無いと言わんばわりに行われたそれは屋敷全体の士気を乱すには充分だった
「もぉーなんで朝からこんなことしないといけないさ!」
「文句言わないでアン!妹様に何かあったのは決定的だろうけど一体何が?……あっお嬢様方!お帰りなさいませ……と言いたいですが」
「状況は美鈴から聞いてるわ、フランの部屋が燃えているって」
「はい、お嬢様とさとり様は此方へ!残りのお二方は此方に」
そう言われ二人の案内の元フランの部屋へ辿り着くと
「くっそ!アタシの能力じゃこの火弱められねぇじゃねぇか!」
「【プリンセスウンディネ】!……ありえない、かなりの魔力を込めた水魔法でなんで効かないの!?」
「うっくぅ……氷魔法との併用でも全然消せません!」
サラマンダーのイグニスが火を弱め空かさずパチェのプリンセスウンディネ、ウンディーネの水魔法と氷魔法の併用魔法でもある最上位魔法【アクアクリスタライズシルバー】で一気に消火させようとしていたのだろうが火の勢いは増すばかりだった
「パチェ!」
「レミィ!貴女昨日フランに何したの!」
「やったのは私じゃなくてこいしよ!あの子フランに言っちゃいけないことを普通に口にしたのよ!」
「そんな……じゃあこの火はフランが?……!?」
パチェが再び部屋に顔を向けた為私も見るといつの間にか火が消えていた……淡く光る一人の少女の手によって。その少女はすぐに消えてしまったけれど少しだけフランにそっくりだった
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『……』
館内でも主要メンバーでもある妖精部隊各隊長、ルーミア、美鈴、さとり、パチェ、私……そして未だに俵巻きにされているこいしを含めて話をした。フランの前世について、フランの過去について、昨日の出来事も全て話すことにしたけど……お通夜ねこれじゃ
「つまりフランは自分の過去と向き合う為に私たちにその事を話したかったってこと?」
「そうなる……と思いたいわ。結局私はなんにも出来なかった……」
「そんなことないよ、お嬢様は良くやった……ただタイミングが悪かっただけなんだよフラン嬢も」
「……アン、ありがとう。そうね!いつまでも暗いままだとあの子も帰ってこないし、アクア!状況を改めて教えて頂戴」
吹っ切れた訳じゃないけど私たちがいつまで経ってもめそめそする訳には行かなかった。一番泣きたいのは2度も裏切られたフランの方よ!私たちはあの子を救わないと行けないわ!その為にも情報を集めないと
「あっはい、フランお嬢様のお部屋は先程の謎の現象によって鎮火はしましたが全焼しており修理が必要な状況です。また各部屋を確認した所フランお嬢様からの頂き物やよくお使いになられていた物を中心に壊れていました……恐らく決別の意味を持たせるためにやったのかと」
「決別……そこまでして私たちと離れるとなると無理やりにでも連れ戻した方がいいわね、アン!ハル!ゼファー!イグニス!あなた達四名を捜索部隊として各地を飛び回ってフランの捜索をして欲しいの……頼めるかしら」
「勿論!」「やるよ」
「おお任せってね!」「うん!」
皆やる気充分と言ったところね、私はすぐ様四人を各部隊にすぐ動けるように伝達をした。ついでにルーミアにも捜索隊に編成し探しに行ってもらうようにしたら鼻息荒くしていたわね……大丈夫かしら?
会議は無事に終わり八雲組は関係各所へ連絡する為に離脱、こいしの拘束を解いて後はさとりに任せ他の皆も持ち場に戻し残りは私とアクアだけになった。まあとは言え最終確認だけをして私も仕事に戻らないといけないんだけどね
「あっそうだレミリアお嬢様!一つだけお伝えする物が御座いました」
退出しかけたアクアはクルッと勢いよく振り向き私に近付いてきた……何かしら?
「昨晩巡回をしていた妖精メイド一人がフラン様を見かけたらしく炎の中で笑っていたと言う目撃証言が」
「え?」
「外見もかなり変わっていらしたらしく身長や髪の長さもかなり変わっていらっしゃる為後程捜索隊に伝達は致します……遅くなってしまい申し訳御座いません」
「……いいえ、寧ろ伝えてくれたことに感謝するわ。他には?」
「お姿をくらませる前に『あのクソ野郎共に伝えろ雑魚……【賽は投げられた】』と仰ったらしいんです」
んぐ、随分と辛辣な事を言うのねあの子……しかし賽は投げられた?確かそれってフランスのカエサル王がルビコン川にて言い放った言葉よね?なぜフランがそれを?いえ、意味合いとしては合っているわね。進んでしまった以上戻れないもの
「ありがとうアクア、下がってくれていいわ」
「はっ!」
ーーーフラン、必ず貴女を連れ戻してみせるわ