キヴォトスで紡ぐ音   作:nine( ᐛ )

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結構難産でした。


ホームから飛び降りた知らない誰か

 

 

おっはーーー!!

 

 

…あんまこんなハイテンションは私には合わないね。別の挨拶考えた方がいいかな。

 

さて、今日はD.U.タウンの方へお買い物!

とりあえず砂糖は絶対買い足すとして、他のも色々見ておきたいね。ストックがあった方が安心できるし。

あと、服屋とかコスメ店とか、本屋とか雑貨屋とか、たくさん見て回りたいね!

楽しみだなぁ…動き回る予定だし、動きやすいラフな格好の方が良いよなぁ…

 

 

 

───なんて、この時の私は、そんな能天気に考えていた。その後、目の前で何が起きるか。そんなことは何も予想できなかった。

 

 

 

○○○

 

 

 

予めスマホで時刻表を見てから来たけど、少し着くのが早すぎたようだった。

 

まだギリギリ朝と言える時間だったのでホームのベンチにはどこも人が座っていたが、なんとか空いているとこを見つけ、座り込んだ。

 

こういう待ってる時間って、何をしていようかすごく迷ってしまうから苦手だ。

何かやろう、やろうと思って結局何をやるか決め切れずボーっとしてしまうのだ。

どうやら今回もまた、同じ轍を踏んでしまったようで、電車が到着するアナウンスが流れてしまった。

隣の、学院の制服を着ている人が立ち上がって黄色い線の方へ向かうのを見て、慌てて着いていく。

 

着いていく。

 

 

プァアアアアアアアン!!

 

…ん?待って?この人、なんか動きおかしくないか?心なしかフラフラしてるし、電車来てるのに、前に進み続けて……

 

プァアアン!!

キィイイイイイイドグシャッッ!!!

 

 

「……ぇ?」

 

 

ほとんど息と言って差し支えないほどの小さな困惑が、口から漏れた。

 

だって、目の前で飛び降り自殺を見るなんて、露ほども思っていなかったから。

 

 

私の前に、真っ赤なものが飛び散った。

事故を知らせるサイレンが鳴り出した。

周りの人たちがザワつきだした。

 

ああ…人とはこうも簡単に、死んでしまうのか。

死のうと思えてしまうのか。

 

 

「ハア。飛び降り自殺なんかすんじゃねえよ面倒だな。勝手にナイフでもロープでも使って死んどけよ。迷惑なんだよな。」

 

 

……………?

 

「は?」

 

 

あいつ、なんて言った?

勝手に死んどけ?

そう言ったのか?

 

 

…なぜそんなことが言えるんだ

死にたいと思えてしまうほど、実行してしまえるほど

辛いことがあったからここから飛び降りてしまったのだろうに

どうしてそんな自己中なことを

 

どいつもこいつものたまうことが出来るんだ

 

 

 

○○○

 

 

 

あの後、電車の遅延がアナウンスされたが、そんなことは放っておいて構内から出てしまった。

 

 

理解できなかった。したくなかった。

 

人間の黒い部分を見てしまった。

 

正直、怖かった。

 

あんな悪意がたくさん蠢く場所に、居たくなかった。

 

でも買い物は必要だったから、タクシーを使ってコーギータウンに向かった。

 

朝はあんなに楽しみだったのに、今は街が赤と灰色しか映らない。

何も楽しそうに映らない。

色んな店を見て回るような気力もない。

 

いや、それよりも、今自分の隣を歩いている人が、あの駅の人たちと同じ悪意を隠し持っていたら…そう考えてしまう。

それほどにあの言葉たちは、私の心に傷を入れたようだった。

 

 

 

○○○

 

 

 

結局、砂糖とその辺のよく使いそうな調味料だけ買って、さっさとまたタクシーを呼んで帰ってしまった。

 

お金はかなり使ってしまったが…今回は必要経費と考えようと思う。

 

 

とりあえずテレビをつけ、昼ごはんの準備をしようとすると、さっきの事故のニュースが流れた。

あまり食欲も湧かなかったため、味噌汁だけ作りながらニュースを聞く。

 

どうやらあの自殺してしまった人は、いじめを受けていたらしい。

 

「親とたった一人の親友だけが支えで、数ヶ月に渡る惨いいじめを耐えてきたが、精神がもう虚ろになってしまい、ホームから滑落した」

というのが、ヴァルキューレが証言や見つかった日記帳から判断した結果らしい。

 

その後自殺件数の増加やカウンセリングの紹介などが行われて、別のニュースになったのでテレビを消した。

 

とりあえず味噌汁を1杯お椀によそい、飲み切って、ふと窓の外を見た。

 

特に何かある訳でも気配を感じたわけでもないが、無性に見たくなったのだ。

そうして見ていると、ピンク色の花が、何となく目に付いた。

確かあれは…ゼラニウム、という名前だったか。

……うん、そうだね。

 

 

 

○○○

 

 

 

花屋に寄ってカーネーションと…何となく、赤い蓮の花を買い、意を決して駅のホームへまた戻ってきた。

 

あの人が飛び降りたところまで来ると、既に献花がそれなりにされていた。

私、そしてあの人の親と親友の人以外、その全員があの事故を迷惑としか思っていなかった訳ではなかったらしい。

そう考えると、幾分か落ち着いた気がする。

 

献花をし、目を閉じ、手を合わせる。

 

 

 

その時、ふと…声が聞こえた。

掠れていてよく聞き取れなかったが、きっとあの人の言葉だったのだと思う。

 

そしてまた…曲が聞こえた。

 

 

人の死が、ただ迷惑と切り捨てられる社会。

人に迷惑かけて死ぬなという、的外れとも言うべき忠言。

そんな社会の歪さを提議し、そして残されるべきだった命と、その現状について、考えるよう求めるような歌。

 

きっとこのままでは、また同じ過ちが繰り返されるのだろう。

 

だから、この曲に倣うことにする。

 

 

 

○○○

 

 

 

『薌命歌』

作詞・作曲 Seeka.

歌唱・提供 初音ミク

 

 

「これでよし、と…」

 

急いで家に帰り、音響室でひたすら再現を試み、そして完成したものをまた投稿した。

 

 

この世界は、生き辛い。

いじめとかが重なってしまったら、尚更だ。

だから、自殺してしまう人が現れてしまう。

でも社会は、迷惑とだけ思って、目を逸らす。

自分の感情ばかり優先する。

 

そうじゃない。

もっとその原因を見て、直していくべきなんだ。

 

それを私は、提唱したい。

そして、実行していきたい。

それが、現状を知った私がすべきことだと思うから。

 

 

ゼラニウムが、風の吹く中綺麗に咲き誇っていた。

 

 

 






どうも、nineです。

今回のお話、MVの花を優先するか花言葉で合っている花を優先するか、とかで迷いに迷いました。
実は、私の実体験が多少含まれてます。その時感じたことと今回の曲を合わせてみたんですよね。どうだったでしょうか。

改善点等あれば、是非コメントしていってください!
お願いします!
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