それ以外は雰囲気で流すとよいぞ
めちゃくちゃ上手く行ったドリムールです、私ってこんな強い……いやドリムールそのまんま過ぎてちゅよい……
ちゅよい……な私はこのシューネイの街を救った英雄です、だけど強すぎたせいで公式には魔物が空から現れた魔物に喰われて終わったことになりました。私の活躍? ないないしましょうね〜。
こんな黒歴史で救われた人たちになんか凄く申し訳ない、謝罪の意を評したいところだな。やったら黒歴史語録に変換して反対になりそうだが。
私は対外的には英雄ではないが、事実を知る人物たちからは神の使いや現人神とまで持て囃された、流石に盛りすぎとか思ったが現人神は一般的な最上級の褒め言葉らしいので、まぁ現人神と呼びたければ呼べ(黒歴史翻訳)となった。
一体何の神なのだろう……私……黒色とか?
こんな感じで街を見下ろす事ができる唯一の建物、高台の教会の屋根の上で黄昏れつつ自分のことを振り返る、ゴルドゥークが高所が好きなので私もそれに釣られたのだった。
『己の強さに感心しているようだが、甘いぞ契約者よ。まだ力の一端すら見せてはいない、力の底を自分で見てみろ、我が与えし無窮の力と元来持つお前の力が合わさって底なしであろうが』
「まさかとは思いますがゴルドゥーク、魔神エルトメネンとかトワイライト・ケイオス・フィーネとか……存在するのですか?」
『それらは契約者が作った設定だろう? あの神なら再現しているはずだ、天国も地獄もお前の設定を元に神が作ったがそちらは本場の神の手が入っているがな、我から語ることはしない、己で見ろ』
「ますますもって恐ろしい世界です」
『我からすればお前が恐ろしいがな、このような想像をしていたのだろう。あと、そうだな……近い内にその右腕に来るぞ、そちらは純正のお前の設定通りだ』
「は? ……あっ」
『お前の絶望で飯が美味い』
過去からナイフがズバズバ飛んでくる! 時よ止まれーッ! グアーッ! くそっなんでいきなり刺すのっ! 心にマリアナ海溝空いちゃったよ? どうしてくれんの? つかよー神すら喰らう混沌の獣がメシウマしやがって捌いてゼリー寄せにするぞ
しかも追加設定までご丁寧に飛んできやがってあーもう考えない過去の自分に負けてたまるか!
と、そんな話で勝手に盛り下がっていた所で背後に気配を感じた
「こちらに居ましたか、〝現人神〟様」
「現人神……言うのは勝手ですが、ワタクシの柄ではありませんね、ワタクシはドリムール、それで良いのです。あなたを助けたのは成すべきを成した結果です……ブルスター卿」
「失礼しましたドリムール様、ですが今回は負傷者のみで死者は出ていないのです、どうか胸を張ってください。それとアルタンとお呼びください、騎士であれどまだまだ未熟なこの身、貴方様に敬称で呼ばれる程の価値は持っていませんので」
真面目で硬いなぁ……アルタンちゃん……あぁ出来ればアルタンちゃんと呼びたい私の心オフライン、ドリムールと言うフィルターを通すと卿とか氏とか付き始めるから態度が硬いまんまだよ、かなぴ。
「ならアルタンさんと呼ばせて貰いましょう」
「はっ! なんなりと言いつけください」
なんだこの罪悪感……! こんな良い子に何言わせてんだ私はっ!
『良いではないか契約者よ、お前のことを悪からず思っているぞアイツは。少し押せばモノに出来る』
(邪悪な獣の末路は知っていますか? ゴルドゥーク)
『失敬、生命の先達としてアドバイスしたが必要なさそうだな』
色恋にうつつを抜かす暇があるならこの黒歴史から抜け出したいよわたしゃ……
「さてと、アルタンさん。行きますよ、お父上が呼んでいたのでしょう?」
「ご明察です、ドリムール様」
『我が教えてやっただけだがな』
しーっ! それは言わないお約束。
★
「失礼します父上、ドリムール様を連れてまいりました」
「入ってくれ」
俺はこの街を守れなかった、だが、その代わりに守ったやつがいる、なら俺にはこの街を守る責任者として話すこと、通すべき筋がある。
それは立場上の話であり、本当はあの地獄の猛犬ケルベデュスを容易く屠る化け物を呼び出す人間に興味があった。それは妻も同じで、その化け物への興味と召喚方法には人一倍熱が感じられる。
俺だって王国に名を轟かすブルスターの青き盾、ガルガ・ブルスターとして名を馳せる男だ、妻も風の神シルトシュルティンの末裔の血を引く風の大魔導師アネッサ・ブルスター……この2人で勝てない魔物は王国を探してもまずいない、地上では無敗と言っても過言じゃないと自負している。
それでも地獄の業火で焼き鍛えられたケルベデュスには一矢報いることすら出来なかった訳だが……改めて、地獄が地続きじゃないことに心底安心したよ。この時ばかりはな。
んな化け物を今度は空から現れた化け物が丸呑みにしたと知って肝が潰れた、俺もアネッサも地獄から更に強いやつが現れたのかと思ったが……真相はどうにも違う、地獄じゃなくて、更には天国でもない。どちらでもない獣の姿をした禍々しく神々しい存在だったと聞く、あの時夫婦揃って気絶して見れなかったのが悔やまれる……アルタンから間近で観てもよくわからなかったとしか聞けていないので、本当に未知の魔物、もしくはありえないが天国と地獄の獣を掛け合わせた新しい召喚魔法なのか……
それを全部確かめるには、やっぱり本人に聞くしか無いってことだ
「失礼します、ワタクシはドリムール・フェニックス・ラボレシア・カイザー、どうかドリムールとお呼びください、ブルスター卿」
「現人神と呼ばなくていいかな?」
「そのような過分な賞賛はワタクシには重いので」
「謙遜なさるな、それだけのことを成したのですぞ」
「では気持ちだけ受け取っておきます、で、御用の程は?」
「……ふむ、正直に話してほしい。こちらも正直に話す。
一つ、あなたの素性
二つ、呼び出した獣について
三つ、娘の印象」
「え、えっ? 父上……?」
「順番にお答えしますと、ワタクシは滅びたとある一族の末裔なのです、既にワタクシは一人故に気ままに旅をしています。
そして呼び出した獣、あれにはゴルドゥークと言う名前があり、それ以上は説明する事はありません、強い召喚獣と思ってくだされば……
そして、御息女の事ですが……素敵な方だと思います、芯がある強い女性だ、その上、美しい青色の髪が目を引きます」
「お、おおお、おおおおぉーッ!」
「ええぇぇぇぇっ!? アルタンッ!? どこへ行くんだぁーっ!」
「いや年頃の女の子の前でそんな質問するほうが悪いと思いますが? ねぇドリムール様」
「然り」
えぇっ!? そう……なの?! えーっだってアルタンだってまんざらでもなかったじゃないか! それとこれとは違う? アネッサが言うならそうか……後で謝っておこう。
「ブルスター卿、ではこちらからも良いですか?」
「あ、あぁ……叶えられることなら何でも聞こう」
「そう難しい話ではないのです、ワタクシは仕事もなければ宿もない流浪の身、そろそろ落ち着いた生活をしたいので……何? 静かにしてくださいゴルドゥーク……ん、失礼しました。なので家が欲しいんです」
「その程度なら今すぐ用意しよう、豪邸を用意してもいい」
「いえそこまでは……あぁそうですね、では広い庭もあれば」
「庭……ですと?」
「ゴルドゥークが外に出たいと言っておりますので、庭があればワタクシも嬉しく思います」
「分かった分かった、全て用意しよう」
この街で腰を落ち着けたい……か、街の守りがまた一つ硬くなってしまったな! ガハハ! となれば地位を与え実績を作らせて娘が良いならくっつけてやるのも大いにアリだな。ブルスターの繁栄は約束されたな
「あなた、顔に出てますわよ」
「ぬっ! ハハハ! 失礼した!」
「いえいえお気になさらず、仕事もくださるならワタクシはブルスターの下についていいと考えておりますので、よろしく頼みます」
「ほう! 分かった! では今日付で俺の側近とする! アネッサもそれでいいか?」
「えぇ! いいわね! 街を救った人がここに居着いてくれるなら大賛成よ!」
「いやぁいい方向に話が進んでこちらとしても満足です、それとアネッサ夫人、魔導師の貴方に手解きを頼みたいのですが良いですか? 代わりにワタクシの魔法と交換という形で」
「ええっ! 是非に!」
アネッサの魔法好きが見抜かれていたか、あっぱれな彗眼だな、いやアネッサはかなりわかりやすいだけか……
時折怒ると角が生えたような幻覚を見ることがある……怖いぞ。
なるほどドリムールはかなりやり手だ、力もあるがこの落ち着きっぷりは相当肝が据わっている、余程の修羅場をくぐり抜け腹のさぐりあいをしてきたのだろう。
あと気になったのはゴルドゥークだ、召喚獣ならば術者を上位にした主従契約が一般的だ、対等に契約することもできるが獣が人の言うことに従うことは稀……だがあのゴルドゥークはかなり自由意志の元で動いているのに暴れ出すこともない、それでいて凄まじい力を秘めている……一度調べてみるか……
このあとは俺と妻で話を進め、ドリムールがこのシューネイに住む為の必要なモノを準備して解散することになった。
結局話し合いが終わるまでアルタンは帰ってこなかった。
★
ふぅ……本物の貴族ってあんなにいい人ばかりなのか……品が良い、振る舞いがきっちりしている、懐が広い……失礼がないように終始気を張って疲れたぜ……
ブルスターの屋敷をでて復興中の街並みに目をやる、中々早い速度で復興中だ。魔法があるからこそ人だけで作業が完結している、大型の建物も重機を使わず魔法で作ったり運んだりすれば大幅に手間が省ける……総括、どこの世界も職人って凄い
職人は凄いが私は凄くないので眠くなっている、寝たい
『契約者よ、まだ夜になってはいないぞ』
「いいのですよ……そのへんの木陰で目を瞑るだけですので」
『今、寝るのか?』
「そうですが?」
『忘れているなら聞かせてやるが飯食ってないだろう? 疲れているのはそれが原因だと思うが』
「あっ」
そういやこの数日飯食ってねぇな、なんで今まで忘れてたんだろう?
『それは我が魂を喰らったからよ、言ったであろう。互いに力の源なのだと』
「ケルベデュスの魂で今まで腹が膨れていた……と?」
『その通り』
やっぱ根が深くないか? 深すぎないか? 根本から1個の存在じゃないかこれ……もういいや、ご飯食べよう。思いっきり肉食べよう、しかも脂身のところだ、ギトギトなやつ食べたい。そして寝る
探したら定食屋みたいなところがあったのでそこで飯を食った、街を救ったからタダメシだった、ありがてぇありがてぇ
ふと、飯を食いながら思いついた事がある。
私の人生の目標がない事だ、ここで家と仕事を得たらあとはもう寿命まで生きていくことだってできるがそれでは面白くないと思う自分がいる、あと……この世界を生み出す一端を担った私の責任感が平穏な生活はだめと言っている気がする。
決めた、最強の人助け、しよう。
それをもって私の黒歴史を全て打ち破るんだ。
恥ずかしいモノをいつまでも晒されてちゃ私は憤死してしまう!
あと神にも一発拳をお見舞いしてやる。
そこまで決意した所で食べ終わり、店を出た。
「あっドリムール様……」
「アルタンさん、どうされました?」
「あの……いきなりなのですが……結婚、しませんか?」
「…………は?」