ガチでッ!鎮まれッ!俺の左腕ェ!   作:テムテムLvMAX

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前回、ドリムールはアルタンと偽装結婚の練習をしていた。ドリムールはあくまでも偽の新郎を演じるだけの心積もりだがアルタンは出来れば本気の結婚でもいいと思っていた

そんな二人が画策する中で、シューネイの街に現れたのはブルスター家を目の敵にするハーンスター伯爵の子息、クリフ・ハーンスター、魔物討伐部隊の補給という言い分だったがその怪しい動きとハーンスターのブルスターに対する姿勢から水面下では警戒を厳にしていた

それとは別に魔物討伐部隊からはシューネイを襲ったケルベデュスと同じ魔力を感知したドリムールとゴルドゥークはその動向を静観することにした……


平穏かと思われたシューネイのに、再び嵐の予感が漂う……


†絡み捻れる蛇の如く†

「尊き地母神に奉る。グザ・ウィンド!」

 

 ブルスターの屋敷の庭に一陣の風が舞い、それは幾つも重なり、混ざり、急速に強さを増して空まで届く風の柱となっていった。

 おおっ……空へと竜巻が昇っていく……これが所謂魔法、魔導師の由縁ですよ。

 

 くくく……どうも、ワタクシはドリムール。

 アルタンの母アネッサ夫人に依頼していた魔法の授業を受けているところです、はっきり言いましょう。大学生が本気で勉強して理論立ててやる奴だよこれ、確かにこの世界は私の設定を元に生まれたのでしょう、その中で発展していったので基本的なものは理解できても応用の応用までは追いきれません、無理

 

 

 

『心配せずとも我が代行してやる』

 

(心強い味方だ……!)

 

『当たり前だろうが』

 

 

 ゴルドゥークが居なければ理解が追いつかなかった事実、私は弱い……

 

 

『落ち込み過ぎだろう……』

 

「魔法の理論は理解できましたか? まさか全く体系の違う魔法だとは思ってもみませんでしたよ」

 

「ワタクシもです、魔法と一口に言ってもアネッサ夫人のものは神に連なる魔法、神術式とでも言いましょうか。ワタクシはどこにも属さない無術式、こうもあり方が違うとは思ってもみませんよ」

 

 

 神術式と無術式、その違いは大きい、と言うかこの世界で神に頼らない魔法は無いに等しいそうだ、使われないのは古代呪法と呼ばれるものと、地獄や天国に住む魑魅魍魎たちだぐらいだとアネッサ夫人は言った

 

 

 

「そうよねぇ、あなたの言い方に倣うと神術式の方は神の力によって魔法の強さが左右されるけど、魔力さえあればちゃんと発動するし、実力以上の魔法も頑張れば使える点は使いやすいわね。

 無術式は神の力に依らない安定した強さはあるけれど、どこまで行っても自分一人の実力を超える魔法は使えない……使いにくいと言えばそれまでね」

 

『だが、お前は我の力を得てその制限を一つも二つも飛び越えているのだ、このアネッサも相当の実力者だが、お前が力を入れ解放すれば自爆したとて傷一つ付くまい』

 

 

 こうやって実践されて、解説もつけられて、比較までされたら改めて私の力、ゴルドゥークの力は規格外だと思い知らされる。

 

 それはそれとして神術式の魔法は全く使えなかった、初めて箸を持った外国人の気持ちを理解した気分だっだ、全然分からない、アネッサ夫人は息をするように扱うが私の方はいちいち動作を頭で考えて目で見ながらじゃないと発動すらしない。

 

 神術式の魔法で火を出すので精いっぱいだ、肩凝りと目眩がする、あと知恵熱かな

 

 だけど魔導師という専門職になる理由がよくわかりました、まる

 

 

「それにねぇドリムール君、あなた魔力が物凄く多いし心配になるから言うけど、神に依らない魔法は危険視されやすいの……神に頼らないってつまりそれに近い天国の存在か、それから離れた地獄の存在、そのどちらかなの。どちらにせよ人は強すぎる力を恐れるわ……だから、気をつけてね?」

 

「えぇ分かりました、こうして親身に対応してくれるアネッサ夫人のような理解者は、数少ないと思っておきます」

 

「それがいいわ、いいこと? 人前で魔法を使うなら出来るだけ神術式を使いなさい、いいわね?」

 

「そうですね、そうします」

 

 

 なるほど、やはりブルスターの人はいい人たちだ。こんなに心配してくれて、優しくしてくれて……前世の母親を思い出す……ママァ……

 

 

「じゃあ早速神術式の魔法の練習ね!」

 

「えっ」

 

「ほら! 才能あるんだから伸ばさなきゃもったいないのよ! さっさと構えなさい! 魔力を練る! 最上位魔法使えるまで鍛えるからね!」

 

「は、はいっ!」

 

『カッカッカ……いい修行になりそうだな? 契約者よ』

 

「腰が引けてる! 魔法は肝っ玉で扱うんだよ!」

 

 

 アネッサ夫人超怖ェェェェェ! スパルタだぁぁぁぁ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★

 

 

 

 

 __一方その頃、アルタン・ブルスターはグリフ・ハーンスターとの待ち合わせに合わせて身だしなみを整えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あたしのやる事はグリフから真意を聞き出しブルスターへ危害を加える事をやめさせる、出来れば丸く穏便に事が終わることが目的ね。あたしとの婚約も続いていると思っているし何より昔程動きが良くない、グリフの父親がグリフから何もかも取り上げたせいでああなったのね、あの伯爵のやりそうな事よ

 

 あぁ考え事をしていたら今夜の衣装のボタンがズレてしまった、かけ直して……よし

 

 

「ばぁや、これでいいかしら?」

 

「よろしいかと。ですがお嬢様……本当に行かれるので? グリフ様と言えば誠実なお方として貴族の間で噂が立つお人柄ですが……」

 

「だからこそ怪しい、でしょ? ばぁや」

 

「はい……」

 

 

 

 陰湿な噂から誰も信じないようなバカ話まで貴族たちは面白半分に噂を広める生き物、貴族としては下っ端の騎士階級は“笑い話の中心”にからよくわかる、あのハゲどもの言い方にも慣れたわ

 

 だから、少なからずあるはずの悪い噂がない、聞こえてくるのはハーンスターの賛辞とグリフの誠実さだけ、綺麗過ぎるのは怪しいってばぁやは歴が長いから余計そう思うのね。

 

 

「だけど誰かがやらなきゃ、ましてやブルスターに何かあるかもしれないって思うなら尚更、ね? 分かってばぁや」

 

「……お嬢様、強くなりましたな」

 

「えぇ、そうだといいわね」

 

「昔はばぁやにこっそりお菓子をねだったりお父上にバレないように内緒で子犬を飼うように相談しできたり……そうですなぁお母上の香水をこっそり使っているのもありましたなぁ」

 

「わーっ! わーっ! やめてよ恥ずかしいんだからっ!」

 

「そうやってごまかすのは昔から変わりませんね……ばぁやはいつでも味方です、どうかご無理なさらぬよう……」

 

 

 はぁー全くばぁやには勝てる気がしない……腰が曲がっていても皺くちゃでも歩くのに杖が欠かせなくても、やっぱり流石あたしを育て上げた人だわ、ブルスターのメイド長は最強ね。これなら安心してあたしも立ち向かえる。

 

 

 

「まだまだ気持ちが足りないッッッ! もっと力抜いて腹の底から動かす!」

 

「は、はい!」

 

「ドリムール! 才能にかまけて胡座かいてたらアタシがぶっ殺すよ!」

 

「はいぃっ!」

 

 

 

 そろそろ現実に目を向けようかしら、なにあれ

 

 

「お嬢様……」

 

「ばぁや、あれ、なんだと思う?」

 

「稽古……ですかね?」

 

「我が母親ながら恐れ知らずというか、熱が入ると周りが見えなくなるというか……」

 

「そこはもう血筋ですので……お嬢様の大母様も昔からそうですから……」

 

 

 おばあちゃんから続いてるのね……納得だわ

 でもおかしいわね、大母様ってもう90近いお年だし……でもばぁやは大母様からのメイドだっていうし……

 

 

「ん? そうなると、ばぁやって今何歳……っていない……」

 

 

 家のメイド長って元隠密部隊出身じゃないわよね……これが長いメイド生活で得た技だった……? 

 

 

 さて、話を戻しましょうか。

 

 グリフがもし本気でここを潰すつもりならもう動いているはず、だけれど今は補給と称して大人しくしている……何が狙いか、と考えるならあたし、もしくはブルスターの誰かの身柄、が考えられる。本来向かうはずの場所を通り過ぎてここに来るので一つ怪しい、そしてグリフの格好……部隊を率いるなら己もそれに合わせて鎧を着るべき所を着ていなかった、ここへ到着した時からあの格好だったのは確認している……戦うつもりあるのか? これで二つ怪しい。

 

 ケルベデュス襲撃からまだ日が浅いため守り硬いブルスターと言えど突破される恐れがある、グリフだって無能という訳では無いし策を練っているはずだ、父上が今動ける人員を集めて密かに防衛網を構築しているがそれだってどれだけ持つとハッキリ分からない有り合わせの防衛網……

 

 あたしもできる事をしなきゃいけない、魔物の穴に飛び込んでこそ魔物を仕留められる、覚悟は必要だろう

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 ___場面は変わり、夜はシューネイを暗く染めた

 

 

 

 

 

 

 やっと夜になり私はアネッサ夫人から解放されたのでした。

 

 加減なんて知らないとばかりにあれもこれもそれも教えられ気づけばすっかり夜になってしまった、汗もかいたし服も汚れたので用意していただいた家でゆっくり風呂など浸かろうと帰宅中だ。

 

 

 

「ひーっ……ケルベデュスより酷い扱いを受けましたよ……頭が痛い……」

 

『だが、魔力の何たるかを理解したであろう? それにお前が神術式という魔法もな。魔力の流れは見違えたぞ』

 

「えぇ、あれだけやったんですからそうでないと困りますよ」

 

 

 例えるなら百キロのバーベルでスクワットさせられたレベルで辛いんだぞ、それで1ミリも成長してなかったらもう泣くよあたしゃ

 まぁ、良しとしよう、私の為にと思ってやってくれたアネッサ夫人のごうも、スパルタレッスンは身になった訳だし……体の空いちゃいけない栓が空いた気分というか、なんかこうふわっとした表現になるがとにかく血の巡りが良くなった気分というか、とても清々しい気分というか

 

 

『無理に言葉にせずとも良いのではないか?』

 

「こればっかりはモヤモヤするので言葉にしておきたいのですよ」

 

 

 開放的な気分と言えば少し違うが、体の内側を血流とは違う別の物が流れているのが感覚的に分かるようになった。

 これが魔力だ、そして、使えてなかったゴルドゥーグの力を更に引き出せるようになり人の魔力すら正確に見れるようになった。

 

 これがどれだけ凄いかというと達人の見切りがホイホイ出来るようになる、魔力の流れで相手が何をしようとしているのか感知出来るからそういう事も難しくない。

 

 それが例えば物陰に隠れている人間であっても簡単に見つけ出すことが出来る様になった。

 

 

「そこでワタクシを観ているお人、不穏な動きをしているとかえって誤解を生みますよ? ほら、話があるなら直にしましょう」

 

『あっ、お前』

 

 

 ブルスター邸から出た時からずっと私を見つめていた視線が気になっていたのでいっそのこと正面から話し合おうと、そちらに向いて魔力に声を乗せて、隠れている積み重ねられた木箱の裏の人物を誘う。ゴルドゥークがなんか焦っているがどうした? 

 

 まぁ良いか、さて出てきてくれるかな。いる事は完全に把握しているが……

 

 

「流石にバレてたようだな……まぁこれで下手に隠れても見つかる事は分かったからいいとしよう、はじめまして英雄様、ラボレシアの名を持つものよ」

 

 

 ……? 

 

 

「俺は古代占星術と世界中の歴史が得意でな、まさに今英雄様が欲している物を持っている人間ということになる訳だが? どうかな? 俺を使う気はないか?」

 

 

(なんの情報も入ってこないんですが……?)

 

『なんだこの……トンチキな姿は……?』

 

 

 私達の目の間に現れたのは……えっと、形容するなら眼帯を付けた髪ふっさふさオジサン。

 

 着ているマントやズボンやベストがスパンコールのようなものでギラギラ光って目に悪い、異世界には街灯はあるがネオンは無いのでバリバリ視覚を殺しに来ている変人……そう評価するしかない。

 

 

「見た目のインパクトは大事なんだぜ英雄様」

 

『限度があるだろうがッッッ!』

 

(目ぇ……痛えぇ……)

 

 

 情報過多で脳が理解を拒んでいるので、受け答えで精一杯だった。

 

 

「あ……うん、ソウデスネ……?」

 

「で! 俺を使う気はないのか?」

 

『嫌だぞ』

 

 

 ゴルドゥークが即答するレベルのクセの強さぁ! 

 でも、落ち着いてみれば古代占星術と世界の歴史に詳しい人物は喉から出が出るほど欲しい人材ではある、本人の属性は、無視出来たらの話だが、私は弱い……

 

 

「ならぁ一つ、サービスしよう! これで俺が有用だと思ったなら契約書にサインしてくれるな!」

 

 

 圧強っよ……

 

 無造作に胸ポケットから取り出したみっちり文字の書かれた書面を提出してきやがった、受け取るつもりは無かったがこちらのポケットへねじ込まれ捨てても戻って来る魔法もかけられた、何コイツ怖っ

 

 

「じゃあ直近のことで一つ……」

 

『正直関わりたくはないから黙っていたが……』

 

(申し訳ないゴルドゥーク……)

 

 

 

 手を合わせ「マヌマヌマヌ……マヌマヌマヌ……」と言いながら不思議な踊りを見せつけてくる全身ギラギラオジサンは長い時間を踊り、ある時覚醒した様に目を見開き己の頭を掴んだ

 

 

「ソイヤーッ!」

 

『(ヅラだったのか……)』

 

 

 スパーン! と叩きつけられたヅラだったものは地面を転がり止まった。

 

 

「ふむ、今夜は寝ないほうが良いと出た。この街がまた焼け野原になり、英雄様と関わったものはより深く被害を受けることになるだろう……ふむ、恐ろしい結果だ!」

 

 

 真面目なのかふざけてるのか分からない……! テンションの……! テンションの落差が激しすぎる……! 

 しかし街が襲われるとは? またケルベデュスのような地獄の魔物が現れるとでも? 

 

 

『だが……ふむ……コヤツの言っていることは、正しいかもしれぬ』

 

「なんですって?」

 

『今さっきこの街の全員記憶を読み取ったが……争いの火種になりそうなものを見つけた。それはブルスターにも縁があるようだな』

 

「ッ!?」

 

「おー分かっていただけたかな? じゃあ契約書にサイン、よろしくお願いしますよぉ!」

 

 

 男は走って逃げていった、ご丁寧に魔法の隠蔽も施していたので探せないというおまけ付き。

 

 ゴルドゥークの話が本当なら、今すぐにでも手を打ったほうが良い。私がやれる事と言ったら武力介入くらいだろうからな

 

 

『行くのか?』

 

「当然です、恩には恩で返すのがワタクシの流儀、そうでしょう」

 

『その選択をしたならば何も言うまい』

 

 

 

 私達は急ぎブルスター邸へ戻った。

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