転生したら第八王子だったので、早めに呪術を極めます 作:三世
『傀儡操術』
人形などの物質に呪いを込めて呪骸を製作、操作する術式だ。
前世の時点で解析は終えていたため、他の術式よりいくら扱い慣れている……のだが、俺の場合この術式の強みを活かしきれない。
俺の使う傀儡操術の術式範囲は半径三十メートル程度。
遠隔で大量の呪骸を操り、数による有利をとるのが強みの傀儡操術において、この範囲はあまりにも狭い。
そのため前世でも、そこまで使うことはなかった。
……まあ、完全上位互換が二人も居たから、というのもあるが
──しかし、大型ゴーレムとなると、話が変わってくる。
大型ゴーレムは基本、十~二十メートル程度の大きさのものが多い。
この大きさの呪骸を操作するとなると、流石に今の俺でも呪力量が足りず、操作できたとしても十数分程度が限界だろう。
しかしそれはあくまでも、呪骸を呪力のみで駆動させた場合の話。
ゴーレムなら、その動力を魔力炉で十分に補える。
それにこの場合だと、操舵を使ったゴーレムの操作に加え、傀儡操術による補助操作が加わるため、より繊細な操作が可能になる。
以上のことから、あれから数週間ほど、ゴーレムの製作を行っているの……だが。
「──地道すぎる……」
傀儡操術をゴーレムに対応させる以上、ゴーレムの部品ほぼすべてに呪力を込める必要がある。
これがまた、死ぬほど面倒くさい。
ネジやボルトだとかの部品に関しては流石に既製品をそのまま使っているが……関節部分や装甲部はそうもいかない。呪力を込めて作る必要がある。
例えるなら……そうだな、小規模なビルを丸ごと絵筆一本で塗装している様な感覚だ。
しかもそれを、何度も何度も繰り返す。気が狂いそうになる。
「おはようフルーフ……って、またそんな地道な作業してるの?」
背後から、イドの声がした。
「地道だが絶対に必要な作業なんだ、これをサボったら最悪操縦出来ないなんてことになりかねん」
変換器の製作からもう数週間が経つが、イドはほぼ毎日、俺の工房へ顔を出しにくる……というかこれはもう入り浸りの域に近いな、一日中いることも多いし。
彼自身の研究だとか、ゴーレムの製作は大丈夫なのだろうか……
「毎回やってるそれ、それも呪術ってやつ?」
「ああ、まあこれはちょっと特殊だけどな」
イドが、興味深そうに俺の手元にあるゴーレムの部品を覗き込んでくる。
……これつくる以上隠しているほうが面倒だから、つい話しちゃったんだよな、呪術のこと。
まあ本人はこれを態々誰かに話すつもりは無さそうだし、そもそもそういうことをするような奴でもないから問題は無いのだが……
「……イド、
「え?……あっごめん!また勝手についてきちゃって!!」
そう言いながら、イドは肩に乗っている泥のようなものを軽くはたいた。
『──オヤ、酷いデスねェ、私は仲間外れデスか』
「……別にみちゃダメとは言ってないよ、言ってくれさえすれば喜んで見せるさ──タルタロス」
黒い泥のような身体に、歯車のような瞳をしたゴーレム──タルタロスが、イドの影から浮き上がるように現れた。
こいつは定期的にイドにくっついて現れる。俺の工房の何が気になるのか、しょっちゅうイドに気付かれない様に覗き見をしているのだ。
「もう、ついてきちゃダメっていったでしょ」
『そう言われたら、逆にに着いていきたくナルものデスよ』
「いや、まあ来るなとは言ってないんだが」
こいつの見た目ちょっとビビるんだよな、最初に見たときは呪霊と間違えて赫ぶっ放しそうになっちゃったし。
「別に覗き見しなきゃ構わないよ、俺からしてもお前は興味深い」
『……オヤ、嬉しいことを言ってくれマスねェ』
こいつは
パートラムで未だに解明されていない……というか、そんなゴーレムが造られたなんて話もきいたことがない。
『それにしても、これだけの時間を掛けてコレだけとは……ずいぶん悠長にしているんデスねェ』
「そ、そうだよ、このままじゃゴーレム武闘会に間に合わないよ?」
?
何言ってんだ?
「俺、別にゴーレム武闘会出場しないけど……」
「えっ」
『……ほう?』
そういえばそうか、錬金大祭……あるって言ってたな。
錬金大祭
世界中から錬金術と言う錬金術がパートラムへと集結するパートラムの祭りだ。
その目玉が、ゴーレム武闘会。
トーナメント形式で戦闘用ゴーレム同士が激突し、最強を決める催しである。
確かに、出場しているゴーレム達に興味はあるが……でもなぁ……
「そもそも俺出場資格持ってないし……」
「いっいや、女王様に言えばそのくらいなんとか……」
「ならんだろ、あの人そこまで甘くないし」
イドに対しては結構優しげな気がするけど……俺は無理だろ、基本虫を見る目で見られてるし。
「えっ、ほんとに出ないの?」
「おう。イドは今年出るんだろ?俺は観客席で応援してるから、がんばれよ」
まあイドだったら大丈夫だろ、今年初出場とはいえ、あのゴーレムに勝てる奴なんて想像がつかないし。
そして迎えた錬金大祭。
普段から熱気にあふれるパートラムは、いつもに増して活気が満ち溢れており。
その中心、コロシアム中央では、首を飛ばされ見るも無残な姿となった少女型のゴーレムと、その反対側で獅子型のゴーレム──レオンハートが佇んでいる。
「ま、マギカミリアぁぁぁあ!!!!!」
『決着ゥゥゥ!!!流石は神童イド!!決勝戦でも瞬殺!!一瞬でマギカミリアの首を吹き飛ばし勝利!!!優勝はイド&レオンハートで決定だあぁあ!!!』
──ま、そうなるよな
決勝戦の相手となったゴーレム──マギカミリアも、決して弱いわけじゃない。
機体に刻印された数十種類の魔術は、発動されれば大抵の相手はひとたまりもないだろう。
「けど、相手がレオンハートじゃなぁ」
ゴーレムにあるまじき異様とも言える機動力、強靭な装甲。
そしてそれらを霞ませるほどの、刻印された上位魔術の数々。
まともに相手出来るゴーレムなんて、まずいない。
「……それにしたって、あいつ」
なんか、気が立ってるな
なんでだろ?優勝したのに
「……ま、大丈夫か」
アドレナリンが出すぎたとかだろ、試合とかじゃよくある事だし。
「兄さんもイクシオンさんも待たせてるし、もう行くか」
来る途中で見た即席麺みたいなの気になってたんだよな、まずはアレ食べに行こ。
「……フルーフ、そのゴーレム、完成したんだよね?」
「おお、あとは諸々の調整を終えれば完成だな」
錬金大祭から数日、俺のゴーレムも完成間近となって、いつものようにイドが訪ねてきた。
「それにしても武闘会はすごかったなぁ、圧勝だったじゃないか」
「……そう、だね」
どこか煮え切らない返事。まだ優勝の実感が持てていないのだろうか。
「……ねえ、フルーフ……お願いがあるんだ」
「?」
イドは、意を決したようにこちらを見る。
「僕と、決闘してほしい」