転生したら第八王子だったので、早めに呪術を極めます   作:三世

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「空間系統魔術──虚天蓋(きょてんがい)

 

 イドが詠唱を終えると、俺たちとゴーレムのみを残して、周囲が真っ白く塗り替わった。

 

「虚天蓋……!空間系統の中でも最上位の結界じゃねえか」

 

 昔魔導書を読み漁っていた時に見たことがある、確か物理的には破壊不可能な結界だとか。

 

 イドに魔術の才があるとは常々感じていたが……まさかここまで出来るとは。

 

「ここなら、周囲を巻き込む心配もない」

 

「……なるほどね」

 

 イドが挑んできたのは、ゴーレム同士の決闘だ。

 俺が普段使っている荒地を使ったとしても、流石にコレだけの質量がぶつかり合ったら目立つだろう。

 

 ……正直、何故決闘を挑まれたのかはわからないが、堂々と性能のチェックができるのはありがたい。

 

「そういえば、そのゴーレムの名前は?」

 

「ああ、こいつはな」

 

 名前自体はこいつを造り始める前から決めていたんだよな、まあ()()は勝手に名前使ったことを怒りそうだけど。

 けど、コイツは

 

 

 

 

究極(アルティメット)メカ丸」

 

 

 

 

 ──俺が知ってる中で、最もカッコいいメカだ。

 

「あるてぃめ……うん、まあフルーフがそれでいいならいいや」

 

「んだよ、カッコいいだろ」

 

 憂太と同じようなこと言いやがって、なぜみんなこのセンスが分からないんだ。

 

「……とにかく、始めようか」

 

「おう、ルールはどうする?」

 

 瞬間、イドがピタリと止まる。

 

「もちろん──壊れるまで」

 

「……OK」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 互いにゴーレムへと乗り込み、準備が整った。

 

 イドの世話用ゴーレムであるマロン、彼が手を振り下ろしたら、勝負が始まる。

 

『それでは……始めッ!!!』

 

 その声が聞こえた瞬間、眼前にレオンハートの爪が迫る。

 

 ──速いな、やっぱり機動力で言ったらあっちに軍配が上がる。

 

 咄嗟にメカ丸の腕を振り上げることによって防御を行うが、防ぎきれずに外装が抉られた。

 

「……ッやりにくいな」

 

 ゴーレムは基本的に魔力を通して核にイメージを送り操作する。

 だからこそイメージのし易い人型──二足歩行の機体が主流だ。自身の身体と同じ感覚で操縦できるからな。

 

 しかし、レオンハートは獅子型のゴーレム、すなわち四足歩行。

 

 人型を遥かに凌ぐ速度、人型ゴーレムでは成しえない異次元の機動力。

 それに加えてこの姿勢の低さ、やり難いことこの上ない。

 

「──驚いたよ、防げるんだ、今の」

 

「……そう見えるかよ」

 

 外装だけの被害に収まったとはいえ、十分にダメージは食らっている。

 今は動きを止めているものの、ノンストップで猛攻を仕掛けられたら先にやられるのはこっちだ。

 だからといってこっちから仕掛けても、すぐにカウンターを取られて負け……となると

 

「『刀源開放(ソードオプション)』」

 

「へぇ、変形ギミックなんて仕込んでたんだ」

 

 抉られた右腕の外装を投げ捨て、その内側に仕込んでおいた刃を展開する。

 そして

 

「シン・陰流『簡易領域』」

 

 俺自身を起点として簡易領域を展開。

 

 メカ丸を覆ったうえで、その周囲まで簡易領域を展開しなければいけないから少ししんどいけど、反応速度でいえばこれ以上のものは存在しない。

 

「何、誘ってるつもり?」

 

「当然」

 

「……いいよ、乗ってあげる」

 

 ──食いついた

 

 即座にメカ丸の頭部を飛ばそうとレオンハートの爪が迫る。

 簡易領域による自動反射によりカウンターを──

 

「そう来ると思った」

 

 瞬間、レオンハートの口からすさまじい勢いの魔力が放出される。

 

 魔術、恐らくは風系統か?まあいい、どちらにせよ──

 

「それ()、狙いだ!!」

 

 自動反射で振り上げられた側とは逆の腕、左腕から五つの火の玉が射出され、レオンハートの攻撃を相殺する。

 

「──『火球』!?なんで魔術を」

 

「『大祓砲(ウルトラキャノン)』!!」

 

 即座、左腕から呪力を放出。

 ビームのように収束されたそれは、的確にレオンハートを打ち抜いた。

 

「ま、あんな構えしてたら嫌でも右腕に注意が向くよな」

 

 大祓砲(ウルトラキャノン)が消えた跡から、様々な場所に傷跡のついたレオンハートが出てくる。

 

 今のを食らってその程度か……となると、一撃で仕留めるには()()しかないな。

 

「……魔術、使えないんじゃなかったの」

 

 イドが、俺を非難するような声を上げる。

 

「ああ、()()使えないよ。メカ丸は使えるってだけ」

 

「……魔力の変換装置」

 

「正解」

 

 俺には魔力が無い、だから当然ながら魔術は使えない。

 しかし、前に造った変換装置があれば、呪力→火力→魔力という経路で魔力の生成が可能となる。

 

 生成された魔力が俺に還元されることはないが、ゴーレムに刻まれた術式にそれを通せば、実質的に俺でも魔術を発動できるわけだ。

 

「まだ複雑な術式は使えないけどな、今は火球でも精一杯だ」

 

 本当は『炎烈火球』を積みたかったんだが、術式は長いし消費魔力がクソ多いから諦めたんだよな。

 

 ──あれ、そういえばロイド兄さん炎烈火球ポンポン出してた様な……

 

 …………考えるのはやめておこう。

 

「…………ごめん、フルーフ」

 

「?」

 

 イドは静かに言った。

 

「僕、フルーフはゴーレムでの戦闘は未経験だからと思って、手を抜いてたんだ」

 

「……へえ」

 

「けど、ここからは手加減しない」

 

 ──どろり、と音をたて、レオンハートの雰囲気が変化した。

 

「……上等だよ、言い訳考えてろクソガキ」

 

 手を抜かれてるってのは、感じていたが

 

 ──実際言葉にされるとここまでムカつくものなんだな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──王城で初めて顔を見た時から、その姿が頭から離れなくなった。

 

(……そっくりだ)

 

 真っ白の髪に、僕よりも少しだけ濃い空色の瞳。

 そして──()とよく似た、その顔立ち。

 

(……いや、髪色まで含めたら僕の方が似てるのかも)

 

 女王様と何かを話している時も、そんなことばかり考えて、ずっと上の空だった。

 

(あの子も、魔術が好きなのかな)

 

 そう思った瞬間──かつて、()との圧倒的な才能の差によって粉々に打ち砕かれた心に、また微かに亀裂が走ったような気がした。

 

(……やめよう、あの子に失礼だ)

 

 錬金術のためにこの国に来た時点で、僕なんかよりもずっと志の高い子なんだろう。

 

 

 ──そう、思っていたのだけれど

 

 

「…………」

 

「……うう」

 

 女王様に彼の教師役を任され、実際に会ってみると──何故か彼は、ひたすらに僕の顔を見つめてきた。

 

(なんで……?仮面付けてるのに)

 

 正体に気づかれたのか、かれこれ一分くらいはこうして見つめられている。

 

 ()によく似た顔がすぐ目の前にある。

 そう思うと何だか、変な気分になってしまって──

 

(なんだか、破裂しちゃいそう)

 

 結局、メイドさんによって彼は引きはがされ、彼のしている研究について見させてもらうことになった。

 

 差し出された設計図には、何度も書き直した跡が残っている。

 試行錯誤の痕跡、けれどまだ、改善できるところがある。

 だからそれを、彼に伝えたら

 

 

「うわマジだ!!」

 

 

 ──思わず、面食らった

 

 ()()()、僕が()に求めた反応が、そのまま帰って来たから。

 

 そこからは、僕も止まらなかった。

 三日間の間、ほとんど寝ることもなく、彼と一緒に変換器の製作に没頭した。

 

 そうやって一緒にいると、段々彼自身の事も分かってきて

 

 彼がどうしてこれを作ろうとするのか

 彼がどんな人生を送ってきたのか。

 ……そして、彼の()()()()が今、何に夢中なのかまで。

 

 なんて、関係ないことまで、彼に教えてもらった。

 

(そっか、魔術は使えないんだ)

 

 代わりに『呪術』が使えると、彼は言っていたけれど……でも、何故かそう思うと少し心が軽くなったような気がした。

 

「ね、ねえ!これからもこうして君のところに来ても良いかな!!」

 

「え、別に構わないけど」

 

 つい、そんなことまで言ってしまって

 

 今考えたら、女王様に彼の先生を頼まれているんだから、変なことを聞いてしまったかも知れないけれど。

 けど、そう言ってもらえたのがうれしくって、家に帰ってから何度も、マロンとコロン、それにタルタロスにも彼の話しをした。

 

 それで彼が次に大型のゴーレムを作ると聞いて、僕はてっきり彼がゴーレム武闘会に出るものだと、そう思っていた。

 

(フルーフと、戦えるんだ)

 

 ずっと、ワクワクしてた。

 フルーフを倒して優勝すれば、()に勝つことだって、夢じゃないかもしれない。

 そんな邪な思いでいっぱいだった。

 

 ──けれど

 

「俺、別にゴーレム武闘会出場しないけど……」

 

「えっ」

 

 衝撃だった。

 

 僕も、タルタロスも、彼と戦えるって、そう思っていたのに

 

 帰ってきたのは、簡単な拒絶の言葉

 

 梯子をいきなり外されたような、そんな気持ち

 

(──なんで?)

 

 ゴーレム武闘会の最中も、ずっと、彼への疑問がずっと溢れていた。

 

(なんで)

 

 どれだけ相手を圧倒しても、勝ち進んでも、その思いはくすぶり続ける。

 

(……結局、優勝しちゃった)

 

 決勝戦が終わって、表彰の場で──ふと、彼が僕の優勝に喜んでくれているのかが気になって、客席の中を探した

 

(いた!)

 

 

 ──しかし見つけたのは、すでに闘技場を出ていこうとする。彼の後ろ姿だけで

 

 

(──どうして?)

 

 

 何も、興味すら持たれていないと思うと

 

 苦しいような、悲しいような

 

 いっそ消えてしまいたいくらいに、自身が惨めに感じてしまって

 

(……もう、いいや)

 

 諦めにも似た感情が、心の底へ沈んでいく。

 

 それから数日。

 気持ちの整理がつかないままに寝込んでいた僕に、彼の工房を覗きに行っていたタルタロスが告げた。

 ──彼のゴーレムが、完成したと。

 

「僕と、決闘してほしい」

 

 自分の気持ちに決着がつけたくて、ついそんな事まで口走ってしまった。

 

 

 そうして、僕の我儘から始まった決闘。

 

 彼のゴーレム…………究極(アルティメット)メカ丸は、想像以上に強力だった。

 

 武闘会で対戦したゴーレム達が対応できなかった攻撃にも、難なく対応し。

 僕の全く予想外の攻撃もしてきて。

 

 つい、嬉しくて

 本気を出したくなってしまった。

 

「ここからは、手加減なんてしない」

 

 ──最初は、ただ()に重ねていただけだった

 

 邪な考えだってあった。

 

 けど、今は──

 

「──行くよ」

 

 ただただ、この瞬間が、心地いい──!!

 

 

 

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