転生したら第八王子だったので、早めに呪術を極めます   作:三世

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『王水幕』

 

 レオンハートが全身から黄金色の液体を生成し、そのまま纏う。

 

 ──『王水幕』……確か、火と水の二重合成魔術か。

 触れたあらゆるものを溶かす攻防一体の結界だったはず。

 

 近接戦の対策か? ……いや、どうでもいい。

 

「だったら、遠隔で吹き飛ばすだけだ」

 

 メカ丸の右手を構え、呪力のチャージを開始する。

 呪力は単なるエネルギーだ、溶けるもクソもない。大祓砲(ウルトラキャノン)なら、あの程度の結界じゃ防ぎきれない筈。

 

 先程放ったものよりも密度を上げた大祓砲(ウルトラキャノン)を放とうと構えた、その瞬間。感じ取る

 

 

 ──違和感。

 

 

 あのイドが、この程度の結界を張っただけで、こんなにも長く隙を晒すのか?

 

 そして同時に、気付く。

 

 ──あのレオンハートの中に、イドの魂を感じない。

 

「ッ……まさか」

 

 ほぼ反射で、背後へと大祓砲(ウルトラキャノン)を放つ。

 

 しかし空振り。

 メカ丸の足元に、影が落ちた。

 

「惜しかったね」

 

 瞬間、上空から凄まじい衝撃がメカ丸を襲う。

 

 

 

 ──ドゴッ

 

 

 

 瞬間的に後方へ跳びなんとか被害を最小限に抑えようとするが、大祓砲(ウルトラキャノン)を放つために突き出していた左腕は吹き飛ばされてしまった。

 

「……流石だね。左腕だけで済んだなんて」

 

 

 ──クソ、やられた。

 

 

 ……恐らくレオンハートは、『王水幕』を纏った直後に後退。

 『王水幕』の外殻だけを残したデコイを置き、上空へ跳び上がっていたのだ。

 

 ──王水幕に気を取られてたな、近接戦に持ち込まれたらやられるのはこっちだってのに

 

「これも初見で避けられるとは思わなかったな」

 

「見通しが甘すぎだな。本当に切り札なら、避けられた場合も考えとけよ」

 

 ……しかし、困った。これじゃ呪力の放出口は二箇所だけだ。レオンハートを確実に倒せる手段を一つ失ってしまった。

 

「……でも、このままじゃ君の負けだよ」

 

「……ハッ、あんだけ言っといて身代わり作るだけかよ。大した()()だなぁ」

 

 あの口ぶりだ。この程度で終わるわけがない。

 再び呪力のチャージを開始する。

 

「……いいよ。せっかくだ、見せてあげる」

 

 再び、レオンハートから王水が生成される。

 ただし今回は全身ではなく──口腔部のみ。

 

「『王剣』」

 

 生成された王水は剣へと変形し、レオンハートはその柄を咥えた。

 

 王水で形成された剣、まともに喰らえば溶かし斬られてお陀仏だろう。

 

「本来これは、()に見せるために用意したもの」

 

 前屈姿勢へと移行し、こちらを確実に仕留める構え。

 

「本当にこれで終わりだよ、フルーフ」

 

 その言葉と同時に、レオンハートが襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『呪具が作りてぇだァ!?ナマ言ってんじゃ無えよクソガキィ!!!』

 

『けど、作れるようになりたいんです』

 

『さっさと帰れやクソガキが!!ブチ殺すぞ!!』

 

『──マジで刀投げて来てんじゃねえよ糞ジジィ!?』

 

 いつのことだったか、任務の途中で知り合った呪具職人の爺さんに弟子入りをせがんだことがあったな。

 殺すって言ってマジで殺しにかかってくるタイプの人だったから、何度か殺されかけたけど。

 

 弟子入り、とまでは行かずとも、製造工程を軽く教えてもらう事はできたのだが、その時に言っていた言葉が、やけに耳に残っている。

 

『強い呪具ってのはな、それだけ強い呪詛が籠ってるってことだ』

 

『だから素材も、なるだけ曰く付きのものがいい、極論は死体とかだな。まあ実際に一人、死体で呪具を作ってるイカれ野郎を知ってるが』

 

『お前はそんなもん作ろうとなんて思うなよ、まともな奴が呪具作りなんてして、正気でいられる訳がねえ』

 

 一週間程度一緒にいただけだし、今となっては名前も、その後どこにいったのかも知らない人だ。

 

 しかし、呪具の作り方は十分に()()事ができた。

 

 

 ──そしてこれは、呪具と呼ぶことすら烏滸がましい、極限まで本物に寄せただけの模造品(レプリカ)

 

 五条先生から聞いた情報を元に再現しただけの……能力だけで言えば、本物の十分の一にも満たない程度の粗悪品。

 

 魔虚羅の能力を基盤に構築されたその呪具は

 

 究析術式によって相手の術式を完全解析した時にのみ発動可能。

 使用時に呪力を大量に消費する。

 そして、使用後即座に消滅する──この三つの縛りによって性能を担保している。

 

 十分の一の能力。

 

 されど、それは。

 

 ()()()()の、十分の一。

 

 

「〝天逆鉾(あまのさかほこ)〟」

 

 

『あらゆる術式の強制解除』

 本来であれば魔術には適応されないその能力は、製作時に縛った“結界術のみに有効”という縛りによって、呪術と魔術の壁を、強引に超えさせた。

 

 右腕から展開している刃

 その中から一つ、その呪具だけを王剣に当たるよう射出する。

 

 究析術式による完全解析は、魔導書によって術式の構成を既に知っていたことが幸いし、イドが王水幕を展開した時点で十分に可能だった。

 

 王水で形作られた、全てを溶かし斬る最強の剣は、

 “最強の盾”とも呼べるその鉾によって、あっさりと崩れ落ちた。

 

「……は?」

 

 逡巡。

 

 イドの、一秒にも満たない思考停止。

 

 ──しかし、それで十分。

 

 メカ丸のチャージが、完了する。

 

 

「『二重大祓砲(ミラクルキャノン)

 

 

 口部と腕部に溜めていた呪力を収束。

 レオンハートを飲み込む極大のレーザーが射出された。

 

「ッッッ!!この程度で倒せるなんて!!」

 

 全身を焼かれながらも、レオンハートは最速で突っ込んでくる。

 

「思ってねえよ」

 

 切り札が通じないなら、次を打つだけだ。

 

 通常では捉えきれないレオンハートの機動力。

 だが一瞬だけなら──上回れる。

 

「『推力加算(ブーストオン)』」

 

 肘部のジェットが炸裂し、爆発的な加速を生む。

 

 残存呪力、全てを叩き込んだ一撃。

 

 外すはずがない。

 

「──ッ!!」

 

 レオンハートの胴体を、正確に抉り抜いた。

 

「俺の、勝ちだ」

 

 そう宣言した瞬間、呪力の枯渇によって、俺は意識を失った。

 

 

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