転生したら第八王子だったので、早めに呪術を極めます 作:三世
「……ここまでか」
腕が落ち、呪力が枯れ果て、
「ケヒッ……よく耐えたものだな、まさか肉の形を保っているとは思わなんだ」
「お前今15本とかそんぐらいだろ、本気でもないなら世辞はいらん」
「いいやよくやったものだ、まさか戦闘中に俺の術を
「通じてねえ癖によく言う、流石は呪いの王ってか?」
「ククク……だが貴様があの時領域を習得していれば、勝ったのは俺ではなくお前だったかもしれないぞ?」
「勝った奴に言われても嬉しかねーよ、それに
宿儺の領域範囲が思いのほか
「早く虎杖に代われ、もう限界だろお前」
「……そのようだ、まあ嫌がらせ程度にはなっただろう……じゃあな、中々喰いごたえがあったぞ」
一瞬宿儺の体が弛緩したかと思えば、顔の呪印が消える。恐らく虎杖の人格が戻ってきたんだろう。
「先、輩」
「おう、おかえり」
主導権が宿儺の時の記憶が流れ込んで来ているのだろう、顔色がみるみるうちに真っ青になっていく。
「俺、俺のせいで」
「違う、宿儺だ、お前じゃない」
意識が朦朧としてきた、だが、これだけは、言わないと
「いいか、どうせお前は自分のせいだとかそんな巫山戯たこと考えてんだろうけどな、これを引き起こしたのは宿儺だ、断じてお前じゃない」
「でも、先輩が……っ」
「ド阿呆、俺はこれで満足してんだ、後輩に看取られるんだから十分だろ」
本当はもう少しこいつらの成長を見てたかったが……いやまあ、十分見せてくれたか
「どうせ呪術師に後悔の無い死なんて無い、それなら満足して逝ける分、俺は恵まれてるほうさ」
「……うんっ」
「よし、それでいい」
メンタルケアはこれでいいだろう、あとはこれだけ
「……これって」
「餞別だ、あの真人とかいう奴に一泡吹かせてやりな」
御厨子の解析は済んだ、本来なら無理だが、宿儺が受肉した虎杖なら渡せる。
「みんなによろしくな……頑張れよ」
…………すいません五条先生、
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……何処だ、ここ
「大変ッ!!奥様の血が止まりませんッ!!」
耳が良く聞こえない、何してたんだっけ、俺
「ああフルーフ、私の愛しいわが子、どうか、貴方だけは」
目もよく見えないし、なんか生暖かい……血みたいな
「母上ッ!母上嫌です!!」
怪我、か?取り敢えずは反転術式を……
「……え?」
「……?なんだ、これは……傷が治って行く……?」
眠い……みんなはどうなったんだ?虎杖は、五条先生は?
「……貴方が、治してくれたの?」
……そうだ、思い出してきた……そうか、俺宿儺に殺されたんだった。あれ?じゃあなんで俺生きてんだ?
「魔術、なのか?まさかこんな高度なものを、生まれた瞬間に使用するなんて……」
輪廻転生ってやつか?けど閻魔様とかそれっぽいのとも会ってないよな……
とにかく五条先生はどうなったんだ?伏黒の安否も分かってないってのに
「ッとにかく母上の容態を!」
「……大丈夫よアルベルト、この子が治してくれたもの」
……とにかく五条先生は多分大丈夫だろうが……伏黒は大丈夫なのか?下手したらあいつあのまま失血死しそうだったが……
……まあ、何とかなるか、確か宿儺が伏黒に反転かけてた気がするし……虎杖の処遇は……憂太が何とかしてくれることを祈るしかないか。
「確かにこの子は傷を治しました、ですが内臓にまだ傷が残っているしれません、大人しく診察されてください」
「……私はもう少しこの子と一緒に居たいのだけれど」
「母上の身体がしっかりと治った方が、この子も喜びます」
くそ、東堂に誘われた時に高田ちゃんの個握行っときゃよかった、生涯悔いるなこりゃ
「ごめんなさいね、直ぐに戻ってくるから」
「母上を救ってくれてありがとう、フルーフ。ゆっくり眠っておくれ」
ヤバい、考えてたら眠気が……とにかくみんなのことは……あとで………
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「……夢か」
窓から差し込んできた朝日のせいで目が覚めたようだ
「…… もう、八年前か」
八年前、俺は渋谷で宿儺に殺され、この世界の体……
この国、サルーム王国の
「あー、あー……よし、喉は大丈夫っぽいな」
何故か身体が変わったのに俺の生得術式は俺に刻まれたままだし、この世界には呪霊がいないのに呪術も扱える……特に妙なのは
「……相変わらず綺麗な眼してんなあ」
この目、六眼だ。本来なら六眼は五条の血を引く人間にしか発現しない上、同じ時代に二人以上発現することが無い……まあこの特性に関しては俺が別世界にいるってことで説明がつくが……俺に五条家の血なんて流れてないはずなのだ。
「いやけど憂太の件もあるからなぁ……案外血繋がってたりすんのかな」
あの軽薄糞目隠しとスパダリ後輩が同じ血筋とは思いもしなかったし……憂太も一般家庭出身だもんな……
「……いやまあこの世界に五条家はないんだけどさ」
まあこれのおかげで術式の運用がとてつもなく楽になったのはありがたい限りだしいいんだけどね?目も特に疲れたりとかしないし
「まあけど、新しい術式を知れなくなったのは痛いな」
俺の術式“究析術式”は、相手の術式を解読することでそれを使用出来るようになるという術式だ。
一見とんでもない術式だし、五条先生からも才能があると言われていたがそれなりに制約も多く、“特例でもない限り、一つの術式を解析し終えるまでに最低でも三年はかかる”のと、“究析術式を使用→解析済の術式を使用というプロセスを踏む為死ぬほど燃費が悪い”、そして“知らない術式は使えない”など、割と使いにくい術式だ。実際渋谷で宿儺と戦う前までは4つほどしか解析できた術式はなかったしな。五分間使い放題で燃費も気にしない憂太の完全劣化なんて呼ばれていたのを未だに覚えている。
とはいえ、今は六眼があるから解析の速度も燃費の悪さも改善され、そして何よりも
「魔術がありがたいよなぁ……」
どうにもこの世界、魔術というものがあるらしく、大昔からあるせいかとんでもない研鑽の後が残っているのだ。
「何よりも呪文束が凄い」
本来魔術の技術の一貫らしく、数節の呪文をひとつに纏めるといった技術らしい。それを俺は呪術に転用させることで『九綱、偏光、烏と声明、表裏の間』といった呪詞をひとつに纏めて、『■』と言うことが出来る。これのおかげで術の出が早くなるし威力も上がる、いい事づくめだ。
「さて、飯でも食うか」
どうにもこの体、長ったらしい名前をしているだけに王族とやららしく、歳的にも
「どうすっかな……ベーコンエッグとかでいいか」
何故か、俺にはそういうのが一切居ない。父が不貞で作った隠し子だとかそういった訳でも無く、何故か俺は部屋だけが支給され、あまり国民の前にすら出たことがない。基本部屋に入っていろと言われている。
「まあ、呪術の研究したいからこっちとしちゃありがたいんだが」
だがまあなんというか、軟禁されてるような感じがしてあまりいい気分では無いのだ。
「……前言ってた
まあ理由に関してはそのうちアルベルト兄さんにでも聞けばいいだろう、あの人誤魔化しそうだけど。
「っし、完成」
にしても俺アルベルト兄さん以外の兄弟に殆ど会って無いんだよな、祭事の時とかは呼ばれるから顔ぐらいは分かるけど、基本俺部屋から出ないし
「おっ、それフルーフが作ったのか!」
「はい、熱いんでまだ食べないで下さいよ」
一つ上の兄とすらあまり話したことが無いのだ……それこそ最後に話したのは社交界の時くらいだったか?
「にしてもお前も大変だな、メイドぐらいつかせてやればいいのに」
「ほんとですよ、まあ研究に専念できるのでいいんですが………?」
…………あれ?なんでいるんだこの人
「……ロイド兄さん?」
「よ、前の社交界以来だな」
暗めの茶髪に半袖半ズボンの少女にすら見えるほどの美少年、一歳上の兄、ロイド兄さんがそこにいた。
「ええと、なにか御用ですかね、兄さんが俺の所を尋ねるなんて」
「用も何も昨日の
昨日……昨日?
「……なんのことでしょうか、俺は昨日ずっとこの部屋にいたはずですが」
「惚けなくっていい!別に父上にもアルベルト兄さんにも話したりなんかしないからな!さあ!教えてくれ!アレはなんだ!?」
見られていた?いやまさか、昨日は態々ロードストまで行って実験してたんだ、知っているはずがないのに
「兄さんこそ何言ってるんですか、何しろ俺は外に出るのを禁じられてるんですよ?」
「俺は何も“外で”なんて言ってないけどな」
……やばい、墓穴掘った
「……なら仮にそうだとして、何故兄さんが知ってるんですか」
「そりゃ俺もあの時ロードストに居たからな」
いや有り得ないだろ、どんだけ離れてると思ってんだ、そんなの魔術でもなきゃ……ああ、そうだった
「もしや、魔術で?」
「ああ、“飛翔”でひとっ飛びだったな」
この人確か、魔術の天才とか呼ばれていたな……隙があれば魔術書を読み込んでいるとか……いやけどここからロードストって相当な距離あったよな……“飛翔”ってそんな速度出る魔術だったっけ?
「いつから、バレていたんですか」
「お前が城を出る時だ、丁度俺も外に出ようとしてたから分かってな」
「……兄さんも人のこと言えないじゃないですか」
……この人こんなだったのか?アルベルト兄さんから天才だなんだとは聞いていたが……
「な、いいだろ?アルベルト兄さんには黙ってるから教えてくれよ、あの術!」
「……呪術のことですか」
「呪術というのか!あれは!」
教える、とは言ってもなぁ……この世界の人って呪術扱えないんじゃないかな……
「……〝玉犬〟」
「おお、影から犬が出てきたぞ!」
「……一応見えはするんですね」
俺が見た限り、この世界には呪霊がいない。
実際日本にいた時も、海外では呪術自体が少ないという話は聞いていた……とはいえ“いない”とまでは行かなかったのだ。実際ミゲルみたいなのもいたし
「どうなってるんだ……魔術とはまるで違う、まるで一つ一つが独立した術式のような……いや、そもそも魔力を使っていないのか……?」
呪術は基本的に、呪力を操って使うものだ。勿論この世界の人間にも呪力はある、術師のように呪力が漏れ出ないようになっている訳でも無く、非術師と同じく呪力は垂れ流しになっている訳でもない。
恐らくは呪力と魔力が相反する性質を持っているからなのだろう、何度か実験もしているし何となくわかる。そしてこの世界の人々は呪力よりも魔力の方が総量が多いが為に呪力は完全に打ち消され、 魔力だけが残る……といった仕組みだ。
だから呪力が発生したとしても、空気中にある魔力で霧散するし、それは体内でも同じこととなる……逆説的に俺に魔力が一切無いと言うことになるのだが。
まあ、そのせいもあって、この世界には呪霊が居ないし、この世界の人々は呪術を扱えないということなのだ。
「なあ!他には何があるんだ!?もっと見せてくれ!」
「……はいはい、〝脱兎〟」
今度は影の中から兎が数匹出てくる。もしもの事があるから本体は影の中で待機だ。
「……魔術を食らわせたらどうなるんだろうか」
「やめてくださいね、この子達死んだら戻らないんですから、あと怖がらせるのもやめてあげてください」
なんてこと考えるんだこの人、五条先生でもそこまではしなかったぞ
「なあ、昨日撃ってたあの紫色の綺麗なのはなんなんだ?」
「紫……ああ、あれですか」
“茈”ね、昨日テンション上がって撃っちゃったやつだな、もうちょっと自制しときゃ良かった。
「見たんならわかるでしょ、こんな城の真ん中でなんて撃てませんよ」
「……むう」
……ああなるほど、この人ハナから“茈”目当てで来てたのか
「……外でなら見せてくれるんだよな」
「ええまあ、と言ってもサルームから離れたところで、とつきますが」
「なら外に出よう!それが一番だ!」
……本気で言ってるのかこの人
「……俺は父上や兄上から基本外に出るなと言われています、ですから」
「いやけど昨日出てたよな、しかも夜に」
「……いやまあ、それはそうですけど……けどバレたらお叱りどころじゃ済みませんよ」
それに俺研究してたいし……試し打ちなら夜でいいからなぁ……
「それは魔術で何とかする!な!いいだろ?」
「…………」
━━━━とりあえず後よろしくね、僕餡蜜食べたくなっちゃった
━━━━いやいやいや待ってくださいよ、どう考えてもこれ一級案件でしょ!?
━━━━██ならなんとかなるでしょー、そんじゃよろしくー
軽薄、我儘、それでいてどこか傲慢……まるで、神のような視点で人を見ている。
「……顔の系統は全然違うのになあ」
「?」
どこか、五条先生に似ている……いやまあ多分思い出補正もあるけど
「分かりました、いいですよ」
「ほんとか!やった!」
思い出したら益々前世に帰りたくなって来た……が、まあ今は兄の願いを聞くとしよう。
「でもどうやってそこまで行くつもりなんですか?」
「そりゃ“飛翔”でぱぱっと」
「……そんな簡単に使える魔術でしたっけ?それ」
この人が天才だって話はよくアルベルト兄さんから耳にするし……まああり得なくはない話か
「それじゃ行きましょ、ぱぱっと終わらせたいんで」
「あ、ちょっと待っててくれ……樹系統魔術……■、“木形代”」
兄さんが服のポケットから取り出したどんぐりから、どんどんと人の形が形作られて行き、最終的にそれは俺と兄さんの姿へと変わった。
「……おー、分身ですか?」
「バカ踊りぐらいしか命令出来ないけどな……フルーフの部屋に勝手に入るやつなんてまあ居ないだろうが、一応置いておこう」
兄さんは人形に何か細工をすると、直ぐに俺の腕を取ってきた。
「さ、早く行こう!俺に呪術とやらを見せてくれ!」
「それはいいですけど……兄さんも俺に魔術見せてくださいね」
そう言うと兄さんはニヤッと笑い、瞬間、俺に爆風が押し寄せた。