転生したら第八王子だったので、早めに呪術を極めます   作:三世

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#7

 

 

 〝赫〟を受けても尚魔虚羅は止まらない。

 そのまま一直線にこちらへ飛び込んでくる。

 

「まさか、翼まで生やせるとは思わなかったが」

 

 悪くない、予想外の収穫だ。

 

「しかし、こうなると空中戦は分が悪い」

 

 背中に顕現させていた〝鵺〟を解除。

 そのまま落下し、無下限で衝撃を殺して着地する。

 

 直後、上空から影が落ちた。

 

 潰しに来る気か。

 

「……ま、そりゃそうするよな」

 

 最速最短で殺せる動き。

 機械的で──だからこそ読みやすい。

 

 ──〝鵺〟+〝蝦蟇〟

 

「〝不知井底(せいていしらず)〟」

 

 小さな翼を生やした蝦蟇が十体、周囲に顕現する。

 

 振り下ろされる一撃の直前。

 即座に舌が絡みつき、その巨体を空中で拘束した。

 

「叩きつけろ」

 

 落下の勢いごと利用し、地面へと叩き落とす。

 

 倒せるとは思っていない。

 だが、足止めにはなる。

 

 ──その隙に。

 

「出番だぞ、〝貫牛〟」

 

 俺の陰から、水牛の姿をした式神が現れる。

 

「帳の端まで行って待ってろ」

 

 命令と同時に、爆発的な速度で駆け出した。

 

「……ッ、もうちょい持ってくれてもいいんじゃねーの?」

 

 魔虚羅の拘束が破られる。

 

 いつの間にか不知井底は全滅。

 解き放たれた斬撃が、こちらへ迫る。

 

「ッ──〝玉犬〟!!」

 

 白と黒、二体を割り込ませ刃を受ける。

 

 だが──

 

 一瞬だけ。

 

 剣先が、無下限に触れた。

 

 嫌な音が鳴る。

 

 

 ──ガコンッ

 

 

「⬛︎ッ!最大出力、〝蒼〟!!」

 

 膨大な引力が炸裂した。

 

 魔虚羅の巨体が引き寄せられ、折り畳まれるように圧縮されていく。

 

 やっぱり、赫に適応されても蒼はまだ効いている。

 術式そのものではなく、もっと細かい範囲で適応は行われているのか

 

 

 ──ガコンッ

 

 

 やっぱり、蒼程度なら耐えるか。

 

 想定内だ。

 

 本命は──こっち。

 

「来い、〝貫牛〟」

 

 帳の端に待機させていた貫牛を走り出させる。

 

 貫牛は相手と距離をとるほど威力が増す式神。

 ここは帳の中心、端からは500メートルほど。

 

 この距離なら確実に消し飛ばせる。

 

 そして蒼は拘束。

 逃がさないための布石。

 適応が一度行われたからと言って、まだ蒼の引力から逃れることは出来ない。

 

 そして。

 

「ダメ押しだ。〝満象〟」

 

 押し潰し、動きを封じる。

 確実に、当てる。

 

 ──バゴンッ!!!

 

 衝撃。

 

 貫牛が直撃し、肉体を吹き飛ばす。

 

 首から下が、完全に弾けた。

 

 ……だが。

 

 

 ──ガコンッ

 

 

「……マジかよ」

 

 首だけの状態から、瞬時に再生。

 

 すぐさま距離を取ろうと赫の詠唱を試みる。

 

 次の瞬間。

 

「ッ──がっ!?」

 

 反応が遅れた。

 

 赫を撃つよりも先に。

 

 無下限を──貫かれた。

 

 視界が揺れる。

 

 右腕が、宙を舞ったのが見えた。

 

 ドロドロと流れ出る血が、嫌に生暖かい。

 

「……マジか、おい」

 

 想定よりもずっと早く

 

 僅か三回の適応で

 

 無下限に、適応された。

 

「……ふふ、なるほどな」

 

 思わず笑いが漏れる。

 

「やっぱ仮説は合ってたか」

 

 まさか三回の適応で無下限を貫通するとは思っていなかったが、収穫としては十分と言える。

 

「とは言えやっぱり、十種だけじゃ足りないか」

 

 貫牛の距離をさらに取れれば、あるいは。

 だが、あれで足りないなら歴代で誰も倒せていない理由も納得だ。

 

 飛ばされた腕を、反転術式で再生しながら思考する。

 

「……もう少し試したかったが……仕方ない」

 

 式神を使い潰せばもう少し検証はできるだろう。

 しかしそこまでやる価値はない。

 

 まあ正直言うと〝茈〟も試したかったが……赫と蒼を当てた感じで結果は大体わかりきっている。

 

 ならやることは単純。

 

「本日最後の検証だな」

 

 俺が()()叩く。

 

「……領域、展開」

 

 確実に──潰す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほう?」

 

 フルーフに言われた通り、『飛翔』で結界の端へ移動した直後。

 

 ──空気が変わった。

 

 何かを唱えた、その瞬間。

 

 いつの間にか、フルーフの目の前に“白い巨人”が立っている。

 

「……調伏の儀、ね」

 

 なるほど、恐らく魔術で言うところの制約術式に近いな。

 

 一度倒さなければ使えない、という“縛り”で性能を底上げしているわけだ。

 

 ……だが。

 

 考察を続ける間もなく、状況が動く。

 

「……翼?」

 

 フルーフの背中から、黒い翼が展開される。

 

「あれは……〝鵺〟か」

 

 部分召喚。

 必要な部位だけを引き出している。

 

 次の瞬間。

 

 翼が肥大化し──雷が落ちた。

 

「……へぇ」

 

 想定よりもずっと出力が高い。

 

 検証すると言っていた割に加減がないな。

 

「……ん?」

 

 だが。

 

 雷の中で──動いている。

 

「おかしいな……さっきは効いていたはずだ」

 

 耐性?

 いや、それだけじゃない。

 

 ダメージそのものが消えている……回復したのか?

 

「あれは……翼?」

 

 今度は魔虚羅の方だ。

 

 さっきまでは無かったはずのものが、生えている。

 

 理解が追いつく前に──

 

「お、〝赫〟か」

 

 赤い閃光が放たれる。

 

 威力は、雷の比じゃない。

 

「……飛んだ!」

 

 魔虚羅が飛翔。

 

 それを追うように、〝赫〟が軌道を変える。

 

「貫いた、案外脆いのか?」

 

 上位魔術ぐらいなら一発は耐えられそうだが……

 

「……ほう?」

 

 魔虚羅の腹を貫通したはずの穴が、再生している。

 

 何事もなかったかのように。

 

「いつの間に?」

 

 さっきの雷もそうだ。

 

 効いていたはずの攻撃が、時間と共に()()()()()()になっているかのような。

 

「ん、また〝赫〟か」

 

 さっきより出力が高い、そして近距離。

 

 先程貫いていたのを見るに、当たれば確実に倒せるだろう。

 

 直撃した……が、しかし。

 

「効きが悪いな」

 

 明らかに威力は上がっているのに、通りが浅い。

 

 耐性の獲得──?

 

 いや、それだけなら翼が生える様な変化の説明がつかない。

 

 まさか──

 

「……っと」

 

 気づけば戦場は地上に移っていた。

 

 次の瞬間。

 

「っ、おお!!」

 

 轟音。

 

 牛の式神が一直線に突き抜け、魔虚羅の身体が吹き飛んだ。

 

「ああいう式神もいるのか」

 

 異様な加速、態々遠くから突っ込ませたあたり、距離が威力に直結してる感じか。

 

 あの速度であの質量が突っ込んで来たら、まあひとたまりもないよな

 

「……終わったのか?」

 

 そう思った、その時。

 

 

 ──ガコンッ

 

 

「……お?」

 

 音。

 

 視線の先で。

 

 首だけになったはずのそれが──

 

 ()()()()()

 

「……これも再生?……いや、違う」

 

 理解が、遅れる。

 

 そして同時に。

 

 フルーフの右腕が、宙を舞った。

 

「ッ!?」

 

 あの防御を破った!?空間に干渉したのか!

 

 ──いや、それよりフルーフは!

 

「────ハハッ!!」

 

 その姿に、思わず笑いが漏れた。

 

「マジか!」

 

 心底驚いた。

 

 だがそれ以上に。

 

 可笑しくてたまらない。

 

「──笑ってやがる」

 

 あいつ。

 

 腕を飛ばされて。

 

 それでもなお──笑っている。

 

「……やっぱ、俺の弟だな」

 

 未知を前にして、恐怖より先に好奇心が来る。

 

 俺も同じ立場なら、同じ顔をしているだろう。

 

「──手印?」

 

 いつの間にか、フルーフが右手で印を結んでいる。

 

 何かを唱えた、その直後。

 

 空間が──歪んだ。

 

「────なんだ、それ」

 

 それはまるで──世界そのものを書き換えるかの様な

 先程の魔虚羅に感じたものとは別の。

 

 全くの未知が、起こり始めた。

 

 

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