転生したら第八王子だったので、早めに呪術を極めます 作:三世
サルーム王城の門の前、俺の
「フルーフ様、留学先でも鍛錬を怠らぬ様に」
「いつでも帰って来ていいんだぞ〜〜。てか帰ってこい、定期的に」
「あっちでディアンに会ったらよろしく伝えておいてくれ。……いってらっしゃい」
馬車の外から、次々と激励の声が飛んでくる。
……いやぁこんなに色々な人から見送られて、嬉しい限りだ。
……………………
……で、何でこうなったんだっけ
始まりは、ただアルベルト兄さんに頼んで、ゼロフ兄さんに会いに行った時だった。
「……ほう、錬金術に興味があると」
「興味がある、というか……研究が行き詰まってしまって……」
俺が兄弟に興味を持ったことが嬉しいのか、アルベルト兄さんは終始にこにことしていた。
だが、興味を持たれた本人は、どうにもそうでもないらしい。
「けん、きゅうぅう……?」
目元が陰っていて表情は見えないが──多分、怒ってる。
確かにこんな子供が、「研究」なんて抜かしてたら、プライドの高い職人だとかはブチギレてもおかしくはないか。
どうしよう。前世で呪具職人に殺されかけて以来、職人気質の人はちょっとトラウマなんだよな……。
「……アルベルト兄さん、俺、もしかして怒らせた?」
「ははっ、まさか!そんなことないよ。あれは多分──」
次の瞬間。
ゼロフ兄さんが、引きこもりとは思えない速度で距離を詰め、俺の肩を掴んだ。
「──うれしいのだああぁぁぁ!!」
「……は?」
そして、そのまま泣き崩れた。
「まさか……フルーフが錬金術に興味を持つとは……!」
……あ、怒ってたわけじゃないのか。
「ゼロフはね、ずっと一人で研究してきたから……兄弟に興味を持ってもらえたのが嬉しかったんだと思うよ」
「……!そう、なんですね」
アルベルト兄さんが小声で教えてくれる。
なるほど──少し、いや結構、その気持ちは分かるかもしれない。
「さあ!何が聞きたいのだ!ゴーレムの構造か!?それとも魔力を伴わない錬金術か!?」
「あ、じゃあゴーレムについて聞きたいです」
俺は持ってきた試作品を取り出した。
「これなんですけど」
「ふむ……なるほど、基礎的なゴーレムだな」
掌サイズの人型ゴーレムだ、デザインを適当にしすぎたせいで見た目が埴輪見たくなってしまったが。
「一応動きはするんですけど……操縦時の意思の反映がどうにも鈍くて」
軽く歩かせることすら難しい。原因は恐らく核──中に組み込んだ魔力の融合炉だ。
ちなみに操縦はイクシオンさんに頼んだ。俺は魔力がないから設計はできても動かせないんだよな。
「ふむ……一度、吾輩が操縦してもいいか?」
「ぜひお願いします!」
ここが詰まりポイントだ。自分で動かせない以上、改善点が見えにくい。
「…………これは」
「何かわかりましたか?」
ゼロフ兄さんの表情が引き締まる。
「…………」
「兄さん?」
「……はっ!そ、そうだ!わかったぞ!」
わざとらしく咳払いしてから、続ける。
「核の材質だな。強度にムラがある。そのせいで意思伝達にズレが生じている」
「あー……なるほど、強度のムラ……盲点でした」
「よくあるミスなのだよ。いや……むしろ……」
「?」
一瞬、言葉を濁す。
「フルーフ、この核は毎秒何回転している?」
「えーと……たぶん八千回転くらいです。正確には測ってませんけど」
「八千……」
ゼロフ兄さんは黙り込み、低く唸る。
「……フルーフ!一生のお願いだ!このゴーレム、解体させてくれ!」
「これをですか?構わないですよ」
「本当か!ありがとうなのだ!」
次の瞬間には、どこからともなく取り出した工具で分解が始まっていた。
まあ、分解して何かがわかるならそれに越したことはないからな。
そして、あっという間に核だけが取り出される。
「……この素材は?」
「黒鉛銅です。高熱でも変形しにくいので」
「……なるほど」
再び数秒の沈黙。
そして、覚悟を決めたように口を開く。
「……フルーフ」
「はい?」
「留学してみないか?」
「……はい?」
その提案にアルベルト兄さんが即座に賛同し、父上へ進言。
話は驚くほどの速さで進み──
気づけば俺は、一年間の留学が決まっていた。
「フットワーク軽すぎないか?」
「どうしました? フルーフ様」
「ああ、いや……何でもないです」
おかしい。
俺、ついこの前まで軟禁されてたよな?
しかもその理由、「危険かどうか判断しかねる」ってやつだったはずだ。
……そんな奴を、こんな簡単に国外に出していいのか?
いや、それよりも──
「私、旅行なんて初めてです……!!」
馬車の窓から外を覗き込み、年相応にはしゃぐイクシオンさん。
……なんでこの人まで来てるんだ?
「あの……本当に良かったんですか? 俺と一緒に来ちゃって」
「え!? い、いえ、私はむしろ嬉しいです!!」
「けど……従者といえど、騎士団の仕事とかもあったんじゃ……」
一瞬きょとんとしたあと、イクシオンさんはふわりと笑った。
「騎士団の方は引き継いできました。それに──王子の護衛も、騎士団の立派な任務ですから!」
……まあ、そうかも知れないが
「……何より」
そう言って、彼女は俺の手を取る。
「アルベルト様が言ってくださったんです。フルーフ様と一緒に、広い世界を見てきてほしいって。せっかく
「……そう、ですか」
──王族の護衛。
それもまあ分かる。
けど、騎士団の人材を一人丸ごとつけるって、普通……普通か?
「あっ! 見えましたよっ!」
馬車に流れ込む風に、ほんのりと異国の匂いが混じる。
「パートラムです!」
視界の先に広がる、見知らぬ街並み。
……さて。
錬金術について、どこまで知れるか。
「……これも、検証のうちか」