大学で一番かわいい先輩を助けたら呑み友達になった話   作:枩葉松

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第53話 失せていただけると幸いです

 流水プールを出てウォータースライダーの方を確認すると、三人は未だに楽しそうに列に並んでいた。

 もう何週目かはわからないが、あの様子だとまだしばらくかかりそうだ。

 

「俺、飲み物買って来ますよ。何がいいですか?」

「では、アイスコーヒーをお願いします」

 

 朱日先輩に席取りを任せて売店へ。

 

 買い物は五分ほどで完了。彼女がどこに座ったのか探していると、端っこの席でいかにもな外見の男三人組に囲まれているのを見つけた。

 

「……まあ、そりゃそうなるよな」

 

 油断していた。

 

 さっきまで誰からもナンパされなかったのは、俺がそばにいたから。ほんのちょっと目を離した隙にこれなのだから、朱日先輩の美貌がいかに人目を引くかわかる。

 

「相手されてないんだから、さっさと他行っとけよ……」

 

 そう毒づきつつ、朱日先輩のもとへ急ぐ。

 

 男たちから何を言われているのかはわからないが、彼女は無表情のまま微動だにしない。完全にいないものとして扱っている様は見事なもので、少しだけ男たちが不憫に思える。

 

「その人、俺の彼女なんでナンパなら他あたってもらえますか?」

 

 これ見よがしに飲み物二つをテーブルに置いて、「遅くなってすみません」と謝罪した。

 朱日先輩は口元に僅かな安堵の笑みをにじませ、彼女であることを証明するように飲み物へ手を伸ばす。

 

 男たちはというと、納得がいっていない様子。

 俺の顔や背格好を見て、嘲笑するように鼻を鳴らす。

 

「こんな陰キャと一緒にいるより、オレたちと遊んだ方が絶対楽しいですって! ねっ、退屈させませんから!」

 

 三人組の一人、金髪の男の発言に、朱日先輩の顔色が明らかに変わった。

 凍えるようなため息と共に足を組み替えて、黒いものを灯した黄金の双眸に三人を映す。

 

「……こんな? 見ず知らずのあなた方に、なぜ私の恋人を侮辱されなければならないのですか?」

「あっ。いや侮辱って、そんなつもりは――」

「自覚もなく傷つけた、と? なおたちが悪いですよ」

 

 これ以上エスカレートしてはまずいと思い、「別の席に移りませんか?」と提案した。しかしその声は届かず、朱日先輩の目は変わらず三人を射殺すように睨みつけている。

 

「そもそも、退屈とは何ですか? 私が彼との時間を退屈だと感じている……そう思われたのですか?」

「ま、まあ……そんな感じ、だけど」

「私としては、あなた方が視界に入っている今この瞬間が一番退屈です。可及的速やかに失せていただけると幸いです」

 

 無表情のまま、ここまで怒っているのを見るのは初めてだ。

 平坦な声音だが怒気がメラメラと燃えており、その迫力に男たちも気圧されている。

 

「そのへんにしておきましょう。こんなの放っておいた方がいいです」

 

 こいつらが立ち去るのを待っていても仕方がない。

 楽しい気持ちが台無しになる前に退散しようと、俺は朱日先輩の手を取って強引に立ち上がらせる。

 

「ちょ、ちょっと待てよ! んだよ、バカにしやがって!」

 

 声を荒げながら、金髪の男は手を伸ばす。

 よりにもよって、朱日先輩の肩目掛けて。

 

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