大学で一番かわいい先輩を助けたら呑み友達になった話   作:枩葉松

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第6話 リベンジャーズ:エピソード1【フォースの覚醒と賢者の石】

 

 飛行機で三時間、着いてからタクシーで数十分。

 真っ青な海を一望できる場所に連れて来られ、そこには高級感漂う白一色の家が建っていた。

 

「……あの、ここは?」

「沖縄です」

「いや、そういうことじゃなくてっ」

「この家ですか? 最近購入しました」

 

 ちょっといい掃除機を買ったくらいのテンションで言って、玄関の扉を開いた。

 

 ……自家用ジェットがあるんだから、そりゃ別荘くらい持ってるよな。

 

 もはや驚く気力すらなく、先輩に続いて中に入った。

 木の温かみがある落ち着いた内装で、買って間もないためかキッチンには冷蔵庫、リビングにはソファーとテーブルしか置いていない。

 

「すげぇ……プールまである……」

 

 リビングの窓から庭に出れば、そこには大きなプールが。

 もちろん海に臨む設計になっており、金持ちを象徴するような絶景に苦々しい笑みが漏れる。

 

「……先輩のご両親って、本当にすごいんですね。娘のために飛行機買ったり、こんな別荘買ったり。うちなんか誕生日のお祝いすらなかったのに……」

「飛行機は親類でお金を出し合って買ったものですが、この家は私の稼ぎで購入しました。流石にこの年齢で、お小遣いなどもらえませんから」

「か、稼ぎ? 先輩、何か仕事してるんですか?」

「中学生の頃から株をしております。あと最近は趣味でアパレルブランドを」

 

 中学生で株!? 趣味でアパレルブランド!?

 ……中学生って株とかできるの? ってか、趣味がブランドって何? 桃鉄の話じゃないよね?

 

「呑み会の際、糸守君にばかり酒代の負担を強いていたことに最近気づきまして。その謝罪と日頃の感謝を込めて、今日はここに招待しました。天気があまりよくないので最高の景色とは言い難いですが、最高のお酒は用意しております。ざっと見た中で一番高かったので、値段に見合う味かなと」

 

 そう言いながら、冷蔵庫から一本の瓶を取り出した。

 深緑のガラスに、白いラベル。そこに書かれた文字を目でなぞる。

 

「ろま……ね、こん――」

 

 途中まで口に出して、言うのをやめた。

 

 ロマネコンティ。高級ワインの代表格。

 ワインに詳しくない俺でも、それがどれだけの高値で取引されているのか何となく知っている。

 

 だからこそ、何も見ていないとその名を脳内から弾き出すことに全力を尽くした。

 それが何か知った上で口に含めば、庶民魂と拒絶反応を起こし泡を吹いて倒れかねない。

 

「もちろん、こういったものも用意しております」

 

 ピッとリモコンを押すと、天井からプロジェクターとスクリーンが出て来た。

 テーブルの中心に置かれたバスケットの中には、映画のDVDがどっさり。どれもこれもパッケージからして、シラフで観れば絶対に面白くないことが確定のB級映画ばかりだ。

 

「沖縄に来てまで観るんですね、B級映画」

「……嫌、ですか?」

「むしろありがたいです。ちょっと緊張がほぐれました」

 

 二人で海を眺めながら最高のワインを楽しむ、というのもいいかもしれないが、緊張で酔うことなどできないだろう。

 しかし、映画があれば話は別。

 多少なりともいつもと変わらない状況なら、ワインの値段も忘れられる。

 

「どれにしましょう。一応、『リベンジャーズ:エピソード1【フォースの覚醒と賢者の石】』がおすすめです」

「よく見つけましたね、そんな映画。絶対面白くないでしょ」

「お嫌いですか?」

「大好物です」

 

 わかりきった質問に回答し、俺たちは爽やかな微笑みを交換した。

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