大学で一番かわいい先輩を助けたら呑み友達になった話 作:枩葉松
「じゃあ要君、行ってくるね。お土産、期待してて」
「行ってらっしゃい。楽しんできてください」
一月下旬。
ちらちらと雪が舞う、とても寒い朝。
麻色の旅行鞄を持って、朱日先輩は家を出た。
今日から一泊二日、一条先輩とお出かけ。
前回ドタキャンした誕生日会の代わりに、二人で温泉旅行へ行く。
そう、二人で。
二人っきりで。
朱日先輩と、一条先輩だけで。
「……」
不安だ。
めちゃくちゃ不安だ。
ついこの前、よくわからない女から襲われたばかり。
またあの女が、一条先輩に迫るかもしれない。その際、朱日先輩に危害を加えるかも……。
その上、朱日先輩だって狙われやすい立場だ。
あの二人に何かあったら……。
「よし……っ」
クローゼットの中から、昨日のうちにまとめておいた張り込み用のセットを取り出す。
平穏に、何ごともなければそれでいい。
二人が平和に楽しく過ごしてくれれば何の問題もない。
しかし、万が一にでも何かあった時は――。
「……俺が、何とかしないと」
靴紐をきつく締めて、玄関を飛び出す。
…………あぁ、あと、あれか。
もう一個、心配なことがあった。
一条先輩、変なことしないよな……?
水を得た魚みたいに、ここぞとばかりに、誕生日会をドタキャンされた被害者って立場を利用したりしないよな?
いや、流石にないか。
ドタキャンしたお詫びのお泊り、しかも温泉旅行。
ここで変なことをすれば、次がないことくらい理解しているはず。
いくら一条先輩が性欲大魔人だとしても、今回は確実に大人しくしているだろう。
きっと……た、たぶん。
◆
今日僕は、朱日さんのおっぱいを揉む。
だってさ、仕方ないよね?
どうしようもない事情があったとはいえ、僕との約束をドタキャンしたのは事実なわけで。
それで自分から温泉旅行を持ちかけてきたってことはさ、そういうことじゃん?
だったらもう、おっぱいを揉むくらいさ、もう挨拶みたいなものだよね。
うんうん、当然のことだよ。
あはははっ。
「あー……違う違うっ、自重しろよ僕ぅー……!」
新幹線のトイレの中。
ブツブツと呟きながら、壁に頭を打ち付けて妙な考えを追い出す。
今日という日が楽しみで楽しみで楽しみ過ぎて、昨日から一睡もしていない。
そのせいか、頭の中は朱日さんのおっぱいのことばかり。
もうおっぱいがおっぱいでおっぱい過ぎておっぱいもおっぱいだ。
せっかくセッティングしてくれた温泉旅行。
よりにもよって、他でもないこの僕と二人っきりでのお泊り。
この大イベントを性欲で台無しにしたら、間違いなく嫌われてしまう。
絶対に、何があっても、変なことはしないようにしないと。
「大丈夫ですか、晶さん」
「あ、あぁ、うん。何ともないよ」
僕のトイレが長かったからだろう。
朱日さんは心配そうに……って言っても、無表情なわけだけど。
聞くと、糸守クンと二人っきりの時はアルコール抜きでもフランクに会話が可能らしい。
だが、その他のひとの前では無理。
親友の、僕の前でも……。
まあ、それはもう仕方がない。
いつかきっと、時間が解決するだろう。
「ところで、今日ってどんなところに泊まるの? 僕、何も聞かされてないんだけど」
「うちと付き合いのある旅館で、静かで、綺麗で、当然セキュリティもしっかりしていて、とてもいいところですよ。お料理も絶品で、大浴場のほかに部屋に露天風呂もあります」
「へぇー、すごいな。じゃあ、温泉をひとり占めできるわけだ」
「ひとり占め?」
「えっ? その部屋に泊まってるひとしか入れないからそうでしょ?」
「ひとり占めではなく、ふたり占めですよ」
「……ん?」
ぶわっと、頭の中が疑問符で埋まった。
二人っきりでお泊りをするにしても、まさか部屋まで一緒ではないだろう。
一緒のお風呂の入ったり、一緒にお酒を呑んだりはしても、寝る時は別々の部屋だろう。
――と、そう思っていたのだが。
えっ……?
なに? どういうこと?
「僕と……同じ部屋に、泊まるの?」
まさか。
そんなまさか。
じわりと、額に汗が浮かぶ。
そんな僕とは対照的に、朱日さんは涼しげな無表情で僕を見つめる。
「二人で旅行へ行くのに、どうしてわざわざ別の部屋に泊まるのですか?」
「…………」
……きた。
きたきたきた……。
キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!!
Foooooooooooo!!!!
盛り上がってきたぜ〜〜!!
悪いね糸守クン!! 朱日さん、僕が食べちゃうから!!
もう僕なしじゃ生きられない身体になっちゃうから〜〜!!
「……って、いやいや……」
そうじゃない。
そうじゃないだろ、僕。
だから、性欲を抑えろって言ってるんだよ。
鎮まれ、僕の心のちんちん。自重しろ。大人になれ。
「朱日さんは……その、いいの? 僕と同じ部屋で、不安じゃない?」
「不安?」
「だってだって! 僕は……ほら……!」
「晶さんはいい子なので、そういうことはしないでしょう?」
「しない!! ……ように、努力はする、けど……っ」
口ごもる僕の手を、朱日さんの手がそっと包む。
「私たちは親友なので、女の子同士なら当たり前の触れ合いくらいはしてもいいと思っています」
ぱちりと、黄金の瞳が瞬く。
固まっていた口角が妖しく緩み、白い歯を覗かせる。……こちらに身体を寄せて、それとなくおっぱいを押し付けながら。
「だから……ね? ちょっとくらい触らせてあげるから、我慢しようね?」
「…………は、はい」
心のちんちんが勃起した。