キヴォトスに朝日が昇る 作:sosprin
「はぁ…どうしてこんなことに…」
総理は顔をしかめる。というのも、偵察のために各地に派遣した自衛隊のうち、砂漠に派遣した部隊との通信が途絶。行方不明となってしまったからだ。もしこれが、国民に広まった場合、厳しい非難の声が上がるだろう。
「申し訳有りません。私の考えが及ばず…」
総理は防衛大臣を呼び出し、追及していた。
「ここは新世界だぞ?何が起きるかわからないんだ。それに砂嵐が酷いことは事前の調査でわかりきっていたじゃないか!だから偵察機は飛ばさないと言ったな。砂漠の危険性を承知でなぜ部隊を派遣したのだ!」
「それは総理がいかなる手段を使ってでも現地文明を見つけ日本を救い出すよう命令したからです!私はそれに従っただけだ!」
「だがね、だからといってそんな危険を冒す必要はなかっただろう!トリニティとの関係も構築することができたんだ!そう焦らなくても!」
「総理!それは結果論というものです!私がこの命令を出した時、日本は現地文明のゲの字も見つけられていなかったんですよ!私だって現地文明の場所を知っていたらこんな命令出していないですよ!」
「むぅ…それはそうだがね…うぅぅむ。」
「総理…」
何を言ってももう手遅れだ。彼らが行方不明になった事実は取り消せないのだから。
「で、彼らとは未だに連絡が取れないのかね?」
「はい。一昨日出発した部隊は昨日日本時間午後12時に通信が途絶しました。その頃砂漠で大規模な砂嵐が観測され、何度も通信を試みましたが失敗しています。」
「はぁ…この件が国民に広く知れ渡ったら非難が殺到するよ…」
「しかし、この付近にはアビドスという自治区があることがトリニティから貰った地図に載っています。もしかしたら彼らはこの区に辿り着いているのかもしれません。今すぐ救出部隊を派遣すれば彼らを見つけ出すことができるかもしれません。」
「ううむ、しかしこの砂漠はとても危険なのだろう?どうやって派遣するんだ?」
「はい。この砂漠から東方、我々が現在開拓しているところは大廃墟地帯ですが、第二基地から西へいくと小規模の自治区が乱立している地域があります。そこは緩やかな連合条約が形成されているようで通行権が認められ治安も比較的穏やかです。これらのことを踏まえ、砂漠南部から迂回してアビドスへ向かうというプランはどうでしょう。」
アビドス砂漠はアビドス自治区東方から、第3基地の西方50km地点まで広がっている。その南は比較的穏やかな気候で、そこを通れば安全にアビドスへ行けるのだ。
「ふむ、それはどれくらいかかるのかね?」
「装備にもよりますが、軽装甲機動車を主とした数十人規模の救出部隊を構成した場合2日から3日かかると予想されます。このルートはキヴォトスの幹線ルートを使用するため移動も速いです。」
迅速な対応が求められるが航空機は砂嵐のせいで使うことができない。その為機動力のある地上戦力を用いるしかなかった。
「幹線ルートに軍事車両を無断では知らせてもいいのか?」
「はい、トリニティの方々にこの世界について説明してもらいましたが、一般道路を装甲車や戦車が走るのは珍しくないとのことです。また、各企業も自治区を越えて走らせていることから黙認されていると認識してよいでしょう。」
「企業も軍隊を持っているのか…すごい世界だなやはり。」
「ええ、とにかく時間が有りません。このプランを承認して頂かねば彼らの救出は不可能です。」
「そんなこと私が一番わかっているよ。わかった、承認しよう。ただこれ以上の悪いニュースは求めていないからな?」
「ありがとうございます。」
こうして救出作戦が実行に移された。
派遣された部隊は
通信や作戦指揮を担う指揮班3人
偵察班5人
救出を担う一般部隊 15人
戦場で心強い支援班7人
軽装甲機動車3台
装輪装甲車2台
その他小銃や対戦車ミサイルなどの武器
医療キット、補給物資など
領土が増え管理する地域や偵察任務による自衛隊の人手不足は深刻であり、救出部隊も小規模なものとなった。
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第二基地を出発し暫定日本領を越えて他学園の地域へと入った。偵察任務が増えた自衛隊でもまだ学園自治区内へと入った人間は少なく、救出部隊は新世界の風景を少し楽しみにしていた。
1日目
現在走っている地域はキヴォトス中心部から離れ比較的のどかだ。遠くに見える山や田園地帯、田舎の町並みはまるで日本のようで、はっきりと異なるところは空に光輪が浮かんでいたり、飲み物を買おうと(派遣のためにトリニティとの交流で得たキヴォトス円が配給された)自販機へ赴いたところ売っている中身は弾薬であるところだ。
また、比較的辺境の地域でありながらも道路は完璧に整備され、田園ではロボットやドローンが働いていたりもする。住人は人間でないものが多いが皆親切で、道を聞くために訪れた商店ではこの地域に有名なお菓子を買って甘いもの対決をしたりした。お菓子は和菓子に似ていて懐かしい味であった。
2つ目の学園自治区に差し掛かり街並みはより発展している。日本の地方政令都市のような雰囲気で高層ビルも何個か見受けられた。
住民はやはり手榴弾を持っていたり、小銃を携帯していたりと日本人からしたら物騒ではあるがそれでも事件に巻き込まれることはなかった。
一行はここで食事を取り、もう夜も遅いため駐車場に装甲車を止めて休養を取ることにした。
2日目
早朝に起床し、2日目の行軍が始まった。
今日は順調に行けば目的のアビドス自治区へと入る予定だ。
3つ目の学園自治区に入ると、最初は一般的な街が続き、遊園地などのレジャー施設やランドマークなども見受けられたが住民の数が異様に少ないように感じられた。
数時間も走るうちに辺りは寂れ、廃墟も多く見られるようになった。どうやらこの自治区の半分は既に放棄されているらひい。
廃墟の中に石炭博物館という施設があった。どうやらこの自治区はかつて炭鉱業を専門にした学園であり、かつては繁栄していたが新技術やエネルギーが開発され、石炭の需要が下がると同時に衰退していったらしい。また、衰退を止めるため観光業を奨励、様々な施設を作っていったが失敗した。まるで夕張のような自治区だ。
特に注目すべきものはないので、このまま北上、アビドス自治区へと向かう。
2日目の夜、ついにアビドスの中心街と思われる場所に着いた。辺りは今まで通ってきたどの街よりも発展したくさんの建造物が見受けられる。
夜も遅いが、観光のため…ではなくこの世界の文化調査のために見つけたラーメン屋へと入ることにした。
ラーメン屋の前まで来ると美味しい匂いが漂う。国難によりラーメンなどの嗜好品はもう見られなくなった。現在の国内は芋を主とした単純な栄養だけを重視した貧しい食事で溢れ、これは数カ月ぶりに日本人が体験する美しい匂いだった。
隊員は腹を鳴らしながら戸を開け店内に入る。
「何名様だい?」
「30人です。」
「おお、今日はすごいねぇ」
ラーメン屋の店主はもちろん人間ではなく二足歩行をした犬だった。衛生的に少し気になるがそこは気にしてはいけないのだろう。席に座りメニューを見るが、どれもおいしそうで決められない。仕方なく店主に質問した。
「すみません、おすすめはどれですか?」
「おすすめかい?それならこの柴関ラーメンだねぇ。」
「なるほど、じゃあ僕はこれでお願いします。他の皆んなは?」
「俺もそれで」「私もお願いします」
と全員柴関ラーメンを選んだ。
「はいお待ち!柴関ラーメンだよ!伸びないうちに啜っちゃいな!」
「お…ぉぉぉぉおお!!!!数カ月ぶりのラーメンだ!!!
部隊は歓喜を上げものすごい勢いでラーメンを啜る
「おうおう、いい食べっぷりだなお前さん達。そんなにこのラーメンが美味かったか?」
「えぇ…!一口すすった瞬間、スープの深みが舌の上で爆発するような感覚!まるで濃厚な旨みが何層にも重なって押し寄せてきて、止まらない。麺のコシは絶妙で、噛むたびにスープを絡めて最高のバランスを生み出してる。そしてチャーシューがもう…口の中でとろけるレベル。こんなに完璧なラーメン、人生で初めてだ!」
「あぁ!こんなラーメン食べたことない!久しぶりに食べたのもあるがやっぱりラーメンは最高だ!」
「お前さん達そんなに褒めても何もでないぞ?…よし今日は替え玉無料だ!」
「え、ええ!そんな恐れ多いですよ!」
「良いってことよ!俺のラーメンをそんなに美味しそうに食べてくれたんだからな!もっと楽しんでほしいんだ!ラーメンが好きなやつに悪いやつはいないさ。」
「最高だ…ここは…天国か…」
一行はラーメンを啜り替え玉も頼んだあと、腹一杯になるまで久しぶりの飽食を楽しんだ。全員が食べ終わり烏龍茶で油を流して満足する。
「それにしてもお前さん達、ここらへんでは見ない格好だな。どこから来たんだい?」
「ああ、はい。私たちはここから東にある日本という国から来ました。」
「日本?聞いたことないな。そんな自治区があるなんて聞いたことないが。」
「ええ、我々はこの世界に転移してきたのです。信じられないようですが事実です。」
「転移?どういうことだ?別のところから来たってことか?」
「私たちもまだ解明できていませんが、多分そういうことです。私たちの国は転移によって、食料や資源の入手が出来なくなった為、現在この世界での交流を進めています。」
「なるほどな、久しぶりのラーメンとかさっき言っていたが、もしかして食料が不足してラーメンも食べられなかったんだな。」
「ええ、恥ずかしながら我が国はほぼ全ての食料を外に頼っていましたから。今までは飽食の国でいつでも好きなものを食べられましたが、今では飢え死にする人も出ていますね。」
「は〜…そんなことが…ここにも交流しに来たのか?」
「はい。それもありますが、実はこの付近で我々の仲間が遭難してしまい、連絡が取れなくなったのです。砂嵐に巻き込まれたとか。」
「あの砂嵐を超えようとしたのかい?それはダメだな。あの砂嵐はこの自治区の半分以上を荒廃させたんだ。耐えられる者はこの世界におらんよ。」
「そして、この自治区内にたどり着いていないか、また捜索の協力を要請するためにここにやってきました。我々が今目指しているのはアビドス高校ですね。」
「アビドス高校か…ここからはちと遠いな。それに周辺の街は砂漠化で道が分かりづらくて、迷いやすいんだ。
「なるほど…しかし、どうしても行きたいのです。」
「ふむ、じゃあ道を教えてあげよう。地図はあるかい?」
「はい、これですね。」
「あぁ…この地図は随分前のやつだな。もうこの校舎は砂に埋もれて使われていない。今の校舎はこっち。そして今いる場所はここだから、この道を通って…こっちに行って…ここを通れば迷わず着くだろう。」
「おお、とてもありがたい…!」
「そして、ひとつ注意があるんだが、アビドスの生徒さんは不審人物に厳しくてね。今までいろいろ危なかったんだ。だから、警戒心が強い。もし君たちが変なことをしたら、撃たれるかもしれん。しっかりと対話をするのが大切だ。しかし、受け入れられる可能性は低いだろうな。」
「なるほど…しかし我々も仲間を諦めるわけにはいきません。絶対にアビドス高校へ行きますよ。」
「そうか!ハッハッハッ!仲間想いなのはいいことだ!俺もお前さん達を応援してるよ。頑張ってな。」
「ええ、それではまたいつか。ごちそうさまでした。」
こうして一行は装甲車にもどり明日に備え休養を取った。
3日目は店主に教えてもらった道程を頼りにアビドス高校へと行く予定だ。
「そういえば、あの店主の名前聞き忘れたな…」