キヴォトスに朝日が昇る 作:sosprin
アビドス高校
突然の戦車の爆発により優勢だったヘルメット団は全員が撤退、その光景にアビドス生の三人が呆然としていると遠くからまた別の装甲車が走ってくる。
ホシノは敵の増援が来たと見なし銃を構える。銃口を向け引き金を引こうとしたタイミングでノノミがそれを制止した。
「どうしたの、ノノミちゃん?敵を倒しに行くよ。」
「いえ、あの…」
「大丈夫、確かに消耗はしてるけどまだ戦える。」
「そういうことじゃなくて、あの装甲車のマーク、自衛隊の人たちのやつと同じじゃないですか?」
「え?」
そう言われてよく目を凝らして見てみると、確かに同じマークがあった。どうやら彼らの仲間だったようだ。しかしそれはそれで問題だ、彼らはどうやって仲間を呼んだのだろうか。やはり騙されていたのだろうか。
問い詰めに行こうとしたが、どうやら彼らの方から校庭に出てきた。
「増援が来た!やったぞ〜!」
「これで俺達は助かるんだ!奇跡だ〜!」
自衛隊員は拳を握りしめ腕を上に突き出し跳ね回っている。
途端、ホシノは跳ね回っている隊員一人へと詰め寄り、胸ぐらをつかむ。
「どういうこと!?どうして!?」
「え?」
突然胸ぐらを掴まれた隊員はホシノの方を見た後、他の隊員へと視線をうつす。見てみると他の隊員も呆気にとられ動けないようだ。
「なぜ君たちの仲間がここに?どうやって連絡を取った?通信機は全部失われたと言ってたよね?」
「ああいや、俺たちもどうやって増援がここに来れたのかは分からないです。」
「嘘は良くないよ?」
「いや本当なんですよ…とりあえず彼らに聞いてみませんか?」
そんなやり取りをしていると校門の前に装甲車が停車し、中から人が出てきて、話しかけてくる。
「大丈夫ですか!怪我人は!?ここはアビドス高校ですか?」
ホシノはとりあえず隊員を放す。車から出てきた人に色々と質問しようとしたが、その前にノノミが返答した。
「怪我人は分かりません。自衛隊の方ですよね?」
「ええ、その通りです。まさか知っているとは思いませんでした。急で申し訳ないのですが、この付近で我々の仲間が遭難してしまい、捜索の協力をお願いしたく…」
と目的を伝えようとした途中で
「助けに来てくれたんですね!」
隊員が駆け寄った。
「おお、第〇偵察部隊ですよね?よかった、遭難したと聞いて捜索しにやってきましたが、簡単に見つかるとは。それにしても、ここで何を?そしてなぜ戦闘が起きていたのですか?」
「はい。彼ら、アビドスの生徒が助けてくれました。この世界は治安が悪くて、不良ですら銃火器や戦車を使っているんです。それで襲撃に遭いました。怪我人もいて、隊長は未だに意識が戻りません。」
「それは本当ですか!?わかりました、医療班を派遣するので怪我人のいる場所へ案内してください。」
捜索部隊の医療班は怪我人のいる場所へと案内され、校内に入っていったと同時にホシノが前に出てくる。
「日本の人だよね?えーっと、君たちはなんでアビドスまでやってきたの?」
「ああ、そうでした。私達は第〇偵察部隊を捜索しにやってきたんですよ。数日前にアビドス砂漠への偵察中通信が途絶え、行方不明となっていたんです。」
「よく場所がわかったね。追跡でもしてたの?」
「いえいえ、今回の発見は本当に偶然だったんです。きせき彼らを保護していただき、アビドスのみなさんには心から感謝しています。」
「あ〜うん、まあ困ってる人を放置するわけにはいかないからねぇ。で、これからどうするの?」
「このまま彼らを連れて帰還します…と、言いたいところですがどうやら負傷者が多数いるようなので、回復してからが望ましいですね。そこで、この校舎の一角を借りたいのですがよろしいでしょうか。」
「いいよ〜、教室なら余ってるから。でも、変なことしたらだめだよ〜?」
「ええ、ご協力に感謝します。」
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「いてて…あれ?ここは…」
「隊長!起きましたか!」
隊長は目を開ける。視界はまだぼんやりとしているが多分ここは教室だろう。隣にいる人を見て話しかける。
「ああ…今は何時だ?戦闘は?」
「戦闘なら終わりました。隊長は戦闘中に爆発に巻き込まれて、半日ほど目を覚まさなかったんですよ!幸い外傷は少ないようですが…あと、私たちを捜索しに来た増援部隊が
ここに到着しました。」
「それは……本当か.…よかった…彼らはアビドス生とはうまくやっているのか?」
彼はここに来てすぐの頃を思い起こす。アビドス生の疑心暗鬼は強い。増援部隊とアビドス生の間に問題が発生する可能性はあるだろうが、
「ええ、いまのところ問題はありません。医療班が生徒含め負傷者の処置を行ったので心象も良いでしょう。」
との言葉を聞いて、今のところ何も起こってないことに隊長は息を吐く。
「なにもないのは良いことだな…この後はどうなるんだ?」
「はい、全員大凡回復し次第、本国に戻ります。その後はまだ確実にはわかりませんが、トリニティへと派遣される可能性が高いですね。」
「トリニティ?トリニティで何かあったのか?」
隊長は前にこの世界について調べた時の事を思い出す。
たしかトリニティという単語を見たはずだ。
「貴方が砂嵐に巻き込まれた翌日、トリニティとの接触が無事成功し関係樹立と貿易協定が結ばれました。しかし、その条件の中に自衛隊による治安維持が含まれているのです。」
「なんだと?トリニティのことは少し調べたくらいだが、治安維持に他国の軍を入れなければならないくらい荒れているのか?」
「いえ、確かに日本や前世界と比べたら犯罪は多いですが、それでも手に負えないほどでは無いそうです。ただ、ゲヘナに近い地域へと重点的に派遣されています。どうやらテロリストや犯罪者がよく侵入するようで、日本政府もゲヘナでの自衛隊員死傷事件から警戒を強めています。」
「とんでもない学校があるもんだな…国内では問題にならなかったのか?他国に自衛隊を派遣するとなると大問題になりそうだが。」
「確かに世論はかなり荒れはしましたが、国内の食料は枯渇する寸前でしたので輸入のために当分の間は見過ごされ、異例の早さで可決されましたね。トリニティからの輸入も始まりましたし、これで食料問題も解決するでしょう。」
「そうか、これでやっと安心して暮らせるんだな。」
「いえ、まだ課題は多いです。GDPはこの数ヶ月で2割ほど低下し、深刻な物資不足からインフレも加速しています。政府も以前の生活を取り戻せるのは長い時間がかかると予想していますね。その為、新世界への日本企業進出を進めるようですよ。」
「そうか…まだ道程は長いな。もっと気張らねば。」
隊長がアビドスにいた間に日本で起きたことを一通り確認していると教室の扉が開きシロコが入ってきた。キョロキョロとあたりを見渡し、こちらを見ると少し早歩きで近づいてきた。
「ん、隊長さんいた。今回は学校を守ってくれてありがとう。」
「いいや俺は大したことはしていない。こうして倒れてるしな。君たちはずっと校庭で戦っていたが、怪我は大丈夫なのか?戦車の砲撃に巻き込まれていた気もしたが…」
「うん、あれは間一髪で避けたから大丈夫だった。他の傷も自衛隊の人が治療してくれたし。でもなんで私達も治療してくれたの?なにか対価を要求したりしないよね?」
「いえいえ、対価なんてとんでもない。私達の仕事は困ってる人を助けることです。国民でなくても怪我人は放っておくわけにはいきませんから。」
「ん…不思議な人。隊長は大丈夫?吹き飛ばされたって聞いたけど。」
「ああ、幸い軽症だ。このまま隊員全員が回復したら帰還することになる。」
「そう…無事で良かった。」
「あ、そういえば。我々が帰還した後、アビドスとの関係を公式に樹立する為に外交官が派遣されます。アビドスの代表の方はいらっしゃいますか?」
「ホシノ先輩だね。今はどっかに行ってるけど、私が伝えておく。」
「ありがとうございます。」
そして3日もたてば全員の傷は治り、全員無事に帰還した。
その後、日本の外交官がアビドスに訪問し公式関係が結ばれた。