キヴォトスに朝日が昇る   作:sosprin

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宇宙とかどうなってんだろこの世界


ミレニアムにて

 アビドスとの関係樹立が行われた後、日本では特に重大な事件は起こらなかった。

 新世界技術のリバースエンジニアリングにより生産力が圧倒的に向上し、労働力が余ったことで大陸への入植が進み、低下し続けていた経済力も同水準を維持できるくらいまでになった。

 更に、新技術の精密度と高い効率のおかげで宇宙開発もより早く進むことになる。失われた衛星網を復活させる為に多数のロケットが打ち上げられたことで、後に週刊ロケットと言われるようになった。

 3月末にはトリニティでの自衛隊基地建設が完了しトリニティの治安維持活動が本格的に行われ始める。

 

 4月になり新年度を迎えると同時に、各学園も重要なイベントが起きる。この世界を支配するものは学園であり、学生は支配層ではあるが学年の概念が存在する為、毎年トップが交代し、新入生が入る。前ティーパーティの不和により早期の権力移譲が行われたトリニティやその為少数の学園を除き、このタイミングで体制変更が行われた為日本政府も対応を迫られた。

 

 5月上旬にはミレニアム、ゲヘナとの会談が行われる予定だ。ミレニア厶は技術力を重視しているのもあり、日本から直行で飛行機を使うことになった。また、キヴォトスで一番栄えた超大学園でもあるため藤森大臣自ら赴くことになった。

 

 一方、ゲヘナでは過去に殺傷事件が起き、更には自治区内ではテロや犯罪が頻発しているとの情報を受け政府は関係樹立に消極的であったが、キヴォトスの中でも有数の学校の為に無下にはできず、覚悟を持って会談を行うことになった。

 

 

────────────

5月4日 ミレニアムサイエンススクール 空港

 

 ミレニアムにある空港はD.U.の空港に次いでキヴォトスで2番目に大きい。最近開発されたジェット旅客機が学園の行き来に使用されるようになったが、従来の飛行船も未だに現役のため、空港の殆どは飛行船の発着場となっている。

 滑走路が空いているときはエンジニア部が実験機を飛ばしたりと実験場としても使われているのがミレニアムらしい。

 

 ミレニアムの生徒会であるセミナーに所属する早瀬ユウカと生塩ノアは昨日来訪するという日本国の使節に対応するため空港まで来ていた。早瀬ユウカは睡魔に襲われふらふらとしながら歩く。生塩ノアはそれを案じ、まだ時間もあるので目に入ったカフェへと連れ、席に座らせた。カフェからは滑走路が見え、いくつかのジェット機と飛行船、そしてこれから実験が行われるのであろう謎の物体が存在している。

 

「あ〜…次から次へと予定多すぎなのよ…」

 

「ユウカちゃん、どうしました?疲れているようですが…」

 

「当たり前でしょ!新年度になって予算とかいろいろ調整しないといけないし、終わってやっと暇ができると思ったら最近噂の日本から外交官が来るとか…会談のためにも色々と手配することもあるし、過労死する寸前だったわ…」

 

「まあまあ…お疲れ様ですユウカちゃん。確かに、最近は休む暇なんて1秒もありませんからね。ユウカちゃんのためにコーヒーを頼んでおきました。」

 

「ああ、ありがとうノア。頂くわね。」

 

ユウカはカップを手に取り、コーヒーを一口飲む。目を閉じ少ししてまた目を開き、カップをコトンと置いた。

 

「ふ〜…すこし落ち着いた気がするわ。」

 

「良かったです。そういえば、日本についてなにか知っていることはありますか?」

 

「日本がどんな国かはあまり知らないけれど、島国で最近現れたということはわかっているわ。それも、どうやら別世界から来たとか…まあ噂に過ぎないけどね。とにかく、ミレニアムが初めて会う相手だわ。データがない以上慎重に行きましょう。」

 

「そうですね…あ、そろそろ到着する時間じゃないですか?」

 

滑走路が見える広いガラス張りの前へと行き、空を眺める。東の空を見てみると、遠くに飛行機が飛んでいるのが見えた。

 

「あぁ、多分あれね…じゃあ、滑走路の方まで行きましょうか。迎えに行きましょう。」

 

二人はカフェから出て、滑走路へと向かう。

滑走路はすでに受け入れ体制が整えられ、先程まで行われていたはずの実験も中断されている。何人かが抗議していたが警備部隊が向かうと彼らは逃げ出した。

 

「飛行機が着陸します。離れてください。」 

 

空港職員がそう言い空を見てみると飛行機は随分近くまで来ていた。

少しして、飛行機がゴーーーーという音と共にすごい勢いで着陸する。

完全に飛行機が停止すると階段が出入り口に備え付けられ、扉が開く。

中からスーツ姿の大人が一人出てきた。日本人だろう、その人は大人の男性であり人間型でキヴォトスでは珍しい。二人はこそこそと話す。

 

「大人だわ…やっぱり日本は大人の国なのね。」

 

「それにヘイローも見当たりません。やはりゲヘナでの噂は信憑性が高いですね…」

 

「ゲヘナ?ゲヘナでなんかあったの?」

 

「ええ、日本人が戦闘に巻き込まれ死傷者が出たという噂です。この件で日本はゲヘナを警戒していると…」

 

「そんなことがあったのね…C&Cに護衛を頼んでおいて良かったわ…」

 

話を終えよく見ると、日本人が階段を降り前へと向かってきていた。初めての日本との接触だ。最近噂になり各学園が情報収集に躍起になっている日本、相手がどのような国なのかすら完全にわかっていない。二人は気を引き締め直す。

 

「藤森と申します。日本国の外務大臣をしております。」

 

「早瀬ユウカです。こちらは…」

 

「生塩ノアです。」

 

「早瀬さん、生塩さん。本日は急な会談に応じていただきありがとうございます。歓迎に心から感謝いたします。」

 

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。今日の日程はミレニアムがどのような学校か知っていただくため、ミレニアムの誇る公共交通機関を利用して校舎に向かいます。空港から鉄道でミレニアム中央駅へと向かい、モノレールに乗り換える予定です。」

 

「わかりました。」

 

一行は空港を発ち、ミレニアム中央駅と向かった。

 

 空港からミレニアム中央駅へと向かう間、藤森は街並みを見渡す。

 乱立する高層ビル群、洗練された都市デザイン、太陽光パネルや風力発電など再生可能エネルギーが使われるクリーンな街。

 そして警備ドローンや無人自動車の運用がされていて、まるで中国の最新鋭都市に似ている。一目見ただけで日本よりはるかに技術が進歩していることがわかった。

 

 電車内は治安がすこぶる悪いといわれるキヴォトスであっても秩序があったし、銃撃や爆発が起こることもなかった。あの忌々しいゲヘナとは大違いだ。

 

 ミレニアムの生徒会、セミナーである早瀬ユウカに尋ねてみると生徒は日々研究に奔走しているので実験以外で事件が起きることは稀であり、さらにC&Cという強固な治安維持組織が配備されているので比較的治安も安定しているとのことだ。

 

 空港から29分が経ちミレニアム中央駅まで到着する。ミレニアム中央駅は日本最大級の駅並みに広いが、しっかりと整備されていてデザインも合理的だ。利用者は多いのにも関わらず構内の混雑も無く、ミレニアムには驚かされるばかりだ。

 駅をスムーズに移動しモノレールに乗り換える。中央駅から一駅、5分でミレニアムタワー駅へと到着した。

 駅から見える400mを超えるミレニアムタワーの存在感はとても強く、近くから見上げると首が痛くなりそうだ。

 

 駅から歩いてミレニアムタワーに入ると、中は厳重なセキュリティが敷かれていて、何重にも認証を行わなければならない、まるで映画に出てくる怪しい研究所のようだ。

 

 ざっと10を超える認証が行われ、エレベーターに乗り込む。ボタンが押され扉が閉まると強い加速を感じ、少し酔いそうになる。10秒ほどで上層階へとたどり着くとまたもやたくさんのセキュリティチェックが入った。厳重なことは良いことだが、これは流石にやり過ぎではないのかと藤森は思うが、日本のセキュリティの杜撰さと比べたらマシなのだろう。

 

「お待たせしました。ここが今回の会談場所です。」

 

「おぉ…」

 

 最後の認証が行われて扉が開かれるとそこには息を呑むような風景が広がっていた。先まで見上げていた高層ビル群を今は見下ろす形になり、巨大都市が広がっている。地平線の方を見ると山や雄大な自然が見えた。

 

 セミナーの二人に連れられ会談部屋にたどり着く。机の上には謎のガラスパネルとボールが置かれていた。

藤森が椅子に座るとガラスパネルが光り『ミレニアムについて』と書かれた画面が表示された。そして、ボールが光るとそこからホログラムが表示される。どうやらミレニアムの地形図のようだ。

 

「それでは準備も整いましたので始めたいと思います。」

 

────────────────

会談の最初、ミレニアムの説明が行われた。

 

「さて、ミレニア厶についての簡単な説明を行います。ミレニアムサイエンススクールは最先端の知識や科学技術を追い求め日々奔走しています。特に、7つの千年難題を解決することが一番の目標です。現在、キヴォトスの技術のほとんどはミレニアムにて開発されたものであり、我が校は比較的最近創立されましたが、古参のゲヘナやトリニティに追いつき、いまや追い越そうとしています。」

 

「ほう、科学力を重視しているのですね。我が国にも高度な技術を持つ研究者や職人がいますよ。前の世界でもたくさんの研究者がノーベル賞という国際的な功績をあげた方に送られる賞をもらっていました。」

 

「ノーベル賞ですか…それは大変面白そうなイベントですね。ただこの世界だとミレニアムが独占してしまいそうですが。こほん、話を戻しますね。ミレニアムは有り余る技術力を活かすため、他校に技術を輸出しています。核融合発電がその典型ですね。」

 

「この学校では科学を重視しているようですが、研究以外のことも行われているのですか?」

 

「はい。たしかにエンジニア部や素材開発部など大半は研究目的の部活ですが、野球部もありますし研究を一切行わないことも許容されています。しかし、そもそもの入学基準に相当な学力と目的が必要なので研究を行わない生徒はいません。皆なにかしらの活動を行っています。」

 

「さて、次にミレニアムの社会情勢について説明します。多分貴方が一番気にしていることでしょう。移動中の説明通り、現在ミレニアムの治安は安定しています。ただ、危険地帯が一つだけあります。」

 

「危険地帯…?」

 

「ええ、ミレニアム北部にある廃墟地帯です。ここにミレニアムでも解析されていないオーパーツや未知の新技術が埋まっています。そのため、研究のために調査に向かいましたが…」

 

「武装オートマタにより占拠され、調査チームの大半が重症を負ったのです。調査チームによるとオートマタは増殖しているように無限に現れ、さらに未知の言語で会話していました。最終的に、手に負えないと判断した連邦生徒会により封鎖され現在全面立入禁止となっています。」

 

「そのようなことが…そのオートマタとやらは攻めてくることはないのですね?」

 

「ええ、現在のところそのような兆候は確認されていません。また、万が一そのような事態が起きたとしても市民の避難計画と防衛体制はしっかり整っているので安心してください。」

 

「わかりました。」

 

「それはそうと、ミレニアムの話だけじゃつまらないですし、貴国のことについて教えてくれませんか?」

 

「それもそうですね。ええ、まずは…」

 

藤森は持ってきた紙の書類を渡す。タブレットやホログラムを見せられた後の紙は少し恥ずかしかったが、気にしないようにした。地理や政治状況、外交について説明し、最後にミレニアムの生徒が好きそうな技術、エネルギーの話題になった。

 

やはりここはミレニアム、技術の話はたいへん盛り上がった。日本の技術について聞くとき、やはり二人共落ち着いていて、早瀬ユウカに関しては少しドヤ顔だった気もする。

 

「ふと気になったのですが日本は電力などエネルギーをどのように賄っているのですか?話を聞く限り人口も多く活動量も多いのでは?」

 

「ええ、我が国は火力発電が主流です。日々膨大な量の石油を使っていましたが転移後は輸入路が絶たれ、燃料の確保に奔走していましたね…また、水力発電や風力発電、太陽光発電等の再生可能エネルギーを使用した発電も行われていますが未だに少ない割合です。」

 

「ふむ、火力発電が主流なんですね…神木議定書違反になっていないといいですが。」

 

神木議定書とは過去キヴォトスで定められた環境保護の為の取り決めで、現在キヴォトスの全学園が参加している。トリニティとの接触の际も问题となっている。

 

「ええ、トリニティからも憂慮するよう言われました。その為、現在はトリニティの協力で日本全国の設備転換を行っています。まだ時間はかかりますが…」

 

「それなら安心です。」

 

「また、火力発電の削減と転換の埋め合わせのため、原子力発電を拡大しています。」

 

「ちょっとまってください。原子力ですって!?」

 

途端早瀬ユウカは椅子を吹き飛ばしながら立ち上がる。椅子は勢いよく壁に当たり机が揺れた。一瞬でものすごい剣幕を見せ、藤森は驚きとともに困惑する。

 

「原子力…貴方、それがどれほど危険か分かっているのですか!?」

 

「はい。原子力発電所の危険性については理解しています。しかし、新技術により安全性も高められ…」

 

「今すぐ使用を中止してください!ああ、なんてことなの…」

 

今すぐにでも藤森のところへ行き掴みかかりそうな早瀬ユウカ。生塩ノアは腕を掴みそれを制止した。

 

「ユウカちゃん、落ち着いてください。藤森さん、事態が把握できていないようなので説明します。原子力とはすなわち、禁忌の力なのですよ。」

 

「き、禁忌?」

 

「ええ、遥か昔、とある研究所で原子力エネルギーの研究が進んでいました。しかし、研究中の事故で放射能漏れが発生。漏れた放射能は研究者の身体を蝕み、やがては…」

 

「亡くなった。ということですね?」

 

「ええ。さらに、原子力を利用した巨大爆弾の開発も進められました。」

 

「原子爆弾ですか…」

 

「な、なぜそれを…もしや…ともかく、開発は無事成功しました。その威力は凄まじく、実験場となった大森林は今も跡形もなく消え去りました。しかし、あまりの危険性に技術者も封印しようとし、キヴォトス中で話し合いが行われ原子力エネルギーは全面使用禁止となりました。現在、ミレニアムでも原子力エネルギーに関して研究が行われていることが確認された場合、直ちに中止させています。」

 

「そのような危険な技術を貴国は…使い方を誤ればどうなるかわかっているのですか…?」

 

ミレニアムの二人組は藤森に訴えかける。彼らの訴えは至極真っ当だ。地球でも何万人もが犠牲になった。

 

「わかっていますよ…ええ、我々が一番理解しています。」

 

「本当でしょうか?危険性を知らない人は全員そう言ってはぐらかして──」

 

「爆弾は我が国の都市に対し使用されました。それも二回。」

 

二人の時間が止まる。予想にしない、したくもなかった言葉が藤森から飛び出したからだ。

 ミレニアムの上層部しか見ることの出来ない実験データ、それを見て理解した膨大なエネルギー、想像される悲劇。その為にキヴォトスで禁止になった禁忌。しかし実際にその恐怖と痛みを味わったことはない。

 

「えっ…」

 

「それは…本当ですか?」

 

「はい。両都市はそれぞれ10万人を超える死傷者を出し、現在も後遺症に悩まされる人々がいます。しかしこの後も核の軍拡競争は続き、今日まで核を突きつけ合う世界が広がっていました。一発打ち込めば世界はそのまま氷へと沈みます。」

 

「10万…おぞましい…それに、そんなものを量産するなんて…」

 

「原子力発電所でも事故が起きています。かつての大災害、地震と津波によりメルトダウンが発生し爆発しました。現在でも発電所付近は立入禁止となっています。」

 

「やっぱり、危険じゃないですか!なぜ使用を続けるのですか!」

 

「発電所がないと消費電力を賄うことができません。更に転移の影響で化石燃料は転換しないといけません。どうやら火力発電は規制されつつありますし…そして再生可能エネルギーですが、様々な問題を抱えているため十分に電力を賄うことができません。」

 

「な、なら核融合発電でも何でも使えばいいのでは…」

 

「だからこそ、ミレニアムとの技術交流を求めているのです。」

 

「ああ…なるほど…いやしかし…それは少し難しいかもしれません。私達も技術を保護しなくてはならないので…それに、正直言ってしまいますが日本の技術のほとんどは古く、価値があるかどうか…」

 

「そうですか…しかしそれだと我々は禁忌を使い続けることになりますが?」

 

「それは…!たしかにそうですが…今日はもう遅いですし、続きはまた後日にしましょう。」

 

 

─────────────

ミレニアムサイエンススクール ラボアジェホテル

 

 

会談1日目が終わり、藤森は宿泊所へと案内された。

ホテル周辺は厳重な警備体制が敷かれていて、内部もミレニアムタワーほどではないがセキュリティシステムが何重にも備えられていた。

 

藤森はスマホを取り出し電話をかける。大事な交渉、総理に途中経過の報告をしなければならない。

 

「藤森です。会談1日目は無事に終わりました。」

 

『おお、お疲れ様。どうだった?ミレニアムの技術は。」

 

「ええ、やはりミレニアムの技術力は遥かに高いです。技術交流を行い、新技術を更に得られたならこの世界でも十分やっていけるでしょう。しかし一つ問題が」

 

『問題?それはなにかね?』

 

「はい、彼らは技術漏洩をしないようにしているらしく、まだ我々は信用されていないので…」

 

『ああ、つまり技術交流の提案が拒否されたと。』

 

「そういうことです。なにか打開策がないか考えてみます。」

 

『すまないな、しかしこの世界の技術力は異常だ。日本製品はこの世界じゃ品質が悪い方らしく、前世界のようには売れていないからな。あ、そうそう。宇宙開発についてのことなのだが、現在人工衛星をぽんぽんと打ち上げているだろう?それで、宇宙空間の利用についてミレニアムに聞いてほしいことがある。いざこざが起きたら大変だからな。』

 

「なるほど、具体的にはどのような?」

 

『宇宙で行って良い実験とか領有ルールについてだ。ほら、包括的核実験禁止条約とかあったろう。それに領域の概念がここじゃ違うかもしれん。』

 

「核実験については多分、全面的に禁止です。どうやらこの世界でも過去に色々あったみたいで、禁忌とすら言っていました。原子力発電所も正直グレーラインです。」

 

『なら核の脅威には晒されんのか。それは安心だな。あとは、月の土地利用についてだ。どうやら数カ月後には月に着陸できるらしい。日本初の有人月面着陸が別世界で行われるとはね。』

 

「そんなに計画は進んでいるのですか?驚きです。前世界じゃ数年はかかるでしょうに…」

 

『ああ。まったく、この世界の技術は恐ろしいよ。明らかに何十年も先の技術らしいが、日本の技術に落とし込んで十分使えるようになってるらしい。技術陣もとんでもない技術が手に入ったと両手を上げて喜んでる。じゃ、また何かあったら報告してくれ。あと、お土産も頼む。』

 

「わかりました。」

 

「ふぅ…やっぱり総理は人使いが荒いなあ…」

 

 

────────────────

 

 

「おっけー、盗聴器も盗撮器もしっかり作動しているよ」

 

「それにしても、うちは慈善活動家じゃないんだよ?」

 

「ごめんなさいね、しかし今噂の日本人が来ているのよ。あなた達も気になってはいたでしょう?」

 

「まあね、昨年度から謎の電波が飛びまくってたし。適当に傍受して解析してたよ。それにほら、元部長も気になってこっちまで来ちゃったし」

 

「別に気になってませんよ?ただ活躍を見に来ただけです。」

 

「まーたそう言って…お、なんか取り出したよあの日本人」

 

「ただのスマホだね…どこかに電話かけてるみたい。」

 

「なんて言ってるか聞こう。あの位置は…盗聴器5だね。ボリュームアップ…」

 

 

『藤森です。会談1日目は無事に終わりました。』

 

『─…───……」

 

『ええ、やはりミレニアムの技術力は遥かに高いです。技術交流を行い、新技術を更に得られたならこの世界でも十分やっていけるでしょう。しかし一つ問題が』

 

『──?─…──?』

 

『はい、彼らは技術漏洩をしないようにしているらしく、まだ我々は信用されていないので…』

 

「そりゃそうでしょ。正体不明の相手にやすやすと技術を公開するバカがどこにいるってのよ。」

 

早瀬ユウカは盗聴音声を聞きながら文句を垂れる。日本は未だに未知の勢力、ミレニアムの技術を使い悪事を企んでいる可能性もまだ捨てることは出来ない。

 

『──────……─……─……────…。』

 

『なるほど、具体的にはどのような?』

 

『─…─………──」

『核実験については多分、全面的に禁止です。どうやらこの世界でも過去に色々あったみたいで、禁忌とすら言っていました。原子力発電所も正直グレーラインです。』

 

『────………─…──』

 

『そんなに計画は進んでいるのですか?驚きです。前世界じゃ数年はかかるでしょうに…』

 

『───…………──。』

 

「計画…?何のことかしら。」

 

「この話の流れで計画って言葉はやっぱりだよ…電話相手の会話が分かれば良いんだけどなあ」

 

「より詳細に調べることはできるかしら?」

 

「音声データを解析してノイズとか消したらできないことはないけど…やってみる。」

 

録音した盗聴音声データを再度読み込み、解析ソフトに移して変換する。1分ほど経って音声の高品質化が完了した。

 

「できた。聞いてみよう。」

 

音声の再生ボタンを押す。

 

『───の脅威には晒さ───か。そ──安心──。────の土地利───いてだ。ど────月後には月に着陸でき───い。────はね。』

 

「うーん、ちょっと聞こえづらいけど…どう?」

 

「断片的にはわかるわ…一番気になるのは月に着陸ってところね。月に着陸だなんて、大気圏外に行くよりも難しいのに…ミレニアムの研究もまだ始まったばかりよ。」

 

「もしかして日本も宇宙開発を進めているんじゃない?」

 

「そんなはずはないわ。だって核融合発電すらしてないらしいのよ?宇宙に行く術を持ってるはずが…」

 

「他のところも解析してみよう。」

 

電話の内容をさらに解析してみると、日本が人工衛星を既に打ち上げていることがわかった。現在のキヴォトスで人工衛星を打ち上げることは出来ない。GPSなどの機能は連邦生徒会がオーパーツの人工衛星に接続し利用することができている。技術が圧倒的に格下であると見なしていた日本が宇宙技術においてミレニアムを圧倒しているなんて考えたくもなかった。

 

「驚いたわね…日本について、調査し直す必要があるわ。それに宇宙開発だなんてとんでもなく、羨ましい…。技術交流の案、受けても良いかもしれないわ。」

 

「ああ、ユウカは明日も会談なんだっけ?頑張ってね〜。あと、ちゃんと今回のお代は振り込んでおいてね、個人依頼ってことになっているからさ。」

 

「わかっているわ。来週までには振り込んでおく。協力に感謝するわ。」

 

ユウカはヴェリタス室内から早足で退出した。

 

「…でヒマリ元部長、どう?」

 

「ええ、いい仕事でした。腕を上げましたね皆さん。このまま更に技術を進歩させてください。そういえば日本についてなのですが…実は特異現象捜査部でも調査が行われています。」

 

「そうなの?」

 

「ええ、日本はこの世界に本来存在せず別世界から飛んできたという噂が広まっています。」

 

「聞いたことあるよ!でもそんなことありえるのかな…そんな芸当が可能ならミレニアムで実験されててもおかしくないはず…」

 

「そうですね。大分疑わしいところではありますが。かの国の周囲では異常なエネルギー滞留が観測されています。これは日本が元いた世界との時空裂により発生したものでしょう。つまり、本当に別世界の存在である可能性が極めて高い。世界が違えばもつ性質も、定義も違います。つまり彼らは私達とは似ているようで全く違う異質な存在。これからどうなるかわかりませんが、この世界に大きな影響を及ぼすでしょう。それが良いか悪いかはまだわかりません。」

 

「うーん、難しい話だなあ。」

 

─────────────────

 

2日目

 

藤森は目を覚ました。ミレニアムの高層ホテル、質の良いベッドから降りて歯を磨く。時刻は午前八時、そろそろ朝食の時間だ。

ここに来てからなにも食べていなかったか、と思いながら準備を済ませ、ホテル二階のレストランへと赴く。レストラン内は完全に自動化されていて、注文もなにもかもが機械で行うことができる。

こんな学園なのだからSFによくありがちなディストピア世界の味気ない食事でも出るのではないかと心配するが、メニューは豪華であり、頼んだ食事も美味しかった。

 

 10時になるとミレニアム生徒が迎えに来て、そのまま昨日と同じ会場へと向かった。昨日の一件で会談の雰囲気は悪いだろう、失敗させないためにもしっかりと相手の懸念点について説明し理解を得ることにした。また、質問することもたくさんある。

 

「技術交流に関してですが、了承します。」

 

「本当ですか!ありがとうございます!しかし、なぜ急に?昨日はあんなに渋っていましたが…」

 

「状況が変わった、とだけ言っておきましょう。そして技術交流についてなのですが、貴国はどうやら宇宙開発を行っていますね?」

 

「ええ、その件についてちょうど聞きたいことがありました。宇宙空間での取り決めについて─」

 

「宇宙空間についてですが、現在ミレニアムを含めどの学園もたどり着いておりません。」

 

「そうなのですか?この世界には日本よりも優れた技術がたくさんありますが…」

 

「今まで、宇宙空間の開発を行う必要性が有りませんでした。現在利用されている人工衛星は古代文明によって作られたオーパーツです。それに連邦生徒会が接続しているだけに過ぎません。そこで、ミレニアムが貴国に様々な技術支援を行う代わりに、宇宙技術の共同研究を行いたいです。」

 

「なるほど…我が国としてはミレニアムの様々な新技術を得られることは願ってもないことです。この条件で行きましょう。よろしくお願いします。」

 

ミレニアムの急な方針転換により無事研究協定を結ぶ事ができ、更に宇宙空間の開発ルールやその為貿易などの諸協定が結ばれ、無事に日本とミレニアムの公式関係が築かれた。

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