キヴォトスに朝日が昇る 作:sosprin
海外との貿易が不可能になり一切の物が入ってこなくなったので、現在国内の備蓄確認と今後の対応について会議を行っていた。
「それで、我が国はいつまで持つんだ?」
「まず食料についてですが、我が国の食料自給率は38%であり不足分は輸入に頼っていました。輸入が途絶えた今、災害用の貯蓄はあるにはありますがそれでも食糧の不足は深刻でして、このままだと3ヶ月で10万人、半年で500万人、一年で7000万人が餓死する見込みです。我が国の主要穀物で唯一の完全自給が可能だった米も、肥料となるリン、カリウム、そして窒素の輸入が途絶えたため生産量が激減すると思われます。」
「…そうか、ここまでひどいとはな。次に、エネルギーについて報告を頼む。」
「はい。エネルギーについてですが、現在石油は日本全体で240日分ほど備蓄されています。また、国民の行動に大規模な制限を行うことで、少しは余裕ができるでしょう。しかし国内では質の良い石油は全く取れません。また、日本周辺の地形が消失したとの情報から、輸入先が物理的に消失した可能性が極めて高いです。一刻も早く新たな土地で油田の採掘を行うか、またはどこかしらの輸入先を見つけなければなりません。」
「そうか。とにかく国民には厳しい生活を強いることになるな。全社会階層問わず、全員が危機に立ち向かわなければならない。皆、頑張ろう。」
総理は報告を受け史上類を見ない危機に対処することを決意しこの場の全員を鼓舞する。しかし、その手は明らかに震えていた。
「はい。総理、資源問題の解決は国内での対策だけで成り立ちません。一刻も早く新発見された大陸…北方大陸へと上陸し、資源調査や開拓を行わなければなりません。現状日本付近に現れた陸地に住民は確認されていないようです。法的には怪しいですが上陸し、我が国の土地とするべきでしょう。」
「そうだな。このまま何もしなければ死ぬだけだ。よし、北方大陸への上陸、調査を行ってくれ。燃料など物資供給も優先させるよう民間に要請する。」
「失礼します総理、私から食料、生活物資等の販売をとりやめ、すべてを配給制にすることを進言致します。すでの買い占めなどが全国で行われており大混乱が起きています。残り少ない食料を効率よく国民へ分配するためにも、どうかよろしくお願いします。」
限られた食料を自由経済の中で国民が奪い合うことは無駄な消費を促進させる。そのため、配給制を行い食料を国が完全に管理することで、食料不足を緩和させ滅亡を遅らせようとしていた。
「そうだな…あまり気は進まないが配給制を承認する。野党にも事態を全て説明し、協力を要請しよう。もしかしたら挙国一致内閣を作ることになるかもしれんな。仕事は厳しくなるだろうが詳細な計画を立ててくれ。他になにかあるか?」
このような厳しい政策に対して野党や国民からの非難が出るのは明らかである。その為、野党に譲歩し危機対応への協力を要請するつもりだ。後に戦後初の挙国一致内閣が生まれることになり新世界での問題対応が容易になるのは先の話だ。
「総理、誠に言いづらいのですが先ほど承認していただいた対策だけでは足らず、日本はこのまま滅亡すると予想します。私から、国民の強制徴用と計画経済制を進言致します。」
ここで閣僚の一人から爆弾発言が飛び出した。自由権を明らかに無視した、社会システムを根本からひっくり返すような提案である。
「いやいやまて、そんなことをしたら本当に政権は終わりだ!さすがの野党も許してくれないだろう!我が国は自由主義、資本主義国家なんだぞ!財界からも国民からも非難が殺到する!」
「総理!国民の反発を招いてしまうかもしれませんが、背に腹は代えられません。政権の命なんて今は気にしてる場合ではないのですよ!
今はかつて無い危機の中にあるのです!今の状況では資本主義経済が破綻することは目に見えています!ほとんどの経済活動が停止することで国民は仕事がなくなるでしょう。食料も無いに等しいです!仕事がなくなり手の空いた国民に農地の開拓、再開発を担わせ少しでも食料生産量をあげるべきです。肥料に関しては堆肥でもなんでも使いましょう!」
「っ!…本当にそこまでやらないといけないのか?...わかった。責任は全部私が取ろう… 承認する。ああ、これで私の政治生命も終わりだな。」
「総理!そう悲観しないでください。あなたは救世主となるのですよ?教科書にも載りますよ。」
「教科書に載るのは総理になったなら当然だ。まあ、だが、はは...まさか私の代でこんな大事件が起きるなんて、勘弁してほしいな。」
この日、国民の行動制限、国民の強制徴用、配給制が始まり経済は完全に政府に管理されることになった。これは国民の大きな反発を招き大規模なデモが各地で繰り広げられたが、記者会見にて総理が現状を懇切丁寧に説明、謝罪し国民のほとんどは日本が未曾有の危機の中にあることを認識し怒りは沈静化されていった。
そして北方大陸への上陸が始まる…
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北方大陸
調査隊が北方大陸に上陸して一週間、これまで新しい土地の調査を行うために植物や生物、細菌などの学者が上陸し研究を進めていた。しかし、なにか目新しいものは見受けられず、
気候や生態系も日本とはあまり変わらなかった。内陸へ進むうちにかつては栄えていたであろう完全に廃墟と化した大都市を発見し様々な分野の学者が次々と上陸した。
「街の雰囲気は日本っぽいですね…」
「ええ、しかも文字は日本語や英語が使われています。車のナンバーも日本のものと同じじゃないですか...見てください、この街並みなんてまるで巣鴨みたいです。まあ廃墟と化してますけど。」
社会学者と歴史学者が廃墟を散策している。廃墟は日本の街の雰囲気とよく似ていて、看板などの文字には日本語が使用されていた。放棄されたお店の商品もすべて日本語か英語で表記されていて、ゲームショップとみられるお店にはまるであの有名な日本のゲーム会社のパクリだと疑うくらい類似しているゲームがたくさん並んでいた。
「うーむここまで似ているとは…実はここは別世界の荒廃した日本だったりするんですかね?」
「そんなこと、ありえないでしょう。日本がまるごと別世界に転移したとでもいうんですか?そんなネット小説じゃないんだから...」
「はは...冗談ですよ。...ん、おっとこれは?」
彼はなにか硬いものを踏み、下を見る。
「これは…ロボットですかね?」
「どうかしましたか?」
ロボットを持ち上げる
「おいしょっと、これを見てください。ロボットですよロボット!」
「ロボット…しかも人型…」
「ええ!人型ロボットなんて、我が国ではあまり見かけませんよ。見かけるとしても飲食店のあいつくらいです!みてください。この亀裂から見える内部構造もかなり洗練されていますよ!まるでSF映画だ!」
「この文明はかなり発展していたのかもしれませんね。」
「謎がどんどん深まりますね。それにしても、なぜここまで荒廃したのでしょう?」
「さあ...これから判明するのでしょう。文明の滅亡なんてそんな簡単に見れるものではありませんから、この廃墟は貴重な資料になるでしょうねぇ。ああ、わくわくしてきたなぁ。」
ロボットを置いて調査団が大通りを進み20分、日本でもよく見るような学校を発見する。校門から敷地に入りしばらく小さな道を進んで昇降口の前へとさしかかる。校舎の窓は割れ壁もひび割れている。誰がどう見ても立ち入るのはとても危険だが、学者の知的好奇心は刺激されすぎてもう止まることはない。危険を鑑みずそのまま校舎の探索を行う。
「ここが一階...本当にぼろぼろですね。」
「ここ大丈夫ですか?崩落したりしませんよね?」
「まあ可能性としては十分にありえますが...どちらに進みましょう?」
「右...は壁が崩れていて危なさそうなので、階段を上がり二階から攻略しましょう。」
階段をのぼり二階へと向かう。どこもかしこも崩落する危険性があるので一歩一歩慎重に行かなければならない。
「ふう、二階はまだ崩落は進んでいなさそうですね。廊下を進みましょうか。」
「はい。」
廊下を進み教室に入る。ここは三年生の階のようだ。クラスはKまであり、かなりの数の学生がこの学校に通っていたのだろう。
全ての教室を調べたがもうすでに椅子も机も片づけられ何も残っていなかった。
二階を巡り巡って最後は生徒会室だ。
「生徒会室...なにもなさそうですね...」
「入りますか。」
ガラッ
「おお、今までとは打って変わって物が残っていますね。」
「そうですね。これは調査のしがいがありそうです。私はこちらを調べますので、あなたはあちら側の調査をお願いします。しばらくしたら報告し合いましょう。」
「わかりました。」
二人が調査を始め棚や机や本やらをがさごそと荒らしまわる。ここは放棄された当時のものが残っていてかなりの資料を集めることができた。
1時間後...
「一通り調べましたが、あたりですね。興味深い情報がありました。」
「こちらにはなにもありませんでした。」
「では、私から報告を。この資料なのですが...」
見せられた資料には『〇〇年度 ハアザミ学園 決算報告』と書かれていた。
資料の内容のほとんどは、いたって普通のものだったが、物品の中に目を疑う内容が書かれていた。
「せ、戦車...?」
「いやおかしくないですか?ここ学校ですよね...?まってください、ここに弾薬、ヘリコプターと書かれています」
学校の決算の中になんでこのような兵器の類があるのかはわからない。ここの治安が悪かったのだろうか?滅亡の原因なのか?またこれはあとで調べることにしよう。
次の資料は連邦生徒会という団体から送られた手紙のようだ。内容はこの学園への支援打ち切りとのこと。やはりこの地域に過去何かしらの問題が起きたのは明らかのようだ。
「まあ、こんな感じですね。それでは3階に行きますか。」
「ええ。」
三階へ進もうと階段を上るが、
ミシミシ...
「ん?何の音です?」
「...あ、まずいです!今すぐ戻りましょう!」
「え、あ、はい!」
半分まで登った階段を急いで駆け下り二階へ戻ると、
ミシミシミシミシ...がこおおおおおおおおん!!!!
階段が勢いよく崩落し粉塵が舞う。あの場にいたら無事では済まなかっただろう
「げほっげほ...ふう、危なかったですね...」
「はぁ...はぁ...ありがとうございます...死ぬところでした...」
「命があってよかったよかった...ところで三階までの別ルートはありますか?」
「たしか階段はここしか使えなかったような...しかも今壊れましたね。」
「ということは...」
「はい、三階に行くことができなくなりました。」
「...ううう、残念です...」
調査隊は三階へ行くことをあきらめて見つけた資料とともに基地へと戻ることになった。
後日、別動隊が深くまで調査を行った末、復旧可能な工業地帯や食料生産工場を発見。
工場には新技術も見受けられ解析と再利用の計画が打ち立てられる。食料や資源の獲得のために再開発が進んでいく。