キヴォトスに朝日が昇る 作:sosprin
日本から西方◯◯◯◯km
人工衛星の消失により地球全体の把握ができなくなった日本政府は北方大陸西方、そして大陸上空に光る謎の輪の調査を行うため自衛隊を派遣した。
偵察機は日本海沿岸の荒廃地を超えさらに西へと向かっていた。
自衛隊はこの世界に転移してから他に国や文明がないか確認するために政府からの要請で北方や東方などを調査し(ちなみになにもなかった)
今回は西方4000km地点まで調査する予定だった。
「最近はずっと空を飛んでいるな。」
「はい。そろそろ青い空と廃墟だけを見るのは飽きてきましたよ…空の輪は気になりますが特にそれ以外に異変はないですし…」
「ただ、自由に空を飛べるのはいいな。旅客機も米軍もいないんだ。ここは俺達だけの空だぜ?こんなに羽を伸ばせる日なんて来るわけないと思っていたよ。まあ日本の将来はめちゃくちゃ不安だが、こんな体験ができたならもう言い残すことはないぜ」
「そんなもうすぐ死ぬみたいなこというのやめてくださいよー!怖いですって。」
「がっはっは!すまんな。みんなでこの危機を乗り越えていこう」ひゅんひゅんひゅん
「謝りながら危ない飛行をしないでください!」
2人は雑談しながら偵察を続ける。
─────────────────────────
15分後
「…あれみてください前方に塔のようなものが見えませんか…?だいぶぼんやりしてますけど」
「ああ?…どこだ?」
「あそこです。前の雲の上に…」
「あれか?確かに見えるが…馬鹿言え、雲の上まで聳え立つ塔なんてないぞ、今の標高を考えてみろ。蜃気楼かなんかじゃないか?」
「この世界ではまるで映画や空想でしか見ないようなロボットだって発見されてます。だいぶ未来的な文明があったといわれていますし、何が起きるかわかりませんよ?バベルの塔だって建てることのができる可能性があります」
「だとしたらいつか崩れる運命にあるのだろうか?...あの塔のほうに向かえば何か見つけられるかもしれん。…司令」
『どうした、なにかあったか?』
「ああ、前方に建造物を発見、それもばかみたいに高い。雲の上から出ているようだ。ぼんやりとしているが」
『それは本当か?蜃気楼か何かではないか?』
「その可能性が高いと俺も思うが、一応接近してみる。」
『了解した。』
─────────────
更に時間が経ち、彼らは塔への接近を試みていた。下を見ると、当たり一面は雲海が広がっている。地上は見えない。しかし、大きな山の頂上が雲の上に出ている。白煙が出ていることから、それが火山であることが分かった。
「斜め前下を見てください。あれは火山ではないでしょうか。煙も出ていますし噴火したら危険です。少し迂回しませんか。」
「そうだな…そういえば、もうそろそろ折り返し地点だ。燃料も少なくなってきたしな。」
「そうですね。…それにしても、いくらなんでも塔まで遠すぎやしませんか?ずっと目指していても全貌が見えませんし、どうやら地平線の先から立っているとわかりました。ですがそれは塔が尋常でなく高いということを示しています。」
「あんだけの高さのものが本当にあるなんてな、もうはっきりと見えてきているし蜃気楼っていう線もないだろう。まったくあれを作った文明は想像できんな。」
「そうですね…」
彼らは塔との対角線上に火山があることを考慮し、迂回し更に西方へと飛んでから北上することにした。そろそろ燃料が心配になってくるころなので、あと少しして何も見つけられない場合は基地へ帰還することとなった。
──────────────────────
さらに600km程進み、
「みてください。途切れ途切れですが地上が見えています。そろそろ雲海を抜けるはずです。」
「了解、地上の偵察と行こうか。」
彼らはそのまま進み地上の偵察を行おうとしていた。
「よし雲海を抜けたな…見てみろまた街が広がっている、それにしても本当に広いな。さあ、もう何回目になるかわからない悪趣味な廃墟撮影といこうじゃないか」
「ふざけないでください。まあたしかにそろそろ飽きてきましたけど...じゃあ撮影しますね。」
...
「どうだ?ちゃんと撮れたか?」
「今確認しますね。…待ってください、これは!」
「どうした?何か発見したか?」
「この街は廃墟でない可能性が高いです。つまり、れっきとした市街地です。」
「本当か!?」
「はい。崩壊した建物が一切見受けられませんでしたので、不思議に思っていたのですが、住民の活動を観測しました。」
予期せぬ大発見に思わず喜び、しかし使命を忘れずすぐに報告する。
「なるほどな...司令、市街地を発見した。それも、廃墟ではない生きた街だ。」
『…!本当か、分かった。もっとその市街地についてデータを集めてくれ。』
「了解。」
新世界に来て初めて発見した現地市街地のデータを集めるため、上空を旋回しながら写真や地形データなどを収集した。人工衛星に頼れない中のこのデータは後に役立つことになる。
データを集めてから10分ほど経過した頃、
「おっと、四時の方向から反応。アンノウンです。」
「了解。司令、未確認航空機がこちらに向かっている。離脱許可を求める。」
『相手のデータを集めることはできるか?』
「おそらく可能、しかし速度が速い。離脱しながらになる。」
『そうか…最悪の場合を考えて離脱してくれ。データはできたらでいい。』
「了解。」
偵察機は高度を上げ、空域を離脱しながら不明機の調査を行った。不明機は第一世代ジェット戦闘機であり、翼には視力検査のような3つの円と三角が組み合わさった紋章が印されていた。偵察機は厳しく追跡され追いつかれるところだったが、なんとか離脱できた。