キヴォトスに朝日が昇る   作:sosprin

8 / 18
初会談

日本国外交官の加藤と杉本は会談のため、トリニティのトップであるティーパーティーがいる本校へと向かっていた。

日本国外交官を載せた車が高速道路を走っている。

あの襲撃の迫力はいまだ脳裏に残っており不安に思われたが、予想していたよりは悪くないことがわかる。どうやら、あの襲撃もイレギュラーであり、普段の街は平和のようだ。

 

窓の外を見ると、市民の殆どは人間ではなく直立二足歩行の哺乳類であり、人型の所謂"生徒"もヘイローがあるなど地球人類とは違う。また、自律型ロボットも見受けられた。町並みはロンドンのようであるが、ところどころに超高層ビルがそびえたつ。また、道路に戦車が走っていたり、一般人が銃や爆弾を持っていたりするのは日本にはない光景だろう。

明らかに日本よりも格段に技術力が高く、男のロマン溢れるこの光景に外交官の二人は興奮を隠せない。

 

「あの…!」

 

「はい。どうかしましたか?」

 

「あの空の輪っかは一体何でしょうか!」

 

車の中で加藤はハスミに話しかける。委員の一人が明らかに未成年運転(そして無免許!)をしているが、気にしないことにした。この世界はどうやら常識が通じないことがわかってきた、今更ではあるが。

 

「はい、あれも私達の頭の輪っかと同じ、ヘイローです。一体どのような仕組みなのか、その起原は知られておりません。正体を解き明かそうとする団体はいくつかあるようですが...ところで、あなたの世界にヘイローはなかったのですか?」

 

「はい、ありませんでした。この世界には我々の元居た世界とは大きく異なる点が多く、ヘイロー以外にも二足歩行をする知的生命体は人間だけであり、人類以外の哺乳類が知性を持ち人間のようにふるまっているのはとても興味深いですね...頭の上のヘイローはどのような役割が?」

 

「キヴォトス人はヘイローのおかげで銃弾に撃たれてもある程度耐えられるほどの耐久力を有しています。ヘイローは命と同じようなもので、ヘイローが壊れたものが帰ってくることはありません。」

 

「なるほど…」

 

「加藤さん見てください!あの塔、あきらかに1000mは超えていますよ...!こりゃドバイもかなわないな…」

 

「杉本さん...確かに興奮するのはわかりますが抑えてくださいね...すみませんハスミさん。」

 

「いえいえ、存分に楽しんでいってください。(ド、ドバイ...?)」

 

「あの...ヘイローって触れるんですか?」

 

「いえ、触ることはできません。ホログラムみたいなものですね。」

 

「試してみても?」

 

「ええ、どうぞ」

 

杉本の手は話の通り、ヘイローに触れることなく貫通した。

 

「おお...」

 

杉本がヘイローで遊んでいると、車ががたんと揺れその衝撃で杉本の手がハスミの頭に触れてしまった。杉本は急いで手を離す。

 

「あ。ご、ごめんなさい...!」

 

「杉本!なにやってんだ!ハスミさん、大変失礼しました。深くお詫び申し上げます!」

 

「ふふっ、大丈夫ですよ。ヘイローに触れることはできません。ヘイローというのは未だ謎が多いのです。ほら、もっと見ます?」

 

「寛大な心に感謝します...」

 

「はぁ...なにやってんだ...(やっぱり優秀な外交官が軒並み消えたのは痛いなぁ...)」

 

その後30分ほど、会談会場であるトリニティ本校に着くまで互いの世界について質問しあったり、杉本が興奮しまくったりしていた。加藤は少し頭を悩ませていた。

「ここが、トリニティ総合学園…荘厳ですね…」

 

校門前に着き、車を降りる。校舎は日本の無機質なものではなくむしろヨーロッパの宮殿といった感じだ。また、完全にビッグベンであろう時計塔がありここがロンドンであると錯覚させる。

 

10分ほど経ち、

 

「ここが会場です。礼儀作法等の差異についてはティーパーティーに報告しておいたので特に気にする必要はありません。少し進まれたら扉を締めますのでその場に待機してください。それでは、私達はここまでです。」

 

「わかりました。ありがとうございました。」

 

外交官二人は礼をし、建物の中に入る。中は広く豪華で全て整備してあり、一学園では考えられないような裕福さを感じさせる。かつてのヨーロッパでの任務を思い出していた。

 

すこし進むと後ろからガチャンという音がした、どうやら扉が閉まったらしい。

 

「(っと…たしかここで待機だったな)」

 

さきほど案内人に言われたとおりに待機する。すると先ほどまでの案内人とは服装の違う二人の生徒が現れた。

 

「ナギサ様がお待ちです。これから会談会場に案内します。こちらへ」

 

「わかりました。」

 

二人は連れられしばらく経ち会場へとたどり着く。

 

「それではこちらにお座りください。今会談では、トリニティ側からティーパーティーのナギサ様が参加します。本来トリニティ側他二人は別案件で今日はお休みとなっています。ナギサ様が到着するまでもうしばらくお待ちください。こちら、紅茶です。」

 

「ありがとうございます。」

 

加藤と杉本が椅子に座りお茶を嗜む。テーブルの上にはマカロンやケーキなどのスイーツとティーセットが載っていてとてもおいしそうだ。

 

「それにしても、緊張しますね...うまくやれるでしょうか?」

 

「うまくやるしかないでしょう。この世界で日本人を生き残らせるためになんとしてでもこの交渉を成功させなければなりません。」

 

「はい...」

 

二人は会談の前に目的と注意事項を再確認すると交渉相手であろう女性が入ってきて椅子に座った。

 

 

「それでは…始めましょうか。」

 

日本の命運を左右する会談が始まる

───────────────

 

これからティーパーティーと日本の会談が行われる。ティーパーティーは3人いるはずだが、ほかの二人は用事があったので桐藤ナギサだけが対応していた。

 

 

自己紹介や一通りの作法は済み、ナギサからキヴォトスやトリニティについての説明が始まる

 

「まず、このキヴォトスは数多の学園から成り立っています。その数は千を越え、生徒数も数え切れません。また、それらの学園をまとめ上げるのが連邦生徒会です。連邦生徒会長、あまり素性は分かりませんがとんでもない超人という噂は聞いたことがあります。また、三大校として我々トリニティ総合学園、隣のゲヘナ学園、ミレニアムサイエンススクールがあります。我々トリニティ総合学園は元々複数の学園が合併して創られました。また、長い伝統を誇り華やかな文化を形成しています。隣のゲヘナ学園は…そうですね、自由な校風が特徴でありテロや事件が毎日のように多発しています。トリニティとの関係はよくありませんね。最後にミレニアムサイエンススクールですが、ミレニアムは近年急速に力を増した学校です。千年難題の解決に向け日々奔走し、技術力はキヴォトスの中で最も高いです。トリニティも含め数多もの学園がミレニアムの技術に依存しています。」

 

「なるほど…興味深いですね…」

 

このあとも説明が行われたが長くなるので省略する。

 

続いて日本側の説明が始まる。

 

「まず、我が国は民主主義体制です。成人の国民全員が参加できる普通選挙が行われ、立法司法行政で権力がある程度分離しています。これは1組織の暴走を防ぐためです。国土は38万km²で1億2000万人の民を抱えています。前世界では高い技術力や経済力を有し、強い国際発言力を有していました。また、平和の理念に則り紛争地帯での調停や平和活動を行ってきました。詳しくはこちらのパンフレットをご参照ください。歴史なども載っています。」  

 

パンフレットを渡す。

 

「ほう...それはそれは。それにしても、人口がとても多いですね。このような地形、土地の狭さでこのような膨大な人口を有することで問題は起きないのですか?」

 

「はい。混雑などはインフラの効率化を進めてきたことで緩和しています。しかし、食糧問題は解決できていません。前世界において我が国は貿易により食料を輸入していたので、かつては食糧問題も発生していませんでした。しかし数ヶ月前より転移で貿易が途絶し、現在食料危機となっています。ここからが本題です。」

 

「我が国の要望はこちらのとおりです」

 

要望が書かれた紙を渡す。

 

「我が国はこれら資源と食料、そして自由貿易を求めています。」

 

「ふむ…石油等27項目の輸出は可能です。とくにこの5項目は在庫が溢れているので安く輸出致しますよ。」

 

「本当ですか!ぜひ輸入を行いたいのですが!」

 

「わかりました。ところで、この項目についてですがキヴォトスでは環境条約により使用制限が定められておりまして。あなた方の国は連邦に所属していないので遵守義務はありませんが、目をつけられてしまうと経済制裁や武力行使が行われる可能性があります。」

 

「それでは、どうすれば...」

 

「トリニティからエコ技術の供与を行うのはどうでしょうか?それなら連邦生徒会も口を出してくることはないでしょう。開発整備が完了するまでは輸出は行いますので、そちらでエネルギーの転換をお願いします。」

 

「願ってもない提案です…ありがとうございます…!」

 

 

「また食料に関してですが、こちらも半分なら賄えることができます。たしか、食料危機が発生しているのでしたよね?それならほかの学園にも掛け合ってみますよ。」

 

ナギサは日本に寄り添う態度を見せることで、安心感を持たせ友好関係の構築を目指す。しかし完全な善の気持ちではない。たしかにそこには裏の思惑が存在していた。

 

「本当ですか!助かります。...ところでお支払いはどうしましょう。あいにく、資源は輸出できませんし、通貨交換もまだ決まっていませんが...なにかトリニティが求めるものはありますか?」

 

「あら、そうでしたね...為替レートについては連邦生徒会に相談し決めて頂くしか有りません。一応トリニティが仲立ちすることもできます。それで、トリニティの要求するものですが、たしか、日本は自衛隊と呼ばれる軍隊をお持ちでしたよね?かの不審機が所属していたそうではないですか。自衛隊にトリニティの治安維持協力をお願いしたいのです。トリニティの治安維持は生徒の献身により万全ですが、隣のゲヘナと呼ばれる学園の襲撃がたびたび起きるのです。その対処に手を焼いているのです。また、貴国からも技術の提供を行ってもらいたいです。とくに軍事技術ですね。無償でとはいいません。しかし、こちらの譲歩を元に配慮してほしいです。」

 

 

「ええ、わかりました。自衛隊の治安維持協力と技術の共有ですね。我々も時間が有りません。条件を認めます。多大なる配慮に感謝いたします。」

 

 

 

日本とトリニティの貿易協定は無事に結ばれた。しかし公式為替レートはまだ決まっていないため、しばらくの間は1KY=1Yでトリニティと合意した。尚、これはトリニティとの貿易でのみ適応される。

トリニティからの要求である自衛隊の派遣について国民や議会は政府の予想通り憲法違反であると紛糾した。しかし、これも国家の生命線を維持するための代価であると主張し国民も明日の飯ですらまともに確保できていない状況であったため、自衛隊の派遣は主権の喪失などの重大な代価ではないことから見過ごされることになった。

 

 

食料や石油については危機は脱せるもののまだ十分といい難く、まだまだ転移前の生活には戻ることはできないため早急な不足分の確保が求められる。

 

数週間が経ち、トリニティの協力もあって貿易相手は日に日に増加しつつある。尚、ゲヘナとの関係構築は後日訪問した際に自衛隊員が被弾するなど治安が予想以上に悪いことがわかり中断され警戒対象となった。この後の国民経済再解放以降長い間渡航禁止処分がなされることとなる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。