燃え尽きる前に天の星から   作:養殖のホタル

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第3話

「まさか、本当にゴミ箱に紛れて潜入するとは思わなかったよ。そんなに心配なら普通に会いに行けば良かったのに」

「そんなことをする資格なんて、あたしにはないよ」

 

 サムとして篝を助けた後、ホタルが拠点に戻ると半目で呆れた銀狼が出迎えた。

 自分から篝を遠ざけた癖に、星穹列車が宇宙ステーションに向かうことと、そこにスウォームの残党が居るということを聞いた途端に単身で乗り込んだ上に、銀狼のサポートという名の尻拭いをする羽目になったのだ。文句の一つくらい言っても許されるだろう。

 

「ホタルがそれで良いなら私はとやかく言わないけど……私はこれからフレンドとゲームやる予定だから、いつもの仕送りにでも行ってきたら?」

「うん、そうさせてもらうね」

 

 ホタルがどういう気持ちで篝を送り出したのか、二人の再会が何を意味するのかも知っている。

 脚本にすら書かれていないスピンオフだが、当人達にとっては大事なことだ。銀狼が口を出すことでもない。

 

(ま、最後は二人が決めることか)

 

 それよりは今はゲームだ。

 この間フレンドになったゲーム仲間とレイドボスに挑戦する約束をしていて、そろそろその時間が差し迫っていた。

 ゲームにログインするとフレンドの名前が点灯していた。どうやら、銀狼より早くにログインしてレイドボス戦前に色々準備をしていたらしい。

 

『早いじゃん。そんなに楽しみだった?』

『最近外出を禁止されてやることないからレベル上げしてた。半分くらい自分が悪いから文句も言いにくくて』

 

 どうやら家族にでも怒られたらしい。

 やんちゃな性格なのかアウトドアなのか。どちらにしても怒ってくれるだけの家族に守られている。ということは恵まれているなとも銀狼は思う。

 

『そう言って裏でこっそり出てるんじゃないの?』

『無理。今抱き締められながらゲームやってるくらいには束縛されてる』

『距離感バグってない? 恋人とか?』

『いや、姉……なのかな? 多分姉』

『ふーん。大切にされてるんじゃん?』

 

 相当にやらかしたらしい。

 幼い頃から家族という存在に対する意識が低い銀狼からすれば、家族から可愛がられているなら悪くはないのだろうと思う。

 

 その後は普通にゲームを楽しんで、フレンドが切り上げる時間になったからといってお開きになった。

 

 

 □

 

 

(うー、おもい……)

 

 篝の朝は早くもない。

 それなりの時間に目を覚まして、星の抱き枕状態から脱するために身体を揺らして起こすところから一日が始まる。

 

「星姉、朝だよ」

「……あと、三分だけ……」

「そういう人は大体起きないんだけど、あ、ちょ、のしかからないでよ」

 

 うるさい目覚まし時計を黙らさせる要領で布団と星にサンドイッチされて、呻き声が漏れる。

 

「星姉ぇ……重たい」

「女の子に重たいとか言わないの……」

 

 大体こんな感じのやり取りを十分ほどするとようやく星が起きる。

 朝にして若干疲れている篝と充実した睡眠によってスッキリした星が一緒に起きてくる姿が列車組の見慣れた星核姉弟の姿だった。

 

「篝って毎朝疲れてそうだけど、ちゃんと夜に寝ないと背伸びないよ?」

「星姉を起こすのに疲れてるというか……」

 

 なのかに少しだけ気にしている身長のことを指摘されながらトーストの上にベーコンエッグを乗せて一口齧る。

 

「む……半熟じゃない……」

「そりゃあ遅れたら卵の黄身だって固まるよ」

「……半熟のが食べたい」

 

 目玉焼きの黄身は半熟派の篝は遅れた原因である星をジト目で見る。

 

「なら、完熟も好きになれば良い。私はどっちでも良い。どうでも良い的なことではなく、どっちも好きだ。けれど、どっちかの気分かは毎朝変わる。つまり、今日は完熟の気分」

「……だってさ?」

「こういう時の星姉はある意味会話にならないから諦めてる」

 

 いつもの調子で朝食を終え、列車に保管されている資料をいくつか貸し出してもらい部屋に運び込み一人でグラモスや鉄騎について調べていた。

 

(グラモスはもうとっくに滅んでる……)

 

 生まれ故郷がグラモスであるなら何か思い出すことがあるかもしれないと思っていたが、淡々と頭の中に情報が入ってくるだけで、資料の中ではただ鉄騎は人ではなく兵器として使い捨てられたことが分かったくらいだった。

 

(なんで、僕のことを作ろうと思ったんだろう)

 

 星その物を狂わせる可能性がある星核を埋め込まれて、兵器として活用するわけでもなく、生きた人間として廃棄されたのなら何のために生まれたのか。

 

(……見つかった時、ゴミ箱に入れられてたなら──)

 

 不要なモノを処分するために生を受けたのなら、その存在が生きている事に何の価値を見出だせば良いのだろうか。

 思考がネガティブな方向へと向かい始めた時、部屋のドアが開いて星が入ってきた。

 星と部屋を共有しているため、何もおかしいことはないのだが、その扉の音に驚いて篝の身体がびくんと跳ねる。

 

「篝?」

「星姉……」

 

 宇宙ステーションでの一件から、ぼーっと何かを考える時間が増えていることは流石に分かっていたが、彼の周りに転がっている資料を見るに、相当思い詰めている様子だった。

 

「ちょっと外出よっか」

「……何も聞かないの?」

「聞いてほしいの?」

 

 不安そうに篝が訊ねるも星はわざわざ一人で自らのルーツを調べていた彼に相談に乗ったとしても、その答えは彼自身に出させることだと判断した。

 

「ううん……ちょっと違うかも」

 

 今日の列車はヤリーロⅥに停泊していて、宇宙ステーションと違いスウォームと遭遇することもない。

 籠って暗い顔をしながら考えるよりは、外に出して別の事を考えさせる方が精神衛生的にも良いだろうと、星は篝を外に連れ出した。

 

「何か辛いことでもあった? クラーラで良ければお話聞くくらいなら出来るけど……」

 

 篝は連れ出された先のベロブルグの屋敷でそこに住むクラーラと話をしていた。

 背丈が近しいからか、ベロブルグに滞在時はよく一緒に居ることが多い。

 そういう(ラブコメ)雰囲気(の波動)を感じることもあってか近くでその空気を吸いたいと言い出した星は篝の横に黙って座って、二人の間に流れる空気を吸っていた。

 

「辛いことってほどじゃないんだけど……」

 

 資料を読んだせいで、そっちに気を取られて何を話して良いか悩みながら出されたココアをちびちびと飲んでいると、何かを察したクラーラに先制された篝は彼女に何となく見栄を張ってしまって言い淀んでしまう。

 

「……いや、そんな大したことじゃなくて、自分のことがちょっと分かったんだけど──」

 

 ここで黙ったとしても、結局はクラーラの頑固さに根負けして口を割らせられると思った篝は自ら事の経緯を話す。

 

「──だから、その、余計分かんなくなって来ちゃって、僕って何なんだろうとか色々考えて、またよく分かんなくて……」

 

 色々悩んでいるらしいことは分かったが、この手の事にクラーラも理解がある訳でもないが、何となく言えることだけはあった。

 

「でも、どんな篝でもクラーラの知ってる篝だよ。いつも会える訳じゃないけど、クラーラの友達」

「……そっか。なんかありがとう」

 

 明確な答えはまだ出せないが、クラーラの言葉に星と始めて出会った時のような暖かさを貰えた気がして、少しだけ心が軽くなった気がした。




クラーラについて

「ちょっと境遇が似てる気がする。でも、僕よりはちゃんとしっかり考えを持ってて、凄いなって思うことがあるから見習わないといけないとも思う。
 だから、あの子に負けないようにこれから自分が何なのか。それがあの子が言ってくれた『クラーラの知る篝』だって伝えたい」
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