眼前に居るのは二足歩行の黒い象さん。シリーズお馴染みの物理反射を持つオート殺しの悪魔と相対しながら、仲魔へと指示を送る。今回の戦法は感電ハメだ。まともに相手しても勝てる敵ではあるが、わざわざ正々堂々戦ってやる義理もない。サマナーとは卑怯な手を使ってナンボなのである。
「よっし!倒した!」
感電係の悪魔の横で属性弾を何発も食らわせていく。前衛には2体の物理耐性悪魔を並べているので、感電が抜けた瞬間に攻撃が来ても、余裕で防げるのだ。物理攻撃が効かないと判断すると、呪殺魔法を放ってくるが、そんなもの対策しているのは当たり前。逆に隙が出来るだけである。なので半ば消化試合の様相のボス戦はこうして幕を閉じた。
「レベル50到達〜!」
勝利の後のレベルアップは気持ちが良い。与えられたステータスポイントを割り振りながら、一旦戦闘要員の仲魔をCOMPへと戻し、探索、感知用の仲魔を交代で出した。依頼内容はガイア教団の一派が召喚した悪魔を倒せという内容だったが、先程のギリメカラで最後。一応探索用の仲魔は出したが、これ以上探索するスペースも無さそうなので、直ぐにトラエストを唱えて貰う事になりそうだ。
(そろそろ仲魔も一新するかな)
帰り道、最低限の警戒は払いながらもそんな事を考える。レベルも次の階層へと移った。これから挑むであろうダンジョンやら依頼やらを考えると、少し戦力が心許ない。暫くは合体素材と新しい戦法の構築が軸になるかなと頭を回しながら、ターミナルまで歩く。
「報酬はマッカと…アクセサリーか。まあまあだな」
ターミナルでハンターズギルドまで戻ると、受付のNPCから、報酬を受け取る。予めガントレットから依頼達成の報告はしていたので、アイテムを貰うだけのスムーズな作業である。マッカはそこそこではあったが、今更呪殺無効のアクセサリーを貰ってもうーんという感じはある。売却行きかなとアクセサリーの付随効果も見た後に、ガントレットの中へと収納した。COMP兼アイテム袋になっているガントレットはとても便利だ。これだけでもサマナーを選んだ価値はあるというもの。
(明日は池袋辺りに行くか)
そう予定を立てると、ログアウトアイコンをタップして、メガキミの世界から離脱するのであった。
メガキミ。正式タイトルは女神転生20XX君が生まれる日という。まあ長いので基本は先述の通りメガキミと約されている。舞台は東京。アトラスでメガテンといえば当たり前といえば当たり前の場所であるが、東京さんは今回も不憫な目に遭うらしい。
ゲーム内容はシンプルだ。東京という忌み地で起こる様々な事件を、自分の分身である主人公が解決していくと云うお話だ。先ずは主人公の設定を数多ある選択肢から選び、それに沿った場所へとスポーンする。カオス的な設定ならば、カオス陣営に、ロウ的な設定ならばロウ陣営。ニュートラルならば…とまあ中々に自由度の高い作品だ。メシアロールをして清廉潔白に生きるも良し。ムカツク相手は取り敢えず殺すというジェノサイドルートを選ぶでも良し。はたまた巻き込まれた一般人のように、王道ルートを選ぶも良しと楽しみ方はそれぞれだ。
「うーん、英傑系作りたいなぁ~」
今自分は、スマホからwikiへとアクセスし、これから仲魔にする悪魔の選定をしていた。メガキミが発売されてから早1年。ある程度の情報は出回っているため、こうして先人達の知識をお借りする。英傑系の悪魔。仲魔にする手順は合体事故やら何やらでとても面倒臭くはあるが、上手く作れれば戦力アップに多大な貢献をするだろう。それにシンプルに好きだというのも大きな要素だが。
「ま、取り敢えずコレとコレ…後は…」
明日仲魔にする悪魔をリストアップし、今日のところはそのまま眠りに就いた。
「ん?イベント告知?」
次の日。SNSを見るとメガキミのアカウントからそんな告知が出ていた。内容はまだ秘密らしいが、こういうのは何だかワクワクするものだ。イベントは今日中には配信されるらしい。まあ何かはまだ分からないが、取り敢えず今日もログインするか。
「素材悪魔準備完了〜」
あれから数時間。悪魔を勧誘した後は目当てのスキルを覚えるまでパワーレベリングを行った。流石に数が多かった為、時間はそこそこかかったが満足のいく出来である。とはいえこれからが本番だ。マッカと時間を掛けて只管悪魔合体を行っていく作業が始まる。何だかんだ仲魔を作成している時が一番楽しくはあるのだが、矢張り気力が削られていくのは覚悟しなければいけない。合体事故マラソン。果たしてどれだけ時間を掛ければ終わるやら。怖くもあり、ワクワクもありだ。そうしてこれからの悪魔合体に思いを馳せていると、
『メールが届きました』
「お?イベントのやつかな?」
自分はソロでこのゲームをやっている。まあオフラインなのでソロなのは当たり前だが、フレンド登録をすればゲーム内でリアルフレンドとやり取りする事は可能である。しかし哀しいかな。自分の周りにはこのゲームをやっている仲間は居ないのだ。一応ネット掲示板で募集も出来はするが、其処までしてフレンドが欲しいという訳でもないので、基本的に来るのは公式からのお知らせくらいである。
『メールを開封しますか?』
「YESと…」
この時このメールを開封しなければ、もしかしたらこれからの悪趣味なゲームから逃れられたのかもしれない。だがそんな事をこの時の自分が分かる筈もなく。映し出された肯定の意志を告げるアイコンへと指を当てるのだった。
『1年間。君達もこのゲームに慣れてきた頃合いだろう。故にこれより本格的な選別へと移る。先ずは全てのプレイヤー達を
「あれ…?」
目眩がする。立っていられなくなる。瞼が重い。フラフラと足をよろめかせた自分は、そのまま地面へと倒れ込むのだった。視界がどんどん狭まっていく。気付いた時には、自分の意識は其処で途絶えていた。
「ん……?…此処は…」
目が覚めると、倒れた場所と同じ所で目を覚ました。しかし何処か様子が可笑しい。何だか周りの音が五月蝿く、とても賑やかだったからだ。ボヤけた頭を何とか起動させ、顔を動かして辺りを見回す。すると自分しか居ないであろうメガキミの世界に、明らかにNPC以外のプレイヤーらしき人々が居たのだ。
「はあ!?何で俺以外が居んの!?」
「それはこっちの台詞だ!」
「何で…?これって基本1人用のゲームだよな…?」
ざわめくプレイヤー達。そんな彼等にさらなる追い打ちが来た。突如大きな音が辺りに響いたかと思うと、地面が、左右に大きく大きく揺れ始めたのだった。
立てない。立っていられない。そんな大きな地震であった。よろめいて倒れる者。直ぐに地面に伏せる者。自分は元から倒れていたので、単純に立てないだけであったが、取り敢えず手で頭をガードしておいた。
「お…おい…あれってまさか…」
「タルタロス…?」
ペルソナ3。アトラスから発売された女神転生とは別の作品に存在するダンジョン。それが遠くの区にて鎮座していた。どうやら先程の振動は、あのタルタロスが出現した時の余波であったらしい。
『これより君達にはあの塔タルタロスを攻略して貰う。先ずは世俗の庭デベル。全22階層までを開放した』
未だどよめくプレイヤー達を尻目にメッセージから流れる人工音声は淡々と台詞を紡いでいった。
『期限は一ヶ月。それまでに22階層まで到達していないプレイヤーには、試練を乗り越えられなかったのだと判断し、削除を行う。どうか、そうならないよう生き足掻くように』
こうして、自分こと
尚、タルタロスを攻略したからといって開放されるとは限らない模様。