いきおいトリップ!   作:神山

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十六話目

また飛んで数日後。俺はようやく魔法学院都市に到着した。え?飛ばしすぎ?道中大した魔物も出ずに前回と同じやつらを延々殺しまくるだけなのが聞きたいと?変わった事と言えば着ているパワーアーマーをエンクレイブ・ヘルファイヤーアーマーに切り替えた事くらい。理由は気分転換だ。それに、そういえばバルムンクでパワーアーマー着込んだまま入ったのに何も言われなかったのを思い出したからさ。流石にメガトンじゃ前のに変えるけど、コッチにいる間は防御力と耐火性能のあるコイツにしようと思うんだ。

 

 

で、現在俺はエンクレイブ・ヘルファイヤーアーマーを着たまま学院都市を練り歩いている。確かに多少住人や生徒とおぼしき子供達の視線はあるものの、そこまでじゃない。パフォレーターもPip-Boy3000に戻してるから銃は足に付いてる二つだけ。それでもこちらでは十分凄いんだろうけどさ。

 

 

このフェルナンド魔法学院都市はメガトンのようにフェルナンド魔法学院を中心として様々な人々が集まって出来たものだ。そして五本ある大通りにそれぞれ種類の違う商店が立ち並んでいる。一般的な日常製品を扱うコーシャル通り。ギルドがあり、それに関連して武具店や冒険者用のアイテムを扱う、まんまの名前のギルド通り。冒険者や他の土地から来た者用のホテルや宿屋があるレスト通り。クラスや学年によって違う学生の寮があるドミトリィ通り。最後に役所とかの公的機関などがあるゴ―ヴァン通り。そして今俺がいるのがギルド通りだ。

 

 

そしてそれらの店や家を魔物等から守るためにぐるっと一周高い城壁に囲まれている。これらの情報は魔法具を扱う出店をやっていたおっちゃんに聞いた話で、speechスキルで聞き上げた。この都市の通りの名前が全体的に英語が崩れた感じの名前になっているのはよくわからん。

 

 

さらに!なんとその際に収納用の魔法具を発見することができた!性能はPip-Boy3000よりかなり劣っているものの、これで誤魔化しが効くようになったのは嬉しいことだ。まぁ何か言われても、死んだ両親から譲り受けた形見の高性能な魔法具とでも言っとけば、まっとうな良心を持つ人間ならばそんな聞いてくることはないだろうし。もし奪いにくるなら殺すだけだ。ついでに言えば、そこでは何も買わずに冷やかし同然ですぐに離れた。確かに俺にとっては珍しい物ばかりで、ゲームでも収集家と化していた俺としては手にいれたかったが、生憎と金もないし効果も俺には必要ない物ばかりだったからな。

 

 

「ギルドはここか……広すぎだぞ学院都市」

 

 

そして店同士の激しい喧騒と冒険者達や生徒の行き交うギルド通りを進むことしばらく。俺はようやくギルドを発見する事が出来た。大きさはバルムンクと良い勝負という所だが、生徒が多いからだろうか。中は向こうよりも綺麗になっている。と言っても元が酒場なので向こうに比べて、というものだが。

 

 

「っと、部位を袋に入れて……デスクローは後で出せばいいか」

 

 

Pip-Boy3000からあの袋を出して今まで狩ってきた物の部位を詰めていく。結局5体狩ったオークの首袋は腰にぶら下げている状態で出てきたのは有難い。まぁ動きずらいことこの上ないが、ちょっとの間だけなので問題は無いだろう。一応これは人目につかないギルド横の路地でやった。

 

 

「よっと、入るとするか」

 

 

路地から出ると、通りすがりの冒険者や店の人の目が一気に集まる。しかも立ち止まって。やっぱり目立つか……思わず俺まで立ち止まってしまったが、無視しよう。俺はそれらを無視してギルドに入った。

 

 

「でよぉ!そ……」

 

 

「あん?どうし……」

 

 

俺が扉を開けて中に入った瞬間、今までガヤガヤしていたギルドが静まり返った。更に固まって皆俺を見つめる。何だこれ?苛めか?

 

 

「……換金をお願いしたい」

 

 

「……え?あ、はははい!では部位の提出をお願いします!」

 

 

俺に集まる視線を無視し、同じく放心していた受付に換金を頼み、腰にぶら下げていた首袋と袋に入れていた小型の物等を出していく。

 

 

「こ、こんなに……」

 

 

「まだまだあるぞ」

 

 

「「「えっ!?」」」

 

 

ギルド内の冒険者のいきなりの驚き声に内心ビックリしながらも、呆けている受付の女性にPip-Boy3000から次々に魔物の部位を出していく。結局入りきらなかったからな。今回は群れとの遭遇が頻発したし、前の村で換金してないから多いこと多いこと。大小含めて100体以上は軽く狩ってる。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってて下さいね!マスター!!」

 

 

一気に出すと溢れかえってしまうのでちょこちょこと出していると、放心状態から復活した受付の女性が奥の扉の中に駆けていく。マスター……誰?

 

 

「おいおい、まだ出るのかよ……」

 

 

「あいつ、何者だ?」

 

 

「オークを5体も……しかもバグベアまで」

 

 

「他にも色々あるぞ。こりゃあフェリカちゃんがマスター呼ぶのも仕方ないな」

 

 

黙々とPip-Boy3000から部位を出していく途中で後ろから他の冒険者の声が聞こえてきた。あの人フェリカっていうのか。耳が尖ってる金髪美人だったが……あれが亜人というものだろうか。

 

 

ちなみにバグベアというのは図鑑によるとBⅡランクの熊がでかくなって無駄に俊敏性の上がった魔物だ。ヤオグアイより格段に弱いがね。と言っても、中々強かった。速い身体の動きで銃弾は避けられたりして、その強固な筋肉のせいでパフォレーターの弾が突き抜ける事はなかった。まぁこれで余計にダメージが与えられたんだが。

 

 

そんな感じでパフォレーターで奇襲からの乱射、止めにブラックホークを撃ち込んで合計3体倒した。報酬部位は牙と毛皮と腕。肉は勿論Pip-Boy3000の中にまだある。熊肉は普通に美味しく頂けました。

 

 

「おいおいフェリカ、何をそんな……成る程、そういうことね」

 

 

「うん?」

 

 

俺がデスクロー以外の魔物の素材として最後にゴブリンの牙をぶちまけると同時に先程の扉からフェリカという女性と共に黒いコートを着た赤い短髪のイケメンが出てくる。この人がマスターとかいう人か?

 

 

「いや失礼。この子はバイトでね。これから先はギルドマスターの俺が対応しよう」

 

 

「わかりました」

 

 

ギルドマスターか……こりゃあいきなりかなりのお偉いさんが出てきたな。多分ここのトップなはずだからな。でも何でこう……重要なポストにいる人はイケメンか美人なんだろうか?

 

 

「それにしても凄い数だな。苦労しただろう?」

 

 

「まぁ、そうですね。何故か群ればかりに遭遇しまして」

 

 

「はははっ、そりゃ運がない……っと、種類別に分けてくれていたから数えやすかったぞ。これが報酬だ。俺も昔似たようなことをしたもんだが、こんだけ狩りゃあしばらくここ周辺は安泰だ」

 

 

じゃらり、と革袋に入った報酬がカウンターに置かれる。素材は次々に片付けられていき、奥の扉に消えていく。まだデスクローが残ってるんだが……。

 

 

「あの、まだもう一匹だけあるんですけど……」

 

 

「うん?まだあったのか……今度は何だ?またバグベアか?それともミニドラゴンでも出てくるか?」

 

 

ひやかした様に言ってくるのを無視して俺はPip-Boy3000に報酬をいれ、デスクローに選択肢を合わせる。ちなみに図鑑情報によればミニドラゴンとはその名の通り小型のドラゴンでBⅡランクの魔物らしい。このクソイケメンめ……目に物見せてやるわ!

 

 

「いえいえ、そんなちゃちなものではなく――」

 

 

「なっ!?」

 

 

「うそっ!?」

 

 

「「「「えぇぇぇぇ!!」」」」

 

 

ピッ、とボタンを押してデスクローの死体をギルドマスターの目の前に落とす。正直この呆けた顔が面白くてしょうがないが、話を進めないとな。

 

 

「――デスクローです。換金を」

 

 

「「「「……」」」」

 

 

先程までの皮肉はどこへやら。ギルドマスターは目と鼻の先にあるデスクローに固まっている。ちなみにこの沈黙はしばらくして俺がギルドマスターを殴ることで終結した。

 

 

「っつぅぅぅ……容赦ねぇのな、お前」

 

 

「話を進めないそちらが悪い」

 

 

悶絶しているギルドマスターにもう敬語を使わずに話す。なんかこの人軽そうだし、いい加減面倒になってきたからな。

 

 

「オーケー、そりゃ悪かった。でもな?コイツを見せられたらこうなるのも許してくれや……本当にお前が狩ったんだよな?」

 

 

「勿論。ギルドカードを見たらわかるだろ?」

 

 

やっぱり信じきれないのか訝しげな顔をするギルドマスターにギルドカードを渡す。それを受け取り、水晶にかざすと彼は観念したように両手を上げてやれやれ、といった様子で俺にカードを返してきた。

 

 

「オーケー、俺の負けだ。とりあえず、お見事と言っておこうか」

 

 

「そいつはどうも」

 

 

「それにしてもお前、ランクがDⅠだったのかよ。今回の常時討伐依頼の分でCⅠになったが、それでもまさかデスクローを狩ってくるとはな……コイツ公ではSⅠとか言われてるが、実質倒せる奴はXかSⅢって言われてるんだぞ?」

 

 

デスクローを興味深気に眺めたり触ったりするギルドマスターの言葉に内心かなり驚いた。なんだよそれ、詐欺じゃないか……それにしてもやっぱりデスクロースゲー。

 

 

「これが依頼だったらお前は一気に上がってCⅢは確実、下手したらAⅡ位まで上がってたんじゃないか?」

 

 

勿体ねー、とぶつぶつ言うギルドマスター。俺自身も少なからずそう思う。でも今のランクじゃあ受けれないし、まぁ掴みとしては上々かな?金も結構手に入るし。

 

 

「まぁいいか。さて、これから報酬を渡すわけだが……額が額だ。それにコイツを中に入れておきたい。そいつを持って、ついてきてくれ。俺は持つのがだるい」

 

 

「……」

 

 

そう言ってそそくさと出てきたドアに向かうギルドマスター。こいつ……本当に責任者か?




今回の事で主人公はおおっぴらに無双していくのをほぼ決めた感じです。むやみやたらに武器を出したりはしませんが、戦いには金が入れば参加します。

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