いきおいトリップ!   作:神山

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二十七話目

誓約書をギルドに渡して全員の銃を預かり、念のためその間の変わりの装備というか、まんま同じ装備を渡しておく。状態としては、まぁ壊れそうな物を渡して何かあって死んでしまったら元も子も無いのである程度な物を渡しておいた。このことでやっぱり驚かれたものの、誓約書に俺のやることなすことに深く介入しない事と馬鹿みたいに他言しない事を書いているのでそれだけだった。あちらさんもプロだからその辺しっかりしているはずだ。信用第一とかライリーが言ってたし、唯一心配なのはセオ位だろう。

 

 

それと、あれから少ししてからライリーと話した。まずは荷物の事への感謝とセオとレオンが俺にふっかけてきたことへの謝罪があって、これまでの事をロドリゴが伝えた。銃の整備云々でまた驚かれたが、そこはパーティリーダーであるライリー。すぐに損得勘定を始めて俺が信用に値するかを一度俺に断ってから仕事の休憩で出てきたアイザックに聞いていた。それと、何故か俺の名前をアイザックから聞いた瞬間にすごい勢いで振り返ってきたのが凄く印象に残っている。何か信じられないものでも見ているかのような目をしていたが……まさか、ね?

 

 

「さて、お仕事しますか」

 

 

飯を奢ってもらって向こうはまだやることがあるそうなので別れた俺は、とりあえず宿に戻って部屋で修理を開始する。セオ、レオン、ロドリゴ、キャスの銃は特に魔改造されてなかったので普通に楽なPip-Boy3000の中で直す。二個一修理ですぐ終わった。念のため動作確認とかをする必要があるけどここでは流石に出来ないので明日学院に行った時にどこかグランド的な所が使えないか聞いてみようと思う。無理なら外に出れば良いだけだし。スキルマックスな俺の目で見た感じとPip-Boy3000内では大丈夫だったんだけど、ゲームの頃となにか変わっていたり本人の知らないところでいじくられていたりしてたら危ないからな。

 

 

そして問題なのがカノンとライリーの銃だ。カノンのスナイパーライフルは言わずもがな。下手にPip-Boy3000でやって普通のスナイパーライフルになってしまったら目も当てられないので念のために自分の手で整備と修理をする。ユニーク武器が大丈夫だったあたり、大丈夫だとは思うけど……時間はかかるが手でも全然出来るので心配ない。というかむしろそっちの方が色々といじくれるので効果的といえば効果的なんだがね。

 

 

で、次にライリーの銃は普通の10mmピストルと超絶魔改造されたプラズマライフルだ。大体の見た目は同じではあるけど、見た目乾電池なマイクロフュージョンセルを付ける場所が普通のプラズマライフルではトリガーの前に縦に1つの所をその両側に2つ付ける場所が増えており、それに伴って内部構造も激変していた。さらに3つ同時使う事で従来の物の倍の威力を持っているために、言ってしまえば擬似ガウスライフル状態だ。しかも発射エネルギー調整が通常ライフル威力・最大威力・その中間威力と可能になっているという化け物仕様。なんでも御先祖から受け継いで溶けた銃口の取り替えとかいろいろ騙し騙し使っていたようだが、ついに調整部分とマイクロフュージョンセルを入れるマガジン部分諸々がイかれたらしい。

 

 

俺としてはよく今まで使ってこれたなと不思議で仕方なかったので聞いてみると、彼女の祖母の代までは修理の出来るグールが生きていて贔屓にしていたらしいが、材料採集をしている時にラッドスコルピオンの群れに襲われて亡くなったそうだ。グールに師事する奴なんて普通いないので技術は受け継げられてないためにそれから銃口を既存の物と取り替える程度で、とうとう……だとか。

 

 

「まぁ、俺はただ直すだけだしな」

 

 

どうやってこうまで魔改造出来たのか気になる所ではあるけど、俺は仕事をするだけ。無闇に人のプライベートに入っていく必要はない。誓約書に俺からそういうのをするなと書いてるのに俺がやったら本末転倒だし。とにかく俺は、Pip-Boy3000からカノンのスナイパーライフルを取り出して早速修理を開始した。

 

 

 

 

 

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「ふぅ、完成だな」

 

 

すっかり周りが暗くなってようやくカノンのスナイパーライフルの修理が終わった。バラして使えるとこを選別し、他を修理や既存のでパーツを入れ替えたりと、結構疲れた。知識と経験のお陰でここまで早く終われたが、普通なら2・3日はかかる代物だったよ。あとは本人に持ってもらって微調整する位かな?流石に強度を上げたりするのは設備も材料も無いから出来なかったけど、整備と修理は完璧にしたから納得してもらおう。ちなみに残った使えない部品をかき集めると廃棄部品としてPip-Boy3000に表示された。

 

 

部品を片付けた俺は腹が減ったので下に降りる。そしていつもの席に座ろうとすると、近くからついさっき聞いた事のある声が聞こえてきた。

 

 

「ん?おぉ!コウヤじゃないか!奇遇だな。お前もここに泊まったのか?」

 

 

「コウヤ~、そんなとこに突っ立ってないでさっさとこっちに来なさ~い!」

 

 

陽気な声で呼んでくるライリーに苦笑しながら、いつものカウンター近くの丸机に近づいていく。座っているのはロドリゴとライリー、カノン、キャス、レオンだ。彼らの前には酒が並んでおり、キャスの前にはウィスキーがボトルごと置いてある。すでにライリーは軽く酔ってるみたいだが。

 

 

「本当に奇遇だな。まさか同じ宿とってたとはね。俺は2日程前だが、いつからだ?」

 

 

「僕達は今日の朝からですよ。昨日の時点で居たんですけど、他の仕事が長引きまして。今日からはキャスさんの知り合いがやってるこの宿に来たんです。ここにいない二人は自分たちの知り合いの所に行ってて、とりあえず今日はあいさつ回りするそうです。ここ、ご飯美味しいですからいいですね」

 

 

言い終わるとともに今日の晩飯だろう生姜焼きっぽい肉を口に運ぶレオン。それを見てて腹が減ってきたので近くに居た店員さんに頼んだ俺は、何故だか変わらず空いているカウンター席に座った。ちなみにクレアは今他の客の対応とウィスキーの準備に少し忙しそうだ。飲み方を教えたのはクレアだけだし、まだ店員に教えきれていないんだろう。当たり前だけどさ。

 

 

「そうだな。あぁ、そうそう。銃の整備の件だが、とりあえずライリー以外のはすでに動作確認以外は出来あがったよ。今日はカノンの銃で手いっぱいだったんだ。すまん、ライリー」

 

 

「いい……って、早っ!!渡したの今日の昼でしょ!?いくらなんでも早すぎるわよ!!」

 

 

「あはは……そこは悪いけど企業秘密ってことで、誓約書権限使わせてもらう。とにかく論より証拠。見るだけ見てくれ」

 

 

ツッコミまくるライリーと呆然とするメンバーに苦笑しつつ、一人一人に渡していく。唯一まだライリー一家の教育により年齢的に酒が飲めなくて食事をしていたレオンには悪いけど、報告は早い方が良いだろう。全員に行きわたったのを確認して貸していた武器を後程返してもらう事を言う。キャスは部屋に置いてきたみたいだからどちらにせよ後にするにしても、他のメンバーは流石護衛と言うべきか。遠距離のカノンのスナイパーライフル以外はここで皆装備している。さすがに宿で抜き身の刃物の類はないにせよ、よく見ればメンバーの配置もしっかりとキャスを守るようにしていることから、流石ライリーレンジャーだなぁ、としみじみ思ってみたり。それにさっきまでウィスキーがぶ飲みしていたキャスが一気に真剣な顔つきになったのに驚いたけども。

 

 

「これは、すごい。完璧ですコウヤさん。頼んだ部分を全て以前の、いえ、以前以上の完成度です。メガトンの贔屓にしている所ですらここまで出来なかったのに……」

 

 

「まるで新品じゃないか。あとは動作確認とかだけなんだろう?こいつは期待できそうだな」

 

 

「皆言ってるけど、すごいねこれは。私のコンバット・ショットガンがこんなにきれいに帰ってくるなんてね」

 

 

弾が入ってない状態で大丈夫な物は空砲を撃ってみたりするメンバー。非常に危ないんだけど、皆嬉しそうなのでとりあえず口には出さなかった。

 

 

それから少ししてから再び銃を受け取り、運ばれてきた定食を食べながらメンバーと話をする。その中でライリー達の冒険録とかキャスの商売の話とかいろいろ聞くことができた。

 

 

しかもどうやらキャスは無類の酒好きらしく、ウィスキーをこれでもかと絶賛していたので何本かあげることにした。するとウィスキーをキャシディキャラバンでの個人向け行商の商品にしないかと持ちかけられたが、とりあえず保留とする。クレアに先に渡したんだから、他に渡すとなるといろいろ兼ね合いが必要になるからな。

 

 

「へぇ、じゃあクレアから許可取れれば良いってことね?」

 

 

「まぁ、そうなるかな。後は今後旅をする俺がどうやってキャスの元にウィスキーを持って行くのか、逆に俺への金はどうやって支払うのかとか決めないといけないが……」

 

 

「あぁ、そこは私に任せといて。どうするかは大体頭にあるから」

 

 

そう言ってウィスキーを一口飲んだキャスは、客の対応が一段落ついたのだろうクレアを呼びにいく。2人並んで歩いてくるけど、美人が仲良く並んでいるのはなんとも絵になる光景だ。甲乙つけがたいが、個人的にはクレアの方が好きだったり。

 

 

「コウヤ、キャスにもウィスキーを売るんだって?」

 

 

「あぁ。キャスが気に入ったみたいでさ。店に卸す事はせずに個人向けでやるそうだ。それならついでにこの店で飲める事も告げれば宣伝にもなるだろう。どうするかは任せるよ」

 

 

「うーん、まぁキャスならいいか。いずれウィスキーについてとやかく言われる時が来るだろうしね。それなら先に信用できる専売商人を持っているほうがいい。私はいいよ。ただ、売るときにしっかり宣伝することが条件さ」

 

 

「勿論!しっかり宣伝させてもらうわ!これでうちのキャラバンの需要も高まるわね。明日は仕事があるし、準備もしないといけないから誓約書とかは明後日ギルドでやりましょ。詳しい契約内容もその時に。コウヤもそれでいい?」

 

 

「あぁ。俺も明日は用事がある。それじゃあ明後日の朝食後に一緒に行くって事でいいか?」

 

 

「えぇ」

 

 

やけにニヤニヤしているキャスにクレアと二人して苦笑するも、互いの利益を願ってウィスキーを乾杯する。正直こうまで買い手がつくとは思っていなかったんだけどな……まぁ結果オーライかね?


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