いきおいトリップ!   作:神山

31 / 37
三十話目

パキュンッ、と独特の発射音と共に緑色の光の玉が飛んでいく。それは目視出来る程度の弾速ではあるが、獲物の背後からの発砲のため気づかれる事は無く直撃する。

 

 

 

「ゲグェァ……!」

 

 

いきなりだったからか変な鳴き声を出して死んだ獲物ーーまぁ、はぐれゴブリンなんだけどーーと周囲の安全を確認して、今使ったライリーの改造銃を背負い、とりあえず一言。

 

 

「何このMOD」

 

 

アーマーからのくぐもった声だし、誰もいないけどとにかく呟いた俺は仕方がないと思う。

 

 

あれから宿に戻ってからの時間と翌日を使い、ライリーの改造プラズマライフルを直した。それでその次の日、つまり休み三日目の今日は外に出て魔物相手に作動チェックしているわけだ。ちょっと手を加えたのもあって中々に大変だったけど、それだけの成果は出ている。というか出過ぎていた。

 

 

今まさに目の前の光景がそうだろう。相手にしたゴブリンの左半身部分は丸く抉り取られていて、切断面は半ば液状化し、元左半身部分は地面に緑の水溜まりを作っている。更にゴブリンを抉り取って尚進んだプラズマは、進行先にあった2m程度の岩を完全に溶かして消滅していた。

 

 

ちなみにMODとはPC版にある改造アイテムなどを指す。チートしたりネタに走ったりキャラメイクを良くしたり色々あるのだが、それは今回置いておこう。

 

 

「……やりすぎた?」

 

 

アーマーの中で冷や汗をダラダラ流しながらプラズマライフルの弾であるマイクロ・フュージョンセルを抜いて呟く。エネルギー消費とか諸々を効率的にしようと古い部分を手持ちの部品でなるべく交換しただけでこれだ。完全新品の状態だったらどうなってたのかを想像するだけで寒気がする。

 

 

「……ライリーになんて言おうか」

 

 

はぁ、とため息を吐いて俺はフェルナンドに戻って行った。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

門をくぐり抜け、相変わらず人で賑わっている道をパワー・アーマーでがっしゃがっしゃと進んでいく。やはり珍しいのかチラチラと見られるが、もう慣れた。

 

 

「フンッ」

 

 

「望みが絶たれたー!」

 

 

そして、この路地裏の追い剥ぎとスリも。

 

 

何というか、Vault87にいるスーパーミュータントの如くわらわら出てくる。あれは面倒だった……なんて思っていると、今度は集団で来たのでもれなく全員壁に叩きつけた。勿論戦利品の獲得は忘れない。みんなしけてんなー。

 

 

「15人で150ギル……まぁもらうけども」

 

 

案外貧しい生活を送ってたりするのかな?なんて思ったけど、貰う物はキッチリ貰います。俺に攻撃してきて余計な時間を使わせたんだから、この程度……死んでるやつ少ないし、良いよね?

 

 

「……ん?」

 

 

そういえば自警団に探されてたなーなんて思っていると、一人の追剥ぎの腰袋が何やらもぞもぞと動いてるのが目に入った。金を入れるための皮袋にしては大きく、しかし他の何かを入れるには少しばかり心もとない大きさの皮袋が独りでにウネウネ動いている。ついでにうーうーと唸り声まで聞こえてきた。

 

 

(確実に生き物的な何かが入ってやがる……!)

 

 

なんてこった、なんて思いつつ好奇心に負けた俺はその皮袋をそっと手に取ってみる。すると中のモノがビクンッと硬直し、フルフルと震えだしてしまったではないか。

 

 

しょうがないので、とりあえず声をかけてみる。

 

 

「[Animal Friends & Child At Heart]大丈夫だ。俺は君をどうするつもりもないし、かといって放置することもない。今から安全な場所に連れて行って、君を開放する。それからどうするかは君しだいだ。いいね?」

 

 

「……![成功]」

 

 

なんかPerksが発動したが……まぁ、後で考えよう。とりあえず一度頷くような感じで袋が震えたから宿のクレアのところに持っていこう。少なくともここよりは安全だし、彼女は信頼のおける人物だ。それにこの世界でのことに疎い俺よりも知っている人がいたほうが何が出てきたとしても対応ができるだろう。俺は皮袋を改めて優しく抱え込み、宿屋リーフレットのもとへ急いだ。

 

 

面倒事は、勘弁してほしいなぁ……。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。