いきおいトリップ!   作:神山

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五話目

 

 

「でか……」

 

 

あれから見せ物みたいにじろじろ見られながら進んでいき、目の前の公爵家についた。ヤバい、かなりでかい。

 

 

「やっと着きましたね。コウヤさん。これが私の家です」

 

 

サテラが笑顔でそう言うと、門番に門を開けさせていた。その際にヤオグアイにビビっていたが、サテラが説明したので問題ない。門が少し音をたてて開いていく。

 

 

「さぁ、コウヤ。中に入ろう。サテラも呼んでるしね」

 

 

「あぁ」

 

 

パワーアーマーからのくぐもった声で返事をして、サテラの後を追う。門から扉までの距離は広くなかったので助かった。

 

 

「只今戻りました」

 

 

ガチャリとサテラがヤオグアイから降りて扉を開ける。すると広がるデカイ空間、床は大理石で中央に同じ階段があり、二階には部屋がいくつも見れる。金持ちだー!

 

 

「おぉ!戻ったかサテラ!レオナルド!」

 

 

「よくぞ無事で……!」

 

 

俺があまりにもきらびやかな内装に圧倒されていると、階段からサテラと同じ金髪のモノクル付けたダンディーさんとサテラの髪を切って大きくしたような美人さんが下りてきて、サテラに抱きついていた。多分お袋さんだろうが……若すぎるだろ!

 

 

「お父様、お母様、私はこの通り大丈夫です」

 

 

「あぁ……よかった。レオナルド、よくぞ娘を守り通した。それでこそ私が認めた男だ」

 

 

「いえ、私はサテラの護衛として当然の事をしたまでです。それに、今私やサテラがここに居られるのは彼のお陰です」

 

 

空気になったので黙ってレオナルドを担いでいると、ようやくお声がかかる。というかパワーアーマー着てるやつを放置って……。

 

 

「おぉ!君がガリアスの言っていた旅人か!二人を助けてくれた事、心から感謝する」

 

 

「私からも、お礼を言わせてください」

 

 

「いえ、俺は偶々通りかかっただけですから。頭を上げてください。それよりも、レオナルドをお願いします」

 

 

頭を下げる二人にそう言って、レオナルドに視線を向ける。実際血の足りていないレオナルドのためにも早いとこ行動しないとな。

 

 

「[medicine]私はこれでも医術を学んでおりまして、それでレオナルドも治療しましたがなにぶん血だけはどうすることも出来なかったのです。なのでレオナルドには精のつく食事と念のためきちんとした設備のある医者に見てもらって下さい」

 

 

「わかった。だがもう医者は寝ているだろう。医者に見せるのは明日に回してまずは食事にしよう」

 

 

「そうだ。あなたもご一緒にどうですか?ねぇ、あなた?」

 

 

「おぉ!そうだな。貴殿は娘とその婚約者の恩人だ。泊まる宿も決まっていないのならばここにいる間は泊まっていくといい。部屋はいくらでもあるからな。どうだ?」

 

 

医療スキルを存分に使えばなにやら勝手に話が良い方向に。ぶっちゃけこの国や通貨もさっぱりなのでこれは有難い。素直に受け取ろう。

 

 

「ありがとうございます、公爵様。恥ずかしながら、田舎者でこの国の事はよくわからなかったので助かります。よろしいのでしたら、お言葉に甘えさせて頂きます」

 

 

「そうかそうか。なら早速食事を用意させよう。その間に二人は風呂に入ってきなさい。汚れているからな。レオナルドは動けないと報告を受けているが、どうする?」

 

 

俺はパワーアーマーでよくわからんだろうが、二人は土や植物で汚れている。進めるのは当然だ。そしてレオナルドは腕だけは動く。さっきガリアスさんに話すときに手も動いていたからな。でもま……身体を拭いてもらう程度で頼むか。傷口が開きましたーとか嫌だしな。スティムパックなら大丈夫だろうけど。何より俺が連れてけみたいになったら嫌だ。誰が好き好んで裸で野郎の世話をするかっ!

 

 

「レオナルドは一応身体を拭う程度にした方が良いんではないでしょうか。世話役の方か……サテラとか?」

 

 

「ふぇっ!?わわ私ですか!?」

 

 

「あら、それは良い考えですね?」

 

 

「お母様!?」

 

 

ノってくれるサテラのお母さんにサテラが抗議する。しかしどうにもそういうことが好きな人らしく聞く耳持たない。

 

 

「良いじゃないの。どうせ夫婦になるんだし、遅いか早いかの違いよ」

 

 

「俺がレオナルドを治療した時に飛び付いてたじゃないか」

 

 

「まぁ、案外大胆ね。サテラ。なら大丈夫じゃない?」

 

 

「おおおお母様ぁー!」

 

 

良い感じにサテラが壊れてきたのでサテラにレオナルドを押し付けて俺は親父さんの所へ。正直さっさと風呂に入って食事がしたい。

 

 

「ハッハッハ!君も中々面白い事をするな!サーシャはあぁなったら止まらんからな……おっとそういえば自己紹介がまだだったな。私はバルムンク王国公爵家当主、ライル・フォン・キュライアス。そして今君の話にノっているのが妻のサーシャ・フォン・キュライアスだ。君は娘の恩人だ。改めてよろしく頼む」

 

 

「俺はコウヤ・キサラギです。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 

俺はパワーアーマーのヘルメットを外して握手する。片手がレオナルドで塞がってたからどうにもならなかったが、今は外せるからな。せっかく挨拶してくれるんなら外すのが礼儀だろう。

 

 

「ほぅ……思っていたより若いな。いくつだね?」

 

 

「十九です」

 

 

実際のところ、ゲームキャラなので本当の年齢はわからんが、多分合ってるはずだ。それに今後年齢そんなに重要じゃないと思うしね。大体でいいさ。

 

 

「サテラとレオナルドと同い年か」

 

 

マジか!二人とも俺より年上だと思ってたのにな……元日本人目線だからか?

 

 

「ふむ、自己紹介も終わったことだ、ここは私が何とかしておくから先に風呂に行きなさい。案内はつける」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

ライルさんがそう言うと執事の格好した人がこちらに来たのでついていくと、脱衣場に到着。

 

 

「では、洗濯物はこちらのカゴに入れて下さい」

 

 

「わかりました」

 

 

カゴを指差すと脱衣場から出ていった執事さん。帰るときは呼べば良いのか……?

 

 

「とりあえず、何着か入れておくか……」

 

 

もう一度誰もいないのを確認してPip-Boy3000を弄って戦前の服、ウェイストランド人の服、レギュレーター・ロングコート、戦前のビジネス服をカゴに入れる。どこにあったのかとかは適当に誤魔化せばいいだろう。スピーチスキルで。もしくは明日街に出る予定だから通貨を知るついでに何かしら袋を買えばいい。

 

 

「さて、風呂に入るか」

 

 

俺はパワーアーマーを脱いで適当な所に置いて、風呂に向かう。パワーアーマーや他の物も明日綺麗にしないと……全体的に汚れてるからなぁ。まぁなんにせよ一日ぶりの風呂だ。しっかり浸かろう!

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、さっぱりした」

 

 

風呂から上がり、置いてあったタオルを使って身体を拭いて来たときに着ていた服を着る。ぶっちゃけこれが一番綺麗だ。さっき出したやつもどこかしら汚れてたからせっかく身体を洗ったのに着たくはない。他のもそうだろう。ちょっと浮くが……仕方がない。これで明日買うものが増えた。後はちょこちょこ洗濯すればいいか……。

 

 

外に出ると執事さんがいたのでついていき部屋に通されると、すでにサテラ達は席に着いていたので急いで席につく。謝るとライルさんは笑って許してくれたので、食事を開始。次々に出てくる高そうな料理に舌を巻いたと言っておこう。その時にここまでの出来事等の説明とヤオグアイについてを門番のガリアスさんにしたように話して終了。

 

 

「そうか……君も疲れているだろう?部屋は用意したから今日はゆっくり休みなさい」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

また同じ執事さんに案内されて豪勢な部屋に通された。ベッドがフカフカで俺はすぐに眠ってしまった。


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