ハクスラ世界でイケ女を盾にしてたら好かれてました。うんなんで????   作:H-13

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#01

「た、滝壺が崩れています!ダンジョン入口が塞がっています!」

 

 

「滝壺が崩壊してるだぁ!?!?」

 

 

「現在情報を整理していますが最深部からの突き上げる様な揺れが断続的に続いています。また証言によれば「下からマグマが噴き上がって階層を貫いた」とも。」

 

 

「今滝壺に居るチームは!?」

 

 

「Aランクチーム『ミーティア』だけです!2日前に申請、ダンジョンに入って1日半、といったところでしょうか。」

 

 

「三人のあいつらか…さんにん!?待て待てあいつらもしや生き急いだな!?」

 

 

 

アルス王国ギルド本部。国土全体を揺るがす程の地震によって緊急招集されたギルド長以下ギルド職員と情報を得ようとする所属冒険者共で早朝とは思えない熱気に包まれている。

 

 

縦揺れの様な地震がこれ程続くと寝れるものも寝れず。今宿で寝転んでいる者は二日酔いの酔っぱらいくらいだ。

 

 

緊張と興奮が入り混じったこの空間に投げ込まれた情報にギルド長は頭を抱えた。

 

 

アルス王国統括地に唯一存在する最高攻略難易度ダンジョン「龍王の祠」。正式名称は「龍王の滝壺」、通称「滝壺」。

 

 

一階層部分が丸々壺の様に抉り抜かれ滝が轟音を立ててダンジョン内へと注ぐ一種の観光地ともなっている場所。

 

 

王国が出来て今年で164年が経つが未だ攻略されていない未攻略ダンジョン。

 

 

ソレが崩壊した。

 

 

最深部の攻略は未だ未知の部分が多く、ダンジョンの傾向からダンジョンボスは名持ちの龍王の可能性が示唆されていたが階層をぶち抜いてダンジョンの入口が崩壊し、戦闘の余波が国中に広がるなど尋常では無い。

 

 

暫定的にダンジョンボスと対峙している可能性のある冒険者の面子は分かっている。

 

 

Aランクチーム「ミーティア」

 

 

後衛1前衛2のスリーマンセルパーティ。魔法使い、剣豪、タンク。バランスの良いチームだが対龍王にはいかんせん人数が足りな過ぎる。

 

 

記録に残っている龍王討伐は24年前。現在頭を抱えているギルド長も参加して討伐された「天龍王ゼラギエル」は7チーム総勢38名が参戦し死傷者を出しながらも殺し切ったとのこと。

 

 

改めて調べてみれば龍王の討伐記録をミーティアが閲覧していた記録もありギルド長は机に突っ伏してしまった。

 

 

「死にに行かせる為に目ェかけてた訳じゃねぇぞ!!!」

 

 

通常ギルド長はダンジョン攻略を引退したAランクチーム以上のメンバーの中から推認されて選出される。激務であり責任は伴うが冒険者時代と比べても遜色ない給与を国から支払われている。

 

 

ギルドにアレスターの名前が登録された時はガキで、その癖魔力だけはギルド長が知ってる最上の魔法使いと比べても遜色が無かった。

 

 

危なっかしい超攻撃的パーティだったツーマンセル時代、今もガキだがもっとガキの時のアレスターを知っているからこそ、ボスに挑んだ可能性を否定できない。

 

 

パーティリーダー・魔法使い「アレスター」

 

魔導大国エルバニアから直接勧誘が来る程の莫大な保有魔力に加え歴代最多同時魔法行使記録を持つ現代の大魔導。

 

 

アタッカー・侍「ナナ・サトウ」

 

アルス王国と遠く離れた極東の島国ムサシ出身。火力だけでアレスターとBランクまで駆け上がった実力者。斬鉄や魔法斬りを難なく薄刃の刀で行う技量は正に神業。

 

アンカー・タンク「サーラ・カーラ」

 

対魔防御に難があり固定のパーティに所属していなかったがアレスターの付与魔法の支援もあり万能型へ。ハーフドワーフとしての剛力を極限まで高めた肉体はワイバーン程度ならば片手で投げ飛ばせる純度100%の怪力無双。

 

 

全員が全員単純な実力で言えば化け物級。過去一線を走っていたギルド長から見てである。24年前の面子に一人でも居ればそれだけで死傷者は確実に減ったと言えるレベルで。

 

 

「地震が収まり次第捜索隊を派遣する。滝壺は通常Cランクチーム以上が入れるが問題が解決するまでは入場制限をフォーマンセル以上のBランクチームに引き上げる。ロビーに何組か居たはずだ、打診してくれ。緊急招集として報酬交渉は相場の1.5倍までお前たちの権限で上げていい。頼んだ。」

 

 

「龍王は別格だ。どれだけ優秀な人材を集めても絶対的に泥沼になる確率が高い。………死ぬなよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、龍王とは何ぞや。◾️◾️神に直接産み出された原初の龍であり、試練であり、恵みでもある。

 

 

ヒトに与するでもなく、されど虐殺するでもない。

 

 

高い知性を持ちながら◾️◾️神に与えられた領域を守護し、世界の均衡を保つある意味システムの一つ。

 

 

故に龍王は時に対峙する者に問いを投げかけ、気に入った者とは会話を楽しむという。

 

 

滝壺の主人「魔龍王ゴーティア」がアレスターと半日も話し合う程相性が良いのは扱うモノの本質が同じだったからか、或いは母が同じだからか。

 

 

いずれにしても勝者が居れば敗者も居る。骸を晒し、勝者を飾り、護るモノとなる。

 

 

比喩では無い。ゴーディアが◾️◾️神の創りたもうアレスターの肉体を喰らえば魔導的に龍王の一段階上へと昇華される。相性が良いのだから当たり前だ。その場合ゴーディアは龍王では無く龍神の域に脚を踏み入れるだろう。

 

 

故にこれは討伐でも捕食でも無い。アレスターとゴーディアの生存競争である。

 

 

本来、龍王とは前記の通り恵であり試練でありシステムである。ギルド長の龍王に対するイメージはこの特性が由来してのことである。

 

100%勝てぬものを試練とは言い難い。故に挑む者達よりも少し上に龍王の力は調整される。全員が全員全力以上を発揮すれば討伐出来るのが龍王であるが逆説的に言えばソレが出来ない場合悉く骸となる。ソレが龍王戦である。

 

 

だからこそ、アレスターと対峙する龍王が歴代最強の個体となるのは必然であった。

 

 

 

 

「テメッ!?俺の三次元魔法陣もう使い熟しやがって!!」

 

 

「ぐわっはは!貴様こそ我の多重複合陣を組み込んでいるでは無いか。お互い様よ!」

 

 

極光煌めく多重三次元魔法陣の球体が二つ。

 

 

龍を中心に展開されるものは半円六重、当たり前のように浮遊する男は完全球体四重の魔法陣。

 

 

生半可な攻撃でその身が傷付くことすら無い最強生物故に単純な火力増強を目指し、同質の魔法陣を多重展開することによる連鎖的に威力を高めたゴーディア

 

 

本来二次元状にしか展開できない魔法陣を三次元にすることにより耐えず大量の術式の保持と発揮を繰り返すことに成功したアレスター

 

 

種は違えど目指すべき所は変わらず。こうも話し合えば双方の有用性は嫌というほど分かる。

 

 

一般魔法使いが行うには魔力制御も魔力総力も足り得ない。展開しようとも破綻し、ソレが出来たとしても維持に全魔力を投じて自滅するのがオチ。

 

 

そんな極地がダンジョンという小さな敷地で収まるのかという話だ。

 

 

一重の従来のアレスターの場合は問題が無かった。されど複数展開の上アレスターよりも僅かに強い龍王がソレに加われば話が変わる。

 

 

地獄の業火すら生温いと思わせるダンジョン全てを飲み込める程に増幅されたブレスは同質量の全てが死滅する絶対零度の氷に閉ざされて地に堕ちる。大地や空すら安全な場所が無い絶え間ない魔法の応酬。

 

「ぶははははははははは!!!!!」

 

「かははははははははは!!!!!」

 

 

楽しい。愉しい。楽しい。アドレナリンがドバドバ出ているのもあるだろうが笑いが止まらない。共に研鑽する心地良さ、秒単位で洗練されて行く魔法に共に笑いが止まらない。

 

 

ナナとサーラを防御多重結界で守りつつ、足場の確保。60秒も魔法のやり取りをすれば大抵の実力は把握出来る。

 

 

終わらせたくない。終わらせない。至高の魔法比べをもっと続けたい。

 

 

魔力の底が見え始めるまでの30分と52秒。魔力を回す回す廻す旋し、形と成す。

 

 

魔力総力には自信があったが、ここまでしてもゴーディアの全身に迸る魔力の張りは健在である。

 

 

一つ言えることはアレスター一人での討伐は不可能。先に力尽きるのはアレスターである。故に鍵は二人に託す。戦いたいが為に戦うのでは無く勝つ為に戦う方向に意識を切り替える。

 

 

「ナナ!サーラ!」

 

「「はい!(おうよ!)」」

 

 

四肢に、肉体に、武具に。二人の存在感が増大する。龍王殺しを成す為に必要な過剰付与を片手間に行ってゆく。

 

 

ありったけだ。ゴーディアとアレスターの魔法質量勝負は互角である。アレスターに足りないのは魔力総量と継続力。だからこそ短時間で出し尽くす。上回る。

 

 

アレスターが取り出したモノを見てナナの目付きが一層鋭くなる。サーラの持つ盾がゴウンと鳴く。

 

 

『ティアーズ解放!過剰供給開始!』

 

 

莫大な外部からの魔力供給に身体が焼ける。灼ける。ソレを魔力に任せた回復術で無理やり維持する。

 

「永遠氷」最果ての氷。ソレを素材に作った魔力を溜め込み任意で解放出来る魔道具。

 

 

切り札を惜しみ無く切り短時間ながら魔力の心配はしなくて良くなったアレスターが行うのは二人の援護である。

 

 

ゴーディアの攻撃に対処しつつ反撃、ヘイト管理

 

二人のゴーディアへ接近する為の足元作り

 

二人へのバフ、デバフ耐性、呪詛耐性にリジェネ付与

 

 

常人ならば瞬時に脳ミソが蒸発するだろう。ソレほどのマルチ稼働。アレスターも先程から頭痛で片目を開けられていない。

 

 

最強の一とアレスターの差は単純なモノ。背中を預けて戦える仲間の有無。

 

 

これより3分48秒後、物理的に王国を揺るがす世紀の戦いの決着は終わりを迎える。

 

 

 

 

「ぐわっははッ!!!我の首を叩き切ると!!凄まじいな!!────────嗚呼、愉しかったな?」

 

 

「ぜーー、ッは゛ーーーーーっ!お前、首だけで生きて、…?」

 

「何、安心せい。既に決着は着いた、見事なり。」

 

「アレスター!!!」

 

「な、ナナ、げほッ、あ゛ぁ゛…ッ!!」

 

 

龍王の身体は既に崩れ落ち、魔法陣は塵へと還っている。

 

 

ゴーディアの身体についた傷は真一文字に裂かれた首の1つのみ。

 

 

ミーティアの面々も者によっての負傷具合に差がある。

 

 

ナナ・サトウは無傷。アレスターとサーラの作った一度きりの隙を突き一刀の元にゴーディアの対物障壁ごと龍王の首を叩き切った。

 

 

サーラ・カーラはブレスを真正面から受けアレスターに付与された耐性を貫通された。顔と両腕に焼けただれた跡があり、直接龍王に組み付いた為に裂傷も多数。

 

 

アレスターは顔の穴という穴から血が滴り、脳ミソの一部がオーバーヒート。全身から脂汗が噴き出している。

 

 

生半可な傷ならばアレスターのリジェネが巻き込み治してくれる。然しアレスターがダウンしている現状は、薬品に頼るしか無い。

 

 

普段使わない液体状の薬品をダバダバと全身ずぶ濡れになるまで浴びれば嫌でも身体は冷え頭痛がゆっくりと収まってゆく。

 

 

 

 

 

 

「あ゛ーーッ!しんど!!」

 

 

脳みそのオーバーヒートしていない部分で魔力を回す。普段よりもゆっくりとサーラに回復式を付与すれば痛々しい傷痕は徐々に消え時間を巻き戻した様に綺麗な肌が次第に見えてくる。

 

 

腰が抜けたように脚に力が入らない。

 

 

「大丈夫?」

 

「おーいアレスター、平気かぁ?」

 

 

両脇からがっちりと2人に挟まれ頭や身体をまさぐられる。心配そうな声が頭の上から響いてくる。

 

 

共に全ての攻撃が一撃必殺。食らっていれば半身が吹き飛んでいるようなものばかり。ゴーディアの魔法は一撃ともアレスターに効果を及ぼしていない。

 

 

「だ、大丈夫だから。な、な?」

 

 

ぎゅぅぎゅうと身体を擦り付けられて少し痛い。柔らかい身体まだしも甲冑や鎧を着込んでいるのだ。

 

 

落ち着かせたくて2人に手を伸ばすも指先絡めさせられてがっちりと拘束されてしまった。

 

 

「ふはは、我と同等の魔法使いが仲間の前では形無しか。」

 

 

「笑ってないで何か言ってやってくれ。鎧が痛い゛」

 

 

「ほれ、我の身体は彼処で朽ちて居るからのぅ」

 

 

「なんか、仲良し…」

 

「オレ達の事は無視かァ?アレスター」

 

 

分かっているのだ。普段は彼女達の言い分を聞いて後衛に徹していたが、話の分かる龍が現れたからテンションが上がってしまったのだ。

 

 

その結果があれだ、龍王とヒトの一騎打ち。2人は止めるに止められずずっと心配していたという。

 

 

がしゃ、がしゃと左右で音がするのを無視していれば嫉妬の気配が漂う。

 

 

離れて欲しいと遠回しに言ったら痛い要素を取り除いてもっとくっついて来やがった。

 

 

あ゛ー汗臭い。俺たち二日間身体すら吹いてないんだぞ。いや、野郎にくっ付かれるよりはマシか。甘酸っぱい香りの中にも野郎じゃ考えられないフローラルな匂いも混じっている。

 

 

押し付けられているたわわは形が変わってしまっている。もー、汗臭いし蒸し暑いし。逆に言えば野郎の汗臭さをこいつらが至近距離で嗅いでいることになる。流石に不味い。

 

 

慌てるももう遅い。身体は上手く動かんし素の状態でもこいつらに力で勝てるイメージが分かん。身体を怠そうに捻りながらジト目を目の前の生首に向ける。

 

 

「てかいつまで生きてんだよ。」

 

 

「ふは、今の我は残留意思よ。ただただ【魔龍王ゴーティア】を殺し切った英傑に心からの賛美と加護を残す力しか残っておらぬ。」

 

 

「加護?」

 

 

「左様。アレスター、お前は◾️◾️神から。そこな二人は何れかの精霊から祝福を受けておる。それと同じようなモノ考えよ。だがな?コレは貴様らの手で掴み取ったものだ、誇れ。」

 

 

光の球が3つ現れる。なんか俺のだけ大きくありません?胸の辺りにすぅ〜っと吸い込まれたが、コレが加護?

 

 

「我の力はアレスターと近しい。故に平等とは行かぬがな」

 

 

「そうだ。こいつらの魔力量や魔力制御力を上げてもどうしようもないものな。」

 

 

両脇から小突かれる。

 

 

「馴染むまで然程時間も掛からぬだろうが、感覚が変わる、幾分かは気をつけよ。」

 

 

「りょーかい」

 

 

「さて…我はここまでだ。愉しかったぞ、アレスター。」

 

 

「俺も。」

 

 

「黄昏でまた会おうぞ。」

 

 

「またな。思い出話聞かせてやるよ。」

 

 

生首の瞳から意思が抜け落ちる。龍王が沈黙する。

 

 

僅かばかりの期間居た師も、王国最強と謳われる宮廷魔法使いも対峙していてつまらなかった。魔法の自己研鑽を怠ったつもりは無かった。だが、うん。違う出会いがあればとも思った。

 

 

「ちょっと、真面目に手だけ離して欲しい。」

 

 

真剣な声音にだる絡みの様に指を絡ませて絶対離さないという意志を持った彼女達の力が抜ける。

 

 

生前と同じ、仏様に手を合わせる、御天道様に手を合わせる、神社に行けば信仰して居なくても手を合わせる。ま、そんな調子で掌を合わせた。

 

ありがとう。一生忘れない。そんな陳腐な言葉が今では有難い。

 

 

「あんな楽しそうなアレスター初めて見たし。」

 

 

「そうだなぁ、いい顔だった。」

 

 

極東出身のナナも続く形で手を合わせてくれたが、カーラはただ見るだけだった。というよりも俺の顔ばっか見てるな?

 

 

「昼寝してから帰るか?」

 

 

「昼か夜か分からないけどねー」

 

 

 

 

ダンジョンの入り口が崩壊したことも。王国がどったんばったんの大騒ぎをしていることも。今のミーティアの三人には知らぬことであった。

 

 

魔龍王ゴーティアの遺骸を魔避けにした上でアレスターが簡単な結界を張り、呑気に三人仲良く固まって寝てしまった。

 

 

そんな三人を捜索隊が見つけるまであと3時間────。




い、異世界恋愛が書きたかったのに一話まるまる冒険・バトルジャンルになってしまっためう!?(困惑)
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