常盤台 彼の地にて、斯く戦えり   作:クリエイプレイ

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3話 英雄と英雄

「何だ此奴は?」

 

 それは一目見て出た率直な感想だった。防衛省臨時プレスセンターの壁際へ並べられたモニターに映る各局の特番では、示し合わせたかの如く類似の映像を流している。

 変化に乏しく迫力も無い退屈な皇居の攻防戦が中継されて焦れていた時、ある局が「事件に遭遇した生存者が撮影した映像との事です」という触れ込みで、短い時間の動画を再生させた事が呼び水になった。

 

 画面の中では制服美少女アイドルを連想させる小便臭そうなガキが、生身で空を飛びファンタジー兵隊連中を蹂躙している。最初は犯罪者予備軍の腐れ陰気野郎が編集したCG動画かと思ったな。

 だが、次々に他局もSNS上へ投稿されたらしい同様の動画を流し始め、口々に「これらの映像は異なる場所で撮影され、異なるアカウントより投稿されていると確認が取れております」と説明を付け加えていた。

 

「デマ動画に決まってるだろ」

 

「何処かのオタクが複数アカウントでネットにアップしてるだけじゃないのか」

 

 胡麻味と帝都テレビのクルーが尤もらしい推測を述べるが、そうしている間にも既に取り上げられた奴とは別の動画が続々と各局で報じられ、プレスセンター内で特ダネを探し求める俺等は苦笑するしか無かった。

 そりゃ当たり前だろうが。こんなキモオタ共が好きそうな映像を、どのニュース番組も真面目に紹介していればよ。

 

『た、ただいま緊急映像が入りました!』

 

 その時、テレビ旭光の特番で動きが有った。内容は多分に漏れず茶髪のガキが撮られていたのだが、大きな違いとしてカメラの方へ突っ込みかけているヘリの前に立ちはだかり、何かを叫んでいる。

 するとヘリは見る間にカメラの外へとコースを変えて行き、ヘリに集っていた巨大コウモリには室外機が画面外より高速で飛来し命中していた。

 

 後はガキの周りで工事現場の足場材が浮遊したかと思えば、ビル屋上へ避難した生存者達が恐る恐る足場板に乗っかり、板の上とは言え何の支えも無い宙に三十人前後が浮かんでいた。手品?ワイヤー?異常な光景に頭が理解する事を拒絶してしまう。

 そして、VTRから「な、何よアンタは?さっきのは何よ?何をしたってのよ!?」という明らかに男が女言葉を喋っている声が再生されたが、俺は直ぐに「テレビ旭光の金土じゃねぇか」と気付いた。

 

 続くシーンではカメラが揺れながらも、大勢の生存者が足場材に運ばれ地上へと降ろされる様子が映し出され、ラストはガキがドローンなんかを超える速さで飛び去る所でVTRが終了した。

 スタジオのキャスターは()()()()()()()()()()()()()()C()G()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と繰り返し伝えている。

 

『えー、こちらの銀座で撮影されました映像は、あー、その…』

 

 どう解説したものか全く見当もつかないスタジオのキャスターやコメンテーターは言葉らしい言葉を紡げず、あーだのえーだの詰まるだけの放送事故を全国ネットで発信している醜態は滑稽ですらあった。

 

「古村崎!これを見ろ。あらゆるSNSで中学生ぐらいの少女に助けられたって、数十人分の書き込みが写真や動画を添えて拡散されまくってるぞ!」

 

 胡麻味がスマホを掲げて動画を再生すると、テスラコイルも真っ青の大規模な放電現象の中心部にガキが立って居たり、伸ばした右腕の先端からビームみてぇなのを撃って怪物の大群を蹴散らす一部始終が収められていた。

 プレスセンターに詰め掛けた記者や取材クルーもSNS経由での情報収集にシフトチェンジしたらしく、一心不乱にスマホのフリックとタップを行い、今さっきのビーム映像や各局が報じたショートムービーを視聴しては仰天するばかりだ。

 

「おいおい…中世の兵隊と化け物軍団の次は能力少女と来たか。一体この世界はどうしちまったんだ?」

 

 

* * *

 

 

 あれから私は銀座の隅々まで巡り、取りこぼしの無いように帝国兵と怪異を排除しては逃げ遅れた人達を救出し、投入される機動隊のチームへ引き継ぐサイクルを回し続けた。

 

 例の門まで辿り着いた時は、特地から送られて来ただろう援軍により空へ目掛けて弓箭が射られ、すっかり傾いている陽射しが更に陰る程の無数の矢が雨霰と降り注いだが、冷静に全方向へ展開した強烈な磁力で阻み針鼠と化すのを防ぐ。そして、帝国兵達が顔色を青どころか白くさせている間に放てる限りの電撃をぶつけまくる。

 

「zrtyu!?kggwre―!!evcuqo―――!!!」

 

 すると、兜に派手な装飾が施された偉い立場らしき奴が、恐怖に歪んだ表情で何事かを兵士の奴等に命じ、門の向こう側へ撤退を始めた。

 殿として左右の車道から4~5メートル大の巨人(ギガース?オーガー?)が四体も現れ、棍棒で放置車両や電柱を薙ぎ倒しながら私へ襲い掛かったのだけれども、丁度ポケットに残っているコインも四枚だったので、一匹ずつ素早く超電磁砲を撃ち、その巨体へ風穴を穿ち仕留めてやった。

 

 最後っ屁に複数の魔導士が飛ばして来た光弾や火球は電撃で掻き消し、そいつ等が泡を食っている間に鎧へ磁力を働かせる事で浮かばせた気絶中の帝国兵を、四方八方から体当たりさせた。エクストリームな押し競饅頭を強制プレイさせられた魔導士が、身動き一つ取れなくなり呻き声を発する。

 

「―ぜっ、はぁっ、はっ……!!」

 

「これで、最後、ね……」

 

 門の奥へと逃げた連中を除くと、悶絶なり気絶している帝国兵や怪異の死骸以外は視界に入らなかった為、息も絶え絶えになりながら両膝に手を置いて呼吸を整える事に暫く専念する。

 ところが、ようやっと乱れた息が落ち着いたと思った時、あらゆる方位より私が取り囲まれているのに気付いた。

 

 その連中は分厚いプロテクターと大盾で固めた機動隊員と『森林迷彩柄の戦闘服、ボディアーマー、ヘルメット、小銃』を装備した自衛隊員で占められている。ざっと40人は居るだろうか? それも機動隊員は警棒を構え、自衛隊員は素早く射撃体勢を取れるよう、身体の正面で銃口を足元(ローレディポジションだっけ?)へ深く向ける構え方で。

 

「…ちょっと、冗談キツイんだけど」

 

 反射的に掌を見せるようにして緩やかに両手を上げれば、包囲網は徐々に狭められていき、もはや逃げ場は無いくらいの位置まで距離を詰められてしまい、私の当惑を深めさせた。

 まぁ、あの軍団の大半を単独で退けたのが謎の女子中学生な訳だから、警戒心剥き出しになって当然かもしれないけど、幾ら何でもこれは…。

 

(このままじゃ事情聴取のオンパレードになるわ。能力の事とか、とあるシリーズがフィクションとして存在するっぽいからその事も絡めて問い詰められたり)

 

(どうする?何か名案は…)

 

(逃げ場無し、警察、機動隊、陸上自衛隊、自衛官、自衛―)

 

 状況を打開すべく周囲の情報を基に思考をフル回転させていると、私は一つの結論へと到達した。そうだ、伊丹に頼れば良いじゃないの。あいつなら何とかしてくれるって。

 度重なる戦闘と演算で疲労が危険域に達している体と脳に鞭打ち、どうにか発動した磁力で建物の壁面を駆け登り、屋上伝いで皇居の方へと向かう事にする。

 

 後方では、機動隊と自衛隊の部隊内での遣り取りが行き交い、道中で電磁浮遊しながら地上へ視線をやると、下からは制服警官混じりの目が集中し、私よりも上の高度を飛行するヘリや遥か上空の無人偵察機からは、高性能カメラや双眼鏡を向けられているのが辛うじて分かった。

 

 帝国劇場を通り過ぎた以降は夥しい数の帝国兵が射殺、あるいは爆殺された死体となって倒れており、想像を絶する地獄絵図を目にした事で込み上げる酸味を強引に飲み下しつつ、ひたすら皇居を目指して移動する。水堀付近まで行くと磁力を働かせられる物体が無くなり、能力を使わず結構な距離を走る羽目になった。

 

(ヤバい、足が、肺が、滅茶苦茶、痛い―)

 

 銀座方面の部隊や本部から無線連絡を受けたであろう、多数の機動隊員と自衛隊員が停止を呼び掛け遮って来たけど、万が一でもタックル&取り押さえのコンボを決められないよう、事故車から捥ぎ取ったドアを磁力で振り回し、ガクガクと震える足で必死に走り伊丹を探し続ける。隊列で行く手を塞がれた場合は、電磁浮遊を用い警察と自衛隊の車両を飛び越えて。

 

 そうして帝国兵の殲滅が終わったからか、門が開け放たれている眼鏡橋と二重橋を抜け、遂にオレンジTシャツ姿をした伊丹を人ごみの中で見つけると、私に気付いた伊丹へ最後の力を出し切る勢いで倒れかかった。もう指一本動かせないし、静電気一個も起こせないかな。

 

「うぇ!?どうしたんだ、み、御坂?」

 

 伊丹は動揺しながらも優しく抱き止め、私の事を心配しているのが分かる声音で名前を呼んでくれた。大丈夫かな…今の私って凄く汗臭いよね。

 

「なぁ、あそこの男に支えられてる女の子って、例の電気を操って戦ってたらしい子じゃないか」

 

「マジ?御坂美琴とか言う?」

 

「嘘だろ!?えっ、本物?」

 

「は?それって『とある』に出て来るヒロインの?実在してんの?」

 

「あのおねえちゃんはボクをたすけてくれた人だよ!」

 

「常盤台の超電磁砲!?」

 

「不二テレビの栗林です!貴女は超能力者との噂が広まっていますが、その件について何かコメントを―」

 

 私に気付いた避難者達が一斉に喋り出したせいで騒然と化す日没間際の皇居。そこへ追い着いた機動隊員や自衛官も加わり、喧噪は更に留まる事を知らずに混迷を極めていく。

 

 環境が整っている他所の避難所へ生存者を振り分ける作業中の自衛官や、警備車などを使い移送支援を始めている大多数の機動隊は、私を追って来た隊員達とは異なり困惑気味の様子だ。

 

「ごめ…伊丹…何とか…して……――」

 

 その言葉を最後に、私の意識は瞬く間に闇の底へと沈んだのだった。

 




いつの間にやらUAが3000超え、お気に入りが100を超えているのを確認し、恐れ多く思っていますと共に、大変嬉しく感じております。
また、しおり設定・評価・感想コメントも頂きまして誠にありがとうございます。

予定では次話で特地突入前の三ヶ月間と世間や各国の反応、次々回で本作のゲート世界(地球側)に関する設定などを纏める方向です。

ちなみに例によって栗林妹が所属する局の社名はオリジナルです(フ○テレビ→富士→不二)
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