女妖怪達が育てるようです   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1552年 織田信行と鉄砲

「最初は農民上がりと聞いてどんな暴れん坊が来るかと思えば···内務も人よりできるとは···」

 

 村井貞勝様の部下になった私は那古野城と末森城を行き来する日々が続いていた。

 

「よお! 辻鬼! 今日も励んでいるな!」

 

「親父殿(柴田勝家)今日も油と政務をしに来ました」

 

「せっかくだ兵を鍛えるがお前も参加しないか」

 

「待て待て柴田殿、今辻鬼を引っ張られては困りまする。政務ができる人材は限られているのですぞ」

 

「それもそうだ。村井殿悪かった」

 

 末森城は織田弾正家の重臣が多く詰めかけていたので信長様のところよりも政務は滞りなく行われていた。

 

 特に武の柴田勝家と政務の村井貞勝が詰めているのも大きかった。

 

 信長様の方も林兄弟や平手政秀といった教育係兼内務官僚がいるのだが、平手政秀の方は信長様に忠言を繰り返していたのだが信長様はそれを聞かずに自由にしているため、日に日にやつれてしまっていた。

 

 林兄弟は信長様の弟の信行様にも接触を試みており、末森城に行くならと林兄弟の兄の方から手紙を渡されることが何故かあった。

 

 で、俺はなんだか知らないが信行様には気に入られたらしく、夕方になると重臣の面々と信行様を交えて茶会が連日行われた。

 

 茶を点てるのは基本持ち回りであるが、信行様は俺が点てるお茶が気に入ったらしく、よく私にやらせようとする。

 

「佐助は兄貴の他の部下と違って真面目だよな」

 

「どうかしましたか? 信行様」

 

 末森城の一角で茶に出す菓子の準備をしていると、信行様に声をかけられた。

 

「なんでお前を兄貴が冷遇するかわからない。私は佐助ならば部隊を率いるくらいには出世できると思うんだけどな」

 

「信長様は信長様で何か考えがあるのかと」

 

「兄貴の事だからお前に私を探らせるために末森に来ているのはわかるが···何を報告していたりするのだ?」

 

「お答えすることはできません。主命なので···」

 

「まぁそれが答えみたいなものか」

 

 報告しているの? と聞いて答えられないということは報告を行っているという意味になる。

 

 聡明な信行様もそれはわかっていて問いかけていた。

 

「ただ信長様と信行様の大きな違いがあります」

 

「なんだ?」

 

「銭を読めるか読めないかです。信長様は奇行を行いますが、銭の流れを様々な情報から読むことができます。信長様に渡す売上の上納金や熱田から那古野城に出入りする商人、愛人の家(吉乃殿 馬借をしている商人としての側面が強い土豪 馬を使って荷物の運搬をする仕事なので色々な人との関わりが多く、自然と情報が集まる)に行き来しては情報を集めております。信行様は家臣に安心を与えることに長けていますし、人望は信長様より上でしょう···出過ぎた真似を致しました」

 

「いや、面白い意見だ。ただ私は兄貴のやり方に付いていく事はできない。私は私なりのやり方で織田弾正家を良くしたいと思っている···佐助、もし私と兄上が争う事になったらお前はどっちにつく?」

 

「前までなら信長様に付いたでしょうが、末森に出入りするようになった今では信行様と戦いたくはありません。村井様と一緒に静観をするかもしれません」

 

「それで良い。佐助は強すぎる。身内で戦いになったらお前に幾人も殺されるだろう。殺した分だけ織田弾正家は弱まる···」

 

「申し訳ない」

 

「謝るな。扱いきれない私達が悪いのだ···兄貴と揉めている場合では無いことはわかるが、私も周りの期待を背負ってしまっている。見捨てれば織田弾正家から離れていくだろう。たとえ戦ったとしても家臣を繋ぎ止める必要がある」

 

「信行様···」

 

「今日の茶菓子楽しみにしているぞ」

 

 信行様はそう言うと去っていった。

 

 俺は本当に信長様を主で良いのかと悩む日々が続いた。

 

 

 

 

 

 私は迷っていることを兄貴分の千秋季忠様に打ち明けた。

 

「お前の気持ちもわかる。敵の将を討ち取る活躍をしたのに5石というのは幾らなんでも少なすぎる。20石···村の代官とかの立場が与えられても良い戦功だった。足軽小頭の身分も嫌がらせに近い。信長様は佐助が部隊を率いれるか見たいのだろうが、足軽達の鎧や武器を調達しないといけないからな···出費が足軽時代より嵩むぞ」

 

「正直5石では足りません。ただこれから活躍しても信長様の譜代家臣の方々を優先されてしまうのではないかと···」

 

「うむ···難しいな···でも農民出身の者を召し抱えたいという者も少ないからな。信長様は気に入れば基本身分を気にしない方ではあるが···」

 

「嫌われてはないでしょうが、苦手なのかもしれませんね」

 

「そうだなぁ···あ、信長様は鉄砲に興味を持たれていたから、鉄砲が使えるようになればまた話は変わってくるかもしれないな」

 

「鉄砲ですか···」

 

 千秋季忠様の話を聞いて、鉄砲とはそもそもなんなのか知らなかったのでお玉に聞くと中華では鳥銃呼ばれる物で、鉄の筒に弾を入れて、火薬で弾を吹き飛ばして攻撃する仕組みらしい。

 

 皆もよく知らない武器だと言われ、俺はすぐに織田家の中で銃に詳しい橋本一巴という人物を訪ねることにした。

 

「橋本殿、俺に鉄砲を教えてくれませんか」

 

「構わないが、鉄砲は金がものすごくかかるぞ。練習するための費用も高いが···払えるのか? 千秋殿から資金面で苦悩していると聞いたが」

 

「う、うぐ」

 

「まぁ銃を撃てる兵を信長様が欲しているのは事実だが、鉄砲は弱兵が強兵を倒すための武器だ。無双ができる人が扱うべき武器ではないと私は思っているが」

 

「···それでも学んでおけばいつかは役に立てるかもしれないので」

 

「わかった。試射は少ないが、徹底的に銃の構造や構え方を教えよう」

 

 俺は織田家でも早期に鉄砲を触れることになるのだった。

 

 

 

 

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