女妖怪達が育てるようです   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1545年 佐助町に行く

 男の子は久しぶりの満腹感に寝息をたてながら眠り始め、女妖怪達は持ち寄った上着を布団代わりにして男の子の寝床を作る。

 

 そして草子が持ち寄った情報を話し始める。

 

「とりあえず近くの村だった場所が荒らされていたし、人々の死骸が転がっていたので戦があったことは間違いないっす。一応もう残ったり、埋められていた食料類は回収してきたっす」

 

 そう言うと天狗の大きな翼に包んでいた壺や樽を幾つか出す。

 

「酒は···無さそうですね」

 

「まぁ酒は高いからな。農民が持っているようなものでもなかろうて」

 

 お玉とお雪は少しがっかりするが、この時代の酒は物凄く高いのだ。

 

 そりゃ今食うべき雑穀を酒に変えるから食料そのものが足りない地域に酒は無い。

 

「それと質は悪いですが銭が少々」

 

「鐚銭じゃな」

 

 鐚銭(ビタ銭)とは私鋳された銭であり、偽物の銭なのだが、戦国時代は銭不足が深刻で悪銭(古くて欠けてる銭)とかを含めて使用されていた。

 

 質の良い宋銭(中華から輸入した銭)に対して1対8から1:10で交換されていたらしいが、受取拒否する商人も多く、村等の小さなコミュニティで交換するための通貨として使用されていた。

 

「ここまで汚いと一旦溶かして再び作った方が良いかのぉ」

 

「へぇ、お玉さん鋳造の技術がお有りで?」

 

「友達の玉藻前が中華の技術を色々と教えてくれてな。まぁ一番得意なのは陰陽道···占いじゃがな」

 

 チチの問にお玉が答える。

 

「あとここはどうやら織田家と今川家(東海三国を支配する大名)の紛争地らしく、度々戦で打撃を受けているようです」

 

「暦はわかるか?」

 

「流石にそこまではわかりませんでした」

 

「で、この子どうします?」

 

「そりゃ勿論育てるっすよ! こんな良質な魂はなかなか居ませんよ」

 

「顔立ちも私好みに育ちそうだし、肉付きはまだ間に合うでしょ」

 

 草子とお雪は興奮しながら言う。

 

 お玉とチチも賛成の様だ。

 

「とりあえず誰が嫁になるかは少年に後々決めさせよう」

 

「「「賛成」」」

 

「幼少期から自分好みに育てる···光源氏」

 

「お雪も好きっすねぇ。前の旦那はおじいさんを凍死させたと勘違いさせて仇を取るために鍛えさせて、それを献身的に支えて恋仲になったっすよね?」

 

「そうそう、まぁ結局バレて子供残して逃げる羽目になったけどね···詰めが甘かった」

 

「あんまり誤解を産むやり方は良くないんじゃないかな」

 

「チチはうぶっすねぇ」

 

 とりあえずその日は床に付き、皆寝るのであった。

 

 

 

 

 

 

 少年の名前は佐助と言い、どこにでもいる農民の息子であり、どこぞの凋落した一族の末裔とか貴種の隠し子等ではなく、本当にどこにでも居るような産まれの存在であった。

 

 そんな佐助が目を覚ますと、天女の様に若く美しい女性達が私を看病してくれていた。

 

「おや? 目が覚めましたか?」

 

「し、失礼しました!?」

 

 オラは体を起こそうとしたが力が入らない。

 

「だめですよ。体が飢えで弱っているのですから。寝ていてください」

 

 そう言うと胸の大きな女性が胸を出して、私に乳を飲ませてくる。

 

「粥でも体が受け付けないかもしれないので私の乳を飲んでくださいな」

 

 と言われ、オラは胸に口をつけた。

 

 赤ん坊の様に乳を飲んだが、甘くて美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 数日間乳を飲まされ、その後粥に切り替わり、徐々に体が動くようになってきた。

 

 乳を飲ませてくれた女性はチチさん、皆に指示を出しているのがお玉さん、毎日出かけては壺や道具を拾ってくるのが草子さん、藁を編んで草履や籠を作っているのがお雪さん。

 

 皆働き者のお姉さん達だ。

 

 お姉さん達に何故助けてくれたのか聞くと

 

「君には英雄になれる素質がある」

 

 と言われた。

 

 オラはただの農民の子供でそんなけったいなものではないんだが···

 

 オラの親や村の皆も死んじまったので行き場が無く、お姉さん達が居なかったらオラは死んじまっていたので、元気になった今、少しでもお姉さん達を手伝わないとと思い、手伝いを始めた。

 

 お玉さんは貴族をも教育したことがあるらしくて色々な教養を持っていた。

 

 まずは文字を覚えましょうと色々な物語を読み聞かせながら、文字を地面に書いて教えてくれた。

 

 算術も教えてくれた。

 

 お雪さんは食べられる野草やキノコの見分け方や料理の仕方、薬の調合のやり方を教えてくれた。

 

 チチさんは農作業や建物の建て方を、草子さんは武芸全般や忍術? を教えてくれた。

 

 皆の世話になっているので必死になって役立てるように教えてくれることを学んだ。

 

 

 

 

 

 

 毎日必死に学んでいたが、たまにチチさんが逃げ出した馬や牛を拾ってくることがあった。

 

 そのお世話をオラが手伝っていたが、お玉さんが鍛冶をして作ってくれる農具で荒田を耕していく。

 

 動物達は何故か凄い言うことを素直に聞いてくれて、とても頭が良い。

 

「せっかくだ馬術も練習してみようっす」

 

 と草子さんに言われて馬術のやり方も教わった。

 

 またある日には親と逸れたのか、それとも殺されたのか、小熊が寺にやってきた。

 

 チチさんが小熊に色々と躾をすると、小熊も農作業を手伝ってくれるようになった。

 

 オラは度々小熊のチビと相撲をやるように言われて、チビと毎日相撲を取るようになった。

 

 チビはオラよりも小さいのに力が強く、体格差でなんとか勝っていたが、チビも力の緩急をしたりして段々強くなっていった。

 

 チビは牛や馬と並走したりして遊んでもいたが、ある時野犬が現れた時には自慢の拳で馬や牛が襲われる前に追い払ってもいた。

 

 チビに負けないと今まで以上に食べるようになるとオラの体はどんどん大きくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 文字と算術をある程度覚えたオラは草子さんと一緒に町に出かけた。

 

 お玉さんとチチさんが作った荷車にお雪さんが作った唐傘(笠)や籠いっぱいに山芋や木で作った農具、木炭や草履を分けて入れて荷車をオラが引いた。

 

 普段は馬に引かせているが、これも鍛錬だと言われてオラが引くことになった。

 

 草子さんとお話をしながら町に向かうと道中で山賊に襲われたが、草子さんに荷物を守っていなさいと言われると、棒を握った草子さんは刀や槍で武装していた山賊を二尺の棒(60センチ)を振るい、払い、時には山賊の頭を掴み、膝で顔面を陥没させるくらい強く蹴って、そのまま跳び上がると、近くにいた山賊を足を開いて押し倒し、棒で顔面を潰していた。

 

 親玉と思う野武士崩れが振り落とした刀を棒で払うと棒を回転させて手の甲を叩き、落とした刀を拾おうとした親玉の首に棒を当て、地面に倒れさせると、倒れた親玉の髪を掴み、地面に三度叩きつけた。

 

 すると親玉の顔はぐちゃぐちゃになり、目や鼻、口から大量の血を流していた。

 

 10人いた山賊はあっという間に倒され、草子さんは山賊の武器をあさり始めた。

 

「安物だけど鉄は鉄っす。お玉が潰して農具にしてくれるっすよ」

 

 と言っていた。

 

 久しぶりに人が死ぬところを見たが、恐れよりも格好良さが先に来た。

 

「草子さん、オラも草子さんみたいに強くなれるでしょうか!」

 

「なれるなれる! 頑張ろうね!」

 

「はい!」

 

 町に到着すると草子さんは町の顔役に挨拶をして露天を開く許可を貰っていた。

 

 座という組合があり、座に売上か先払いで幾らか払わないと物の売買はしてはいけないらしい。

 

 もしくは座の商人に売り込んで買ってもらう方法も一般的らしいが、商人と信用できる間柄じゃないといけないらしい。

 

「オラ村から出た事が無かったから初めて見る物がいっぱいです!」

 

「最初は何もわからないと思うっすから私の手伝いをしてほしいっす」

 

「は、はい!」

 

 草子さんは荷車から蓙を取り出して商品を並べた。

 

 そして木に値段を掘って並べた。

 

「相変わらず面白いことをするな草子の嬢ちゃんは」

 

 先ほど許可を与えていた商人が草子さんを褒める。

 

「これって面白いことなのですか?」

 

 とオラが商人の兄ちゃんに聞くと

 

「ああ、普通は客と値段を交渉して決めるんだが、あんな風に値段が書かれた札を置けば値段交渉がその値段より高くなることは無いからな。しかも絶妙な値段設定だ。決して高くもないからな。しかも草子はべっぴんだから男共がこぞって買うんだよ」

 

「なるほど」

 

 商品を並べて売り始めると次々に商品が売れていく。

 

 二刻(四時間)もすると全ての品が売り切れた。

 

 今日はやり方を見せるから次は客との交渉もやらせるからねとも言われて必死に客と草子さんのやり方を覚えた。

 

 忙しかったが、客の人達から

 

「坊主、草子の姉ちゃんとの縁を大切にしろよ」

 

 と言われた。

 

 物を売り切ったオラと草子さんは次は頼まれていた買い物をする。

 

 野菜の種や米の種籾だったり干し魚を買ったりしていった。

 

 そんなさなか人集りがこちらに近づいていたので道の端に寄ると、自分より少し大きな少年が同じくらいの少年の肩により掛かりながら歩いていた。

 

 彼との出会いが佐助の運命を大きく変えることになる。

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