女妖怪達が育てるようです   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1548年 物品転がし

 熱田から蝋燭を大量に買って歩くこと一日、伊勢の町の到着した。

 

「ここが···伊勢」

 

 人の往来が激しく、熱田と同じ···いや、熱田以上の賑わいだった。

 

 伊勢は織田家と敵対しているわけではないため、交易が比較的自由であり、加藤のおっちゃんの紹介状で伊勢の町人衆の一人に会うことができた。

 

「熱田の加藤さんにはお世話になってるし、蝋燭はちょうど在庫が心許なかったから助かったわ。紅花を買いたいって話だったな。紹介してやるよ」

 

「本当ですか! 助かります」

 

「でも本当にここから京を目指すのか?」

 

「はい、どうしても稼ぎたいので」

 

「そうか···いや、覚悟があるんなら良いんだが」

 

「ちなみにですが船を使って堺経由で京に運び入れることもできると思いますが」

 

「というわけにもいかねーんだなこれが」

 

 伊勢の南···志摩国と呼ばれる地域では海賊衆とも言われる十三家の豪族がしのぎを削っていた。

 

 その海賊衆が通行料をふっかけるので堺へ船を使った交易をしようにも陸路と同じかそれ以上に通行賃がかかってしまうらしい。

 

「てな訳だ。どちらにせよ伊勢海老だとか紅花とかを京に運ぼうにも海も陸も難しいんだよ。お陰で多少信用が無くても数を送ることで京に必要量を送っている感じだな」

 

「なるほど···」

 

 愚痴を聞きながらその日を終えた。

 

 翌日、紅花の商人を紹介してもらい、紅花を三貫分購入した。

 

 これで手元には一貫と紅花三貫分になり、京に向かって出発した。

 

 お玉さんに星の位置から今自分がいる大まかな場所と地図を頼りに進んでいく。

 

 一応入り組んでいるが道があるので道沿いに沿って進んでいくと、山賊に襲われている若い行商人が居た。

 

「おら、荷物を置いていけば命はとらねぇでやるよ!」

 

「俺達は優しいからなぁ命まではとらねぇよ命はな!」

 

「ひ、ひぃ」

 

 荷物を物陰に隠して、俺は近くに転がっていた石を思いっきり投げた。

 

 拳程の大きさの石は山賊の一人に命中すると、脳味噌と血液を吹き出しながらその場に倒れた。

 

「八助! て、敵だ!」

 

「どこからだ」

 

 山賊達は舐め腐った態度から一気に臨戦態勢を取る。

 

 俺は拾っていた石を再び投げていく。

 

 石が命中するたびに顔面が破裂か陥没して死に絶えていく。

 

 あまりに一方的に殺されるので山賊達は5人目が死んだ所で恐ろしくなり逃げ出してしまった。

 

 山賊達が居なくなった所を見計らって失禁している行商人に声をかける。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、あぁ···き、君がやったのか! あれを」

 

「ええ、まぁ」

 

「た、頼む殺さないでくれ!」

 

「なんで助けた相手を殺すんですか!」

 

「え? 助けてくれたの? 私から荷物を奪おうとする新手の山賊ではなくて?」

 

「違いますって」

 

 とりあえず誤解を解く。

 

 行商人の名前は左衛門で伊賀の方から京へ品を運んでいたらしい。

 

「へぇ伊賀から···伊賀って何か特産物ってあるんですか?」

 

「青苧が有名なハズなんだけど···越後の青苧が有名過ぎて伊賀の青苧は下の品(低品質)扱いされているんだよね···それでも売らないと俺みたいな者は食い扶持が無いんだわ」

 

「伊賀というと忍びが有名と聞いたけど」

 

「忍びは身分を明かさないからね。隠れ里に住むと言われているけど、伊賀出身だけど私も知らないな」

 

「そうなんですね···」

 

 左衛門は腕っぷしはからっきしらしく、頼み込まれて京まで一緒に行動してくれと頼み込まれた。

 

 見捨てたら目覚めが悪いので、仕方なく一緒に行動することにした。

 

 左衛門と話すと、助けてくれたお礼として色々な事を教えてくれた。

 

 現在京では管領代の細川晴元という人物が将軍を傀儡化して色々としていたらしいが、その部下の三好長慶とその兄弟達が反旗を翻したらしい。

 

「京は前から荒れていたが細川様が政をしてから京は大混乱だ。敵の武士を倒すために一揆を扇動して、一揆を鎮圧するために本願寺を担ぎ出したのに、一揆が鎮圧できれば力を借りた本願寺を背後から襲い、そんな行動を咎めた部下は誅殺して···細川の力が弱いからって自ら力をつけるのではなく、周り全ての力を落とす謀をすれば幕府の権威はどんどん落ちていき、京は荒れに荒れてしまった。何度が京に行ったことがあるが、それはもう酷いぞ」

 

 詳しく聞くと京には10万人程の人が生活しているらしいが、人が居るから商いも成り立ってはいるが、そこらかしこに餓死者や殺された人が転がり、誰も片付ける者が居ないからそこから疫病が流行るのだとか。

 

「帝や将軍がいる京がそんなんだもんだ。国はまだまだ乱れるよ。はぁ···嫌な話だねぇ」

 

 俺自身戦災孤児であり、たまたま四人に拾われたから生きているが、どこもかしこもそんな様子だと知ると色々思うところがある。

 

 そんな話をしながら野宿を挟んで京に到達した。

 

 道中で山賊と何度か遭遇したが、山賊から奪った武器を使って追い払った。

 

「凄い強いですね! 佐助さんは幼いのに」

 

「まぁ鍛えてきましたから」

 

「お陰で無事に京まで辿り着けました。佐助さん、京に伝手は?」

 

「恥ずかしながら無いですね」

 

「では私の仲間が商いの仲間が居ますので紹介しますよ」

 

「助かります」

 

 左衛門の仲間を紹介してもらい、紅花を売ると、左衛門を助けてくれたお礼として高値で買い取ってくれた。

 

 なんと十倍の値で買い取ってくれた。

 

 お陰で三十貫もの大金となり、背中の籠には銭の重さでホクホクが止まらない。

 

「せっかくだ。もう一稼ぎしないか」

 

 と左衛門の知り合いの商人に誘われた。

 

 三十貫ともなると重い為、金に交換してはどうかと言われた。

 

 ただ京で金や銀の交換をしている命知らず(そんな銀行みたいな事をしたら野盗に襲われるため)は居ないので、銭で茶葉を買い、茶葉を石山に売り、石山では酒や紙が作られているのでそれを堺に売れば更に儲けられると教えられた。

 

 というのもその兄さんは茶葉を卸している商人なのだが、京の茶葉を集めたは良いが、予想よりも売れなかったので在庫を余らせてしまったらしい。

 

 お兄さんは越前に向かうので逆方向に向かう(向かわせたい)俺に売って利益を確定したいのだとか。

 

 せっかくなので荷車も買って、茶葉を大量に買い込み、左衛門と別れて京から石山に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 京の郊外を歩いているが、死臭や瘴気といえば良いか···空気が悪い。

 

 あちらこちらに死骸が転がっており、腹が空きすぎて餓鬼の様に腹が膨らんだ子供が力無く壁に寄りかかっていたり、産まれたばかりの赤ん坊と出産の痛みか、出血によって亡くなった親子がくたばっていたり、身投げしたドザエモン(水死体)から衣類を剥ぎ取る男達とまさにこの世の地獄の様な光景が広がっていた。

 

 とてもお玉さんが話すような煌びやかな京ではない。

 

 そんな道端では蓙を敷いて露店が開かれていた。

 

 地獄でも商いをするんだなぁと荷車を引きながら通っていた。

 

 露店の品は貴族が描いた絵とか壺とかもあった。

 

 俺は手持ちの金で買えそうな茶器とか絵画を買った。

 

 まぁ叩き売りされている安物だろうが、なんかピンと来たのだ。

 

 女河童のハマが言うには俺にも妖力が宿っていると言っていたのでそれが反応しているのかもしれないなぁと思いながら骨董品を買えるだけ買っていった。

 

 まぁこれも社会勉強だろうと割り切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 石山は本願寺の本拠地でこの乱世には珍しく石山の本願寺は弱者救済を掲げ、流民に職の紹介とか炊出しを行ったりしていた。

 

 京の惨状を見てから石山の本願寺を見ると地獄に仏に出会うということわざがある様に乱世で宗教に縋りたくもなる気持ちがよくわかる。

 

 まぁ寺の坊さんが堂々と酒を作り、商いをしているのもどうかと思うが···

 

「弱者を助けるにも金が必要なのですよ···その為には売れるものが無いといけなくてね。魔除けの品も売っていますが、それで気持ちは助けられても日用品が揃わなくては···ねぇ」

 

 と私の茶葉の入った箱を受け取りながら坊さんが話す。

 

 坊さん達も苦労しているらしい。

 

 まぁ石山本願寺はまともでも比叡山は堕落が凄まじいと商売敵だからということもあるからか愚痴が坊さんから出てくるが、他の商人達も頷いている所を見るに相当酷いらしい。

 

「比叡山ってそんなに酷いんですか?」

 

「女人禁制なのに普通に娼婦が坊主と抱き合うわ、面食いな小坊主を抱きまくるわ、教義で禁止な肉や酒を飲み食いするわでそれはもう酷いぞ」

 

「あそこは高利の金貸しもしているし、金を回収するために僧兵を送り込んでくるからおっかないよ」

 

「子供を売るという話も聞くな···ここに比べたらそれはもう酷いぞ」

 

 と商人達も批判が沢山出てくる。

 

 俺は宗教で身を崩さないようにしようと決め、酒や紙を買って石山から旅立つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 堺に到着すると、別世界であった。

 

 畿内最大の商業都市ということなので栄えまくっているが、町人衆が商いを取り仕切っているので、場所を借りて蓙を敷いて露店を開く···みたいなのは禁止されていた。

 

 その代わり町人衆が一括して町に持ち込まれる物を購入し、それを船を使って各地に転売して利益を出しているらしい。

 

 俺も酒屋や紙を取り扱う商店に向かい、買い取ってもらった。

 

 京では三十貫の手持ちだったが、更に交易したら六十貫まで持ち金が増えていた。

 

 で、堺では茶道という娯楽(文化?)が流行っており、参加費を支払えば茶の湯を教えますという商家があったので、勉強がてら参加してみることにした。

 

 茶器も京で安物とは言え持っていたし···

 

 茶道教室では蔵貸しをしているという商人が教えてくれた。

 

 田中宗易と名乗る25歳くらいの大男との出会いであった。

 

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