女妖怪達が育てるようです   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1548年 茶の湯

この時代の茶道は最先端の教養であった。

 

客を饗しながら、自身の財力を示すというのが一般的であり、それを安くても良い物は良いし、場の雰囲気そのものを楽しみましょうという風にしたのがわび茶(この頃はわび数寄と呼ばれているがわび茶で統一)の始まりで、開祖である村田珠光は茶道の精神がなってないのに高い茶器を自慢して、本来の茶の腕が疎かになるのはどうなのよ(ブチギレ)という事から始まり、現在は三世代目に当たる。

 

田中宗易は堺で茶道の若手の有望株といった所の人物で、自身の茶器として、中華では本来焼くことにより青い色合いになる茶器が不完全燃焼で茶色のまま···言ってしまえば出来損ないの茶器を愛用していた。(珠光茶碗といい、師匠の師である村田珠光が愛用していた茶器)

 

田中宗易···後の千利休であるが、この頃は商人衆の中での力は低く、本業の経営はあまり上手くいっていなかった。

 

エピソードとして七回忌の爺さんの法要が無財の為に行えずに涙を流して墓掃除をしたという事があったくらい困窮していた。

 

わび茶といえど茶道は茶道···上流階級が行う教養を佐助が手が出せる値段で勉強できるというのは普通ならまずあり得ないのだが···まぁ貧乏が悪いってことで···

 

貸倉庫の一つを改造し、茶室に見立てた場所で田中による講習が始まった。

 

まぁ茶道は言ってしまえば茶器の鑑賞会なので、出された茶器を鑑賞し、褒めるのが良いとされる。

 

人を饗す事を主軸とした部屋の作りを含めた総合芸術···というのが一番正しいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「まず茶道ですが、懐紙(ティッシュ代わり)、楊枝、扇子、袱紗(ハンカチみたいな布、使った道具を綺麗にする時に使う)、数寄屋袋(風呂敷の綺麗なもの、上記の物や道具を包むのに使う)の5点を揃えられれば茶会に参加することができます。茶器等を集めるのはこれらの道具を整えてからの方が良いでしょう」

 

と田中先生の講義を聞き、実際に模擬茶道を体験し、練習を繰り返す。

 

一刻半(3時間)程の講義を受けてこの日は終了となった。

 

「若いのに茶道を学ぼうとするとは良い心がけですね」

 

と講義終了後に田中先生に声をかけられた。

 

「農民出身なのですが、教養の一つくらいは学んでおきたいと思いまして」

 

「立派な心がけです。堺には長く滞在を?」

 

「待ち人がいるので7日ほど滞在しようかと」

 

「茶道は極めようと思えば一生をかけて研鑽するものですが、茶会に参加できるくらいの腕であればそんなに日数を必要とはしません。どうです?もう数日私の下で修行をしませんか?」

 

「是非お願いします!」

 

数日であったが田中先生と話し合いを行った。

 

で、俺が一番気になったのは茶室の作りだった。

 

田中先生が知り合いの茶室を勉強がてら見ませんかと言われたので、堺の商人衆の茶室や庭を拝見した。

 

茶道が色々と模索している段階なのでこれといった型は無いが、俺から見た茶道はどれも美しかった。

 

で、真似したいと思う気持ちが湧いてきた。

 

美しい茶室を作るのに幾らかかるかわからないが、チチさんやお玉さんから建築についても学んでいたので、居心地の良い空間の大切さみたいなのは趣味として勉強していた。

 

なのでいつかこの茶室の良いところを組み合わせ、居心地の良い部屋を作ってみたいと感じるのだった。

 

 

 

 

 

最終日に田中先生が茶器の目利きについて今度会えれば教えますよと言われたので御厚意で京で買った茶器を鑑定してもらえることになった。

 

10品ほど木箱から取り出すと田中先生の目の色が変わる。

 

「どれも上物ではないですか!」

 

と驚きの声をあげ、幾らしたのか聞かれたが、全部合わせても3貫程度というと頭を抱えていた。

 

「佐助は目利きがわかるのですか?」

 

「いえ、直感的に良さそうな物を選んだのと叩き売りされていましたので嫁への土産として買っただけで···」

 

「まず8つは大陸由来の茶器ですよ。朝鮮唐津が2つ、高麗茶碗が4つ、大井戸茶碗が1つ、小井戸茶碗が1つ···大井戸のこれは実に見事だ。一見不格好に見えるが、使い古され茶の色が付いている。これは味を感じる一品だね」

 

「残りの二つは白天目茶碗だね。まだ作られてから日が浅そうだが、良物だね。これらを直感で選べるとは···佐助は素晴らしい感性を持っているようだ」

 

「田中先生、鑑定していただきありがとうございます」

 

「なに、良い物を見させてもらったよ。大切にしなさい。どれも五十貫は下らない代物だからね」

 

「ご、五十貫ですか」

 

「ああ、佐助、君がその茶器に負けない男になれることを願っているよ」

 

田中先生と別れ、粒金へと銭を幾らか交換して堺を出発した。

 

 

 

 

 

 

京から近江、美濃を経由して尾張へと戻った。

 

尾張の熱田の加藤さんに金を銭へと交換してもらい、家へと帰った。

 

かれこれ一ヶ月半ほど旅をしたが、とても有意義な旅であった。

 

「おお、帰ってきた!」

 

「ただいま戻りました」

 

「どうじゃ?稼げたか?」

 

お玉さんに言われたので背負っている籠から箱を取り出して中を開けると一貫文の束をゴロゴロと出した。

 

「全部で六十三貫になりました」

 

と言うと流石妾が見込んだ男だとか頑張ったね!とか褒められた。

 

「だいぶ無理をしたんじゃない?」

 

「最初は熱田から美濃の交易をしたんですけど、最終的に畿内に向かって交易をしました。山賊が出たり、京が凄まじく荒れていたりしましたが楽しい一時でした!···とこれがお土産です」

 

と私は皆に茶碗と熱田で買った髪飾りを渡した。

 

「良い髪飾りがあったので買ってきました。茶碗は京で叩き売りされていたのですが、鑑定したら良物とわかったので皆にあげます」

 

「ほほぉ。ありがとうな」

 

「嬉しい!大切にするね」

 

それから皆と旅の事を話した。

 

河童と相撲をしたとか、山賊を倒した話しとか、京や石山本願寺や堺の様子、茶道や茶室の話等を話した。

 

「で、旅をして思ったんだけど、武士になろうとやっぱり思う。山賊を倒した事で自信が付きました」

 

「まぁどの道を選ぶかは佐助が決めること。私達はそれを支えるっすよ」

 

「ありがとう草子さん」

 

「違うっすよ!もう私達は家族!さん付けはいらないっす!」

 

「そうだよ!チチって呼んでよ」

 

「···草子、チチ、雪、玉、力を貸して欲しい」

 

「「「「もちろん」」じゃ」っす」

 

その日は5人で交わって寝るのだった。

 

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