女妖怪達が育てるようです   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1549年 信長からの難題『城から金を生み出せ』

 下方貞清が気まぐれで小姓にした佐助は最初は下方の部下達に良い顔をされなかった。

 

 身分が農民であり、住み込みではなく日帰りというのも気に障っていた。

 

 虐めてやろうと考える人も出てくるが、佐助が仕事を始めると、その有能ぶりに圧倒された。

 

 まず佐助は炭当番という役割を与えられた。

 

 城の炭を管理する大切な役割だ。

 

 普通町で買い付けてくるものだが、佐助は毎日山のような炭を持ち込んだ。

 

 どこで買ってくるのかと佐助に仲間の小姓が聞くと

 

「買ってくるなんて勿体ない。この城で使うくらいの量なら作ってしまった方が節約になるでしょ」

 

 と自家製であることが判明。

 

 しかも不完全燃焼の物が無く、均一で上質であった。

 

 仲間達はでは炭を買うためのお金は懐に入れているのかと聞くと

 

「そもそも貰ってないんですが?」

 

 どうやら金庫番が金を支払わなかったらしい。

 

 しかも備蓄以上の炭は下方の許可を取って仲間に分け始めた事で虐めるよりも仲良くした方が得かも? と思うようになっていった。

 

 仕事の合間に武芸の鍛錬をすると、佐助は巨大な丸太を持ってブンブンと上下に振り回した。

 

 力を付けるための鍛錬だと言うが、他の者は丸太を持つことすらできない。

 

 そんな馬鹿力で刀や槍を振り回せはどうなるか···明らかに振るう速さがおかしい。

 

 普通の倍の長さの槍を普通の槍の様に扱い、模擬槍で勝負をするが、長さにものともせずに模擬戦に勝っていった。

 

 山賊退治に下方が連れて行った時も圧巻だった。

 

 山賊の根城をいち早く佐助が見つけて下方や仲間に報告し、見張りの山賊を音もなく近づくと首をへし折って暗殺し、武器を奪って突撃した。

 

 仲間達も山賊の根城に突っ込むと、僅かな時間に山賊達が幾人か肉片へと瞬殺されていた。

 

 模擬戦で佐助の強さを感じていたが、人殺しの経験はあんまりないと思っていた仲間達は冷静に山賊を殺していく佐助に本能的な恐怖を覚え、虐めなんかしたらヤバいと思い、山賊退治が終わった後に金庫番が佐助に金を渡していないことを下方に集団でチクった。

 

 金庫番は解任となり、降格させられたが、後任を誰にするか揉めた。

 

 金勘定ができないといけないので四則算ができないと金庫番はできないのである。

 

 四則算ができる者が小さな城には金庫番をしていた者しか居らず···

 

「俺できますよ」

 

「ん、佐助できるの?」

 

「ええ、なんなら繋ぎとして担当しましょうか? 他の人にも教えるので」

 

「ん、助かる」

 

 みたいなやり取りがあり、下方の命令で金庫番に異動となったが、下方も信長に面白い人材が居ると紹介していたので数ヶ月限りの人事となることを付け加えられていた。

 

 佐助と仲間の数人が金庫番になって目録を確認したら、所々計算が違わないかとなり、調べた結果、前任の金庫番が中抜きをしていた事が発覚。

 

 他部署に異動になっていた前任の金庫番は下方の逆鱗に触れて斬首。

 

 そんな事件があったある日、下方に佐助が引っ越しをしたいと言い出した。

 

 なんでも嫁が臨月になったため農地の管理もままならないので家畜や今住んでいる家を手放したいとのこと。

 

「ん、それなら城下の長屋を使うと良い。嫁だけ? 嫁の家族もいるなら斬首した金庫番が使っていた屋敷が空いているけど」

 

「すみません、嫁が四人いるので金庫番の屋敷の方で」

 

「ん、四人も居るとは···ますます出世しないと駄目」

 

「ハハハ···」

 

 こうして家畜を売り払い、尾張上野城近くの屋敷に皆で移り住んだ。

 

 下方や同僚達に嫁達が挨拶をすると、そこらの美女よりも圧倒的な美人が出てきたので同僚達は佐助をからかうのであった。

 

 

 

 

「う、産まれる···」

 

 お玉、お雪、チチ、草子の順で赤ん坊が無事に産まれた。

 

 チチ以外は皆女の子で、チチが男の子を産んだため、チチが正妻になることが決まった。

 

「よかったぁ···皆無事に産まれてくれて」

 

「私等出産で死ぬほど軟じゃないっすからね!」

 

「そうそう、これからじゃんじゃん子供をつくろうね」

 

「最低妾は10人は産みたいから覚悟するんじゃぞ」

 

「う、うっす」

 

 養うために出世をしないといけなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「下方、佐助という人物はそれほどの人物なのか?」

 

「ん、年はまだ10ですが全身引き締まった筋肉をしており、私以上の怪力、人を殺すのにも躊躇いが無いが、殺しに酔ってない。武芸は勿論、算術、文字の読み書き、商人との交渉、建築なんかにも教養がある。茶道は京で習ったとも言っていた」

 

「ほう···良い人材じゃないか。下方、余にくれ」

 

「ええ、ただ身分が低いのが欠点ですが」

 

「なに、使えるなら使うまでよ。余の周りには武一辺倒の者が多い故にな。信頼はできるんだが···」

 

「奇行を辞めればよいのでは?」

 

「それはそれ、これはこれよ···一度連れてこい」

 

「は!」

 

 

 

 

 

 下方様より信長様に会わせると言われ、那古野城に連れてこられた。

 

 上座から柿を食べており、袖の無い虎柄の服で寝そべりながらこちらを見ている男が信長様であった。

 

「名は」

 

「佐助と申します」

 

「佐助、何ができる」

 

 と問われた。

 

 何ができるか···戦で暴れられること? 算術ができること? 

 

 いや、そういう答えは求められてないだろう。

 

 出世したいのも家族を養うためだ。

 

 それ以上を俺は望んでいない。

 

「···」

 

「どうした答えられぬか?」

 

「いえ、できることが多すぎて何から言えば良いかと悩みました。一言で言うなら器用貧乏でしょうか」

 

「器用貧乏か」

 

「ええ、何か突出しているとは思っていません。満遍なくやることができます」

 

「そうか···何か欲はあるか?」

 

「家族を養いたいと思っています。大きな城を持ってみたいですな」

 

「ほう、城を持ちたいか···」

 

「はい!」

 

「家族を養いたいと言うが嫁が四人も居ると聞くが···何人の家族を養うのだ?」

 

「嫁達が最低10人は孕みたいと言っていましたので40···いや、50人分を養える領地を将来持ちたいですな」

 

「それだけの能力はあると?」

 

「ある···と断言したいところですが、自身の評価は信長様が決めてください。私は精一杯働くまでです」

 

「ふむ···まあ良い、手始めにこの城から銭を生み出してみよ」

 

「銭を···ですか? ふむ···城を自由に歩いても」

 

「池!」

 

 池と信長様が叫ぶと、控えていた青年が前に出る。

 

「城の中を案内せい。お前が監視しろ」

 

「わかりました」

 

「では下がれ」

 

 と言われて私と下方様は退出するのだった。

 

 

 

 

 

 

「銭を生み出せか···」

 

「信長様は時折難題を出されるからな。私は池田恒興。信長様の乳兄弟でな、あの方は無茶振りをされるのだ」

 

「城から銭を···城の中を一通り見ても」

 

「ああ、構わない」

 

 那古野城の中を歩き回り、銭になりそうな物といえば備蓄している食料や備品等だろうか。

 

 あとは日用品を差分で儲ける等か? 

 

 と、考えていると油の入った壺が目に入った。

 

「油···」

 

「油は高いからな。もし油が安価で手に入るならばそれは金を生み出したことになるかもしれないが」

 

「ちょっとこの油で考えてみます」

 

 俺は城から出て、自宅となった長屋に戻り、皆に油となる種類を聞いた。

 

 まず草子が

 

「油と言えば胡麻、菜種、鯨油、紅花とかっすかね? 植物油と動物油があるっすけど、城とかで使うなら植物油っすよね」

 

 チチも

 

「動物油は知っているけど植物油だと菜種とかの基本的なのしか知らないかな」

 

 という。

 

 ただ俺が

 

「あれ、前にお玉かお雪って米ぬかから油を作ってなかったっけ?」

 

 と聞くと玉が

 

「確かに妾が作ったが」

 

「米ぬかって油になるの?」

 

「中華···いや、南蛮(この場合東南アジア)では米ぬかから油を作るのが行われていたと記憶している。油を買う金が無かった故に苦肉の策であったが」

 

「でもやる価値はあると思うんだよね。やり方教えてくれない?」

 

「ああ、わかったが期待はするんじゃないぞ」

 

 と言われてやり方を教わった。

 

 米ぬかから老廃物を排してから圧延機で搾り、それをろ過することで米油となる。

 

 作ってみると質は高いが、米ぬかの量が結構必要な事がわかった。

 

「お玉、この絞り粕は何か使い道はあるの?」

 

「中華では肥料や家畜の餌に使わていたと聞いたことがあるが」

 

「肥料に使えるんだ」

 

「まあ絞り粕だから質は良くないらしいがな」

 

 まあでも米ぬかは安く売られているし、精米する時に必ず出るので集めるのは楽である。

 

「んー、これ商売化したほうが銭になるのでは?」

 

 と俺は思い、信長様は城から銭を生み出せと言ったので城から精米過程で出る米ぬかを買い取り、信長の親衛隊の人から人手を借りて、安く城に卸せばそれだけで3重に金を生み出したと言えるのではないかと思った。

 

 下方様の金庫番業務を他の人に引き継ぎながら、屋敷に精油施設を作り、試行錯誤を繰り返しながら米油の製造を始めるのだった。

 

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