女妖怪達が育てるようです   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1550年 米油

「どうだ池、佐助の様子は」

 

「はい、どうやら油に目を付けたらしく、自宅に篭り、油を作っていると下方様より聞いております。それと米ぬかと人手を借りたいとおっしゃってましたが」

 

「そうか、そうか···犬と月を送ろうかな。あいつ等血気盛んだけど強い者には従うし···うん、あと親衛隊でも力の弱い奴を選んで送っておけ」

 

「わかりました」

 

 池と呼ばれた池田恒興は犬(前田利家)と月(津田盛月)を呼び、信長の命令で少しの間佐助という人物の手伝いをしてこいと言った。

 

「なんで俺達が農民の手伝いなんかを!」

 

「信長様も何か考えがあってのことだろう···俺等以外は弱っちいのばっかり選んだのが気になるが」

 

 前田利家は織田家に代々仕える前田家の四男であり、信長が愚連隊(親衛隊)を作っていると知り、参加して気に入られた経緯がある。

 

 津田盛月は元々織田家の一族であるが、兄と共に織田弾正家の家来として仕えていた。

 

 津田盛月は信長から月と呼ばれ、同じ年の利家とも親しかった。

 

 互いに15歳であり、佐助より5つも年上である。

 

 そんな彼らが佐助の屋敷に行くと佐助が大きな石臼を挽いていた。

 

「何をしているんだ?」

 

「油を作っているんですよ···皆さんは?」

 

「信長様の命令で来た者だ。俺は前田利家、こっちは津田盛月」

 

「前田様に津田様ですね! 佐助です! 信長様に城から銭を作れと命令されたので銭を作っている最中なのです!」

 

「これが(臼を挽く行為)? 銭に?」

 

「ええ、実は米ぬかから油が取れる事が分かりまして、米ぬかを各地より集めて絞ってろ過するとこの壺に入っている油になります!」

 

 と佐助が壺に入った油を見せてくる。

 

「米ぬかは精米する時に必ず出る物で、今までは漬物とか肥料に使われていましたが、油になれば城で使う分の油を節約することができます。町で油を売ることで銭にもなります。油を作る人に銭を支払えば、信長様の家臣に支払う金を減らすこともできます。三重に銭を得する事が出来るのです!」

 

「俺等に油を絞れと?」

 

「ええ! 俺だけだと作れる量が限られるので手伝ってください」

 

 と佐助に言われた。

 

 武士がその様な事をやれるかと前田利家がキレそうになった所を津田があれを見ろと指差すと、巨大な熊が石臼を挽いていた。

 

「熊!?」

 

「ああ、俺の仲間のチビです! チビー」

 

 と呼ばれた熊は石臼を挽くのを止めて佐助に突っ込んできた。

 

 佐助はよしよしと3メートルある熊を撫でる。

 

 熊も心なしか気持ちよさそうにしている。

 

 それを見た前田利家と津田盛月は佐助に逆らったらこの熊が襲ってくると確信し、連れてきた部下達も大熊の出現にビビっていた。

 

「働いてもらう分賃金は支払うので安心してください」

 

 と佐助は言い、やり方を教わる。

 

 やり方は簡単であり、米ぬかを振るいにかけてゴミを取り除き、蒸してから絞る。

 

 絞った米原油をろ過すると米油になるらしい。

 

「大丈夫、熊でもできる」

 

 と実際に熊が絞っているので、できるのだろう。

 

 できる量は米ぬか一俵分(30キロ)から約十分の一(3リットル)が米油になるらしい。

 

 で、六升(10.8リットル)で400文が油の平均相場なのだが、米ぬかは精米時にほぼ捨て値で取り引きされる。

 

 佐助曰く米ぬか五俵分で百文で熱田から買えるし、下方様からも米ぬかをほぼ同じ値段で仕入れたらしく、十俵で約六十升分の油が取れたので四貫(4000文)になるらしい。

 

 二百文が四貫に化ける。

 

 これを聞いたら流石に俺達もヤバい事に気がつく。

 

「この資金があれば信長様も喜ぶと思いますし、皆さんの武器も良い物が揃えられるのでは?」

 

 と佐助が言う。

 

 是非やろうと俺達は言い、米ぬかを各地から集めてくる者と油を作る者、それを油座に売ったり、那古野城に運ぶ者に分けて行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「飯うめぇ! うめぇ!」

 

「お雪さんおかわり!」

 

 佐助の屋敷に入りびたる事になった利家と盛月、その部下達は俺(佐助)の嫁の作る料理も食べるようになった。

 

「佐助! 四人も美人な嫁さん娶るなんて羨ましいぞ!」

 

「しかも顔よし、器量よしときたもんだ! 年下のくせに!」

 

「あははは」

 

 油で利益を出しつつ、那古野城の経費を削減し、見事銭を生み出したとして佐助は信長に那古野城の油の管理をする仕事を任した。

 

 これにより下方様から信長様の直臣になることになるが、下方様にも米ぬかと交換で油を安く卸す事で繋がりを継続させた。

 

「ん、義理堅いね」

 

「信長様と引き合わせてくれたのは下方様なので」

 

 こうしたやり取りをしていたが、信長様より利家と盛月の下に付けていた部下達をそのまま佐助にやると言われた。

 

 皆武家の確かな産まれの者であるが、三男とか四男で戦で武功を挙げなければ穀潰しとして実家で飼い殺しにされる運命が待っているが、私の部下になった五名は武芸が苦手かつ力も無かった。

 

 努力しても才能が無ければ戦場では死ぬのみ···足手まといを抱えられるほど信長の親衛隊という立場は軽くはない。

 

 事実上の降格であるが、その決定に五人は嫌な顔せずに従った。

 

 土橋一道、永森右京、茶方万福、木曽秀満、長嶋郡志の五名である。

 

 彼らとしっかりと話すことにしたが、信長に忠誠を誓っているのは確かだが、自分等が戦で役立てるとは到底思えないという話を最年長の土橋からされた。

 

「信長様の役にそりゃ立ちたい···けどだからこそ現実を見なければならない。俺達は俺達でやれることをやる。それが何か分からないけど」

 

「···玉」

 

「何じゃ?」

 

「勉強すれば皆人の役に立てる?」

 

「中華には科挙と言って勉強した者のみが上に上がれる仕組みがあった。信長様の周りには武官は多いが、文官は少ないんじゃないか? ならば文官としての道を進めるが」

 

「皆に教えることはできる?」

 

「···仕方ないのぉ、仕事が終わったら見てやろう」

 

「俺も農民出だから教養があるかは微妙だけど文字の読み書きと四則算ができればある程度の内務はできるって下方様のところでわかったから、それだけでも覚えない?」

 

「覚えたいです。よろしくお願いします」

 

「「「「よろしくお願いします」」」」

 

 と言うことで奇妙は上司と部下の関係が成立した。

 

 

 

 

 

 油座(油屋の集団、利権関係で寡占している連中)の利権に食い込む形になってしまったが、熱田の町人衆でもそこそこ力を持っていた加藤さんの執り成しで座の参加が認められ、代わりに座の参加費を支払うように言われた。

 

 まあ油屋の連中は米油の製造方法が米ぬか関連であるとは材料からわかっているが、信長様の命令が関わっていることも知っているので下手に真似すれば信長様と揉める可能性を考慮して真似する者は出てこなかった。

 

 で、信長様は浮いた油代や俺からの上納金で更に子飼いの部下を増やしていた。

 

 相変わらず奇行をしながら領内を練り歩くし···教育係の平手様が油を卸しに那古野城に行くと信長様と口論している姿をよく見た。

 

 俺の中でも信長様の評価は微妙だ。

 

 最初にいきなり無茶振りされたというのもあるが、一応油係ではあるが、前田利家さんと津田盛月さんの部下みたいな扱いが正しいかもしれない。

 

 信長様から渡される賃金は僅かであり、自前でもっと稼ぐ必要がある。

 

 というのも皆が2人目を妊娠したからだ。

 

 娯楽が囲碁とか将棋はやるけど性行為もしているのでまぁできるよね。

 

 油の製造でもだいぶ儲けられるが、皆の給料の支払いとかを考えるともう少し利益が欲しい。

 

 お雪が布を織ったりして足しにしてもいるが、何か無いかと頭を悩ませているとお玉がやって来た。

 

「何じゃ頭を捻って···もっと皆を豊かな生活を送らせてあげたいじゃと? 嬉しいことを言うのぉ···何か無いかか···ふむ、そうじゃなぁ···中華の麺料理を参考にしようかのぉ」

 

「麺料理ですか?」

 

「うむ、というか小麦や蕎といった作物は雑穀とひとくくりにされて、農民の救済作物、米に混ぜたり粥にして食べる物だと浸透しているが、挽いて粉にすれば饅頭の様な料理を作ることもできようぞ」

 

「売れるのでしょうか?」

 

「まぁ普段使わない物を美味しくするだけでも面白いとは思うがのぉ土地が無い以上できる金策も限られておる。米油だけでも上々だと思うがのぉ」

 

「うむむ、確かに蕎と小麦は安いですがそれを料理にですか···」

 

「まぁそれらもある程度の農地を持ってからの方が良いかもしれんのぉ」

 

 お玉はケケケと笑う。

 

 まぁ地道にやれということだろう。

 

「とりあえず色々試してみることにするよ」

 

「それが良かろう」

 

 こうして俺は小麦や蕎を粉に挽いて、蕎麦がきや団子、うどんを参考に料理を研究するのだった。

 

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