その血が歩む道すじ   作:亞忌羅

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 混乱するからオリキャラとか増やしたくないんだけど、話の都合上増やさざるを得ないのがなんとも言い難い。


百二話

「何か思いついたようだね、傑君」

「ああ。蓮が言った事が出来れば一つ上のステージにいけそうだ」

「それは何より。参考になって良かったよ」

 

 柱にもたれ掛かり、まだ考えている夏油を横目に五条が「そう言えばさハル。一景(いっけい)って奴こっち(東京高)に居なかったけ?」と聞いてきた。

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「うん。初めは戦力的に京都高に入れようかなって思ったんだけど、向こう(京都高)には葵が居るでしょ? 一景まで向こうに入れさせたら戦力的に過剰かなって思ってさ、だからこっち(東京高)に入れようかなって」

「ふーん。ま、確かに去年ウチらが勝ったのは憂太が居たからってだけだからな」

「ソレ、一景も絡んでるよ」

「は? どゆこと?」

「あの子の術式だよ」

「そう言えば私、お子さんの欅一景(けやきいっけい)くんと二回程、任務に同行した事があるの。

 その時に私が思ったのは欅くんが何をしたのか(・・・・・・)分からなかったの。

 でも……それでも二級呪霊を祓ってた」

「まぁ、そうでしょうね。一景の術式は母親以上に特殊ですから」

 

 歌姫が言う何をしたのか分からないのに呪霊が祓われていた事、そして去年の交流会の時に東京高を勝たせた一因でもある事を欅一景の術式だと晴蓮は言う。

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「一景の術式は高専に登録されているままの能力だよ」

「なんだっけ?」

 

 一つ息を吐き、「情報消失(データ・ロスト)だよ」と五条を含めたこの場に居る全員に教える。

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「本人が居ないのに僕が術式を開示したらアレだから詳しくは言わないけど、一景の術式には攻撃能力は基本的には無い。拡張次第では化けるかもね」

「それじゃあ私みたいなサポート系? でもそうは見えなかったのだけど」

「そうですね、どちらかと言うと葵に近い術式ですかね」

「確か……東堂君の術式は不義遊戯(ブギウギ)、能力は入れ替え、でよかったかな?」

「ええ、葵の術式はモノの入れ替え、なので術式そのものに攻撃能力はありません。

 そして一景も攻撃能力の無い術式を持っています。似ていると言っても似ているのは攻撃能力が無い点だけですね」

「それが情報消失(データ・ロスト)

 今高専のデータベースで確認したけど、加茂君、これは額面通りに受け取っていいんだね?」

「はい、そのままですね」

「ロスト……成る程これは厄介だね、敵に回したくないね、この子」

「おや? その口振りから察するにどんな術式か分かったみたいですね」

「おおよそではあるけどね」

 

 勘の良い冥冥は字面を見てどんな術式か見当をつけ、それを以て一景の術式を『厄介』と評した。

 察しのついた冥冥にたいして、或いはこの場に居る全員にたいして「後は本人に聞いてください、僕が言うのは本人に悪いですから。まああの子なら隠さず教えてくれると思いますよ、そう言う性格ですので」と話を終わらせた。

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「なぁハル」

「うん? 何?」

「一年にも入れた?」

「あぁ、中西暦(なかにしこよみ)だね。

 あの子は軽度の先天性知的障害と多重人格障害………正式には解離性同一性障害だね。これらを持った天与呪縛持ちの術師で、術式は朔望(・・)

 能力は……星君に似てるのかな? 後は本人に聞いてくださいね」

 

 言い終えた後付け加えるように「ああそれと性別は男ですよ彼、見た目は女の子ですが。

 主人格が男の子で交代人格(副人格)が女の子ですね。他にも何人か居ますが……僕が言う事じゃないのでこちらも本人に聞いてくださいね」と話す。

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「星? 秤についていった星綺羅羅(ほしきらら)君の事か?」

 

 星綺羅羅は停学になった秤金次についていった術師で、秤の術式とは違い天文学を基にしていると思われる歴史ある術式で、保守派呪術師・上層部に好まれている。が、秤を追い出した(停学)保守派呪術師・上層部を嫌い、今は高専を離れ秤と共に行動している。

 それはそれとして晴蓮とはそれなりに連絡を取り合っている。

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「うん。星君の術式に似てるんじゃないかな」

「となると……その中西暦君とやらは天文学を基にした術式なのか?」

「……まぁ、そうだね。概ねは」

「(言い淀んだ? 他に何か有ると? 全く、相も変わらず全部は話さないね、彼は)(さく)が新月、(ぼう)は満月。そして月には下弦と上弦も有る。その子の術式は月に由来する術式かな?」

「陰陽道において月は重要視されてますから、ザ・呪術な術式ですよね」

「月……ねぇ………陰陽道を基にするなら扱いが難しい術式だね」

「その辺りは現代的な解釈の仕方ですね。

 まあ高専に入れる前に色々と教えたので中々に仕上がってますよ」

 

 陰陽道(陰陽師)において月の満ち欠けは人々の生活、運気、身体の調子、そして吉凶を占うための非常に重要な基準(思想)であり、太陰太陽暦(旧暦)は明治頃まで(カレンダー)としても採用されていた。

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「引っ込み思案な子だけど……ま、なんとかなるんじゃないかな、恵君も悠仁君も良い子達だし仲良く出来ると思うよ」

「ああそうだった、ハルもう一人来るから」

「一年生?」

「そ、頭の古い奴ら(上層部)が好むザ・呪術な術式持ちの呪術師」

「そう言うのはもっと早く言ってくれないかな」

「最近ハル忙しかったじゃん」

 

 頭に手をやりながら「確かに最近忙しかったけど、別に電話じゃなくてメールとかでもいいんだからさ大事な事は早めに教えてね」と言い、夏油に知っていたか聞くと「私も聞いていない。今初めて知った」と返し、それを聞いてタメ息を吐き「次から気をつけてね」と締めくくった。

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「それで? どんな子が来るの?」

「あー、自分に素直な奴。で、呪術師の家系で東京来んのが夢だったらしいよ」

「実家は?」

「東北だってさ」

 

 新しい生徒の実家を聞きコメカミ辺りを指で軽く何度か叩き「東北……」と呟き「その子って推薦?」と五条に聞く。

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「祖母からの推薦だね」

「んー……もしかしてあの偏屈婆さんの所の子か? 確か小さい子が居たような記憶が……」

「どったのハル」

「東北の子なんだよね」

「うん」

「もしかしてさ、芻霊呪法(すうれいじゅほう)の呪術師?」

「なんで知ってんの」

 

 頭を抱え「あー、やっぱりあの時の偏屈婆さんかー、そういえば小さい女の子居たなーそっかー」とボヤきながら項垂れる。

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「ん? 何、何か知ってんの」

「昔ね、東北に任務で行った事があってさ、その時に現地のフリーの呪術師に協力要請を出したんだよ」

「ハルなら一人でやれんじゃん」

「土地勘が無いから案内を頼んだんだ」

「窓と補助監督は何してんだよ、そこら辺調べんのが仕事だろ」

 

 窓とは普段は一般の職業に就いていて日常生活に紛れている非呪術師だが、呪いや残穢を目視することができ、呪術界において何か異常があった際に直ちに呪術師や補助監督に連絡をする重要な役割を担っている者達である。

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「勿論ちゃんと仕事してるさ、それでも現場の範囲(帳の中)が広かったんだ。中は彼らじゃ無理だから現地の術師に来てもらったんだよ。

 んで、その時に来たのが釘崎躑躅(くぎざきつつじ)さんって言うんだよ」

「その人の術式は?」

芻霊呪法(すうれいじゅほう)の術師。

 更に言うとその人にお孫さんが居てね、多分その子が来るんだろうね」

「ソイツだな。釘崎って名前だったし……多分」

「お孫さんが居るなら娘さんは?」

「その子を置いて蒸発したらしいよ。

 躑躅さんは直接的に言ってはなかったけど、言葉の端々から察するに呪術師としての才能が無かったんだろうね。

 その代わりお孫さんには呪術師の才能が有った。だから躑躅さんはお孫さんを鍛えたんだと思うよ」

 

 話し終えた後、顔に手を当て天井を仰ぎ「あの偏屈婆さんがよく高専に行かせたな、絶対揉めたでしょ」と独り言ちる(ひとりごちる)

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「蓮、そのお婆さんに何か問題があったりするのか? 渋い顔してるけど」

「あー、んー……躑躅さんね、スッゴく偏屈で頑固なんだよ。

 僕が協力要請出した時に最初は、『高専の人間に協力する気はない』って頑として首を縦に降らなくてさ、何度か交渉してやっと案内だけを条件に協力に漕ぎ付けられたんだ。

 いやもうマジで大変だった」

「そんな人物がよくお孫さんを高専に入れる事を許したね」

「ホントにねー、あの人が心変わりするとは到底思えないし……その子はどうやって説得したんだろうね、家出宜しく出てきたのかな」

 

 話し合っていると晴蓮が顔を上げ耳を澄ますと廊下から足音が聞こえてきた。

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「悠仁君が帰って来たみたいだね、なので……ハイ! この話し終了」

 

 その言葉と共に柏手(かしわで)を打つと、まるで空間がパキっと何かが割れるような気配がし、空気感が変わった。

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「(あ、やっぱ結界張ってたんだ。いつ張ったんだよ)」

「師匠、話し終わったっす」

 

 喋りながら襖を開けて入ってきた。

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「とうだった?」

「ウス、墓の区画決まりました」

「じゃあ次は火葬場だね、最期の………別れの挨拶をしないとね」

 

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 火葬を終え別れの挨拶をしそれぞれ任務に向かうため、同期組そして甚爾と虎杖を残し任務に行き、直哉は晴蓮について行こうとしたが、任務に動向する冥冥に首根っこを掴まれ引き摺られるように消えていった。

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「倭助さんはね、僕が頼み事をするといつも悪態(小言)をつくんだ、それでも倭助さんは必ず協力してくれた。無茶な事を言っても……手伝ってくれた。

 倭助さんは僕の……大切な、友人だ」

「そう、なんすね……きっと爺ちゃんも喜んでると思います」

「そうだと……嬉しいな」

 

 虎杖の言葉を噛み締め、天を仰ぎ消えゆく煙に向かい、声に出さず「今までありがとうございました。ゆっくりと休んでください」と唇を動かした。

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 虎杖の先輩達が入院している病院の来て「さて、これから悠仁君は高専……呪術高専東京校に来てもらう手筈になっている。今のうちに挨拶したい人達にしておいで」と虎杖に伝える。

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「それなら先輩達にしたいです」

「オカ研の人達だね、しておいで、待ってるから」

「ウス! 行ってきます!」

 

 虎杖を見送り「悟君。現時点で悠仁君は指何本呑んだ?」と聞く。

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二本(・・)じゃね? ガッコーで呑んだヤツと葬式前に一本渡したら躊躇いなく呑み込んだ」

「……そう、か。呑んだ時に変化は無かった?」

「呑み込んだ瞬間だけだったな、その後すぐに完全に抑え込んだ」

「確定だね、彼は()だ」

「檻? 器だと私は聞いているんだけど」

「私はセイの檻に一票」

 

 晴蓮の言葉に三人が晴蓮に目を向ける。

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「彼の事ちゃんと見てないからまだなんとも言えないけど、二人ともさ常識で(呪術師として)考えな。

 両面宿儺の指なんて言う特級中の特級呪物呑んでんだよ? ただの人間に出来る訳ないっての」

「器である事も事実だよ、でも硝子が言う通り器以上に檻としての適性が高い。特級呪物を呑み込んでも人間でいられるなんて普通じゃあり得ない。

 宿儺(呪いの王)という存在を内側に閉じ込めている、多分それが彼の在り方なんだろうね。現段階では……だけどね」

 なんとも皮肉な話だ、魂を操る術式を持っていた倭助さんの孫の悠仁君が、宿儺という超ド級の魂を閉じ込められるだから。

 ……虎杖家に何か有るのか無いのか……少なくとも過去500年間の文献を調べたけど呪術界に虎杖家の名前は見当たらなかった。

 ………倭助さんはアレとして、ただの突然変異? 1000年もの間現れなかった宿儺の()がこんなにタイミングよく? そんな都合のいい話がある訳がない。となると……アイツの仕業か? だがどうやってそんな事が出来た? 

 体の入れ替え……その時に何かをした……その何かは分からないが、可能性はなくはない……か。

 何せアイツは……イヤ、憶測だけで判断するのはやめておこう。何事も下調べは万全に、だ。

 

「………蓮一つだけ聞きたい事が有る」

「聞きたい事? 何かあったっけ」

「蓮は今までにどれだけ……何人にあの術式を使ったのか教えて欲しい」

「傑、今更そんな事聞いてどーすの、もう終わった話しだろ」

「まあでも、気になるっちゃ気になるよね。セイなら数えきれない人数やってそうだし」

 

 家入も気になっていたのか夏油の発言を擁護し、晴蓮に話す事を促す。

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「……そうだね、10人を超えた辺りから数えてないかな」

「そん、なにも………なんで、どうして……どうしてだ蓮」

「大きくは二つ。

 一つ目はある種の救済、呪霊被害に遭い呪霊が見えるようなってしまったからね。さっきも言ったけど、呪霊が見えてしまえばその後も襲われる。なら、対抗出来る力を得るか、この先どこかで襲われ死ぬかの選択肢を与える。

 二者択一だ。そして選ぶのは決まって前者だよ。誰だって死にたくないからね。

 そして二つ目、術師増加による人材確保。呪術師が増えれば増えるほど呪術師の死亡率が低下する。

 呪術師の死亡率は高い理由は母数が少ない故の任務の偏り。なら、呪術師の母数が増やせば一人の呪術師に振り分けられらる任務の偏りが減り、結果、呪術師の死亡率が減らせる。

 こっちもさっきも言ったように人材確保も仕事の一つだからね」

「……そのために、廃人になる可能性有る術式を一般人に使うのか、蓮」

 

 どうしても受け入れられないのか、絞り出すように再度問い掛ける。

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「いくら僕でも呪術・呪霊と関係の無い一般人を呪術師にはしないよ。

 呪術師にしたのは呪霊の被害者だけ、そこまで非道でも下道じゃないって。

 それに術式も完成してるし使う前に術式開示して底上げしてるから失敗は無いさ」

「そう……か」

「確かに呪術界は万年人手不足だもんな、呪術師が増えて困る事はねーよな。

 実際、俺達特級に回ってくる任務も昔より減ってるし、理にかなってんだよ、傑」

「やり方はどうであれ、呪術師の死亡率は昔より格段に減っている。理由は呪術師の母数が増えたからだ」

 

 晴蓮達の学生時代は呪術師が少なかったため、等級に合わない呪術師が格上の呪霊祓除をせざるを得ない状況が多かった。その結果、多くの呪術師が死んでいった。そんな苦い状況を知る晴蓮がとった方法が術式を使用した呪術師化だった。

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「分かってる……そんな事分かってるよ。

 呪術師が増えて死亡率が減ったのも実感してるさ。でも……それでもまだ、受け入れられないんだ。すまない」

「今すぐ理解しろとは言わないし、言えないのも分かってる、時間で解決するとも思えない事もね。

 でもね傑君。呪術界は綺麗な水じゃないんだよ、濁りきった水だ。その事はあの時(・・・)教えた(見せた)でしょ?」

「………そう、だね」

 

 晴蓮と夏油だけが知るあの時(・・・)の話。晴蓮は意図的に隠している訳ではなく、呪術界に身を置く者達なら誰もが知っている事と、聞かれていないから話していないだけだった。

 ━

「(あの時? いつの事だ? 後で傑に聞くか、ハルも教えてくれそうだけど、どっちかつーと傑の方が詳しく話してくれそうだしな)」

 

 一方で夏油は十年以上経つ今でも小魚の骨が喉に刺さっているかのように、心の隅に有る蟠り(わだかまり)が飲み込めていなかった。

 どれ程現実を突き付けられていたとしても。

 ━




 いつになったら特級虫くんに辿り着くんですかね。
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