「お帰り、ハル。どうだった?」
「終わらせたよ。残りは保守派呪術師、それと補助監督だけだ」
「バレる可能性は?」
「有ると思う?」
「ま、ハルが下手打つ訳ないかないか。で、補助監督ってなんで」
「どうやらあちら側の手先がまだ居たらしくてね、今日中には終らせる」
「あー……もしかして前回ハルに割り振りられた任務って」
ふと気になった疑問を聞き「あちら側の人間が僕に遠方の任務を割り振り、あちら側の補助監督が僕を連れて行ったんだよ」と答える。
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「小賢しいと言うより、狡いんだよなアイツら」
「でもそのお陰で片付けられた、これで彼らは僕の言いなりだ。
ああでも、新しく入れる奴らの選別とあの術式をかけないとね」
「あんま無理すんなよ、ハル」
「これくらい問題ないよ。問題なのはスカウトの方だね、二人程見つけたんだけど……どうやろうかな」
「おー、じゃあ一年ズが増えんの?」
「スカウト出来ればね。その前に最近起きた
仕業が呪詛師であればその呪詛師の抹殺だね。補助監督の方は夜にでもやればいいからね」
「硝子が言ってたヤツか、アレって呪詛師の仕業なの?」
「今のところはまだなんとも……て、感じかな、呪霊の可能性も捨てきれないのも事実だからね」
どちらかと言えば呪霊である可能性が高い。あんな事出来る奴がマトモな感性もってるとか考えられないし。
「ま、どちらにせよ調べる必要がある。で、調べる事が出来る人員は僕しかいない。皆忙しいからね」
「真希か真依連れてく? あの二人なら問題ないっしょ」
「そうだね……」
呟きながら真希、真依の任務表に目を通し、少し考え「真希を連れて行こうか、調査の場合術師よりフィジギフの真希の方が適任だ」と顔を上げながら答えると、「呪力ねぇから探知から外れるんだよな、ゴリラと一緒で」と返した。
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「蓮兄。例のヤツってコレか?」
体が
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「どうやら体そのものが形を変えているね、しかも肉体には損壊もなければ繋ぎ目もない」
「? どう言う意味?」
「一つの人間の『肉体』が歪んで変形しているんだよ。これは呪詛師の仕業じゃないね」
「なんで」
「こんな事、人間には出来ないよ」
「そういった術式かもしんないんじゃん」
「あり得ないんだよ、そんな事。
あくまで僕の持論でしかないけど、形を、何かを作る術式は有る。例えば構築術式とかね。
でもね、こんな風に
「でも降霊術とか形変わるじゃん」
「それも自分自身の肉体を変えるんだ。
僕の友人にも同じような術式を持つ術師がいる。でも、彼に出来るのは自分自身の体を変える術式、他者には出来ない。
あくまでも僕の持論だけどね」
「ふーん…………ん? じゃあ呪霊の仕業?」
「…………どう、なんだろうね。少なくとも僕はこんな事が出来る呪霊は知らない」
「蓮兄が知らないって……やべぇじゃん」
「そうだねぇ……次いでに言えば残穢がもう残って無い事だね。呪詛師なのか呪霊なのかも分からない」
肉体の変形、脳は……少し歪んではいるがまだ許容範囲内。………これ、は…………。
確か高専にも遺体があったな、確認しよう。
「真希」
「んー、何」
「高専に帰ろう」
「調査は」
「一通りは終わった」
「コレらはどーすんの」
「補助監督達に任せる」
新たに発見された変死体を全て改めると、何かに気づいたのか、いつも冷静な兄が焦っているのを見て「蓮兄、やけに焦ってんじゃん」と、問い掛けると「もしかしたら、特級案件だ」とハッキリと言いきる。
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「は? マジで」
「可能性が有るってだけだよ、出来れば可能性が0になって欲しいけどね」
「マジかー、特級だったらどうするの」
「いつもと同じさ、僕らが動く。
さて、高山さん。後はお願いします」
「分かりました。加茂晴蓮特級、加茂真希一級。お疲れ様でした」
「すまないね」
「い、いえ。これが仕事ですので」
「僕達は急いで帰るから車内のお菓子は高山さんが食べてください」
ここに来る前に買っていた菓子を補助監督に渡し、晴蓮達は
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「硝子」
ついさっき変死事件の調査に行った筈の晴蓮がいきなり入って来て「うお! びっくりした」と驚き、早すぎる帰宅に「アンタ仕事は」と言うと「終わらせた」と返答し、続け様に「ここに有る変死体を全部見せて欲しい」と言葉を投げ掛ける。
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「別にいいけど、なんで?」
「確認したい事があるんだ」
「ふーん……こっち、ついてきて」
歩く事数分、高専医務室に併設されている霊安室につく。
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「ここに有るので全部。………何調べんの」
「中身」
「中身?」
意味の分からない事を言う晴蓮を腕を組ながら見やり、口の中の飴を転がす。
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「やっぱり、か」
「やっぱり……って、何がやっぱりか教えて」
「中身……魂だよ」
「魂? ………
「僕の場合は
「
「昔、倭助さんに教わってね」
「じいさんに?」
「倭助さんの術式は
八百万信仰や神道・鬼道に通じる術式だ。倭助さんは魂を知覚し操れる」
「は?」
「倭助さん曰く『全てのモノに魂は宿る』らしい。それで気になってね、どんなモノか教えてもらったんだ」
「全部って……呪霊にもあんの?」
「在るらしいよ、人間のモノとは全然違うらしいけどね」
魂が
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「人間の魂はどんな形してんの」
「倭助さんが言うには『人間の魂は常に燃えている。決まった形は無く、色・匂い・燃えかたも違う』だってさ。僕には分からないけどね」
「さっき感じ取れるって言ってたのに? 見えない理由は」
「理由は単純だよ。僕は五感の内三つの感覚が無い」
「……三つ? ………視覚・味覚……後、は……ああ触覚か」
「うん。一つ目は全盲。そもそも物理的に目が見えない。
二つ目は味覚の鈍化。あくまで鈍化だから無い訳じゃない。それでも味付けは極端に強くないと分からないレベルだね。
んで三つ目は無痛症。僕は痛みが分からない、なら当然触覚も無い。
だから僕がモノを見るためには式神を通してしか見れない、式神を通すと言う事は他者の視覚を借りて見ているから魂は視えない」
「じゃあどうやっ……て………匂いと音か」
「大正解。だから僕は考えた、どうやれば分かるのか………目で見えないのなら『他の感覚で知覚すればいい』とね」
「それで、
「うっすらだけどね。
人間と呪霊の匂いは全然違う、呪霊の匂いはめっっちゃ臭い。鼻が捥げるレベルで臭い、特級とか吐くレベルで臭い」
「そんなん聞くと呪霊の匂いが分からなくて良かったよ、マジで。
じゃあ次、音はどんな音が聞こえんの」
「なにも」
「なにも?」
「呪霊の魂は音がしない」
「理由は分かってんの」
「呪霊はある意味生きているけど、死んでもいる。だから音がしないんだと思ってる」
「…………死んでるから音がしない心臓の鼓動と同じか。じゃあさ、今回の変死体はどうだった」
「音は聞こえなかった、死んでいるから当たり前だね。でも、匂いはある程度臭かったけど人間の匂いがした」
「……じゃあやっぱりコレらは」
「人間だよ。やっぱりって事は硝子もそう考えてた?」
「体の造りが人間だからね、私が分かったのは脳幹辺りに弄られた形跡が有った事。恐らく意識障害……錯乱状態を作り出すためだろうね。
ま、脳の事は
「流石の僕でもここまで出来ないって、コレは僕がしてるやり方とは別モノだ」
「ふーん。それで? 人間の匂いってどんなの」
「個々人違う。いい匂いの人も居れば臭い人も居る。臭いけど呪霊の匂いとは別種の臭さだね」
「臭い人間の特徴は」
「犯罪者は臭いね、魂はね腐るんだ。腐ると罪を犯す、犯罪と言ってもピンキリだからに罪の重さで匂いは変わるね、軽犯罪は鼻をつまむ程度からちょっと臭いくらいかな。重犯罪は捥げる。
人を殺した奴は呪霊並みに臭い」
「話を戻すけどさ、
倭助は術式の関係上魂が知覚出来ても可笑しくない、それどころか知覚出来ないと術式を扱えない。しかし、晴蓮の術式は血漿操術。魂を知覚出来る訳がない、本来であれば……だが。
━
「さっき硝子が言ったじゃん」
「
「んー……『弄った』とは少し違うかな。
そもそも僕は僕の脳を弄れない。だから魂が知覚出来る術式を持つ世界線の人を探しててね、そしたら知覚出来る術師は近くに居た。
居たけど……したく無かったから別で探したんだよ」
「で? 見つかったの?」
「いや、見つからなかった……。
まぁ、でも……結果的には手に入れたよ」
「それ、どう言う意味」
「………その方法で術式を一つ増やしたんだ」
「………じゃあ、術式を加えるのにどうやったのさ。まさか
「したね、んで取り敢えず研究した」
「なんの研究か、なんで研究したのかを教えて」
「『なんの』はあるモノに変える研究『なんで』は、あるモノに変える必要があったから。
時間は掛かったけどなんとか成功したよ」
「…………ソレは後で聞くとして、今は別の事を知りたい」
「うん? 何」
「方法は分からないけど、魂を知覚出来る術式を加えたんだよね」
「そうだね」
「じゃあさ、他にも加えた?」
「あー……加えた訳じゃないけど……まあ増やしたね。
てな訳で悟君と傑君には黙っててね」
「はぁ……やったのね。
「そりゃあるさ。………一応は」
「一応、ねぇ。どの程度あるのか知りたいから教えてよ」
「呪術との関係が有るか無いか」
「………最低限はあるって事か、まだするつもり?」
「何事にも限度があるからしないかな。
確かに何らかの方法で複数の術式を所持出来るけど、それでも二つから四つまでが限界だ。だからと言って限界までやりたくないさ」
「てことは、もう加えない……って思ってもいいんだよね?」
「僕だって死にたく無いからね」
まあ今のところは、だけど。
晴蓮は生得術式を拡張し、数え切れない程の拡張術式がある。それはあくまで拡張しただけで術式が増えた訳じゃない。故に別の生得術式を追加する事は出来ない。
しかし、晴蓮は数多の世界線を視る事が出来る。出来てしまう。そして世界線に干渉も出来てしまう。
彼は生粋の呪術師、出来るのであれば徹底的にやる。たとえ下道と言われようと誰もが手を出さない域の道徳を、倫理をギリギリまで手を出してしまう。
それが、加茂晴蓮と言う呪術師なのだ。
━
「で? 幾つ加えたの」
「二つだね、内一つが魂を知覚出来る術式で、もう一つの方は別の方法で手に入れた」
「通常、術式は一人に一つ。さっき
これは今まで研究してきたから分かってる。あぁ、あの人……九十九由基さんにも協力してもらったし、九十九さんも同じ答えに辿り着いた」
「よくあの風来坊と会えたね」
「向こうがいきなりやってきたからね、こき使ってやった」
「うんうん。あの人はそれくらいに扱うのが丁度いい」
九十九由基は呪力からの『脱却』を掲げ、呪霊の生まれない世界を目指し呪力や魂、呪術界の歴史上呪力を一切持たない天与呪縛の加茂甚爾を調べようとして接触したが、最初は断られている。
しかし、晴蓮が天与呪縛を研究し始めた頃に突如現れ、勝手に協力を提案してきた。その際、二人が知る天与呪縛者から細胞を採取し、共に数年研究した。その中には魂に関する研究も有った。
━
「話、戻すよ。
例外を除けば術式は一人に一つ。理由は『生得的に脳に刻まれる先天的な才能』である事。
次に人間の脳のキャパシティ、そして情報処理能力が基本的には一つで限界だから。最後に生得領域……つまり心の裡は一つしかあり得ない、生まれ得ない。
…………私はてっきりアイツだけだと思ってた。だってそんな事しても意味が無いから、下手に手を出せば……その瞬間から人じゃ無くなるから。私はそう考えてる」
「凄いね、正直驚いたよ。硝子がそこまで辿り着いてると思わなかった」
「話を逸らさないで、ちゃんと話して」
目を閉じて腕を組一つ息を吐き、口を開く。
━
「…………概ねその通りだよ硝子。
人間と言う生き物は必ず限界値が存在する。それは当然だ、生きているのだから限界値が有って当たり前なんだ。
なら……『魂の限界値』はどこまで在るのか。そんなの……気になるに決まってるじゃん」
「…………だからと言って、自分の体を弄る理由にはならない体も脳も一つしかない。
そこに無理やり入れ込めば………脳のキャパシティを超えて、情報処理能力も超える。
そうなれば起きる現象は、廃人だ。人間は強くない」
「そうだね、その通りだ。僕もそうなりかけた。だが、やり方が良かった」
「『やり方が良かった』? 莫迦言うなよ! なりかけたんだろ! だったら!! ………だったらなんでそんな事した!」
「…………好奇心と興味本位」
「ッ! ……そんな……そんなくだらない理由でやるなよ
「んー……そう、だね。自分でも莫迦な事をしたと思ってるよ。やってから暫くの間術式が使えなかった」
「……今は?」
「問題なし、十全に使いこなせてるよ」
「はぁ………今更さ、何言っても意味ないけどさ、本ッ当に莫迦だよ、
「あっはっは、そうだね、莫迦だね。僕もそう思うよ。本当に莫迦な事をしたよ。まぁ……でもうん、後悔はしてないよ。
お陰で僕の術式は
「
「なんて言うのかな、生得術式とは別の術式が加わった結果、術式同士が拒絶しあって生得術式が一時的に使えなくなったんだ。
それで『どうすれば生得術式を使えるように出来るのか』を、考えた。何度も何度も考えて考えて……それで出した答えは外部からの刺激を絶って生得領域のより深いところに踏み入れて、『術式とはいったいなんぞや』を突き詰めた。
踏み入れた最初、ソコはまるで底無し沼のように思えた、それでも足を入れ沈みながらも沼を渡りきると『術式』と『呪術』をより深く理解出来たと言うか……生得術式や生得領域の根底? の部分が分かったと言うか……」
「何それ、意味分かんないだけど。それにどうやって増やしたのさ」
「僕が術式を増やす方法として最初に選んだのは呪物化だ」
「呪物……化? どうやっ、て………まさか、
「僕は呪術師だ、そしてやりたいと思った事をギリギリまで突き詰める性格なのも自覚してる。
ああでも、さっきも言ったように無関係な人にはしてないよ」
「そんで
「うんそうなるね。今回は違うけど皆には言ってない事があってね。
それは覚醒しても生きている、と言う訳じゃない。覚醒しても死ぬ時もある。
変わった事で
それでね……そんな時にね、閃いちゃったんだよね。まあ今回は手元に有ったから他の誰かって訳じゃないから安心していいよ」
「本ッ当に莫迦だねアンタ、マジもんの化け物だよ
「だよねー、我ながら限度を知れと言いたいね」
「それで? どうやって呪物化するの、てかなんで出来んの」
「んー、まあサンプルが近くに有ってね、ソレを研究して、解析して、究明出来た」
「その結果が他者の脳の呪物化って訳?」
「そうなるね」
「で、呑んだと」
「うん」
「はぁ……莫迦が」
「あっはっは、イヤー本当に返す言葉もございません。…………ごめんね硝子、こんな事を背負わせちゃって」
「もういいよ。…………ねぇ、
「うん? 何か聞きたい事あるの」
「………それさ、私にもやって」
「それ?」
「術式を得るヤツ。私の脳なら弄れるでしょ」
「は?」
唐突に爆弾を投下してくる家入に間抜けな声が漏れ、一回考えた後「マジで言ってる?」と聞き返すと「マジに決まってんじゃん」と答えられ、「えーと……あー、んー。………失たら廃人だよ?」と宥めるように言うが「んな事分かってる。でも
目頭を押さえ「硝子。さっき言ったように成功したとしても廃人になる可能性がある。僕は硝子には使えない」と頼みを拒否する。すると「じゃあ
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未だに呪術と術式の違いが分からない。
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おかしい、こんな事になる筈はなかったのに。筆が勝手に走った結果やべー化物が生まれた。
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魂云々は私の妄想オブ妄想です。(モジュロはまだ最新版まで読んでません、単行本二巻までの事しか知りませぬ。早く読みたい)