その血が歩む道すじ   作:亞忌羅

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 さあ巻いていこう。


百九話

「背中からカマ………あの時の奴に似てるな」

「薨星宮本殿に来た人物……で良いのか分からないけど同じ人物が来たね、(れん)あの時に来た人達は京都高の先輩方で良いんだよね?」

「片方はね、薨星宮に行ったのは多分呪詛師だ、何せ弥永宗二(やながそうじ)の体は羂索が乗り移ったからね」

「ねぇ(セイ)

「うん? 何か引っ掛かる事でもあった」

「あの飛頭蛮(ひとうばん)は何回体を変えてんの?」

「んー、僕が知る限りだと三回だね」

「誰と誰と誰」

「一人目は悠仁君の父親の仁さん、二人目は(ゆかり)さんの友人である小原周防(こはらすおうさん)。三人目が京都高の先輩、弥永宗二(やながそうじ)さんの三人だね」

「今の体は探せんの?」

弥永(やなが)さんの時に首を跳ねたから今も違う体だうし見つけ出すのは難しいかな、それに僕らは奴が体を移れる(・・・・・)事を知ってるから徹底的に隠れてる」

 

 甚爾が小原周防(こはらすおう)の名前を聞いた時、拳を強く握り締め、食い込んだ爪が皮膚を破り血が垂れる。

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「現時点で三人もの人達の体を乗り移るなんて……どんな思考をすればそんな事ができるんだ」

「アレからすれば服を着替える程度の感覚だよ」

「とても人がやる行為じゃないな」

「思考回路がブッ飛んでるよね、何をどう考えて生きればそんな風になるのかは少し興味はある。あるけどそんな術式は要らないかな」

「もし(セイ)の術式が飛頭蛮(ひとうばん)の術式だったら何やる?」

 

 長く考え「もしそうだったら同じ様に何度も移り変わって呪術界の趨勢を見るかな」と隠さず答える。

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「なんで」

「純粋に知的好奇心を埋める為に、かな」

「羂索の真似事をすると言う事か」

「ソコまではしませんよ、ただただ見るだけですね。僕なら傍観者に徹します、長く生きれば呪術界に関わる事をしませんね。…………多分」

 もしかしたら同じ事をするかもしれない、腐った呪術界を正す為に。イヤ、僕なら腐らせない様に動くかな。

 

(セイ)なら絶対関わるでしょ」

「硝子に一票」

「同じく」

「信頼されてるのか、されていないのかどっちかな」

「ハルなら呪術界を裏から操って腐らない様にするっしょ」

「僕自身もそう思う」

「だよねー」

「タラレバの話しは終了。建設的な話をしようか」

「話を戻すぞ。交流会は必ず行う、楽巌寺(がくがんじ)学長には話さない。それで良いんだな?」

「正確には京都高の教師陣に話さないですね、この事を知るのは僕達だけが良い。情報漏洩の危険性が高まりますから、漏洩を低くするには知っている人物を減らすのが一番ですから」

「加茂、これからどう行動するつもりだ」

「そうですね………取り敢えずはーーー」

 

 

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 さて、交流会襲撃の為に手札を増やしますかね。面白い術式を持った呪霊と呪詛師に目処をつけている、それに交流会まで時間がない、さっさと終わらせるか。とはいえ選別はしないとね。

 

 

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『ぎ……ぎぁあぁあーー』

 呪霊にしては……イヤ、いかにもな術式か。さて、先ずは一つ、次だ。

 

 

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「ま、待ってくれ。じゅ、呪詛師はもう止める。い、田舎に帰って、帰って米を作る! だ、だからーー」

「呪詛師に農家ができる訳ないじゃん、大丈夫、死にはしない(・・・・・・)。強制ーー」

 

 晴蓮の呪術を喰らい、呪詛師の断末魔の叫びが廃墟に響き渡る。

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「……やっぱり君には宝の持ち腐れだね、有効に使わせてもらうよ」

 これで二つ。現段階ではこれがベストだ、未来(世界)の為に空きは残しておきたい。準備は整った。

 これで迎え撃つ。

 

 何かを受けた呪詛師は膝を付き、俯き口から泡を吹いて白目を向いている。

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「さあやってきました京都姉妹高交流会の始まりです。で、釘崎君の大荷物は何?」

「勘違いしてたんだよ」

 

 その言葉を聞き数瞬考え「あぁ、成る程。京都でやると思ってたのね」と答えを導きだし、「去年は乙骨君のお陰で圧勝だったもんね、勝った方の学校でやるからね」と言ったら、会った事の無い乙骨に「許さんぞ!! 乙骨憂太ぁあぁあ!!」の怒りの叫びが高専に響く。

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「誰も訂正しなかったの?」

「話が噛み合わねぇとは思ってたけど、ソレくらい分かるだろって」

「あっはっは、まあそう言う事だからその荷物は置いてこようか」

 

 某電気ネズミ宜しく顔をしわしわにして校舎に入り荷物を保管しに行った。

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「僕も言っておけば良かったね」

「蓮兄は最近飛び回ってたから無理でしょ」

「私達の責任でもあるわね」

「勘違いした釘崎が悪いだけじゃね?」

 

 二年生組が話し合っていると、遠い場所から大きな声で「会いたかったぞ超親友(ブラザー)!! 生きていると俺は分かっていたぞ!」の声が響いたと思ったら今度は「だから超親友(ブラザー)じゃねぇって言ってんだろ!」と虎杖が返す。

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「ねぇ兄さん」

「何かな」

「アレ、何?」

「葵曰く『俺達は共に青春を過ごした超親友(ブラザー)』だって」

「アレと同じ学校にでも通ってたのか? 虎杖の奴」

「まさか、悠仁君は宮城県で葵は神奈川県だから同じな訳がない」

「なのにアレなの? なんで」

「その辺りは葵に聞いて。聞いたけど僕には理解できなかったから」

「マジもんの変態じゃねぇか」

 

 二人の攻防? を見て「二人は僕を介して葵とは子供の頃から知り合いだからね、その時に葵の琴線に触れたんじゃないかな」と教える。

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「関わりたくねぇから聞かねぇ」

「真希に同意、アレに関わると面倒事しかないからパス」

「嫌われてんなぁ東堂の奴、俺も関わらねぇけど」

「恵、あの変態は何」

「京都高に所属する術師、去年の呪術テロで特級呪霊を二体、一級呪霊を十体祓った術師だ」

「呪術的テロがなんなのか知らないけど取り敢えず強い奴なのは分かった、つまり術式がヤベェ程強いって事か」

「葵の術式に直接的な戦闘能力は無いよ、葵は体術だけで呪霊を祓った。流石に特級呪霊には使ったらしいけどね」

 

 戦闘能力が無く、体術だけで祓ったと聞き「バケモンじゃん」と呟き、「葵も悠仁君と同じ様に子供の頃から僕が鍛えたからね、一級呪霊程度なら容易く祓えるさ。だから」と釘崎に伝えた。

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「ゴリラとあの二年生どっちが強いんですか?」

「……甚爾さんと比べるのは駄目だよ、甚爾さんは天然のフィジカルギフテッドなんだから。肉体強度が天と地だ、体術のみで甚爾さんと戦えば僕でも勝てないからね」

 甚爾さんがゴリラ扱いされてるね、まあ分からないでもないけど。

 

「加茂先生が!?」

「それくらいに強さが懸け離れている、段違いだよ」

「加茂先生が術式を使ったら勝てるんですか?」

「昔に術式ありで()り合ったけど引き分けだったよ、呪力が無いから探知ができないだ。

 そうなると目で見て戦うしかないけど盲目の僕はソレができない、だから絨毯爆撃宜しく周りを吹き飛ばさないと僕は土俵にすら立てない」

「だから兄さんは引き分けに」

「目を見える様にすると今度は天与呪縛が鈍るから直接見るより未来視(世界視)の方がマシなんだ、未来視(世界視)ならどこから来るのか分かるからね」

「加茂先生が勝てないなんて………」

「それだけ甚爾さんは強いんだよ」

 

 甚爾のデタラメさを話していると、奥から楽巌寺(がくがんじ)が現れ意識不明の虎杖が居る事に驚き晴蓮を睨む。

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楽巌寺(がくがんじ)学長、お元気そうで何よりです」

「加茂晴蓮。何故アヤツが、『宿儺の器』が生きている」

 

 聞いている話しとは違う光景を見て、コメカミに青筋を立てながら唸り声で問い質す。

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「元々死んでませんよ、僕が居るのに死ぬわけないじゃないですか。悠仁君は意識不明の状態から意識が戻った(・・・・・・)だけです、ああでもまだ連絡していませんでしたね。大変失礼いたしました、次からは報連相をしっかりしますのでお許しを」

戯れ言を……そちらがそのつもりなら、こちらもそれ相応の事をさせてもらう」

「どうぞご自由に。僕もそれ相応の事をいたしますので」

 

 杖を大きく鳴らし去っていく。

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「相変わらずだな」

「保守派筆頭だからね、革新派の僕と『宿儺の器』を嫌っているのさ。何、対策は済んでいるよ、悠仁君には指一本触れさせない」

「蓮兄はなんで向こうの事知ってんの」

「向こうには松と葵が居るらかね、情報は筒抜けだよ。それに式神も潜ませてるから僕に隠し事はできないさ」

「あー、成る程」

「本当に兄さんはなんでとできるのね」

「『なんでも』はできないよ。ただ、できる範囲が他の人より広いだけで」

「ソレが広すぎるのよ」

 

 真依の突っ込みを受け「あっはっは」と濁す様に笑っていると人影が近づいてくる。

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「よう! 晴蓮の兄貴、久しぶりだな」

「やあ松、元気そうで良かったよ」

「バチバチ燃えてっけどな」

「気をつけなよ? 君の場合小火(ぼや)でも大火になるんだから」

「ちゃんと制御してるっての」

「あはは分かってるよ、君は呪力制御が上手だからね」

「変態じみているわよね」

「コイツとは()り合いたかねぇ、火花散らした瞬間にドカンだからな」

「相手取るの大変だよねー」

「兄貴には負けるっての、凍らされたらしまい」

「そりゃあ常に対策手段を考えて手札を増やしてるからね」

「また兄さんの呪術が増えるの?」

「良いかい真依、呪術とは日進月歩、歩みを止める事は成長をするのを諦める事と同じだ、常に上の段階(ステージ)へと登り続ける事が肝要だよ、真依も常に登り続けなさい。

 真依には……イヤ、真希にもその余地がある。二人とも頑張るといい、勿論松もね」

「おうとも! いつか兄貴に一撃喰らわせてやるよ」

「あはは、期待しているよ」

 

 和気藹々? とした会話が終わり両校が各々の待機所に向かった。

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「じゃあ僕は忌庫(きこ)に行ってくるよ、忌庫(きこ)の方は待ち伏せができるからね」

「気をつけろよ、ハル」

「僕を誰だと思ってるのさ、『最優』の加茂晴蓮だよ? 油断も慢心も一切無い、準備は万全さ。

 そっちは可能な限り素早く対処をよろしくね、生徒達への被害は最小限に、されども悠仁君の覚醒を促す様にね」

「任せろ、あのクソやろうに一泡吹かせようぜ」

 

 背中に掛かる声に「アイツの思い通りにはさせないさ」と言いながなら手を振り忌庫(きこ)へと向かう。

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「待っとたで連クン」

「直毘人さんは?」

「蓮クンの言うた通り四国におるな」

「やっぱりか。全く、手抜かり無いにも程がある」

「せやけど俺はこっちに来れた、親父に黙っとった甲斐があるもんやな」

「駄々をこねたんじゃないの?」

「………んな訳あるかいな。そんな事より俺はもういけるで」

「それは何より。さあ、行こうか、未来(世界)を守りに」

「おう! 任せとき」

 

 

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 忌庫(きこ)の中で休みながら警戒していると知らない呪力を感じ「……誰か来よったで」と喋ると「その様だね、呪霊の匂い(呪力)は六、人間……呪詛師は………! 四人!! 三人の筈だ!」と叫び、続け様に「どこでズレた? 僕は何を変えた……」の一人呟き逡巡する。

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「蓮クンの予想が外れるなんて何があったんや」

「悔しいけど一枚上をいかれたね、どんな呪詛師を増やしたのかが問題だ」

「一番高い可能性は?」

「僕なら結界術師を増やす。僕を自由に動かさせない様にね」

「せやったら俺が増えた一人倒したる」

「頼むよ」

「おう!」

 

 二人の掛け合いに黙っていた二人のフリーの呪術師の一人が「ボクは何をすればいいの?」と声を掛ける。

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(しずく)海賢和尚(・・・・)は呪霊をお願いします」

「分かった」

「任せたまえ、一級の四体は私達が片付けよう。片付け次第君に………イヤ、呪詛師に向かった方が良さそうだね」

「お願いします、(しずく)もね」

「うん」

「よし! 行こうか」

 

 

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「また会いましたね」

「元気そうだね、銀崩(・・)。と、そっちは……あぁ、あの時逃げ回ってた雑魚の呪霊か」

 (わたくし)の名前を? 何故? 我々の素性が知られている? どうやって……まさか未来視(世界視)はそんな事もできるとでも? 

 

「あ"! 喧嘩売ってんの?」

「呪霊ごときに売らないさ、僕からすれば呪霊なぞどれもこれも有象無象でしかない。さあ、ヤり(呪い)合おうか呪霊」

 

 継ぎ接ぎの呪霊が呪力を漲らせ今にも飛び掛かろうとするが「貴方は呪物を、彼は(わたくし)が」と、もう一人の自然呪霊『銀崩(ぎんほう)』が制止する。

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「チッ! 次は俺が殺す」

「まさか君達、僕が居るのに忌庫(きこ)に易々と入れるとでも?」

 

 その言葉通り忌庫(きこ)には簡易的ではあるものの、結界術が張られていた。

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「これでも封印術や結界術には自信があってね、お前達が来る前に張らせてもらった」

 とは言え、コレは急拵えの結界……気休め程度の結界だからすぐに壊される。少しでも時間を稼げれば良いんだけど、まあ無理だろうね。

 

「確かに結界が張られているな」

 

 その時、第三者の声が耳朶を打つ。

 ━

 四人目の呪詛師か! やはり結界術師か、どうする……仮想怨霊(妖怪)を出すか? 何を出すーー

 

百武(ももたけ(餓者髑髏))! 潰せ!」

 

 体から『じわり』。と、淡黄色(たんこうしょく)の液体が滲み出るとまるで骨が抜け出るかの様に巨大な骸骨が現れ、呪詛師目掛け仮想怨霊(妖怪)餓者髑髏(がしゃどくろ)の手を振り下させた。しかし、呪詛師は巨大な手の横に居た。

 ━

「成る程、君が例の加茂の呪術師か。加茂の術師が式神を使うのは驚きだ」

 避けた? あの面攻撃を? それに俺の事を聞いている受肉体はこの女か? …………成る程、受肉先の肉体をそのまま使っているのか、薄々思っていたが本当にそんな事ができるのは驚いたな。

 

「呪詛師が……しかも結界術師が表に出てくるとはね、驚いたよ」

「ん? ……あぁ、君は勘違いしている。私は結界術師じゃない、結界術師は向こうで頑張っているよ」

 

 顎で示した先には呪符と呪詞を唱えている術師が居た。

 ━

「良いのかい? 教えればあの呪詛師を捕まえに行くとは思わないのか?」

「無いな。あの()から聞けば君は目先の利益より、後の利益を取ると言っていた。であればあの結界術師より私やソコの呪霊の相手をするとね」

「………腹が立つがその通りだよ」

 男、か。今の羂索は男の体を使っているのか、良い事を聞けたな。だが恐らくーー

 

 呪詛師を指差し「百武(ももたけ(餓者髑髏))、アレの相手をしていてくれ」と言えば「『カカカ、カカカカ』」と顎を鳴らし返事らしき事をする。

 ━

「アンタの相手は後でしてあげるよ」

「それは良かった、ここまで来て式神としか遊べんのはつまらんからな」

「待っていろ、すぐに終わらせる」

(わたくし)達の事を甘く見ているのね」

「前みたいなると思っているのなら大間違いだと知れ」

 

 睨み合いからの氷の礫と凝固した血刃が衝突し、氷と血が撒き散らされると同時に氷の剣と薄紫(・・)の刀で切り結び、振り抜き弾き合う。

 が、晴蓮は力を受け流し体を独楽の様に回転させ足がついた瞬間に足裏に貯めた呪力を爆発させ銀崩(ぎんほう)に詰め寄り淡黄色(・・・)の刀を振り下ろす。しかし、氷の壁に遮られる。

 ━

「ただの呪霊と思って甘く見たのが運の尽きね」

「君達自然呪霊を甘くなど見ていないさ、ただ少し面倒な相手なだけだ。周りをよく見ると良い、逃げ場も、隠れる場も無い」

「(!? まさか(わたくし)達が自然から産まれた呪霊であると分かっている!?)」

 

 銀崩(ぎんほう)の周囲には淡黄色(たんこうしょく)の球が空を埋め尽くす様に浮かんでおり、「剡漿:(えんしょう:)漿刀火惨葬(しょうとうかさんそう)」の言葉と共に埋め尽くしていた無数の球体は巨大な刀身となり銀崩(ぎんほう)を襲う。

 ━

「君は氷の呪霊(・・・・)だろう? なら火の類いは堪える筈だ、もう溶けたか?」

 

 土煙の中から半身が燃え尽きた銀崩(ぎんほう)が現れる。が、「流石『最優』の呪術師ね」と体を直しながら話す。

 ━

「これだから呪霊はタチが悪いんだよ、呪力だけで直すからね」

「なら貴方も呪霊にでもなったらどうかしら? 方法が有るらしいわよ」

「誰がソコまで堕ちるかよ」

「そうね、貴方が呪霊になったらどれだけ不味くても食べてあげる」

「僕は大根じゃないからね、食べたら当たるよきっと。何せ呪い(呪霊)を呪う呪い(呪霊)になるだろうからな」

「それは怖いわね、なら今ここで貴方には退場してもらわなくちゃね」

「吠えるなよ呪霊」

「囀ずるのがお上手ね、人間(呪術師)

 

 睨み合いーー否、話が途切れた瞬間お互いが遠距離から呪術を使い土煙があちらこちらで舞い、煙を切って接近し氷の剣と淡く桜色に光る拳がぶつかり金属音を鳴らす。

 ━

「その拳……」

「これが中々便利でね、特に奇襲なんかにはな。それが防がれるとは驚いたよ、中々にやるじゃないか」

「(あの時、剣を作っていなければあの拳で祓われていた。あの拳はいったい……)」

「すまないがお前とはこれで終いだ、祓う(殺す)

 

 その時、若く軽薄な声色で「銀崩(ぎんほう)、こっちは終わった。帰ろうか」と忌庫(きこ)から出てきた継ぎ接ぎの呪霊が声を掛ける。

 ━

 雀の涙か、期待はしていなかったがこうも簡単に壊されるとはね。あの呪詛師のせいか、なんだあの術式は? 訳が分からん。

 

「であればここからは私との時間だな、遊ぼう(呪い合おう)じゃないか、現代(・・)の呪術師」

「現代……ね。君はいつ(・・)の呪術師かな?」

「割らせてみせるといい呪術師」

「そうさせてもらおう呪詛師」

 

 自然呪霊・銀崩(ぎんほう)と継ぎ接ぎの呪霊の前に立ち行く手を阻み、用事を済ませた自然呪霊を逃がす。

 ━

 追い討ち……は無理だな、あの呪詛師が防ぐ。指を咥えて逃がすしかないのは癪だが仕方ない、今はこの呪詛師の捕縛が先だ。

 

「一つ、聞きたい事がある」

「答えようじゃないか」

「何故そちら(呪霊側)についた」

こちら(呪霊側)の方が面白そうだったんでね」

「成る程、生粋の呪詛師か。なら加減は必要無いな」

「元から無いだろうに」

「大正解、元から無いよ」

 

 その言葉を皮切りに晴蓮が薄れ消え、呪詛師の隣に突如現れ拳を振り抜く。が、呪詛師はソコには居なかった。

 ━

 !? 消えた? ……イヤ違う! 早ーー

 

「中々どうして、面白い呪術を使うじゃないか」

「そう言うアンタこそ面白い術式じゃないか」

「ほぅ、その言い方……まるで私の術式が分かったみたいな言い方だな」

「まあね、僕は賢くってね。お前、時計職人(・・・・)だろ」

 

 目を見張り「驚いたな、その通りだ。私は時計職人の一族の術師でね、私は不定時法(・・・・)で動いている」術式の開示をしてくる。

 ━




 まさかまさか四人目の呪詛師が出現。何故未来視(世界視)で視えなかった……分かりません。
 まあなんでもかんでも未来視(世界視)通りだと面白く無いもんね、イレギュラーがないとネ。
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