その血が歩む道すじ   作:亞忌羅

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 一気にジャンプ。カットカットカット、ある程度の話し合いはいるけど長くなりすぎるとダレるからね仕方ないよね。


百十一話

「来てたんですね加茂先生。ペストマスクの正体は分かりませんでしたが先生が言った通り上手くいきましたよ」

「それは何より」

「あの時の連中の顔は傑作でした、先生にも見せたいくらいに」

「式神を付けたかったけど、バレたら計画がオシャカになるからね、見れなかったのが残念だ」

「それで、俺はこれからどうすれば?」

「取り敢えずはこれまで通り警戒・捜索を頼むよ、与君にはいずれ外に出てもらうつもりだからね」

「早く出たいですね、ここから。そして……」

「じきに会える、もう少し我慢してほしい」

「分かってます、今はこれ以上望みません」

「ごめんね、与君」

 

 二人が話し合っていると「加茂晴蓮、君はここをなんだと思っているのかね」と、誰かの問い掛けが聞こえてきた。

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「日本一……イヤ、世界一安全なセーフエリア」

 

 呆れた口調で「全く君と言う奴は」と愚痴を溢す。

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「でも事実じゃん、ここは世界のどこよりも安全な場所だ。誰かを匿うにはもってこいな場所だよ」

「おいそれと来ていい場所ではない、君は私の事をなんだと思っている」

「人外」

「確かに間違いではないが言葉を選びたまえ」

「だったら尊敬できる様な事をしてほしいモノだね」

「しているだろう? これ以上何を望む」

「誰かを助けろ、それ以上は望ん。最も、お前がそんな事をするとは思えんがな」

 

 腕を組み、四つの目(・・・・)閉じて「私は必要以上にーー」の続きを言う前に「『(うつつ)には干渉しない』だろ? 分かっているさ、その理由もな」と遮り「だからこそ()は認められない」と吐き捨てた。

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「(敵意を抱いている、というより純粋に嫌っている感じか。この人は何を、どこまで知っているんだ。どこまでの事が視えているんだ。

 それに俺? 先生か俺と言ったのか?)」

「天元、俺の手伝いくらいは問題は無いだろ」

 

 いつも穏和な晴蓮が嫌悪を隠さず、口調さえ変わっているのを見て驚いていた。

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「俺はお前の仕事は分かってるしその意味も理解している、それだけは認めるとも。それでも俺は思ってしまうんだよ。まだ何かできるんじゃないか……とな」

「これ以上私に求めないでくれ、私にこれ以上の事はできない」

「なら目を瞑れ、何も言わずに在り続けろ、俺がする事の邪魔をするな。お前は…………イヤ、まだ早いか」

「加茂晴蓮、何を視た」

「言う訳無いだろ莫迦が、俺は戻る。食材は持ってきた、その間彼の世話をしておいてくれ」

「……良いだろう、それくらいはするさ」

「じゃあな天元、与君ももう少しの辛抱だ待っててくれるかい?」

「はい」

「じゃあね」

 

 天元とは真逆の優しい声色で与幸吉に声をかけ、薨星宮から出ていった。

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「……天元様、先生はどうしてそこまで天元様を嫌っているんですか?」

「…………さてね、私にも分からんさ。イヤ、誰も分からないだろうな、彼が何を考えて動いているのかを。だが一つだけ言える事はある」

「それは?」

「呪術界の為に奔走している事だ、自らを犠牲にしてね」

「先生………先生は何を視て、何を求めて生きているんですか」

 

 与幸吉の呟きに天元は何も答えず静かに消えていった。

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「と、言う訳で、内通者は僕の協力者の与君でした。彼にはダブルスパイを頼んでいました、何か質問はございますでしょうか」

 

 眉間に皺を寄せ「いつもの『敵を欺くにはまずは味方から』か?」と若干怒気を孕ませながら言葉を投げつける。

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「情報漏洩を減らす為にはこのやり方が一番いいので」

「何かしてんだろーなとは思ってたけどんな事してたのかよ」

「ペストマスクの事を可能な限り知りたかったからね、まあ新しい情報はあまり無かったけど」

「『あまり』、と言う事は少なからず何かはあったのかい」

「背格好くらいかな」

「どんぐらい?」

「中肉中背の男性との事だ」

「それ何も分かってないと同じじゃん」

「まあ目安にはなるんじゃない?」

「日本人の大半が中肉中背だと思うがな」

「与くんは今どこに?」

「世界一安全な場所」

 

 目頭を押さえ「また天元様に迷惑をかけているのかお前は」と絞り出した。

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「あそこって使い勝手がいいですし、安全地帯なのは確実ですので」

「蓮クンは相変わらずデタラメやな」

「どうやれば薨星宮に辿り着けるの?」

「開発した生転術式(せいてんじゅつしき)でちょちょいと」

「ハルはもうなんでもアリだな」

「使えるモノはなんでも使わないとね、勿体ないから」

「内通者………与幸吉の事はもういい、問題はこれからどうなるか、何が起こるのかだ」

「今現在分かっている事を話します」

「少しでも奴らの情報が欲しい、なんでも、些細な事でも全て話せ」

「分かりました、これから起こる事はーーーー」

 

 

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【記録。2018年10月31日、19:00分】

【東急百貨店、東急東横点を中心に半径凡そ400mの『帳』が降ろされる】

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「おっと、ごめんね」

 

【20時31分、加茂晴蓮、現着】

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「う~ん。視て知ってはいたけどこれは酷いね」

 未来視(世界視)通りだと外と同じ非呪術師を閉じ込める『帳』が降ろされてる事になるけど……どうしたものか。

 

「ちょと頭の上を失礼するよ」

 

 そう言いながらごった返す群衆の頭上を地面が有るかの様に歩く。

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 やっぱり未来視(世界視)通りか。ま、乗ってやろうかね。

 

「へぇ、準備バッチリだね」

 

【20時40分。東京メトロ渋谷駅B5F、副都心線ホーム】

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「やあ初めまして、そしてさようなら呪霊諸君。お前達はここで負ける(死ぬ)、計画は全て水の泡と消えるよ」

「貴様こそ初めての言い訳を考えてきたか?」

「ん? あー、そんな事しなくても逃げないよ、君達を祓うんだから」

「大言壮語をほざくではないか」

「大言壮語かはその身をもって実感するといい」

「ハッ、ほざくな人間。そして逃げたら、ではない。逃げずとも、だ」

 

 そう言いとホームに居た一般人が何かに押される様に、或いは引っ張られる様に線路内へと落ちてくる。

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 未来視(世界視)通り過ぎて却って怖いね、しかもこの後に空白期間が必ず起きる。はてさてどうなることやら。

 

「流石は呪霊、やる事が酷いね」

「どうする呪術師、このままでは次々と人間が死んでいくぞ?」

「んー、そうだねぇ……どうしようかな」

 

 考えていると呪霊達は次々と一般人を殺し始め、晴蓮に近づき殴り掛かるが淡黄色(たんこうしょく)の壁が突如現れる。がーー

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「領域、展延」

 

 すると、淡黄色(たんこうしょく)の壁を溶かす様に拳が徐々に入ってくる。

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「視た通りだね、呪詛師にでも教わったかい?」

 

 だが、晴蓮の姿は遠く離れた場所に居た。

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「領域展延、シン・陰流の簡易領域と同じ技術。本来は結界術として相手を閉じ込める『領域展開』を『箱』や『檻』とする技術ならソレは自分だけを包む液体、全く面倒な事を教えるモノだね」

 初めて領域展延を使われたが、感覚としては領域を押し返す時の初動に近いね。必中効果は薄まるけど確実に術式を中和してくる、となると界無為(カムイ)も使えないかな。

 

「逃げるなと、言った筈だ。こうでもせんと分からんか?」

 

 言うと同時に近くに居た一般人の首を引き千切る。

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「いやはや……驚いたよ」

「なんだ? 言い訳か?」

「違うとも火山頭、この程度で僕を封殺できると思ってる空っぽの脳ミソに驚いたと言ったんだ」

 

 空気がヒリつく中「何が言いたい」の問い掛けに言葉ではなく、行動で示した。

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「こうするんだよ呪霊」

 

 その言葉を言うや否や晴蓮はホームに居る逡巡する事なく非呪術師(・・・・)ごと術式を使い、複数の穿漿(せんしょう)が一般人ごと呪霊へと襲い掛かる。

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 かける天秤など決まっている、僕ならこうする事くらい分かってたと思ってたけど違うみたいだね。

 

「何!? 貴様なんのつもりだ!!」

「何もクソも無いだろう? 天秤にかけるモノは決まっているじゃないか、呪霊を祓う(殺す)のと、人間の犠牲を許容するのなら……呪霊を祓う(殺す)事に傾くに決まっている。仕方の無い、尊い犠牲だよ」

「(この男、どこまで狂っているのだ! 人間を助けるどころか容易く切り捨ておった! 人質は通用せん! どうする、領域を使っーー)」

殺し(呪い)合中に考え事かい? 随分と余裕をブッかましてるね」

 

 その言葉は後ろから聞こえ振り返る前に蹴りが振り抜かれ、寸前のところで防ぎ「貴様!」と叫ぶとやはりそこにはおらず離れた場所に居た。

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「君、そう君だよ木の呪霊。君の事は悟君や恵君達から聞いているよ、戦意を削ぐ呪術が使えてとても硬いとね。だから君から祓おうか(殺そうか)

「(! いつの間に!! 逃げられーー)」

「ウドに相応しい遅さだ」

 

 固有時制御(Time alter)を使い花御(はなみ)に一瞬で近づき腹部を殴り、そして追撃は黒い火花を伴った拳が突き刺さる。

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花御(はなみ)!」

他所(よそ)を見る余裕があると思ってるとかやっぱり脳ミソが空っぽだね」

 

 花御(はなみ)の傍に居たと思えば自身の横に居る晴蓮に驚き、硬直してしまい黒い火花を散らしながら拳を振り抜かれる。

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「ぅ、グ……があ!」

 

 領域展延を解かずに晴蓮に殴り掛かるもののそこには誰もおらず、すぐさま探すと後ろに立っており薄紫色の刀で腕を斬り飛ばされる。

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「動かない山程遅いモノは無いよね」

「ッ! ガァ!!」

「素振りの練習かい? それと勿論視えているよ、君が攻撃してくるのもね」

 

 呪胎九相図(じゅたいくそうず)が放つ穿血(せんけつ)を上半身を反らして躱し、お返しと言わんばかりに片手で〈百斂(びゃくれん)〉をした血漿を親指と人差し指の隙間から音速の穿漿(せんしょう)を放つ。

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「君は後だ。暫く拘束させてもらおう、鉄漿:(てっしょう:)六漿甲牢(りくしょうこうろう)

 

 もう片方の手で〈百斂(びゃくれん)〉をし、指の隙間から堅牢な六つの血漿が受肉体を拘束する。

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「領域展延はしないのかい? 僕は悟君とは違って無限の壁は無い、使えば必ず当たるよ? 最もーー」

 

 声が途切れると後ろに居た晴蓮は前に移動しており躱す暇なく「展延が当たればの話だけどね」の声が聞こえ、続け様に「〈秘剣・燕返し:比翼の段(ひけん・つばめがえし:ひよくのだん)〉」の言葉と共に同時に三十もの剣閃が完全に同一の時間で振り抜かれ体を切り刻まれる。

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「呪霊って便利だよね、反転術式を使わずに傷を直せるんだから。まあそのせいで呪力消費は高いだろうけどね」

 

 刀を向け「いつまでも持つかな、タイムアタックだよ呪霊」と、挑発する。その間に接敵(せってき)していた花御(はなみ)の蹴りをダッキングで躱し、起き上がりながら舞を舞う様に二振りの刀で『〈秘剣・燕舞(ひけん・つばめまい)〉』で下から上へと高速の十二連続で斬り刻み、上段霞の構え(じょうだんかすみのかまえ)にを構える時には二降りだった刀は一振になっており途切れる事なく『〈秘剣・燕返し(ひけん・つばめがえし)〉』を使う。

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「ぁ、ガ……」

「呆ける暇など無いぞ呪霊」

 

 よろめき、ふらついていると「シン・巌流〈閻魔大車輪(エンマダイシャリン)〉」の声が聞こえ目に映った晴蓮は下段の構えから高速で近づき、地上から空中へと飛びながら刀で無数の円陣を描き、花御(はなみ)を斬り刻む。

 ━

「展延で術式を中和されるのなら、中和されない攻撃をすればいいだけの事。なんら問題はない」

「バケ……モノ、め……」

 

 一般人諸共燕返し《つばめがえし》で斬り伏せ、「心外だな、僕は人間だよ。そもバケモノなのはどう見ても君だろうに」そう答えていると漏瑚(じょうご)が晴蓮に近づき展延を使ったまま殴り蹴るが晴蓮は容易く躱し、滑る様にされど素早く漏瑚(じょうご)に近づき二刀をもって連続で斬りつけそのまま流れるように袈裟斬りした後、逆袈裟に斬りつけ更に血漿の鞘に納刀し素早い抜刀と燃え盛る血漿を纏った一閃を放ち、腕を焼き斬る。

 斬られた漏瑚(じょうご)は片腕で殴りながら斬られた腕を生やして、何かを逡巡するがそのまま駆け寄り殴るが刀で受け流し返す刃で逆袈裟に斬られる。

 ━

「ぅ……はぁ、はぁはぁ。(これが『最優』の呪術師。素の身体能力、呪力強化だけにも関わらずこれ程までに強いとでも言うのか! そして精神性!)これではどちらがバケモノか分からんな」

「そんなの一目瞭然でしょ。君達だよ、バケモノは」

 

 話し合う二人から距離を取り体を直した花御(はなみ)は呪術を使おうと展延を解き、体の周りに木を生やすと、「花御(はなみ)! 展延を解くな!!」の叫び声が聞こえたが、遅かった。

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剡鉄漿:(えんてっしょう:)千鉄天炎漿剣汰炮(せんてつてんえんしょうけんたいほう)

 

 晴蓮は既に飛び上がっており、漏瑚(じょうご)の頭上で皮膚から滲み出た血漿を鉄分と『結合』させ、鉄分が混ざった血漿を〈百斂(びゃくれん)〉で高圧縮・高加圧させ、凝縮熱(ぎょうしゅくねつ)で鉄分だけが熔けて燃え盛り、無数の燃える鉄剣が天を覆う。

 そして手を拳銃の様な形にし撃つ動作をすると天を覆う燃え盛る鉄剣が一般人諸とも花御(はなみ)へと向けて放たれ、路線内が穴だらけになり自然呪霊『花御(はなみ)』の姿はソコには無かった。

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「おし、まい。仲間は祓われた(死んだ)、どうする?」

「(この男! この男はどこまで冷徹なのだ!! 何故そうも容易く人間を切り捨てられる! 何故それ程までに残酷になれる! 加茂晴蓮、貴様はどこまで狂っ(イカれ)ているのだ!!)」

「次は……君しか居ないみたいだね、火山頭」

 

 その言葉に驚き周囲を見渡すと呪胎九相図(じゅたいくそうず)の受肉体、『脹相(ちょうそう)』を探すがどこにも居なかった。

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「あの男……どこに行きおった!!」

 

 火口の様な両耳と頭から火を吹き出し叫び、すぐさま晴蓮に向き直り逡巡していると、電車がやってくる。それを見て次の行動へと移る。

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「今更僕にこんなものが…………」

 

 そう言いながら周りを見渡すと呪霊はおらず、「あぁ、逃げる為か。逃げるなって言ったのは君達だろうに」と呟く。

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「急に止まったと思ったら何してんの漏瑚(じょうご)

「今は逃げる、今すぐここからな」

「例の呪術師はどーすんの?」

「アレに人質は意味をなさん、人間ごと儂らを殺しにきた。故に逃げるのだ」

「ふーん。あれ? 花御(はなみ)は?」

「……死んだ」

「え、マジ?」

 

 無理やり止められた電車から継ぎ接ぎの呪霊、『真人』が降りてきたと同時に漏瑚(じょうご)が真人を担ぎ上げ構内から逃げようとしていると頭上から、「逃げるなって言ったのは君達だろう?」の声が聞こえ硬質化した六角形の鉄分の塊が漏瑚(じょうご)、真人を襲う。しかし、どこからか飛んできた血液(・・)が絡めとりどこかへと飛ばした。

 ━

 やっぱり赤血操術か、加茂憲倫(のりとし)が作ったのなら加茂家の相伝術式でもおかしくないか。

 

「てっきり逃げたと思ってたよ受肉体」

「俺は脹相(ちょうそう)だ」

「そうか脹相(ちょうそう)か、良い名だね。僕は好きだよその名前。人の儚さ、生の無情さ。人の最期の始まりには良い名前だ」

「…………本意として、善意として受け取ろう」

「本当に良い名前だと思っているよ、嘘偽りなくね。……君達の事は知っているよ、調べたからね。だからこそ気になっているんだ」

「何がだ」

「何故君達兄弟が羂索な味方なのかが、だ」

「何を、何を言っている」

 

 目を伏せ指でコメカミを叩き「今じゃない。うん、今じゃない。今は敵でいてもらう事がベストだ」と一人呟いていると眼前に穿血(せんけつ)が向かったいたが、穿血(せんけつ)はそのまま通り抜け後ろに居る一般人に当たる。

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「ああすまない、僕に不意打ちは意味をなさない。しかし困ったな、呪霊二人に受肉体が一人。相手するのは骨が折れそうだ」

「数的有利はこちらにあるぞ?」

「数的有利? ははは。君達は、羂索から何も、聞かされていないのかい? 僕相手に数的有利などあり得ない(・・・・・)んだよ、蔵識(くらしき)時のある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)

 

 術式の行使、するとどこからともなく何人もの晴蓮(・・・・・・)が空間を裂いて現れた。

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「【コレ(・・)を使うのは初めてだけど上手くいったね】」

「【うん、いい術式(・・)だ】」

「【で? アレらが僕らの敵でいいのかな?】」

「【うん? あぁ、成る程。この世界(・・・・)の彼はまだ向こうか】」

「【その様だね、これから何が起きるか話そうか?】」

「あぁあぁ五月蝿いなもう、今はこの状況に集中してよ」

「【相手はたかが二体と一人、僕らの敵じゃないでしょ】」

「【でも内一人は彼だ、殺す事はできない(・・・・・・・・)】」

「僕はその辺り知らないから君らの判断に任せるよ」

「【ああそうしようか、僕が受肉体といい具合に戦うよ】」

「【この世界の僕は先を急ぐといい、そうすれば少しは良くなる】」

「それは良い事を聞いたね、後は頼むよ。

 さて呪霊ども、数的有利は無くなった。それどころか僕の方が数的有利を得た、どうする? 逃げるのなら今だ」

「ッ、逃がすつもりなぞ毛頭無かろうに」

「大正解、逃がさないとも。最も、君達の相手をするのは僕じゃないけどね」

「【さて、やりますか】」

「【僕が火山頭】」

「【僕は継ぎ接ぎを】」

「他は?」

「【優先順位は継ぎ接ぎだ。が、今醒ませる(・・・・)のはよろしくない。僕も火山頭に取り掛かろう】」

「【そうだね、それがいい】」

「そうか、後は頼むよ」

 

 そう言うとこの世界の晴蓮は並行世界の自分をこの場に残し、先を急いだ。

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「【さて火山頭、お前の相手は僕だ】」

「【そして僕も居る】」

「バケモノめ」

「【酷い事を言うね】」

「【久しぶりだね逃げ回った雑魚、もう一度相手をしてあげるよ。今回は逃げずに掛かってくる事を願っているよ】」

「テメぇ……ブッ殺す」

「【それじゃあ受肉体……イヤ、呪胎九相図(じゅたいくそうず)の長男・脹相(ちょうそう)。君は暫く僕の相手をしてもらうよ】」

「(なんだ……この違和感はなんなんだ、兄弟達とは違う親近感のようなモノ……。あの男は何を知っている、殺さず吐かせるか)」

 

 ここに並行世界から来た四人の晴蓮と、漏瑚(じょうご)、真人、脹相(ちょうそう)の戦いの火蓋が切られた。

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 まだ壁のつもりなのか? 意味の無い事をするね、ここに来ると未来(世界)が視えない。いったい何を考えている、ああだが一般人だけじゃないな呪霊。それも特級呪霊が数体居るな、先ずはそれらを祓うか。

 

「〈百斂(びゃくれん)〉・穿漿(せんしょう)

 

 晴蓮の合掌している指の隙間から血漿が飛び散ると、まるで生物かのような動きで的確に呪霊だけを追尾して祓っていく。

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 特級と言えど所詮は雑魚、足止めにすらならないと言うのに何故ここまで迂遠な事をする。いつ仕掛けてくるつもりだ。

 考えろ、奴が次にしそうな事を考えろ。どのタイミングだ、そもそも奴はどこに居る。今のところ匂い(呪力)は無い。有るのは呪霊の匂い(呪力)だけだ。

 

「鬱陶しい真似をしてくれる。〈百斂(びゃくれん)〉・(てっ)穿漿(せんしょう)

 

 先程と同じ様に指の隙間から、されど硬質化した血漿が溢れ出て槍のような血漿が呪霊を追尾して胴を抜け頭を撃ち抜き祓う。

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 まどろっこしい事を、さっさとーー

 

 その時、懐かしい匂い(呪力)がした。脳内を廻るのは友人とのじゃれあい、小言を言いながらも手伝ってくれた友人。『あり得ない(・・・・・)。あり得る訳がない、だってーー』そう思っていた。

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獄門疆(ごくもんきょう)、開門」

 

 何者かが晴蓮の下に何かを転がす。それはサイコロの様な形をしており、晴蓮はすぐさま意識を切り替え『やはり獄門疆(ごくもんきょう)! される前に封印をーー』と呪術を使おうとするが、後ろから懐かしい、されど二度と聞く事のできない声が聞こえた。

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「よぉ、晴蓮。久しぶりだな」

「あ、な……わすーー」

 

 分かっていた、ソレを一番警戒していた、それでも動きを止め涙を流してしまった。

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 ようやっとここまでこれた、さあさあどんどん巻いていくよ。

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