その血が歩む道すじ   作:亞忌羅

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 う~ん。困った、何も浮かばない。だがしかし失踪はしない、どんな形であれ完結させる。……させられるかな。


百十二話

「き……貴様ぁあぁあ!! 羂ーー」

「!?」

 

 その言葉に反応してサイコロがバラバラに展開し、その中から血肉のようなドロドロとした生々しい触手や神経のようなものが触肢として伸び晴蓮を拘束する。

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 躱す、無理だ早い。すり抜ける、無理だアレは呪力を遮断する。かわーー

 

「流石は『最優』の呪術師だね、混乱しながらもこの数秒で幾つもの対処法を考えた。しかし、意味なかったようだね」

「羂索、お前は何故その体に入っている。確かに確認した、何回も確認した。一時(いっとき)も目を離さなかった。お前が乗り移るタイミングは無かった」

「いいや、一回。一瞬だけ君は虎杖倭助から目を離した」

「何? そんな事……」

「虎杖倭助が亡くなった当日、君は確かに虎杖倭助の傍に常に居た。しかし、ほんの数十份この体から目を離した。思い出したかい?」

「まさ、か……」

「そう、加茂恵が病院に来た時だ。あの時君はこの体から離れた、君は油断したんだよ。

 イヤ、してくれた。まさしく千載一遇のチャンスだった、あの瞬間、天は私の味方をした」

「それでもあり得ない。倭助さんの遺体は常に監視していた体が無くなっていれば誰だって気づく、そもそも遺体は確かにあった、俺達の目の前に」

「海外を放浪している時に、いい術式を持った人物に会ってね」

 

 晴蓮は沈黙し続きを待っていると、それに気がついたのか「晴蓮、君は『チェンジリング』を知っているかい?」と聞かれる。

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「チェンジリング……まさか、貴様!」

「流石は晴蓮、よく知っているね。取り替え子……ヨーロッパの伝承によく出てくるヤツだね、つまりは、だ。私はチェンジリングを使い『身代わりとして偽物の死体を置いていった』んだ。そしてこの術式で置いていかれたモノが偽物だと誰も思わない、思えない(・・・・・・・・・・・)。そして気づけない(・・・・・)。そんな術式だ」

「俺の鼻や悟君の六眼は騙せない」

 呪力が匂い(呪力)はない、体にも力が入らない。間に合った(・・・・・)がこれ以上はできないか。

 

「騙すんじゃない、ソレ(・・)そう(・・)なのだと気づかないんだよ、晴蓮。それに、この術式を使う時に縛りを科した。それは『チェンジリングを使うのは一度きりにする』と言う縛りをね。だから誰も気づかなかったんだよ。

 確かに一か八かの賭けである部分もあったが見事騙しきれた、お陰で良い体を手に入れられたし、君の思考を、動きを止める事ができた。

 晴蓮、君とはこれでさよならだ」

 

 つらつらと喋る羂索に不適な笑みを浮かべ笑い「羂索、確かにここまではお前の予定通りだろうな。だが、お前は俺の事を過大評価している」と返し「それはあり得ない、君への評価は妥当なモノだ」の言葉に「そうかい」と答えた。

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「さよならか、ああそうださよならだな。だが俺はすぐに戻ってくる、お前が想定するより早くな。

 もう一度言おう、お前の敗因は過大評価(・・・・)だ羂索」

 

 顔を険しくさせ逡巡するが「それでも君とはお別れだ、さよならだよ加茂晴蓮。新しい世界でまた会おう」と話し、「でもその前に言う事がある」と言うと僅かな沈黙の後「何かな」の言葉が返され「倭助さん、そろそろ起きる時間です」と喋ると、虎杖倭助の体が勝手に動きだし首を締める。

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「あっはっは、初めてだよこんな事」

 

 そう話していると構内の奥の方から継ぎ接ぎの呪霊『真人』が現れ、二人は何かを話し合っているのを見た晴蓮が「話し合いは終わったかい? いい加減閉めてくれると楽なんだけど」と茶々を入れる。

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「私としてはもう少し見ていたいけど、相手は『最優』の呪術師。何してくるか分からないからこれで終いにするとしようか」

 

閉門

 

「これで終わり?」

「……ああ、終わりだとも」

 

 獄門疆(ごくもんきょう)が閉まり地に落ちる前に掴むと「それもう使えないんだっけ?」と真人が話し、「あぁ、定員一名。中の人間が自死しない限り使用不可だ」と返すと「ふ~ん、つまんな」と他人事の様に言い「何はともあれこれでーー」

 

「封印完了だ」

 

「やあ皆元気そうだね」

「この(ざま)を見てよく言えるな貴様は」

「晴蓮相手に死んでないだけ無事みたいなモノだよ、彼には手加減というモノは無いからね」

「そのようだな、一般人諸共花御(はなみ)を祓った」

「だから言ったのに、彼の取捨選択は時に残酷・冷酷になると。

 大多数の一般人の命と、少数の呪霊を祓えるのなら……間違いなく彼は後者を選ぶ。加茂晴蓮はそう言う呪術師だ、さて今後のーー」

 

 話し合っていると獄門疆(ごくもんきょう)を持つ手が次第に冷えていき、遂には指が凍りそうな程冷えきり獄門疆(ごくもんきょう)を手放す。するとーー

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「は?」

「これは! 悪足掻きをしてくれる」

「あり得ん」

「本当にね、どこまで私を困らせれば気が済むのやら」

 

 その言葉通り獄門疆(ごくもんきょう)を包む様にどんどん凍りつき、遂には氷の大樹へと成った。

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「こんな事できんの?」

「予め呪術を使っていたんだろうね、そして何かを『(キー)』にして閉門した瞬間に発動した。って感じかな」

「ふ~ん」

「だがそんな事があり得るのか?」

「こんな事ができんるのは彼くらいしか居ないよ。(こんなモノを見せておいて敗因が過大評価? 何を言っているんだ)君は何ができないんだ、加茂晴蓮」

 

 白い息を吐きながら氷の大樹を見上げる。

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「!? まさか本当になるとハ」

「メカ丸先輩?」

「加茂先生が封印されタ」

 

 その言葉に虎杖は驚きを隠せなかった。

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「師匠が封印!?」

「そうだ」

「にわかには信じられないね」

「だが事実ダ、そして先生の想定通り(・・・・)ダ」

「え……それは」

「先生は自分が封印される事を知っていタ、その上で単独行動をしタ。奴らが予期せぬ事をしないようにナ」

「つまり彼にとってこの状況は正しい状況だと判断していいんだね?」

「ああ、その考えで合っていル」

「なら私達はどう行動すればいいんだい?」

「先生から手紙を預かっていル」

 

 そう言うと制服の内ポケットから二つの手紙を取り出し、二人に渡す。

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「これが彼からの指示書か」

「そうなるナ」

「中身は」

「知らん、自分で確認しロ」

 

 

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「加茂真希、加茂恵。先生ガ封印されタ」

「先生………! まさか兄さんが!?」

「嘘言ってんじゃねえよな」

「当たり前ダ、こんなタチの悪い嘘は吐かン」

「ならマジでされたのか」

 

 衝撃の事実を告げられて逡巡するが「何か指示は」と切り替えメカ丸二号に二人が同時に聞く。

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「流石は先生の妹と甥だナ、先生からこれを渡されていル」

 

 渡された手紙をすぐに読み恵は「分かった」と返し、真希は「しゃあねぇやるか」と言いすぐさま行動に移した。

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「パンダ、真依」

「ん? なんだ」

「……嫌な予感がするんだけど」

「加茂先生が封印されタ」

「は?」

「ほらやっぱり、兄さんが単独で行動してたから嫌な予感がずっとしてたのよ」

「お前達にハこれを預かっていル」

 

 メカ丸三号が内ポケットから二つの手紙を取り出し渡し「中身は知らン、自分で確認しロ」と、先に言った。

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「…………こんなの、どうしろって言うのよ」

「うっへーマジか」

「なんて書いてあんの?」

「秤と綺羅羅(きらら)を連れてこいってよ」

「あー……まあ頑張りなさいな」

「お前の名前も書いてあんだけど」

「なんですって!? じゃあ何? 私は私の仕事をこなした後にあの二人を説得しろとでも言う訳?」

「そうなんじゃねぇの」

「嘘でしょ……」

 

 途方に暮れる真依に「まあ頑張ろうぜ」と言われた事を返した。

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「五条悟」

「『さん』か『先生』、それか『グッドルキングガイ』って呼びなよ。で? 何かあった」

「先生が封印されタ」

「は? マジで? ハルの言ってた通りになったじゃん」

「そうだナ、五条悟。今のアンタには特段指示は無い」

「マジか」

「やる事はやると思っているのだろうナ、だが後で渡す物があル。その時に渡そう」

「ふーん、そっかそっか。じゃあやるとしますかね。でさ、メカ丸はどうすんの」

「俺にはやる事があル」

「じゃあお互いやる事をやろうか」

「そのつもりダ」

 

 

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「夏油傑」

「せめて先生は付けてほしいかな」

「俺が先生と呼ぶのは加茂先生だけダ」

 

 ため息を吐き「何か渡されているんだろう?」と聞かれ、「これダ」と渡す。

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「今は現状維持、か。だが………無事にすんだとは言え嫌な事を思い出すな」

「その辺りは知らんガ、それだけ信頼があるんだろうナ」

「じゃあ期待に応えないとね、メカ丸君は何かするのかい?」

「ああ、やる事がある」

「そうか、じゃあここから別行動だね。お互い頑張ろうか」

「そうだナ」

 

 

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「夜蛾正道学長」

「ム、メカ丸か。だうした」

「先生が封印されましタ」

「!? 言っていた通りになったわけか」

「そうですネ」

「それでどうすれば良い」

「これヲ」

 

 渡された手紙を読み「そうか」と空を仰ぐ。

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「私は私の仕事をする、メカ丸はメカ丸の仕事を続けてくれ」

「分かってまス」

 

 各々に付いていたメカ丸号が、各々に者達に晴蓮から渡された手紙を渡し、メカ丸は自分がする事をやりに行った。

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「後は、現段階では封印の連絡だケ、だったナ」

 

 

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「七海建人に欅親子、釘崎野薔薇(くぎさきのばら)

「何か、ありましたか」

「先生が封印されタ」

「は? 加茂先生が封印? そんなのあり得ないでしょ」

「ならそう思っておケ」

 

 長い息を吐き「加茂先輩からの指示は」と聞くと「無い、このままやる事やれとの事ダ」と言われ「そうですか、ではこのまま進みましょう」と返し、欅京子(けやききょうこ)が「メカ丸君は何を?」と聞き「俺はここから別行動になル」と答える。その返答に「分かりました」と短く返し「じゃあナ」と言いながらメカ丸七号がどこかへと向かった。

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「あ、ちょっと! 本当に封印された? 加茂先生が?」

「信じられませんが封印された前提で動きましょう」

 

 

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 加茂晴蓮が封印された同時刻、氷の大樹がある場所のビルの上に雲の絵が描かれた白い外套を着た何者かが氷の大樹を見下ろし、何も言わずに立ち去った。

 

 

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「禪院」

「なんだ」

「先生が封印されタ」

「オマエは何言うとるんや」

「事実を言っただけダ」

「アヤツの言った通りになった、と言う事か」

「だがこちらには五条悟と夏油傑が居る、なんとかなるだろうよ」

「そこやあらへん。蓮クンが封印された事に文句言うとるんや」

「この結果は先生の想定通りダ、問題はない」

「せやったらエエわ」

「相変わらず喰えん奴だ。で、ワシらは何をすればいい」

「手紙を受け取っていル」

 

 同じ様に内ポケットから三つの手紙を取り出し渡す。

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「アイツは何を考えている」

未来(世界)を視据えた事に決まっとるやろ」

「それがこの内容か」

「今は分からへんけど蓮クンの指示通り動くんがベストや」

「ぐうの音も出んな、仕方ない。書かれた通りにやるか」

「呪霊祓除、いつもの事だ。それが特級か否かの違いでしかない」

「で、オマエは何すんのや」

「俺にはやる事があル、ここから別行動ダ」

「せやったらはよ行けや、蓮クンからの仕事をせぇや」

「言われるまでもなイ、じゃあナ」

 

 そのまま踵を返しメカ丸八号はどこかに行った。

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「指示書にも書いて有ったがこうも未登録の特級呪霊が次から次へと出てこられると困るな」

「カカカ、矜持ガ傷ツイタカ?」

「やはり喋れたか、それとなんだったか……ああ矜持がどうとかだったな、その反対だ呪霊。ワシがどこまで通用するのか試す場ができて嬉しい程だ」

「蓮クンの言った通りやな」

「直哉、扇。さっさと持ち場に行け、あの……なんだったか……」

銀崩(ぎんほう)だな、氷の呪術使う呪霊。私と相性が良い」

「(コイツラハドコマデ知ッテイル。ダガ、俺ガスル事ハタダ一つ。コイツラヲ殺ス事)」

「親父もちゃんと祓えや」

「言われるまでもねぇ、お前達はお前達の仕事をしろ。さっさと行け、さっさと」

「分かっとるわボケ」

「逃ガストデモ思ウカ?」

「逃がさざるを得ないんだよ呪霊」

 

 そう言うと毘沙門天の掌印を結び静かにとある言葉を紡ぐ。

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領域展開

 

 

「何!? (領域ダト! ソノ様ナ話ハ聞イテオランゾ!)クソッ!」

「貴様にはできんか、ならそのまま死ね」

 

 

須弥山銀幕二十四景(しゅみせんぎんまくにじゅうよんけい)

 

 名も知らぬ特級呪霊だけを直毘人の領域が呑み込み閉じ込める。

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「ほな行こかな」

「役目は果たすだけの事」

 

 

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「あの速度には慣れんな。フム、絵と違うどころか呪霊ですらないな」

銀崩(ぎんほう)の事か? 残念ながら銀崩(ぎんほう)はここには居ない」

「特級呪霊だけではなく、呪詛師も増えたか。だが今はどうでもいい、指示通りプランB……呪霊であれば見つけ次第呪霊を祓う、呪詛師であれば死なぬ程度に殺す。だったな」

「オレを殺す? 戯れ事を」

「戯れ事かどうかは身をもって知るといい」

 

 その言葉と共に火天印(かてんいん)を結び紡ぐ。

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「掌印! 馬鹿な、そんな事はーー」

「情報が古いな」

 

 

領域展開・三界火宅四大洲(さんがいかたくしだいしゅう)

 

 有無を言わせず禪院扇の領域を展開し名も知らぬ呪詛師を呑み込む。

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「オマエやな、蓮クンが視た五体目(・・・)の自然呪霊とやらは。ああ名乗らんでええで、知っても意味あらへんしな」

「何故だ」

「今から祓う(殺す)奴の名前聞いても意味あらへんやろ」

「傲慢だな、だが(われ)の事を知られておるとはな」

「蓮クンに隠し事は無理や、全部筒抜けや」

「だが貴様らが頼る加茂晴蓮は封印された」

「せやから予め俺らに指示書を残しとったんやろ」

「(封印される前提での行動か)したらばどうする? 貴様らの強さは知っておる、貴様が(われ)戦い(呪い)合うか?」

「いつの話やねんソレ、情報が古すぎるで」

「何?」

「当然や、教えしたらな可哀想やさかいな」

「わざわざ知らせるとは余裕があるのだな」

「強者の余裕や、オマエ程度容易く祓えるんや。

 で、や。俺は蓮クンに『1』てしてもろうたんや」

「『1』に? 何を言っている」

「俺は蓮クンに一回『0』にしてもろうた、その後に『1』にしてもろうたんや。それを隔てて俺は生まれ変わった、俺は術式を深う知れた。そやさかいアンタらの情報は古いんや」

「何が言いたい」

「蓮クンは非呪術師を呪術師にできる」

「今更だな」

「せやろな、今更や。でもな蓮クンはその逆もできるんや」

「何?」

「俺は蓮クンに脳を弄ってもろたんや、そんで非呪術師、脳を弄って『0』にしてもろたんや。呪術が使えん事は呪術師にとって恐怖や、あの感覚は恐ろしかったはマジで。

 そんで呪術が使えへん期間を設けた、約半年間や。その間俺は非呪術師やった、呪霊は見えんのに何もできへん事は恐怖や、呪術なしで、呪具だけで祓わなアカンのやからな。

 俺は呪霊が見える一般人を心底尊敬したのは初めてや、あんなんでよう生きとれるわ。俺は呪術を欲した、心の奥底から欲した。そんで半年が過ぎた時に蓮クンに呪術師に……『1』してもろうたんや。

 俺は『1』から『0』に、そして『0』から『1』にしてもろうた。その結果俺は呪術を深く知れた、俺の術式は深化したんや」

(われ)がその情報を知っているとは思わないなんだのか?」

 

 タメ息を吐き、「んな訳あらへん。そん事を知ってんのは蓮クンだけや、蓮クン以外誰にも言うとらへん。呪霊の祓除も蓮クンの式神貸してもろたり呪具で対処しとったしな。

 蓮クンはな、未来に生きとるんや。せやさかい俺にそないな事を提案してきた、俺も初めは嫌やったで? そやけど蓮クンはそうする事に意味がある言うたんや、俺が更に強なれる言うた。せやさかいやったんや蓮クンは嘘は言わんからや。現に俺は強なった。

 蓮クンはな、なんでも知っとる。未来で起きる出来事を事前に対処できるんや」と独白し呪霊に口を挟む暇を作らせずに「せやからお前の存在も知っとるんや、対策法もや」と告げる。

 ━

「何が言いたい」

「俺がオマエを祓うってだけや」

「やってみせよ」

「蓮クンはオマエには領域を使え言うとった、でもオマエごとき極ノ番で充分や」

「ほう、であれば祓ってみせよ人間」

「言われんでも祓うたる」

 

 

極ノ番・明星(みょうじょう)

 

 

 ━━━━

 禪院直哉の極ノ番『明星(みょうじょう)』。

 それは自身を画角にするのでは無く、日光()を画角にする術式。

 日光()の一秒を六十(・・)分割し、六十分割された日光()自身の速度(・・・・・)で六十コマを再現できずに二秒間必ずフリーズする。その結果目に見える日光()は止まり、無くなり一瞬にして直也を取り巻く空間が『完全な暗闇』へと変わる。

 そして二秒間のフリーズが解けた日光()は一気に解放され、光速の熱量と膨大な熱量による『空間の全方位焼却』と『二秒分の熱量と呪力が極限まで濃縮された質量を持った破壊の光』へと変貌する。

 ━━━━

 

 

「初披露や言うのになんや、生きとるやんか」

「光を操るか」

「んな事人間にできるかいな、操るんと違う止める(・・・)だけや。その結果がああなるだけや、やのになんやオマエ、なんで生きとるんや」

「相手が悪かった、と言うヤツだな。

 どうやら(われ)がなんの呪霊かまでは分からんかったか」

「何が言いたいねん」

(われ)は太陽が起こす災害、『日照り・干魃』に対する畏怖から生まれた呪霊。日の光は(われ)には無意味と知れ」

「太陽災害から生まれた呪霊……せやから領域使え言うとったんか、もっと分かりやすう説明してほしいもんや。しゃあない、領域使わなあかんな」

「使えば(われ)が祓えると?」

「せや、必ず祓える。

 俺の領域に必殺はあらへん(・・・・)、せやからそのリソースを展開の速度と押し合いに割いとるんや」

「ほう、現代の術師の領域は『必中必殺』と聞くが……珍しい者もいるのだな」

「蓮クンの領域がせやからな、そして俺は気づいたんや、そもそも領域に『必殺』なんてもんは要らへんてな。そないなモン入れるから面倒な代物になるんや」

「だが必殺を入れねば祓えぬぞ」

「モノはやりようや、必殺があらへんでも祓える領域にしたらええだけや」

「であればして魅せよ」

「言われんでもやるわ呪霊」

 

 

領域展開

仙果伽藍奉納殿(せんかがらんほうのうでん)

 

 その瞬間に領域の外殻が凄まじい速度で広がり太陽の呪霊を呑み込んでいく。

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「ほう、これは壮観だな。してこれなるモノが仙果(せんか)か」

「必中でどないな領域かは分かるやろ? 食うてみぃ、ウマイで」

「そしてお主の術式を強制されると」

「怪我が治るんや、そないな程度オマケやろ」

「このようなモノ食わずともお主程度容易く殺せるわ」

「ならしてみぃや呪霊」

 

 直哉と干魃の呪霊との戦闘が火蓋が切られた。

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「よぉ、久しぶりだな禍求夜(カグヤ)

「貴様はあの時のバグ人間か」

「バグ人間、か。あながち間違いじゃねぇな、何せ呪術界初の人間(術師)だからな」

「俺を殺しに来たか?」

「ああなんでもお前さんに生きていられるのは困るらしい………だが、大将から殺すなって言われてんだ。死なねぇ程度に死んでもらう」

「大言壮語を吐くものだな」

「死の淵でも同じ事が言えるか愉しみだな」

「死ぬのは貴様だ」

 

 別の場所では甚爾と禍求夜(カグヤ)の火蓋が切られていた。

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「あん時は世話になったな結界術師」

「誰だお前」

「そりゃ知らんわな、結界張って即逃げた臆病者は」

「なんだと」

「命令かなんかは知らねぇけど尻尾巻いて逃げたのは事実だろ」

「俺が臆病者? 違うな、俺が表に出る必要が無かっただけだ。貴様ら程度の弱者にな」

「アンタの術式が戦闘にも応用できる事くらい蓮兄から聞いてるっての、その上で臆病者って言ってんだよ。私はな、戦えるクセに戦わねぇ奴が嫌いなんだよ。

 あー後はアレだ、私情とは関係ないんだけど蓮兄からアンタの事を殺すなって言われてんだよ。だから死なねぇ程度に殺してやるよ」

「ほざくな呪力が無い(・・・・・)雑魚風情が」

「その雑魚に倒されるんだよ」

「雑魚風情が戯れ事を……ここで死ね開扇(かいせん)比翼扇(ひよくせん)

 

 空間を扇で仰ぐと『(指向性の結界)』が流れた。正体は目に見えない薄さの『結界の刃』であり無数に飛ばし呪力を乗せた放たれた風は『空間そのものを細かく切り分ける』結界。しかし、真希の刀の一振で霧散する。

 ━

「何!?」

「まあ驚くよな、渡されて使った時私も驚いたからな。この長巻は刃威音(はいね)、蓮兄が私の為に作らせたオーダーメードの呪具だ。

 刀身が呪力を吸収するらしい、蓮兄曰く『術師殺し』の呪具だそうだ。しかも吸収するのは他人の呪力だけじゃねぇ、私の呪力も吸収してんだ。お陰で私の呪力も絶え間無く吸われて一滴も呪力が無い(・・・・・・・・)。ま、元より絞りカス程度の呪力だから問題はねぇけどな。でもそのお陰で私は擬似的だがゴリラ同様フィジカルギフテッドだ」

「それがなんだ、非呪術師にすら劣る人間が俺の前に立つのか」

「私だから立つんだよ、先に言っといてやるよ」

 

 鋭く睨み「何をだ」と短く、そして怒気を孕ませ言葉を返すと、なんて事無いように「私に領域は意味がねぇ」と答える。

 ━

「ハッ、何を言うかと思えば妄言を吐くとはな。この世に領域の通じぬ者なぞ存在しない」

「ならしてみろよ、結界術師十八番の領域をな」

「いいだろう、そしてそのまま死ね」

 

 手にした呪具の扇を開き唱える「領域展開」

 

常闇御所・五節の檻(とこやみごしょ・ごせちのおり)

 

 領域が展開されると、周囲は現世から完全に隔離され、夜の静寂に包まれた巨大な寝殿造(宮殿)の内部へと変化し、その見た目は床、天井、壁のすべてが『巨大な扇の蛇腹(折り目)』のような構造をしており、幾重にも重なる『御簾(みす)』や『(ふすま)』で空間が細かく区切られている。

 ━

「何もできずに死ね」

 

 領域内にある無数の御簾や襖が閉じると、その直線上にいる相手の真希の肉体を空間ごと一切の抵抗を無視して切断する筈が、フィジカルギフテッドの真希は領域内において建造物(無生物)でしかなく真希を認識できず領域の『空間切断』の必中効果が発動しなかった。

 ━

「何!? 何故だ! 何故切られない!」

「だから言ったろ、領域は意味がないってな。でもまあ、速攻で終わらせる」

 

 そう言うと既に結界術師の真横に立ち、呪具『刃威音(はいね)』を振るい片腕を斬り飛ばし、相手が付与術式ではなく呪術を使おうと扇を振るおうとした瞬間肘から先を斬り飛ばす。

 ━

「あ、がぁあぁ!!」

「安心しろよ、殺さねぇ」

 

 その言葉通りに脈打つ刀の峰で腹を打ち上げる、意識を刈り取った。

 ━

「マジかよ、マジで弱いじゃん。『結界術師に領域を使わせろ、そうすればすぐに終わる』って書いてあったけど蓮兄が言った通りすぐ終わったな、にしてもこの柄頭……脈打つとかマジでキモいな。まあいいや、死なれたら困るし家入先生の所に連れてくか」

 

 名も知らぬ結界術師を簡易的な血止めをし担ぎ上げ、高専へと連れていく。

 ━




 話は一気に飛んで死滅回游へとなりました、今までの事を考えると早足ですね。私の力不足の現れです。

━━
 二人の領域に付与された術式?なんなんでしょうね。

━━
 直哉くんの極ノ番を作ってたら光を操る宇宙人が現れたでござる。とは言え変えるつもりが無いのでこのまま使うしかない、ぶっちゃけ作り直すのが面倒くさい。まあ今更言っても言い訳にすら思えませんよね、もっと早く出せばよかった。
 直哉くんの領域は晴蓮くんと出会い、目指した結果、伽藍堂に桃を奉納する領域になった。晴蓮くん大好き問題。
━━
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